多目的トイレの扉をあけ、周りを見渡す。
よし。誰もいない。
班長は、美月を抱き上げた。勿論、例の端末も回収するのを忘れてはいない。
班長はそっとトイレのドアを開けると、コソコソとその場を後にした。
ホテルの医務室で診てもらったところ、どうやら先ほどの電撃は、スティギオが小さかったからかそれほどのダメージを美月には与えておらず……言われてみれば、確かに自分がエレクトリック・ショッカーをくらった時も、スタンはしたがダメージ自体はほぼ無かった。しかも美月のデタスティックを確認したところ、耐性のデタリキがしっかりとはまっていた。流石、情報統括班は抜かりが無かった……、ただ、班長を守ることができたという安心感と、今日のライブから打ち上げまでの疲れ、そして多量のお酒のせいで気が抜けて、眠ってしまったらしい。
「ありがとうございました。では、部屋へ戻ります」
そう言いながら、班長は美月の部屋のカギを持っていないことに気が付いた。ベッドに寝かされた美月の身体を弄り、カギを探す。
いやいや。別に変なところを触ろうとしているわけではない。わざとじゃないんだ。わざとじゃ。
医務室の女医に白い目で見られながら……多分、直前に二人の間で情事があったことも分かっているのだろう……カギを探し当てた班長は、どーもどーもと頭を下げて、美月を抱き上げ、医務室を出る。
お姫様抱っこで美月を彼女の部屋へと運び、ベッドへ寝かせた班長は、ほとほと疲れ切っていた。
そんな状況でも、スヤスヤと穏やかに寝ている美月の寝顔を見て、ヤレヤレと班長はため息をついた。幸せそうな寝顔だ。どんな夢を見ているやら。班長は、自分を守ってくれた美月に、かばってくれてありがとう、と言って頬にキスをする。
……全く起きる気配はない。
班長は、備え付けのソファにボフッと座ると、先ほど回収した『デタリウム・システム』の端末を手に取った。
タップしても電源ボタンの様なものを押しても、端末はブラックアウトしたまま、動かない。もしかしたら、本当に壊れてしまったのかもしれなかった。
原因は、班長が踏みつけたことなのか、スティギオの「エレクトリック・ショッカー」なのかはわからないけれど。
ふぅ、と、ため息を一つ。この試作品であろう端末をどうするべきか。寝ている美月の部屋に置いておけばいいだろうか。いや、大切なものだろう、放置しておくのも気にかかる。班長は、端末を自分のポケットにしまい立ち上がった。
このままここに居るのは問題だろう。色々な意味で。いや、『色々』問題なのは前からなのだが。
端末を預かってることをメモに残し、電気を消して部屋を出る。パタン、と静かに扉を閉めた班長は、美月の部屋を出た直後に、自分の上着の裾を摘ままれ軽く引っ張られたことに気が付いた。
「……!?」
振り向くとそこには、風香がいた。
身長の差があるため、自然と眼鏡越しに上目遣いに班長を見つめる風香。お酒を飲んだ後だからか、その瞳は潤み、班長をじっと見つめていた。
「……どうした、風香?」
「……班長。ご褒美が、欲しい……。」
言葉よりも、眼鏡の奥の瞳に訴えられ、
「お……おぅ……」
と、班長は応えることしかできなかった。
酔っぱらった風香は、本音が駄々洩れる事があるが、そのまま寝てしまう事も多い。
しかし今日の風香は一味違った。
班長の手を取り、そのまま自分の部屋に引っ張っていく。素早く部屋に入り、ドアから外を覗いて、だれも見ていないことを確認すると、パタン、と扉を閉め。
風香は班長に抱き着いていた。
「ふ、風香?どうした……?」
いつもとは違う積極的な風香に戸惑う。それはいつぞや、ジャマーによって大人な姿になった時のようで。
あの経験は、確かに風香に新たな一面を風香自身に自覚させたのだろう。
だが、この積極性は……。
「ふ、ふ……。班長、驚いてる……?」
