時は数刻、打ち上げが終了するちょっと前までさかのぼる。
幸運的体位接触症候群(Lucky Pervert Syndrome)*1……俗に『To Loveる』体質と言われる班長の事、異能生命体の特権ともいうべきその性質は、今回も遺憾なく発揮されていた。具体的に言うと……
「はんちょぉー。ふふふ、今日はライブでお疲れ様だったので、いっぱい飲んじゃいましたー」
美月に、絡まれていた。
打ち上げが終わるころ、イベントの統括である班長は、今回の打ち上げの幹事と撤収準備をしていたのだが。酔っぱらってトイレへ向かおうとする美月をみかけたのだ。第一種防衛装備を着たまま、フラフラと足元がおぼつかない美月を放ってもおけないため、クッキーマシュマロのみんなには先に戻ってもらうように、近くにいた幹事に伝言をお願いし。班長は美月をトイレまでエスコートしていた。
何故、美月を放っておけないのか。白咲美月は、酔うと脱ぐ。それはもう、次の日に美月自身が自己嫌悪に陥るくらいには、思い切りよく脱ぐのだ。今日は特別防衛局の対策班本部で飲んでいるわけではない。こんなところで美月を脱がさせるわけにはいかないが、緊張していたライブが終わった解放感でいつもよりもペースが速かった美月は、一触即発、まさに爆弾だった。
「美月、大丈夫か?」
「だーいじょうぶですー。今日は脱ぎましぇーん。脱いでもデタリングですぐ着ちゃいますもーん」
「いや、そういう問題ではないのだが……」
大分おかしなテンションであることは間違いなかった。
心配感が増しながらも、班長は足元がおぼつかない美月を倒れないように肩を貸し、腰を抱いて宴会場に一番近いトイレへ向かう。しかしトイレにつくと、女子トイレは埋まっていた。仕方がないと美月を連れて、班長が向かったのは、宴会場からちょっと離れた多目的トイレだった。
「……ちゃーんす」
美月が何か呟いた気がしたが、班長にはよく聞き取れなかった。着いたぞ、と、トイレのドアを開け、美月を中へ誘導しようとした瞬間。美月は班長の手を掴み、中へ引きいれた。
カギを閉め、いきなりの事にびっくりしている班長にしなだれかかり、美月は上目遣いで班長を見る。
「班長……。私、身体が、疼いてしまって……」
「み、美月……。い、いや、だからってトイレでなんて」
「だって、部屋に戻ったらみんなにバレちゃいますから……。ね、班長……しましょ?」
言いながら、班長を逃がさないように、美月は多目的トイレの奥へと班長を引っ張っていき、壁へと押し付ける。そして美月は班長にキスをした。美月の柔らかい唇が班長の唇に重なる。唇を開けば、美月の舌が、班長の口の中へと侵入し、舌を絡め始める。
ねっとりと絡まる舌に、班長も舌を絡めていく。
んちゅ……ちゅぅ……。
舌と舌の絡まる甘美な快感に我を忘れそうになるが、班長は美月の肩に手を置き、キスを振りほどいた。
「だ、ダメだ美月。こんなところで」
「そんなことを言っても……」
そう言いつつ、美月はその細い指で、ズボンの上から班長のものに触れた。
「班長だって、こんなに……固くなってるじゃないですか……」
固くなった肉棒の裏側を、美月の指が上下になぞる。ズボンの上からのもどかしい刺激が、班長の肉棒をさらに固くしていく。
「う、ああ……っ」
美月はしゃがみ込むと、班長のズボンのベルトを外し、肉棒を露わにしていく。
「ふふふ。班長のここは、ダメって言ってないです、よ」
そう言いながら、美月は舌を伸ばし、班長の肉棒の先をチロチロと舐めていく。鈴口から溢れる我慢汁を舌先で掬いとり、唾液と混ぜ合わせて、亀頭に塗していく。
れろーり、れろーり。
班長の腰が、快感に震える。美月の舌の動きは、班長が快感を得るであろう場所を的確に舐めあげる。下唇を噛み、快感を我慢しようとするが、美月の口がぬめりと開き、亀頭を口に含めば、また班長は喘いでしまう。
