『デタリウム・システム』体験インタビュー会場にて、定点カメラにて録画された映像。
「アー、アー、マイクチェック、マイクチェック。大丈夫かな?入ってるよね?」
(
インタビュアー(以下I):今回は、先日テスト期間が一時中断となりました『デタリウム・システム』を使って色々と試していただいたテスターの方に来ていただき、テスト期間中に作った作品のお話を聞いています。では、お名前をどうぞ。
(インタビュアーに促され、緊張した面持ちでソファに座っていた女性が話し始める。特にカメラの方に気がついた様子はなく、インタビュアーの方を向いて)
香織里(以下K):あ、えと、い……磯部、香織里*1、です。Z支部、ブルーマリン所属、です。
I:香織里さんですね。よろしくお願いいたします。この度は、急なテスト期間中断でご迷惑をおかけいたしました。上からの急な指示で、どうしようもなかったんですけどね。
(上司の我儘って大変ですよねー、と苦笑いをするインタビュアー)
K:あ、その、大丈夫、です。急に使えなくなってびっくりはしました、けど。
I:さて、テスト期間中に『デタリウム・システム』を体験していただいて……実は香織里さんの投稿がテスト期間最後の作品となったわけですが、何か珍しい使い方をされたと伺っています。どんな風に使用されたか、教えていただけますか?
K:あ……えと、私、あの、映画鑑賞が趣味なんですけど、その……『デタリウム・システム』を使って、映画の一場面を参考にして、作って、みました。
I:ほうほう、それはまた創造的な事をしましたね。どのような映画の場面ですか?
K:その……私、恋愛映画が結構好きなんですけど……
I:うんうん。趣味は映画鑑賞って言ってましたものね。
K:で、所謂、恋愛映画だけじゃなくて、その……恋愛映画のジャンルじゃない映画の恋愛要素、みたいなのも大好きで、例えばちょっと古いんですけど『ジョーンズ教授の大冒険』の第二作目とか冒険活劇で、お約束のちょっとエッチな感じもありつつ恋愛シーンとかもあって、すっごくいいんですよね、で、今回題材にしたのが、そのジョーンズ教授役の役者さんが出演してる『星戦史』っていう映画なんですけど、その役者さんが扮する宇宙の運び屋と、お姫様が悪口を言いながらも恋に落ちていくの、すっごくイイんですよ。(だんだんと早口になる)
I:お……おぅ……。
(香織里がだんだんと早口になって語り始めるのを見て、思わず目を点にするインタビュアー)
K:その、私がこのシリーズを観たのって、勿論、1作目にあたるエピソード4が公開されてから何十年も経った後になるわけですけれど、期間を開けてとは言え、全世界が熱狂して完結編の公開を待ちわびているような時だったんですよね。でもそんな何十年前の映画を今観たって、粗が見えちゃうから詰まらないだろうと思っちゃうじゃないですか。きっと当時リアタイで観てた人たちが思い出補正で盛り上がってるだけなんだろうなーとか。でも違ったんです。流石「アメリカの神話」と言われるだけの事はあるなぁと言うか。オープニングの音楽が終わった後の宇宙船と宇宙戦艦の追いかけっこを観て、ああ、私はなんで大きなスクリーンでこれを見なかったんだろうと後悔して。まぁ最後の3作についてのコメントは差し控えますけれど……あ、それで、その2作目……えと、エピソードで言うと5なんですけど、映像化したのは2作目なのでわかりやすく2作目って言ったんですけど、その最後の辺りで運び屋さんがカーボン凍結の実験台にされて彫像みたいにされて、自分が借金をしていた宇宙のマフィアのもとに持ってかれてしまうんです。その時のやり取りも最高で、別れの前にツンデレな姫がデレて「I love you.」ってようやく素直になって告白するんですけど、それに対して運び屋さんが「
I:あー。……あの、その話、長くなります?
(香織里が一息入れたところで、思わず聞いてしまうインタビュアー。インタビュアーとしては失格であるが、気持ちはわからなくもない)
K:あ!……そ、その、ゴメンナサイ、私、好きな映画の話だと止まらなくて。
(顔を真っ赤にして俯く香織里。その様子に慌てて先を促すインタビュアー)
I:いえいえ、いいんですよ。で、どんなシーンを作ったんですか?
