※この作品はR-18です。

この孤独な闇職者に福音を   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

クライマックスとか言いつつ、小ネタの寄り道で全然物語が進んでおりません。ですが、小ネタが集まった事による別連載なので許してください。あっ、流石に話数使い過ぎなので、もうウォルバクは懲らしめますね。

またお暇な時にでもお付き合いください。


このポンコツ邪神と決着を

魔王軍幹部との戦い。勇者の本懐とも言えるそれは、きっと熾烈を極めるものになる。そう考えていた時期が、あたしにもあった。

 

「本当に、申し訳ございませんでした……」

 

「謝って済むと思わないで!私、初めてだったんだからね!」

※男性に胸を揉まれたのがです。

 

まぁ、少なくともこれを魔王軍幹部との戦いだと思うヤツは居ないだろう。こんな痴情のもつれによる痴話喧嘩みたいな状況が、国の命運を分けていい筈が無い。本当に、マジで心からそう思う……

 

「この通り本人にも制裁も加えた訳だし、この場は穏便に済ませて貰えないだろうか?我々としても、アクシズ教の被害者を悪と見做して戦うのは避けたいんだ……」

 

「いや、それ勝手にあなた達がやっただけよね?!別に暴力で許すとかいってないんだけど?!」

 

確かにダクネスは「なんで私にしなかった!」って言いながら殴ってたし、めぐみんは「そんなに巨乳が好きなのですか!」って言いながら蹴りを入れてたから、間違いなく私怨だろう。ウォルバクの言い分は至極もっともだ。

 

「でもそうね、本当に私の消滅を止める為に手を貸してくれるなら、一時停戦を結んでも良いわ。例えば……」

 

「それで良いならそうしましょう!私達があんたの消滅を防ぐ方法を探してあげる!だから、探してる間と見つかってからは、私達は中立でいいのよね?!」

 

普段ならカズマが交渉するであろう所に、今日は何故かアクアが乗り気になる。ウォルバクはここから半身の話でもするつもりだったのだろうが、アクアの予想外の快諾に表情までフリーズしている。と言うか、流石にその返事は無責任が過ぎる気がするが……

 

「ちょっとタイム!おいアクア、お前なにを勝手な……そんな方法わかるのかよ?」(小声)

 

「馬鹿ね。拒否さえしなきゃこの場は中立関係になるのよ?簡単なモノなら応じれば良いし、難しかったら難航してるとか言って対応してる事にすればいいの。どうせ具体的な対策法なんて分かりゃしないんだから、騙してる間に対策を考えて、最悪その隙に魔王を倒すのよ!」(小声)

 

「「「「えぇ……」」」」

 

自信満々に恥も臆面もなく語るアクアに、流石のあたし達も表情が曇る。コイツは無実の相手を封印という形で監禁をし、それに「はいはい反省してま〜す」みたいな態度を取って、しかも最終的には罠にまでハメようとしているのだ。これが女神だって言うのなら、レジーナ様は邪神と名乗る必要はない。むしろ、この中で1番邪神なのは、司るものに関係なくアクアではないか……

 

「まぁ、確かに敵対したくない以上、相手の要求は聞くべきだと思うが……」

 

「これでアクアの命が必要と言われたらどうするのですか?エリス様の連絡先など知りませんよ?」

 

「いえ、それなら事前に魔力を頂いてリザレクションを教えて貰えば、私でも蘇生は可能かと……」

 

「じゃあ、問題はセレナの魔力容量か……」

 

「ねぇ待って?私の犠牲が必要な場合に差し出すのは決定なの?!死んでも蘇生とか冷たくない?!」

 

「いやお前が言うな!」

 

うん、それは本当にな。

 

………………………

 

「えっと……取り敢えず手を貸してくれる流れでいいのよね?」

 

「と、取り敢えずそれは満場一致で……はい」

 

「むーむー!」

 

余計なことしか言わないアクアを簀巻きにしたカズマは、再びウォルバクとの交渉を開始する。ウォルバクの要求は間違いなく半身のちょむすけだ。だから、別に焦るほどの事はない。いや、アレだけあたし達の関係を楽しんでいたし?ひょっとしたらあたしとカズマの結婚とか……いやそんなの言われたら困るけど……その場合はまぁ…仕方ないかな……

 

「私の要求はとてもシンプルよ。封印の弊害で分裂した半身を探しているの。それを渡してもらえれば、私はあなた達と敵対しないわ」

 

いや、別に期待とかしてねぇし?そうそうそれだよ。たまには普通のこと言うじゃんか!けっ!