「ああ、いつもより、積極的……んんっ」
班長に最後まで言わさず、風香は班長のネクタイを掴み引っ張ると、近づいた唇をキスで塞ぐ。
「ん……ちゅ……んちゅぅ……」
唇と唇が触れ合う。風香は班長の唇を貪るように味わうと、舌でその唇をこじ開け、中へと侵入する。
いきなりのキスに驚きながらも、班長はその舌に自らの舌を絡ませていき、その腕で風香の小さな体を支えた。二人の舌は絡まり、お互いの唾液を交換する。酒が入っているせいか、二人は夢中になってお互いの舌を絡め、吸う。
やがて唇が離れると、二人の唇の間に唾液の糸が橋をつくり、ゆっくりと落ちていった。
「……班長。今日、私は班長の為だけにドラムを叩いた。……キスだけじゃなくて、もっと、ご褒美が、欲しい……」
「い、いや、風香、今日はやめておこう。」
何故か嫌な予感しかしない班長は、風香のお願いを心を鬼にして断ろうとする。
決して、さっき美月とトイレでハッスル*1したばかりだからではない。なんならもう2戦でも3戦でも……と言いたいところだが、ライブが始まってからこっち、裏方の仕事に駆けずり回り、打ち上げはお偉いさんの接待をし、付き合いで酒も飲まされている中で、正直休みたいと言うのが本音だった。
決して、美月とハッスルしたばかりだから、ではない!ハッスルしたばかりだから、ではないのだ!
「……何故……?」
「いや、風香も疲れただろう?今日はゆっくり身体を休めておいてくれ。その代わり、ご褒美は今度ゆっくり……」
「……なら、美月ちゃんの部屋から、疲れた顔をして出てきたことを、陽菜ちゃんと七海に伝える。尾鰭をつけて」
「な……っ!」
言葉に詰まるが、コホンと咳ばらいをして平静を装い、あれは美月が寝てしまったから送り届けていただけだ、と説明しようとする班長をさえぎって、風香は続けた。
「……なんなら、トイレでハッスルしてたことも」
「わーーーっ!わーーーーーっ!わーーーーーーーーっ!」
思わず耳を塞ぎ、声をあげて風香の声をかき消そうとする。班長の頭の中には、また自分の名前が載っている週刊誌の記事がよぎっていた。
「な、何故それを!」
「……ここ数日、更新のたびに読んでいた。毎日更新、偉い……」
なんだかメタなことを言われ*2、意味の分からない班長は、風香に得体のしれない何かを感じ、後退っていた。
「……ふふ。班長、焦ってる。大丈夫。私は誰にも言わない。信用してほしい。……だから、今晩は、班長に一緒に、居てほしい……」
そう言って再びぎゅっと抱き着く風香。班長には、頷く以外の選択肢はなかった。
せめて、シャワーを浴びさせてほしいとお願いし、班長は部屋に備え付けのバスルームに居た。
……風香と共に。
「……班長、前にも一緒に温泉に入ったこともあるのに。……何故一緒に入るのかっていう顔をしている……」
それはそうだ。
「……大丈夫。班長の身体を洗ってあげたい。それに」
そう言いながら、風香はシャワーからお湯を出し、二人の身体にお湯をかけていく。
「……美月ちゃんとは3人でしたことがあるようなもの。問題ない」
美月と3人で?何のことだ?身に覚えのない事を言われ、班長は動揺していた。ふぅ、と風香はため息一つ。
「……何でもない。
何のことだかわからないが、大体、今は恥ずかしく無いのか。以前温泉に一緒に行った時には、お風呂に一緒に入るのが恥ずかしいからって水着を着たこともあったではないか。
「……そんな事もあった。でも今は……」
ボディーソープを手に取ると、風香は班長の身体に手で塗していく。そして自分の身体もボディソープを泡立てた手で撫でていくと、ぴと、と風香は班長の背中に抱き着いた。微かながらも膨らんだ胸が、班長の背中に押し付けられる。ボディーソープのぬるぬるとした感触と共に、風香は班長の背中に身体を擦りつけていく。