「お、おぉぅ……っ」
「ほら、班長、気持ちいいでしょう?班長が気持ちよくなるところ、ちゃーんと調べたんですから」
レロレロと口の中で肉棒を舐められ、頬の裏側で亀頭を刺激する。流石は情報統括班*2。班長の性感帯のデータ集めも完璧だった。
このままでは……っ。我慢できずになし崩しで美月を抱いてしまう……。
そういえば、美月との情事は水場ですることが多かった*3。プールやお風呂、ビーチ、それにキッチン……。
だが、こんなホテルの多目的トイレで誰かに見つかったら、そしてそれが週刊誌辺りに情報が流れたとしたら。班長の頭に、以前、同じように多目的トイレでエッチしていたのを報道された芸能人*4の事がよぎった。そんな事になっては、せっかく成功させたイベントが全部無駄になってしまう。
班長は、なけなしの理性を総動員させて、美月の頭を掴むと、肉棒を逆にぎゅっと捻じ込んだ。
「んん---っ」
突然のことに涙目になる美月。ジュボジュボと音をさせて、肉棒を喉まで突っ込み、出し入れをする。突然のイラマチオに呼吸ができない。美月が苦しそうな顔をしたところで、班長は肉棒を抜いた。
ゴホ、ゴホッと噎せこむ美月に、
「す、すまん!」
そう言いながら、降ろされたズボンを上げ、美月の唾液に濡れた肉棒を仕舞うと、班長はくるりと背を向け、出口へと向かおうとした。完全にヘタレの行動である。しかし。
「ふふ、班長、そうはいきません。……スティギオ*5!」
背を向けて逃亡を図るヘタレ班長の行動は、美月の予想通り。不敵に微笑んだ美月は、班長を逃がすまいと、ジャマーを召喚する。そして、素早くポケットからカード状の小さな端末を取り出し何かを操作し始めた。
「や、やめろ美月!こんなところでそんな大型ジャマーを召喚したら!」
そう、『未確認水母スティギオ』は、大型ジャマーに分類される。普通のトイレに比べて広いとはいえ、多目的トイレで召喚したら、部屋がスティギオの身体でいっぱいになり身動きが取れなくなってしまうだろう。
だが、召喚されたスティギオは、一瞬のうちにとても小さく、可愛らしい姿になり、班長の逃亡を阻止するように扉の前でフワフワと宙に浮いていた。
「なん……だと……」
驚く班長に、美月は手にした端末を自慢げに見せながら口を開く。
「ふふふ。説明しましょう。これこそ、ガル*6と防衛局情報統括班が共同開発した新装置『デタリウム・システム』なのです!この装置を使えば、ジャマーの大きさを変えることも思いのまま!さぁ、スティギオ!班長を捕らえなさい!デタスティーック!」
「馬鹿な!いきなりジャマースキル*7を!」
小さいながらも、スティギオのジャマースキル『エレクトリック・ショッカー*8』は確実に班長の身体をとらえた。
「ぐぁあああああっっっ!」
スティギオの電撃を喰らった班長の身体は、痺れて動けなくなっていた。ガクッと膝を折り、地面へと倒れ込む班長。その様子を見て微笑みながら、美月は手にした『デタリウム・システム』を操作し、召喚したスティギオを消去する。そしてゆっくりと、倒れた班長に歩み寄ってきた。
「ふふ……。班長、何故私が第一種防衛装備を着ていると思っているんですか?こんなこともあろうかと『ルナティック・モンスター*9』をさっき使っておいたんです。私がいつでもジャマースキルを発動できることをお忘れですか?そしてこの『クッキークラック・ムーン*10』は光属性の為、スティギオとの相性は抜群。属性一致ですから、確実に班長を痺れさせることが出来る*11のです」
倒れた班長の頬を優しく撫で、美月は班長にまたキスをした。舌を差し入れ、班長の舌を絡め、吸う。