 

「そ、そんな…それって……」

 

まだちょむすけの事だとは言っていないが、察しの良いめぐみんは気付いてしまったようだ。ウォルバクにも過去に出会っていたみたいだし、恐らくは何か心当たりがあったのだろう。ちょむすけを抱く腕に、明らかに力が入っている。

 

「お、おい……めぐみん…お前まさか……」

 

「ま、間違いないです……今まで思い当たることは沢山ありました……今まで目を背けていましたが、もう誤魔化すことは出来ませんね……」

 

何かを決心しためぐみんは、ちょむすけをカズマへと手渡した。そして、何故かカズマを送り出すのではなく、自分がウォルバクの元へと向かって行く。いや待て、それはどんな冗談だ!まさかちょむすけを守るために?!

 

「……ま、まさか!半身とはめぐみんの関係者で、渡せないからと一騎打ちを?!」

 

「た、確かに紅魔族なら邪神を取り込むとかやりかねない!だが、だからってめぐみんが戦うなんて!」

 

ウォルバクとめぐみんの間に漂う緊張感。あの二人の過剰な火力なら、間違いなくお互いを即死させることが出来るだろう。だが、この至近距離で爆裂魔法は使えない。めぐみんが辿れるのは、相討ちか敗北のみ……いや、マジで悪い冗談はやめてくれ!お前の爆裂はこっちにも届くんだぞ?!

 

「寂しい思いをさせましたね……我が半身……」

 

「「「「はい?」」」」

 

一触即発の緊張感の中、それを壊したのは発端となっためぐみんだった。いや、こいつ今なんて言った?誰が誰の半身だって?!

 

「おかしいとは思っていたのです。私の強靭過ぎる潜在魔力に似つかわしく無い、突然成長が止まったこの身体。そして、アクアの魔力を受けた時の身体の疼き……それもこれも、神たる我が身が、その半身を失っていたからだったのですね!」

 

「えっ…いや、えぇ?!」

 

オッケー分かった。こいつの脳がバグってると言うことは十分に分かった。困り顔でコッチを見るウォルバクには悪いが、これはあたしにもどうしようもない。自力で頑張れ!

 

「えっと……何を言っているのか良く分からないのだけど……別に貴女は私の半身じゃないのよ?半身は……」

 

「そんな筈ありません!魔王軍幹部を多く屠る実力に、人並み外れた魔力量!これらを交えて考えれば、自ずと答えは導き出せる筈です!貴女と出会ったとされる記憶も、元が同一の存在なら納得です!」

 

「それは貴女が紅魔族で、リーダーの彼の機転が優れてたってだけよ!戦い難くなるから言わなかったけど、貴女に爆裂魔法を教えたのも私です!良いからちゃんと話を聞いて!!」

 

「そんな?!それでは、アクアの魔力の件は?!この身体は?!」

 

「魔力の過剰回復で身体が熱くなるなんて良くあることだし、成長速度って人それぞれだから……あと、親御さんの遺伝の問題も……」

 

「…………親?」

 

ん?なんで親の話が出てこんなに沈むんだ?めぐみんの親には何か問題が?

 

「カズマさん?めぐみんさんがとても凹んでいますが、まさか親御さんと何かあったのですか?」

 

「いや、とても仲睦まじい家族だと思うんだが……お母さんがとてもスレンダーなんだ…いや、とても美人だから気を落とす程じゃないと思うんだが……」

 

「あぁ、つまり遺伝子的に胸には希望が……」

 

そればっかりはどうしょうもないだろ……

 

「そ、そんな嘘には騙されませんよ!ほら、早く元の一人の身体に戻るのです!早くその身体と一体に!!」

 

「ちょっと?!何この子力強い!アークウィザードとは思えない筋力でしがみついてくる!貴方達も見てないで剥がして!これじゃ話しどころじゃないわよ!」

 

「よ、よし!行くぞお前ら!取り敢えずめぐみんを引き剥がせ!」

 

暴走しためぐみんの行動は、もはやぶっ飛んでるとかの次元ではない。ウォルバクの胸に顔を押し付け、そのまま一体化しようと顔を押し付けている。お前の中の一体化の概念はどうなっているのか訪ねたいが、今更そんなの気にする余裕もない。