「……班長のが欲しくて、恥ずかしいは通り越してる……」
風香は手を前に回して、班長の胸をまさぐる。柔らかく小さな手が、ボディーソープを潤滑油にして滑るように班長の胸を撫で、微かな二つの膨らみが、班長の背中に擦りつけられる。風香の手が班長の乳首の上を通る度、背中に風香の固くなった乳首が滑る度、班長は微かな快感に声が出そうになる。
「……我慢してるの……?班長、可愛い……」
風香の左手が、班長の乳首を人差し指で転がす様に触れる。そして右手はだんだん下がっていき……班長の肉棒に触れた。
「……班長……固く、なってる……」
風香はそのまま、班長の肉棒をやわやわと擦り始めた。小さな手の親指と人差し指で作った輪っかが、ぬるりとしたボディーソープの感触と共にカリの縁を擦り上げるたび、快感が湧き出る。乳首への刺激も、もどかしく班長を昂らせていく。
「ううっ……風香……。」
つい先ほど、美月とハッスルしたばかりなのに。班長の肉棒はまた、硬さを増し、反り返っていく。
風香の手は班長の乳首を弄り、肉棒を擦る。その絶妙な刺激は、しかし、班長には物足りなさを感じさせた。班長は、肉棒をつかんだ手を握ると、肉棒から手を離させた。
「……班長……?」
シャワーで二人の身体についた泡を流していくと、自分はバスタブの縁に座り、風香をその前に膝立ちにさせる。風香の前には、固くなった肉棒がそそり立っていた。
「風香、口で、してくれないか?」
「……ん、わかった……」
風香は素直にそう言うと、再び、硬くなった班長の肉棒を掴む。そして、その裏側に舌を伸ばし、
れろぉ……っ
と、根元から亀頭の先まで舐めあげていった。すでに刺激されていた肉棒の先には、我慢汁が溢れている。風香はそれをチロチロと舌で舐め、また、根元から舐めあげる。
ちょっとずつ、舐める場所を変えて、何度も肉棒の裏を舌が舐めあげていく。
数度肉棒を舐めあげると、こんどは肉棒の根元、陰嚢を舐め始めた。袋の中の玉を舌で転がす様に。
そしてまた肉棒を舐めあげた風香は、肉棒の先に、ちゅ、とキスをした。そして舌先で亀頭の縁を一周する。
「…っく」
ねっとりと、焦らすような風香の舌の動きにまた、班長は呻く。風香は口元に笑みを浮かべると、舌全体を使って亀頭をぺろりと舐め、そしてまた亀頭の縁をなぞるように舐めていく。そして、また肉棒の先にキスをすると、唇を少しずつ開いて、亀頭を唇で刺激しながら、肉棒を口の中へと入れていった。
風香のその小さな口の中に、班長の逞しい肉棒が飲み込まれていく。少しずつ。少しずつ、亀頭の先が口の中へと入っていく。ちょっと入って、また出されていく。唇は亀頭を刺激しながら、亀頭の先だけが唇の門を往復させられていく。だんだんと口の中に入っている部分が増えていき、そして遂に亀頭部分が全て風香の口の中に収まると……カリの縁に唇を引っ掛けるようにして、また出していく。
「ふ、風香……っ」
敏感な亀頭だけを刺激され、班長は下唇を噛んだ。快感に声が出そうだった。しかし風香の唇の動きは止まらない。だんだんと亀頭全体を何度も唇で撫であげると、今度はもう少し奥まで肉棒を口の中へと入れていく。肉棒に添えられた右手が、竿を擦り始める。亀頭を頬の裏にあてて刺激したり、舌で肉棒の裏を舐めていく風香。そして風香の左手は、竿の根元、陰嚢に伸びていた。先ほど舐められた陰嚢をてのひらで優しく触れていく。中の玉をこりこりと刺激して、その指は蟻の門渡りを撫で。そしてまた、陰嚢を弄る。
「風香……っ。ああ、気持ち、いい……ぞっ」
ちゅぱっと音をたてて肉棒から口を離す風香。眼鏡越しに、上目づかいで班長を見る。
「水着でドラムを叩いていた時から……、身体が、疼いていた……班長に、抱かれ、たくて」
肉棒を扱く手を休むことなく、しかしゆっくりと動かしながら、風香は言った。
