「今日はこんなもの、かなぁ」
香織里は、『デタリウム・システム』を使って作った作品が自分の妄想していた情景にまた少し近づいたと、腰に手をあて満足気に頷いた。完成、というにはあとちょっと。
でも、システム上の様々な制限がある中で、手を尽くしたと思う。
そこには、かつて映画で見た、異星人の
未だ作りかけのジャワ様の周りには、『デタリウム・システム』で配置した、踊り子たち。
艶めかしい姿の3人は、ジャワ様にしな垂れかかり、エロティックな雰囲気になっている。
「さ、保存しようっと」
香織里は手元の端末を操作し、
『デタリウム・システム』の端末をラファム支部長から渡されたのは、数日前の事だった。
「たぶん、香織里ちゃんは面白い使い方をしてくれると思うっス。期待してるっスよ~」
そんな風に期待しているなどと言われれば、自己肯定感低めな香織里としては、期待に応えられるよう頑張らなくちゃと思うわけで。
どこかの誰かさんと違って*1、起動する前にマニュアルを読み。
マニュアルを読み進めながらある程度の操作を学び。
手探りで作品を作って『投稿』し。
そう。『デタリウム・システム』で作った作品は、『投稿』出来る。『投稿』した作品は、ペンネーム表示の匿名でテスター達の間で共有できる仕組みになっていた。
他のテスター達が作った作品を観て、気に入った作品にはSNSのように『いいね!』をつけられるようになっている。他の人たちの作品を参考に、香織里もまた幾つかの作品を『投稿』し、『いいね!』を貰っていた。そして『いいね!』を貰えば、また自己肯定感低めな香織里は、その承認欲求が満たされ、また作品を作り。
既に他のテスターが『投稿』していたものを見て、様々な表現の仕方を研究し。
それらの『作品』を模倣しているうちに、新たな表現方法を発見し。
ともすれば、また引きこもりになる寸前まで、『デタリウム・システム』を弄っていた。
好きな映画を観るのも忘れ『デタリウム・システム』を起動させて、色々な『作品』を作った。そしてその度に『いいね!』を貰い、嬉しくなってまた作品を作るという嵌り具合。
『ブルーマリン』のみんな、特に浜村リカ*2に
「最近、香織里ンが遊んでくれない」
と、ぼやかれるくらい、『デタリウム・システム』を弄る事に夢中になっていた。
今まで、大量の映画を観て
そして今回作り始めた作品が、このジャワ様の宮殿、というわけである。
色違いのクッションを重ねて、微妙な混ぜ具合にしてみたり……あのヌメッと感をを出すのは難しかった……座布団の裏表をうまく使って尻尾や唇の表現をしてみたり。
ジャワ様を作るのはなかなか楽しい作業であった。
そしてその横に侍る3人の踊り子たち。
本人たちにはゴメンナサイと心の中で謝りつつ、『デタリウム・システム』で配置した3人にポーズを取らせ、表情も操られてる感満載の『呆然』を使ってみたり、瞳にハートが浮かぶ『一目ぼれ』を使ってみたり。
ジャワ様が完成する前から、3人をエロティックに見せるためにポーズをとらせて試行錯誤する。
香織里の妄想の中で、3人はジャワ様に仕える奴隷……いや、艶めかしく腰を淫らに振る様な踊りを主人に見せ、そしてジャワ様に犯されることを望む性奴隷だった。
「きっと、淫らな踊りをジャワ様の前で踊って、そのまま連れ込まれたベッドの上でも淫らに踊るんですね、わかります」
そんな、エロ親父のような事を口にするくらいには、香織里は拗らせていた。
だから、3人の踊り子たちをジャワ様の前で躍らせたり、エロティックなポーズをとらせたりして、妄想を膨らませて。
そして、まだ完成前のそんな場面を画像に残して、後でそれを見ながら一人で致してしまうくらいには。
「ん、んん……っ」
自室のベッドの上で、香織里は、パンツの上から、指で自らの割れ目に沿って撫であげる。
声が出てしまう。
『デタリウム・システム』で作ったまだ未完成の『作品』の画像を見ながら、妄想を膨らませる。
妄想の中で、3人の踊り子たちが、淫靡に腰を振り、誘うように踊る。
満足そうに目尻を垂れさせ、踊りを見ていたジャワ様は、口元を歪めて、手をに持った3本の鎖の一つを軽く引っ張る。