 

「辞めてくださいめぐみんさん!万が一に半身だったとしても、1つになって貴女の意識が消えるとか考えないのですか?!」

 

「くれてやります!この魅惑の身体の為なら、私の意識なんてくれてやります!!」

 

「それもう貴女じゃないですから!ただ栄養になっただけで、めぐみんさんの胸が育ったとは言えませんから!」

 

「そうよ!まずは落ち着いて!大きくなる方法なら教えてあげるから!なんなら一緒に手伝って……おっと?!」

 

ズザー!

「お願いします!」

 

「「「「えぇ…」」」」

 

現金と言うか素直と言うか、ウォルバクの言葉1つでめぐみんの暴走は簡単に収まった。元からデカいウォルバクに豊胸の方法が分かるとは思えないが、取りあえず今はこれで良い。騙そうとしたのはお互い様だし、あいつなら魔法でどうとでもするだろう。と言うか、猫返すだけでこんなに疲れるなんて、やはりコイツは頭がおかしい。

 

……………………………

 

「こほんっ……改めて私の半身の話だけど、貴女が保護した猫がそうなのよ。ほら、爆裂魔法を教えた時の化け物に似てない?」

 

「そ、そう言われると似ていますが……半身って人型でさえ無いのですね……」

 

余りに長い紆余曲折を経て、遂にウォルバクの半身が明らかになる。いや、これそんなに引っ張ることじゃないんだが、こいつらはトコトン余計なことをする。でも、これで交渉は決着だ。魔王は色々と制約があるので、こういった条件下でウォルバクが中立になっても咎められない。礼節を欠く事ができないと言うのも、中々に厄介なものらしい。

 

「じゃあ、早速その子を……」

 

「嫌です」

 

「えっ?」

 

話はここで決着かと思われた所で、今度はカズマのやつが反対派に回る。いやなんでそこで粘るんだよ。良いからこの場を平和的に終わらせてくれよ!

 

「さっきの話を聞いて気付いたんだが、それをやるとちょむすけが消滅する事にならないか?」

 

「えっと……そうね……取り出したいのは神格だから、魔法で肉体を消し去るつもりだけど……」

 

「それは駄目だろ!ちょむすけはうちの家族も同然だぞ?!いくらなんでも渡せない!それに俺達カルテットは公益社団法人、日本動物病院協会と協賛してるんだぞ!」

 

「だからソレ私の一部なのだけど?!と言うか大人の事情挟まないでくれる?!それ反則だから!」

 

あぁ、そう言われると確かにそうだ。カズマは猫が大好きだし、カルテットの仕事もある……いや、アレが猫に見えるかは若干微妙だが……それでもちょむすけを手放すなんてしたくない筈だし、飼い主の責任も果たすべきだろう。それなら、使い魔のように身体に戻すと言う形でお願いするしかないな。

 

「えっと…その半身は使い魔のように身体に戻せないのですか?それで神格だけ取り出して、ちょむすけの人格で再び使い魔を再生成するとか……」

 

「そ、そうね……一部とは言え私なのだし、大切にしてくれた恩もあるわ。だから、使い魔として再召喚するようにしましょうか……」

 

よしよし。このままウォルバクの力が戻れば、まず中立関係が成立する。そして、ちょむすけが使い魔として契約されている状態になると、カズマはウォルバクを倒せないことになる。完璧だ。咄嗟の機転にしては完璧だったぞあたし!

 

「そ、そう言うことなら……はい…」

 

ぷにゅんっ

「ちょっと?!なんで谷間に押し付けるのよ!別にそこは入口じゃないからね?!」

 

「いや、他に素肌で入りそうな所も………いてっ!」

 

ガンッ!

「だからそう言うセクハラは!……って」

 

スポンッ

「「「「………嘘?」」」」

 

カズマのセクハラにより谷間に押し付けられたちょむすけは、あたしの叩いた勢いで胸の中に入り込んでいった。いや、そりゃ同一の存在だったとは言えど、流石にそんな戻し方になるとは予想外だ。まぁ、目的としては結果オーライなのか?