K:あ、その、ゴメンナサイ、ちょっとまだ続きがあって……。
I:あー。はい、どうぞ。
(インタビュアー、諦念の極致、という顔になりかけるが、作り笑顔で先を促す。口元がヒクヒクしている事に、俯いていた香織里は気が付かずに先を続ける)
K:それで、カーボン凍結された運び屋さんが運ばれるのが、宇宙マフィアのボスの、なんかヘビとかカエルの親玉みたいなヤツの宮殿なんですけど、踊り子とか侍らせて、すっごく退廃的な感じなんですよね。それで、その、宮殿で踊り子を侍らせているマフィアのボスっていう題材で、作ってみたのが、この作品、です。
I:なるほどなるほど。それがこの作品なんですね。
(言いながら、写真を見るインタビュアー。そこには3人の踊り子を侍らせる、緑と黄色の交じり合った巨体があった)
K:あの、やっぱり再現するの難しくって、ちょっと恥ずかしいんですけど、そ……その……ゴメンナサイ!
(写真を奪い、止める間もなく慌てて去ろうとする香織里。だが、インタビュアーは咄嗟に香織里の手を掴むことに成功していた)
I:まぁまぁ、逃げることないじゃないですかー。さ、座って座って。あ、コーヒー飲みます?
K:ううう……。恥ずかしいのに……。
(強引に香織里を、元居たソファに座らせるインタビュアー。)
I:それで?多分、作るにあたって、そんな理由で作ったわけじゃないですよね?もっと何か熱いパッションがあったんじゃないですか?
K:な、なんですか、熱いパッションって……。
(そう言いながらも、目をそらす香織里。何かある。そう思い、インタビュアーはニヤリと口元をゆがめる)
I:わかりました。ここからは、私と香織里さんだけの秘密、と言う事にしましょう。それなら話してもらえますよね?
K:いえ、だから、別にこれ以上話すことなんて……。
I:そうは言っても、わたしが見たところ、香織里さんが言うところの「『退廃的な感じ』だからここまで作った」というにはちょっと手が込んでますからねぇ。何か理由があったんじゃないかと思って。
K:そ……そんな事……ない、です。
(目が泳ぎ、俯く香織里。何か隠しているのがまるわかりである。)
I:私も、この『デタリウム・システム』の開発にかかわった手前、テスターさんの状況などは知っておきたいんですよ。ね、ご協力お願いします。
K:で、でも……その、恥ずかしくて……。
(もじもじと指を動かす香織里。これは押せば何とかなると踏んだのか、インタビュアーは畳み掛ける)
I:わかりました。じゃあ、このボイスレコーダーも止めましょう。そうしたら、二人だけの秘密ですもんね。ほら。
(ピ、という音がして、ボイスレコーダーの電源を落とすインタビュアー。しかしこの映像は止まらない。なんという策士。)
K:あ、あの、このまま
I:勿論、ありません♪
(ガックリと肩を落とす香織里。インタビュアーが淹れてくれたコーヒーの入った紙コップを手にして一口飲んだ。そして、ふぅ、とため息をつく)
K:本当に、ここだけの話ですよ……。あと、その、ちょっと長くなっちゃうかもしれませんよ……?それでも、いい、ですか?
I:どうぞどうぞ。話の腰を折らないように気を付けますね。
K:『退廃的な感じ』だから作った、っていうのは嘘ではなくって、はじめは、その、うちの隊員のコ・ス・プレって、変に煽情的なものが多いじゃないですか。私のコ・ス・プレもそうなんですけど*2、『リバーバレーション*3』も肌色成分高めですし、『スノーフェアリー*4』に至ってはスケスケでパンツ丸出しですし。それで、その中でも、踊り子さんのコ・ス・プレを持ってる隊員が何人かいらっしゃって、その踊り子さんが映えるような作品を作りたいなって思って。で、どんなシチュエーションが映えるかなって思った時に『退廃的な感じ』ってすごく重要だなぁって思って。
(うまく伝えられるか、手探りの様にゆっくりと話し始める香織里)
I:ほほう、あのカエルの親玉を作ろうと思って作り始めたわけじゃなくって、むしろ踊り子さんが映えるシチュエーションを考えたらあの作品になったと。
K:そうなんです。ミオ*5さんの『放蕩の踊り子*6』とか、凛華*7ちゃんの『サイザフォーン*8』とかってなんか異国情緒っていうんでしょうか、ジプシーとかそういう、何とも言えないエロティックさがあるじゃないですか。怜里*9さんの『舞踏の女神*10』も、その、エロティックな踊り子さんであるのは間違いないので、この3人の踊り子たちがいるイメージにふさわしい場所を考えた時に、異国情緒、そこから、退廃的な、というイメージが出てきたんです。だから、はじめに踊り子のコ・ス・プレを使おうと思ったのが先なので、その、『退廃的な感じ』だから作ったって訳じゃないっていうのはその通りなんです。むしろ、あの3人が映えるイメージを作ろうと思ったのが、その、熱いパッション、なんじゃないかなって……。
(はじめはゆっくりだった口調が、だんだんと早くなってくる香織里。もっともらしい。確かに、もっともらしく聞こえる。……が)
I:で?