肉棒のへ甘い刺激に蕩けた頭の片隅で、しかし班長はその言葉に引っかかっていた。
先程、美月も同じような事を言っていた。水着を着てから、身体が疼く、と。
まさか、転生させた「ビーチ・エレガンス」と「バケーションズ・ピュア」が暴走し、不具合を起こしたと言う事か?いや、既存のコスを転生させたところで不具合を起こした事例は無かったはずだが……。
快感に溺れた頭でそこまで考えたが、風香がまた亀頭を舐め始めたことで、快楽の声を上げてしまう。
ちゅぷ、ちゅぷ、ちゅぷ。
亀頭を唇でむさぼられ、肉棒を擦られ、袋の中の玉をこりこりと刺激されて。焦らされるような刺激に、班長の理性はもう限界を迎えようとしていた。
「あぁ、いきそうだ……っ」
班長が、いきそうになった瞬間。風香の動きが止まった。精子を出せないように根元でキュッと肉棒を掴んで、風香はニコリと班長に微笑みを浮かべる。
唐突に、爆発寸前の肉棒への刺激がなくなり、班長は情けなく腰を捩る。しかし、根元を締め付けられた肉棒からは精液を放つことはできなかった。あとちょっと、あとちょっとで思い切り放つことができるのに。
「ふ、風香……?」
風香の名を呼ぶ、その情けない班長の表情を見て、風香は冷たい視線で班長にこういった。
「……『さん』をつけろよ、デコ助
「……!」
普段は絶対に言わないような、どこかで聞いたような科白。その物言いに、班長の目が驚きに見開く。そんな表情を見て、風香は少し満足げに微笑んだ。
「……嘘。ちょっと言ってみたかった。でも」
肉棒を掴んで擦る手はまたゆっくりと動き始め。班長を上目遣いする風香は、ちゅ、ちゅ、と鈴口にキスをした。
「……本当に『さん』をつけたら、ご褒美にイかせてあげられる。……どうする、班長……?」
もはや射精寸前だった班長の頭の中はドロドロで。班長は迷うことなく、口にしていた。
「風香……さん……っ。いかせて、ください……っ」
「……ん?何も聞こえない……」
「お、お願いします、風香さんっ!いかせて、くださいっ!」
「……わかった……」
そう言って、風香はフェラチオを再開させた。その動きは先ほどの焦らすような動きとは全く別で。肉棒を擦る手のスピードが上がる。唇が竿にそって前後する動きが速くなる。伊達にダメージソースに速度を持つコ・ス・プレを持っているわけではない、というべきその動き。
「あっ!あっ!ホントに、ホントにイキそうだっ!風香……さんっ」
上目遣いで班長を見る風香の瞳はまるで、
「……イッてもいい……よ」
と言っているようで。班長の頭の中で快感が弾けていく。腰にきゅうっと力が入る。溜まっていたものがすべて放出されるように。
「いくっ!いきますっ!風香さんっ!あ、出る、出るぅっ!」
「んんんんんっ!」
風香の口の中で、肉棒が弾けた。びゅるるっと風香の喉奥へ向けて放たれる白濁液。その量の多さに、風香は目を白黒させるが、放たれた精液を飲み込んでいく。ビクン、ビクンと肉棒が震えるたび、白濁液が吐き出されていく。このまま空っぽになるのではないかと自分自身で心配になるくらい、班長は精液を吐き出していた。
はぁ、はぁ、はぁ……。
たっぷり精液を出した班長は、荒い息を吐く。
「……ごめんなさい、ちょっと、調子に乗ってしまった。班長、気持ち、よかった……?」
心配そうに見つめる風香の頭を優しく撫でる班長。
ああ、最高だった。さっき美月とした時よりも、いっぱい出たかもしれない。
「……それは、ちょっと、嬉しい」
風香はにこっと笑う。だが、ふと思い出したように、
「……あ……」
と声をあげた。どうした?と班長は尋ねる。
「……これは、サブタイトルに偽りあり。『班長のご褒美』ではなく、『班長へのご褒美』になってしまった……」
またメタな事を言い出した風香に、班長は肩をすくめた。
大丈夫だ。クエスチョンマークを付けておいたから。