 

「…………うふふ、溢れてくる!女神の頃の力が溢れてくるわ!暴虐と怠惰の恩恵が、この戦乱と階級社会に溢れてない筈が無いもの!あぁ!今ならこの戦場を地獄に変えることも出来るにゃん!」

 

……ん?

 

「くっ!不味いわカズマ!この女神の魔法の実力は本物よ!神格の戻った今となっては、私達に勝ち目があるかどうか……」

 

「いや、俺はそれより気になることが……」

 

「安心しにゃさい女神アクア……今回の件で貴女は許してあげるにゃ。ただ、次に私に喧嘩を売ったアクシズ教徒は情け容赦なく殺すにゃ!精々、私に出会わにゃいことを祈るのにゃ!」

 

「な、なんですって!なんて恐ろしいことを!」

 

「いやだからそれより語尾が……」

 

女神二人の真剣なやり取りはさておき、あたしとカズマはお互いの顔を見合わせていた。いや、まさかそんなベタベタな展開があるとは思えないのだが、万が一もある。いや、こいつらと居たら万が一は常に起こる!

 

「えっとウォルバクさん?なんかちょむすけに意識持っていかれてたりしてませんか?」

 

「そんにゃ訳ないでしょう!本体はあくまで私よ!あんにゃ猫に意識が持っていかれる筈がにゃいわ!」

 

いや、これ相当持っていかれているだろ?少なくとも1割か2割は……

 

「でも、約束は守るわ……我が半身の魂を、使い魔として再びここに!!」

 

「お、おぉ!それならまぁ、色々と解決なのかな…」

 

「いやどうでしょうね……」

 

ウォルバクの手元に渦巻く魔力は間違いなく使い魔召喚の魔法だ。本来ならこれでちょむすけが帰ってきて終わりの筈なのだが、なんか嫌な予感がする。コイツが色々と残念だと知ってしまったからこそ、これで解決するとは思えない。

 

「いでよ!我が使い魔!!」

 

ポンッ

「なー!」

 

もし余所見をしてこの状況を聞いていた奴が居たら、ウォルバクの目論見は大成功に聞こえたことだろう。だが、目を開けてみるとそうはならない。なにせ今の「なー!」と言う鳴き声は、ウォルバクの方から聞こえてきたのだから……

 

「ちょっと?!なんでアンタがそっち側なのよ!普通に猫の方に戻りなさいよ!」

 

「なー?」

 

2本足で直立して人語を話す猫と、猫に猫語で話しかける女神。まぁ見た目には多分そんな感じなのだが、状況を知っていると色々と笑えない。あいつ、まさか猫に負けるとは……

 

「くっ!取り敢えず一旦戻って再トライよ!今度はあんたが猫の身体に……って……」

 

「「「「なにしてんの?!」」」」

 

「なー!なーなー♫」

 

すりすり

「こ、これは不可抗力だ!!俺は悪くないって!」

 

ウォルバクの身体に入ったちょむすけは、どうやらカズマと目線が合うのが嬉しいらしい。器用に?二足歩行でカズマの元へ駆け寄ると、まるでマーキングをするかのように身体をカズマに擦り付けている。うん、理由知っててもなんか腹立つ!

 

「辞めてよ!それ私の身体だから!汚れなき女神の身体なんだから!」

 

うん、四日前はカエル臭かったけどな。

 

「なー?な〜な〜!」

 

ぺろぺろ、ぐりぐり

「ちょ、ちょむすけ?!それ本当に今は駄目だから!流石にこの状況は色々と不味いから!」

 

「そうだぞ!普段なら構わないが今は駄目だ!」

 

「そうですよ!そんな悪い子はご飯抜きですよ!」

 

周りがどんなに駄目と言おうと、溺愛され続けたちょむすけの愛情表現は止まらない。カズマにしがみついて身体を擦り付けた後、今度は頬を舐め、更には胸に顔を押し付けている。中身が猫だと分かっていても、これは流石に見逃せない!と言うか、カズマもちゃんと拒めよな!

 

「カズマさん!中身はあくまでちょむすけです!普段通りの扱いでうまく回避してください!慣れているはずですよね?!」

 

「お、おぉそうだった!すみませんウォルバクさん!少しだけ身体に触ります!」

 

「あっ!あくまで猫が喜ぶ所だけだからね!」

 

さわさわ

「ほれほれ、いい子だぞ〜」

 

「な〜〜…」

ゴロゴロ

 

あたしの指示で我に返ったカズマは、ウォルすけの顎を優しく撫でる。パッと見ではキスする手前にしか見えないが、これはあくまで猫への愛撫、だから決してやましくなんてない。後で抓るけど!