引っ張られた鎖の先に繋がっているのはミオだった。首輪から伸びた鎖を引っ張られ、ミオがジャワ様の元に引き寄せられる。
ジャワ様はその巨大な口を開き、長い舌を伸ばして胸元から顎の下までれろぉ、と舐めあげる。ミオはうっとりとその舌の感触に喘ぐ。
「ジャワ様……」
ミオに言わせたい台詞を自分で呟きながら、パンツの上から割れ目にあてた指で円を描くように動かす。割れ目を開くように。くちゅ、と音がする。妄想するだけで、すでに愛液は溢れ、円を描く指がパンツを愛液で濡らしていく。
長い舌でミオの首筋や耳元を舐めながら、ジャワ様の醜く弛んだ腹にしな垂れかかるミオの胸元を、ジャワ様の短く太い指が這う。
「あ、ん……っ」
想像の中で、ミオが胸元を触られているのと同じように、香織里はブラの上から胸元を触る。また声が出る。その声を、ミオの声に変換して、香織里はミオと同じように喘ぐ。
乳輪を撫でるように。だが、まだ中心には至らない。ゆっくり、円を描く。
「あぁ……ジャワ様……」
性奴隷が、自分から求めてはいけない。
物欲しそうな表情で、ミオはジャワ様を見つめる。
口元を歪め、下卑た表情で、ジャワ様は焦らす様に乳房を撫でる。一番感じるところを避けて、執拗に、乳房を撫でまわす。乳首に近づくと思えば、遠ざかり、胸を揉みしだくと思えばまた乳首の周りだけを撫でまわす。
イヤイヤと、ミオは頭を振る。焦らされる胸の刺激に、もっと快感が欲しくて、腰を震わせる。
きゅっと。
びくんと、身体が跳ねる。
摘まんだ乳首をすりつぶす様に、指で弄る。
乳首を弄りつつも、ジャワ様の長い舌がミオの身体を唾液で汚しながら、下へと伸びていく。臍を舐め、足の付け根を舐り、そして左右色違いのタイツの上からミオの秘部を舐めあげる。
超ローライズな……と言うよりもほとんど性器をギリギリ隠すくらいにしか覆っていない際どいタイツをずり下げるようにして、臍の下から器用に入り込んだ舌は、割れ目から溢れる愛液を掬う。
香織里の指も、臍の下からパンツの中に手を入れ、同じように秘部を直接触り始めていた。
すでに愛液の溢れた大陰唇を割り、内側の襞をなぞる。ちゅぷちゅぷと音をたてて愛液を指に絡め、中指で膣の入り口を撫でるように指を動かす。
「あぁ……んんぅ……っ」
親指でクリトリスに触れれば、また背筋が反る。親指の腹でクリトリスを撫でるたび、ゾクゾクした快感が香織里を襲い、愛液がまた溢れ出す。
膣の入り口を撫で、愛液が糸を引くころ、ゆっくりと香織里は中指を膣に沈めていく。にゅるりと、指は中へと入っていく。少し入って、内側を探る様に撫でていく。
「あふ、ん……んっ」
段々と、指の動きが速くなっていく。香織里の妄想の中で、ミオは身体中を唾液でべとべとにされて、よがっていた。膣を舐められ、舌を挿入され、ジャワ様の唾液とミオの愛液が混ざりあって、音を立てる。それは香織里のあそこから聞こえる水音だった。
「あ、あ、だめ、そこ……っ。ジャワ様、ジャワさまぁ……っ」
性奴隷としてのミオが、香織里の声で喘ぎ声をあげる。
妄想の中のミオは、ジャワ様の舌を挿入され、腰を震わせて喘いでいた。
指を二本に増やす。じゅぶじゅぶと音を立て、香織里の指がお腹の裏側、ザラリとしたGスポットを撫でつつ出し入れされる。
「あ、ん、んんんっ!らめ、そこ、感じすぎ……てっ」
香織里はベッドの上で横になり、寝返りをうつように身体を捩る。
乳首を弄る指も、じゅぽじゅぽと音をたてて出し入れする指も止まらない。
妄想の中のミオが絶頂に達しようとしている。香織里自身も、絶頂が近い。
「あ、あ、ん、いく、いく、いっちゃうっ……い、くぅぅぅぅっっ!」
びくん、びくんと身体が痙攣し、ピンっと、身体が反りあがった。
快感に頭の中は真っ白になり……そして、香織里は脱力する。
はぁ、はぁ……と、息をつき、愛液まみれの指をあそこから引き抜いていく。
(また、しちゃった……)
ジャワ様の完成が近づく度、妄想は膨らみ、何度自分で慰めたか。
今の完成度でも充分ではないか、とも思うが、やはり最後まで完成させたい。
気だるい微睡みの中で、香織里はそのまま、夢に落ちていった。
数日後。