(インタビュアーに聞き返され、目をパチクリする香織里)
K:え?いえ、その、これだけ、なんですけど……
(香織里の目が泳いでいる。まだ核心に至ってはいないと、インタビュアーは直観した。香織里の前に座っていたインタビュアーは組んだ手の上に顎をのせ、上目づかいで香織里の目を覗き込んで口を開いた)
I:香織里さん……。映えるから、『退廃的な感じ』にしようと思ったのはわかりました。でも、私が知りたいのは、そこから先。何故、香織里さんが、あのカエルの親玉を作ろうと思ってしまったのか、そこに至るまでの繋がり、理由付け、なんです。まだ、重要なところまで、至ってないんですよ。
(そしてインタビュアーは立ち上がり、ゆっくりと歩きながら、香織里の座っているソファの後ろに回り込み、ソファの背もたれに手をかけると、香織里の耳元に顔を近づける)
I:香織里さん……貴女、まだ、話してないことがあるでしょう……?そう、あのカエルとヘビの間の子を作るに至った本当の理由……。何を、想像しました?どんな妄想をしました、か?
(ビクン!と。香織里の背筋が伸びた。当たりだ。インタビュアーはほくそ笑み、背後から香織里の両肩に手をのせる)
I:さ、話してくれますね?貴女が何を考え……そして、
(観念したのか、香織里は、俯き、口を開いた)
そう、ですね。
確かに、答えるのを敢えて避けてました。
だって、恥ずかしくて。いえ、それだけでは無いんですけれど。
今まで話したことも、まったくの嘘ではないんですよ。
3人の踊り子の衣装を映えさせたい、って思って作ったというのは本当ですし。
ただ、あの宇宙マフィアのボス、仮にジャワ様としておきましょうか。ジャワ様を作ることになった経緯はまた別にあります。
先程、ちらとお話ししましたけれど。あの映画の2作目のラストでカーボン凍結された運び屋さんが運ばれた先が、ジャワ様の宮殿なんですけど、3作目のはじめの方はそこが舞台になるんです。シリーズ通して出演している、あの有名な金色と白いロボットのコンビがジャワ様の宮殿を訪れるところから始まるんですよね。
ロボットたちが、ジャワ様に謁見するんですけど、ジャワ様は水煙草をくゆらせて、踊り子とか侍らせて、すっごく退廃的な感じなんです。全体的に映像も暗めで、初見だと何があるのかもよくわからないくらい。
で、まぁ、詳しくは実際に映画を観て欲しいんですけど、その後、一人の賞金稼ぎが運び屋さんの相棒を捕まえてジャワ様の下を訪れるんです。それが実は、賞金稼ぎに変装したお姫様なんですよね。で、杜撰な感じに運び屋さんのカーボン凍結を解除して、一緒に逃げましょうという流れなんですけれど、当然、捕まっちゃうんです。
それで、その次のシーンで、今度は主人公がジャワ様の所にくるんですけれど……その、お姫様が、すっごくエッチぃ格好でジャワ様の横にしな垂れかかっているんです。首には鎖のついた首輪をつけられて。
それを見た時、私、想像しちゃったんです。
あの服とも言えないエッチぃ格好にさせられて、鎖につながれて、ジャワ様にしな垂れかかるまでの経緯を。
仮にもお姫様が、ですよ?