 

「よ、よしよし!このまま大人しくしてくれよ〜」

 

カズマの顎への愛撫を受け、力なく倒れていくウォルすけ。流石は愛猫家にして淫魔の弟子、猫女なんてまさに得意分野だろう。それを褒められるかは別として。

 

「な〜…な〜!」

 

ぐいっ!

「ちょっ、ちょむすけ?!」

 

「な〜……」

 

そのまま仰向けになったウォルすけの両手が、カズマの背中に回される。カズマを見つめる目は熱っぽく、まるで男を求める女の表情だ。あれ?これまさか交尾しようとしてるのか?!カズマに愛され過ぎて求愛行動とってるのか?!

 

「ちょっと!早く離れてよ!私の身体にナニする気よ?!」

 

「お、俺だって離れようとしてるって!でも、やはりウォルバクさんの身体に乱暴な事は出来ないし、最悪満足するまで付き合ってから離れるのも手かと……」

 

「ふざけないで!それ実質乱暴な事だから!最低最悪の乱暴な事だから!」

 

そこで強姦とかレ○プって表現が使えない辺りはピュアな女神だな。とことん悪役に向いてないな。

 

「ごめんなさい!もしこれで合体してしまっても、半分合意としてください!」

 

「全く合意じゃないんだけど?!」

 

「な〜…」

 

ちょむバクの抗議など聞こえないかのように、ゆっくりとその足を持ち上げるウォルすけ。まさかこのまま正常位で抱かれようなんて気じゃないだろうな?!それならあたしもメイスで殴ることも視野に入れて……

 

「な〜……なななな!!」

 

ゲシゲシゲシケシ!

「ちょっ?!こら蹴るなって!蹴りぐるみにすんな!ヒールがメッチャ刺さってる!」

 

いや、必要なかったな。どうやらウォルすけは、後ろ足で蹴りを入れる遊びがしたかっただけらしい。中身は猫なのだから、よく考えたら人と交尾しようとは思わない筈だ。うん、早とちりして悪かったな。

 

「あぁ、そう言う遊び方を良くしてましたね……普段はカズマの腕にですが……」

 

「猫サイズで爪切りされてたから可愛いものだったけど、人間サイズでヒール履いてされたら、普通にすごく痛いでしょうけどね……」

 

「あ、後で私にもしてもらえないだろうか……」

 

「煩悩の罰が当たったのね……」

 

「いや、これに関しては俺はわるくないんだが?!と言うかメッチャ痛いんだが?!」

 

でも鼻の下伸ばしてたからギルティ!もうちょい蹴られてから助けてやるよ!

 

……………………………………

 

「はぁはぁ……もとに戻るだけなのに予想外の抵抗を……ニャンなのよ、この我の強い半身は……」

 

カズマを蹴りまくって満足したウォルすけに、あたし達はちょむバクを押し付けてまた1つに戻した。こんなに面倒なことになるなら、ちょむすけを消滅させた方が楽だった気がする。いや、でも流石にちょっと可哀想になってきたな……あたしにも懐いてたみたいだし……

 

「しかし困りましたね……これでは餌代が2倍以上かかってしまいそうです。流石にキャットフードだけでは申し訳ないですし……女神って何を食べるんですか?」

 

「ちょっと?なんで私を連れ帰る前提ニャの?違うでしょ?これはちょむすけとサヨナラする流れでしょ?!」

 

「俺はその姿でも全然愛せますから、心置きなく甘えてください」

 

「甘えニャイわよ!どういうことなの?!愛猫家とか言ってたのにこれで良い訳?!」

 

「俺はむしろこっちの方が好きです!今後も一緒に寝て……痛い痛い!セレナ、尻を抓るなって!」

 

ギチギチ

「何が愛猫家ですかこのスケベ!これは重大な裏切りですからね!」

 

主にあたしへのな!