最後にジャワ様の目を作って……画竜点睛に倣い、やはり目は最後に入れないとというこだわりがあるらしい*3……香織里は、これで完成、とした。
もっと手を入れた方がいいかもしれない。
もしくは、要らない部分を削って別の表現方法を考えた方がいいかもしれない。
そんな思いも浮かぶが、創作活動は妥協と納得の産物なのだ。
特にこの『デタリウム・システム』は、表現方法としては自由度が少ない為、妥協と工夫の繰り返しである。
言い始めれば切りが無い、詮無き事である。
それよりも出来ることを一つ一つ試しながら、自分の思い描いたものに限りなく近づける事を試行錯誤して行く方が楽しい。
だからこそ。
「これで、完成……です」
と、自分を納得させるために、香織里は声に出していた。
そして、端末を操作し、『保存』。そして、『投稿』した。
投稿したことを確認し、
立体だからこそ、近づいたり、離れてみたり。様々な角度から。
動かない3人の踊り子たちにも近づき、顔を覗き込む。
ポーズを決め、表情を決めた彼女たちは、見つめる香織里に視線を向ける事はない。
『デタリウム・システム』で配置された彼女たちは、決められたポーズや表情を崩すことはない、まるで蝋人形のようにも見えた。
「こんなに質感はあるのに……」
香織里は、ぷにぷにと『サイザフォーン』を身に纏った凛花の頬をつつく。
いつもはとても明るく、向日葵のような笑顔の彼女が、ここでは淫らな踊り子として、淫蕩な表情でジャワ様の前に横たわっていた。
『デタリウム・システム』で配置された凛花は、触ってみれば蝋人形などとは全く違う、本物とまるで変わらない張りのある肌をしており、頬をつつく指に皮膚の弾力を感じさせる。
「通り抜けると思って触ると、通り抜けるの、ホント不思議です……」
そう言いながら頬をつつくと、その指は皮膚の質感を感じさせずに通り抜ける。
そうして3人の事を触っているうちに、3人の淫猥な表情にあてられたのか、香織里はまた妄想し始めていた。
これからこの3人は、ジャワ様に淫らに踊らされちゃうのね……。
ちょっと下がって、全体が見える位置に来ると、香織里は、ぺたんと地面に座った。
見上げるほどの大きさのジャワ様と、その足元で媚びた表情を浮かべジャワ様の醜い身体に纏わりつく踊り子たち。
ジャワ様に可愛がられるのを期待して待っている、雌奴隷。
そんな事を考えていれば、自然と、手が自らの内腿を擦っていた。
『デタリウム・フィールド』の中で、こんな淫らな妄想をして、自らの身体に触れているのは実は初めての経験だった。
『デタリウム・システム』を終了させた後、端末に保存した画像を見ながらベッドで致すのが香織里のいつものパターンだった。
しかし今はこの完成とした作品を目の前にして、妄想が膨らみ、システムを終了させる事などもどかしく、ただただこの自分の作品を見ながら、したい、と感じていた。
妄想の中で。
3人はその豊満な胸を、ジャワ様の身体に擦りつけるようにして媚びていた。
ジャワ様はその3人の頬を、短い手で撫でまわし、ご満悦な表情をしている。
そんな想像をしながら、香織里の手は自らの内腿をフェザータッチで焦らす様に触り始める。左手はそのまま部屋着から伸びた太腿を擦り、右手は部屋着の上から徐々に胸へと伸びていく。右の胸を撫でる。ん……と声が出る。身長に対して大きめな自分の胸の形を確かめるように撫でていく。てのひらが感じる部分の上を通るたび、小さく声をあげる。
3人の踊り子たちに、自分の姿を投影しながら、香織里は右手を動かし、頬をさすり、また反対側の胸も撫でる。焦らす様に触るのは、3人の踊り子たちがまだまだ感じさせられていないから。そして、これから想像の中で行われる痴態を期待しているから。
だから。
何度も妄想したように、座布団で作ったはずの口が開き、唾液の滴る長い舌が伸びて、3人の身体を舐めまわし始めても、それが妄想の中の事だと錯覚していたのだ。
そう。香織里が夜な夜な、何度も何度も妄想して作りあげた
まさに画竜点睛。最後に目を入れたジャワ様は、その醜い身体を動かし、踊り子たちを舐めまわし、そしてそのジャワ様にしな垂れかかる3人の踊り子たちも、その舌の動き、手の動きに快感を露わにしていた。