「今日はライブの途中、みんなで日焼け水着に早着替えしたくらいから、ずっと……。班長とこうしたくって……。」
美月の手が、再び班長の肉棒へ向かう。再び露わになった肉棒を掴み、美月は肉棒に沿って上下に擦り始めた。美月の柔らかく華奢な手が、班長の肉棒に快感を与える。
「う、うぅ……」
呻く班長。それは麻痺しているからか、肉棒からの快感のせいか。
「ほら、しーこ、しーこ。班長、どんどん先っぽから汁が溢れてますよ……」
手コキをしながら、美月は班長の耳元で囁く。班長の肉棒から溢れるヌルヌルとした先走りで、美月の手は汚れていた。それを潤滑油に美月の手は班長の肉棒を手コキしていく。あまりの快感に、班長はまたうめき声をあげた。
「うっく……。わかった、美月。だが、ここは公共の場、しかもトイレでそんな事をしては……」
せめて場所を変えようと提案する。班長の頭の中には、某芸能人の名前の部分が自分の名前にさし変わっている週刊誌の記事が鮮明に浮かんでいるのだ。そんな事になったら、終わる。色んな意味で終わる。異形生物対策班も、自分の人生も、仲良く終了のお知らせである。
「あぁ、班長。場所が問題なんですね?では、これでどうでしょう?」
美月はまた、ポケットから取り出した『デタリウム・システム』を操作する。するとどうだろう。周りの風景が、あっという間に変わるではないか。ここは……学校の、教室?
「ふふふ。班長、これで如何ですか?学校の教室で、とか、班長お好きですよね?まぁ、そういう風に見えているだけで、実際に場所が転移してるとかではないのですけれど」
それは……全然意味がない。トイレを占拠している事実に変わりがないではないか。と、突っ込む隙を与えず、美月はブツブツ文句を言い始めた。
「でも、私、教室に合うようなコ・ス・プレ持ってない*12んですよねぇ。班長、陽菜さんにはセーラー服やブレザーと学生服がいっぱいあるのに、なんで私には無いんでしょうね?それって私には似合わないって事ですか?私が学生服を着ると、コスプレ感が半端ないって事ですか?コ・ス・プレだけに」
段々目が座ってくる美月に、いや、そんなことはない、たまたまだろうと言い訳をする。なんで自分がそんなことを言い訳してるのかよくわからない。だが、美月は止まらなかった。
「風香さんやアイさん*13や希さん*14たちなんかはいいですよ。学生服着たって全然似合いますもん。でも、七海さんや小夜さん*15、カエデさん*16だって学生服を貰ってますし!大体、クッキーマシュマロで学生服を持ってないの私だけだって知ってますか?そういえばスク水*17だって私には回ってきませんでしたよね?美蘭さん*18や果歩さん*19なんてギャルっぽいコ・ス・プレを貰ってたし。エレナさんなんてSSRで2着も貰ってますし*20!みなさん、似合ってましたけど。似合ってましたけど!」
珍しくまくしたてる美月に、班長は気圧される。
い、いや、美月だって着れば似合うと思うぞ。あ、教室に似合うと言えばあれだ、「アーミーブレインズ」なんかいいんじゃないか?ともすれば学校の先生っぽいし。
と、震え声で言い訳がましく言ってみる班長。
学校の教室で、み、美月の、「アーミーブレインズ」、見たいなぁ……と。
「そ、そうですか?先生っぽいですか?似合いますかね?」
似合うと言われ、ちょっと顔を赤らめながら、美月はコ・ス・プレを「アーミーブレインズ」へと変える。
チョロい。
体のラインが強調される深い緑の軍服。タイトスカートから伸びるヨガで引き締まった細い足。大人の女性を感じさせる。
学校の教室に「アーミーブレインズ」。アリかナシかで言えばアリだ。いや、誰が何と言おうとアリだ。そう決めた。そう言って班長は強引に美月を納得させると、誤魔化す様に美月を押し倒した。