 

「しかし、このまま放置したらどうなるんだ?最終的にどっちの人格が残るんだ?」

 

「元々が同一なのだから、基本的に混ざって終わりよ。こっちに理性と知性がある以上、私が支配される事なんて無いわ。記憶が共有されて、少しだけ猫の性質が残るくらいかしらね……」

 

確かに今の話を聞いている限り、ウォルバクの意識が薄れる様子はない。だが、見ている限りではちょむすけが優勢な気がしてならない。そのケツから生えた尻尾が、カズマの太ももに巻き付いているし……

 

「あの、やっぱり意識を乗っ取られているのでは?尻尾が明確にカズマにすり寄って行ってますが……」

 

「ち、違うし!これはなんか落ち着かないからで、別にカズキュンの事なんて好きじゃにゃいもん!」

 

いや完全に持って行かれそうじゃねぇか!さっきまで彼とか貴方って呼んでたよな?!カズキュンってなんだよ?!

 

「仕方ありません。高いのであまりこの手は使いたくなかったのですが、高級な猫おやつでちょむすけを引っ張り出しますか……」

 

「そういうのがあるなら早く出して貰えますか?!危うくカズマさんが女神をペット化して事案になる所でしたよ?!」

 

「おいやめろ!うちにはペットみたいな女神は間に合ってるから!ウォルバクさんは家族として引き取るから!!」

 

「ちょっと?!私のどこがペットなの?!」

 

「ペット扱いなら私に!」

 

「か、家族って……お嫁さんって事かしら……ううん駄目よ…彼にはセレナが……でも今なら……」

 

あぁ〜、なんだろうこの感じ。ずっと一人で行動してたから気が付かなかったが、魔王軍もこいつらと同じような次元なのでは無かろうか……いや、今考えるのは辞めよう。この混乱の中あたしが嫌になると話が停滞する。取りあえず、ちょむすけを取り出して早く帰ろう。あたしの胃に穴が空く前に!

 

「じゃあ、オヤツに向けて……使い魔召喚!」

 

「なー!」

 

はい、お疲れ様でした!

 

………………………

 

なんてやったのが、確か二日前だった気がする。

 

「なぁ、なんでウィズの店にお前が居るんだよ……」

 

ウィズの店の戸を開けたら、カウンターに胸を乗せているウォルバクが居た。あぁ、なんかもう嫌な予感しかしない。魔王軍の大規模な戦力増強になると思ってコイツに手を貸したのに、ここに居るって言うのがもうフラグにしか感じない。

 

「えっとね……魔王軍幹部、クビになっちゃって……」

 

「はっ?!お前を外すとか正気か!一体何があったんだよ?!」

 

「女神の真の力を発揮したら、全部隊がサボり始めたから……個の強さより戦場への悪影響の方が大きいって言われちゃって……」

 

「マジかよ…怠惰の女神ってすげぇな……」

 

それでここに来ると言うのも、なんか違う気がするけどな……

 

「つうか、バニルはそれでいいのかよ?いや、そもそもウォルバクもバニルが生きてて言いたいことあるだろ?」

 

「この猫神のお陰で、アホ店主が怠惰となりむしろ助かっている。美人につられて客も増えるし、此奴が来てくれて、吾輩にはいい事尽くめであるぞ?」

 

「私としては食い扶持に困らないし、戦う気のない者を戦地に置くつもりもないわ。お互いに不干渉だから、別に何も困らないわよ?」

 

それ、戦う気のない奴量産してる女神が言うのな……

 

「だから、魔王軍の未来は任せたわ!私はここで少しずつ信者を増やすから!」

 

「はははは!なんなら汝も魔王軍など辞めるが良い!小僧とともに雇ってやるぞ!」

 

「うるせぇよ!この国の王が魔王になったら考えてやる!」

 

バタンッ!

あたしはそう吐き捨ててウィズの店を後にした。だが、決してその提案は嫌いじゃない。ただ、それは魔王の統治下での話だ。じゃないと、また……

 

「さぁ見てろよ人類!お前らだけの平和な世界は、もうじき終わりを迎えるからな!」

 

いや、今はもうそんなの関係ない。今のあたしは自分の居場所を作れる。だから、今はただ前に進もう。あのはぐれもの仲間の馬鹿の為にも……

 

 




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

ちょむすけとウォルバクのネタはずっとやりたかったんですが、こんなのやったらヒロインには出来んなと思って封印してました。やっちった。もうクライマックスなのにやっちった!あ、次からはちゃんと真面目(?)にやります。

また不定期ですが、今後ともお暇な時にでもお付き合いください。
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