フィールド内では想像力があれば神様みたいな事も出来る。イヴは班長にそう表現した*9が、まさに今、『デタリウム・フィールド』内で、香織里は
ジャワ様がそのクッションと座布団を組み合わせて作った筈の尻尾をずるりと動かした。
ヘビの様なその尻尾の先が、踊り子の一人、怜里の身体に絡みつく。
尻尾は怜里の腰をまわり、豊満な二つの胸の谷間を通って怜里の首に巻き付いた。その尻尾の先で、チョン、チョンと怜里の唇を突く。怜里は躊躇わずに舌を伸ばし、ジャワ様の尻尾の先を舐め始めた。尻尾の先は、その舌に導かれるように、怜里の口の中に入り込み、その口腔内を蹂躙し始めた。尻尾の先が、歯の裏側をなぞる。頬の裏側を擦る。やがて怜里は、じゅぽじゅぽと音をたてて、まるでフェラチオをするように尻尾を咥えていき、胸の間にある尻尾を、両手を自らの胸に添え、その豊かな乳房で挟み込むように
ジャワ様の短く太い手は、ミオの胸を撫でまわしていた。
それは、香織里が数日前に想像していた通りに、ミオの乳輪を焦らす様に撫でまわし、ミオを身悶えさせていく。
そしてジャワ様の長い舌は、凛花の頬を舐め、舌先で凛花の唇を割り、口の中を舐めまわす。凛花もまた、ジャワ様の舌に自らの舌を絡めていく。
じゅぶじゅぶと音をたてて、ジャワ様の舌を舐める凛花の口端からは、ジャワ様の唾液と凛花のそれが混ざり合った液体が顎を伝って胸元に糸をひいて落ちていく。凛花が快感に身悶えるたびに、サイザフォーンの金属の飾りが、シャラリシャラリと綺麗な音を鳴らす。
「うそ……」
香織里が、そう呟いたのも無理はない。
座布団やクッション等、デタリウムで配置したもので組み合わせただけのオブジェが動き出し、モーションで設定したポーズ以外の動きなど出来ないはずの、蝋人形のような3人の踊り子たちが、喘ぎ、舌を伸ばし、ジャワ様に奉仕しているという事実は、香織里の想像の域を超える異常事態に間違いないのだから。
同日、特別防衛局情報統括班。
情報統括班は、急な上意下達に天手古舞であった。
それと言うのも、GALと共同開発した『デタリウム・システム』のテストが軌道に乗ってきた矢先に、テストの一時中断の指令が飛んできたからだ。
「はぁ?中断ってどういう事ですか?……いやいやいや、これからが面白……じゃなかったテストの本番だって言うのに」
内線電話のコードをグリグリと弄りながら、『デタリウム・システム』開発責任者が電話に向かって喚く。
「え?……え?いえ、それはその、確かに転生コスに対する不具合はありましたけどぉ……え?イヴさんたちに端末を渡した?……不味いですよそれー。もともとイヴさんから接収したユビキタスの技術も使ってたんですからぁ……あ、それは回収したんですね?で、班長さんが殴りこんできたって?知りませんよ、そんなの……それで一時中断?もぉ、無茶言わないでくださいよぅ。大体、班長さんが一人でテスターになるとか使い物に……あぁもぅ、わかった、わかりました!一時中断なんですね?じゃあ、一時中断の作業に入ります!え?いつ終わるかって?それは、これから段取り踏んで、お知らせとかして……え?もっと早くしろ*10?分かりました!可能な限り早く終わらせます!もーどうなっても知りませんよ?詫び石*11とか。……え?詫び石ってなんだって?知りませんよ、なんかそう言えって後ろから先輩が。でもまぁ、テスターさん達には何かお詫びしないとダメだと思いますよー。無理言って頼んだ人もいるんですし……。え?それはそっちで考えろ?無茶苦茶ですよぉ。せめてお詫びの件だけでもそっちでなんとかしてください!」
叩きつけるように電話を切り、開発責任者はガックリと肩を落とした。テスター達が色々使ってくれて、『デタリウム・システム』の投稿が盛り上がってきてるところなのに。
心配そうに見つめる同僚たちを八つ当たり的に睨みつけると、責任者の彼女は、投げやりに部下に指示を出した。
「
とは言え、こりゃあ簡単にはいかないなぁ……と。
彼女はグッタリと机に突っ伏すのだった。
長くなったので、続きは次週3/4(土)23時に。
またよろしくお願いいたします。