強気で、ツンデレな、それでも戦場を経験しているお姫様が、捕まったからとはいえ、素直にそんな服を着るかしら。
無理矢理に裸にされてエッチぃ衣装に着せ替えさせられたのかしら。でも騒ぐのは面倒くさいから薬を盛られて眠らされている間に着替えさせたのかも。その時に首輪もつけられたんだわ、きっと。
しかも、映画ではシーンが切り替わってすぐに主人公が訪れたけれど、お姫様が捕まってから、どのくらい時間が経ったかわからないんですよね。でも、そんなにすぐに来るわけないと思うんです。だったら一緒に来ればいい話ですから。勿論、ストーリー的に別々に来ないと盛り上がらないですし、そこはご都合主義的な話ではあるんですけれど、普通に考えたら、何日も経ってから現れたと思うんです。その間、お姫様はどんな扱いをされていたんでしょう。そして、その間に『わからされた』からこそ、おとなしく鎖に繋がれてジャワ様の横に侍っていたと思うんです。
心を折られたというか。
きっと、ジャワ様にも抱かれたでしょう。もしかしたら、あの格好に着替えさせられたときに、すでに部下にも犯されているかもしれません。何も出来ない運び屋さんが見ている横で犯されたりもしたかも。
勿論、ジャワ様は、気に入らないからと奴隷のダンサーを怪物に襲わせるような、暴力的で卑劣なマフィアのボスですから、生命の危機、みたいなところでの脅しもしたでしょうし、あのお姫様も生きる事に貪欲でしょうから、死ぬよりはましと、奴隷の身分を受け入れたのかもしれませんけど。
でも、初めて観た当時、その、思春期真っ盛りでしたから、そんな事を想像したら、私、恥ずかしい話なんですけど……濡れて、しまいまして、ね。
映画的にはそんな描写は全く無いんですけど、後でネットのあらすじとか見たら、普通に「ジャワの奴隷とされる」とかって書いてあって*11。
お姫様が、エッチな格好にさせられて、奴隷にされちゃう……。
そんなシチュエーションに、凄く、ドキドキしたんです。
だから、あのエッチな格好をした3人の踊り子たちを『デタリウム・システム』で表現しようとしたときに、真っ先に浮かんだのが、ジャワ様だったんです。
エッチな踊り子たちを侍らせるジャワ様。……とても、良いじゃないですか。
それで、あのジャワ様を作り始めました。
材料ですか?基本はクッションと座布団です。
目とか鼻とかはまた別ですけど。
そんな無機物を、大きさとか向きとかを変えて組み合わせて、出来たのがあのジャワ様なんです。それから、彼が座っている台に、あの3人を配置して。
勿論、あの3人は『デタリウム・システム』で配置した、アンドロイドの様なものなので、動くことはありません。そして、無機物で作り出したジャワ様だって、動くはずないですよね。
とろーんとした表情で、ジャワ様に身を擦りつけてしな垂れかかる3人の踊り子たち。その絵面は、私的には満足のいく出来栄えだったので、保存して。
その時に撮ったのが、先程の写真です。
それから……。
(ここまで話し、香織里は口を噤み、俯いた。それから、手にしたコーヒーを一口含む。その様子を、インタビュアーは黙って見ていたが、部屋の沈黙に耐え切れず、声をかけてしまう)
I:あの、香織里、さん?
K:え……?ああ、ごめんなさい。ちょっと、これから話すことを頭の中で整理しようとして。いえ、整理しても理解が追い付かないんですけれど、ね。
I:なるほど?
K:誤解を恐れずに言うと、私、その後の記憶が、その、無いんです。どうしても、思い出せないんです。『それから』……その後に何があったのか……私の口から、正確に何があったのかを伝える事は出来ません。ただ、推測することは出来ますし、あまりにもあり得ない事なので、もしかしたら自分自身で記憶を封印してしまったのかも。……これを
(そう言いながら、香織里は『デタリウム・システム』の端末を取り出し、その中の画像フォルダを表示させた。そして一枚の画像を選択すると、その画像をインタビュアーに見せた)
I:……!
(画像を見せられ、インタビュアーは絶句した。あり得ない物を見たかのように目を見開くと、端末をスワイプし、次々と画像を切り替えて画像を確認していく。そんなインタビュアーが画像を確認している横で、香織里は再び口を開いた)
K:この画像が、作り物かどうか、開発に関わったなら判別出来ると思います。ジャワ様のデタリウムを作った後、この画像が保存されていた事に気がついたんですが、記録した時間を見て下さい。
(インタビュアーは、黙って画像のタイムスタンプを確認する。そこに記録された時間は、『デタリウム・システム』に作品が記録された時間よりも後の時間だった。香織里はインタビュアーをじっと見つめていた)
K:保存したあと、そこで何があったのか、想像はできるけれどその記憶が無いんです。それに、保存した時間を確認すると、『デタリウム』から退出した時の時間に差異があった気もします。気もします、というのは、この残された画像を見て、思い起こせば、という程度の記憶なので、定かではないのですけど。でも、この画像、どういう事なんですかね?無機物で作った筈のものが、なんでこんな事になってるんですかね?私の記憶、どうなっちゃったんですかね?開発に関わってたなら何か知ってるんじゃないんですか……?
(映像はここで切れていた。最後にチラとインタビュアーの手元にあった端末に表示されていたのは、無機物で作り上げた筈の『ジャワ様』に
映画大好きカオリンのお話しです。
妄想力という点で、対策班の中で多分1位2位を争うと思ってます。
(対抗馬筆頭は、勿論、和果様です)
さて、来週はどんなことになるのやら。
来週土曜日(2/25)の23時に投稿予定です。