※この作品はR-18です。

この孤独な闇職者に福音を   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

こんにちは、あるいはこんばんは。セレナが人気になって、このすばのアニメを最後までやって欲しいという浅はかな野望を持つ私です。と言っても、私にやれるのは酷いネタを垂れ流すだけです。あ、ちなみにそろそろクライマックスです。

またお暇な時にでもお付き合いください。


この恋する二人に決別を

懐かしい夢を見た。それは、今のあたしにとって始まりの話。そして、過去のあたしの終わりの話。

 

「ついに魔王軍がこの街を襲いにくるぞ!お前達武器を取れ!この街を守るのはお前たちしかいない!」

 

街を管理していた貴族が、そんな事を言ったのを覚えている。あたしの居た街には貴族の私兵しか居らず、魔王軍に狙われたことがなかった。だが、そんなのは魔王の気まぐれだったと言う貴族の言葉を、あたし達は疑うこともしなかった……

 

…………

 

「やってくれたな……こいつら全員民間人ではないか!」

 

「落ち着けベルディア!民間人だろうと武装した集団だ!俺達が戦わなきゃ、うちの連中が殺されていた!」

 

「だがハンス!こんなのやり方……くそっ!首謀者はどこだ!」

 

武装蜂起した街の大人達など、魔王軍幹部の圧倒的な力の前には無力だ。それは到底戦闘とは呼べず、ただ一方的な殺戮がほんの数分発生しただけ……たったそれだけで、大人達は肉塊に変わっていった。

 

「何あれ…逃げなきゃ……じゃなきゃ私まで殺される……あれ、貴族様?!」

 

「おぉ!まだ生き残りが居たのか?!」

 

そんな地獄を見て逃げ惑うあたしの前に、街を管理する貴族が現れた。この時だけは、あのクソ貴族が頼もしく感じたのを覚えている。まぁ、それはほんの数秒で裏切られる訳だが……

 

「あぁ、本当に丁度良かった。これなら、君が襲われている間に私が逃げられるからな!」

 

ガンッ!

「ごふっ!」

 

助けてくれると思った貴族に蹴られ、あたしは石造りの祠に激しく身体を打ち付けた。なんでこの人がこんな事を?どうして助けてくれないの?そんな疑問が頭を過るが、それを言葉にすることは出来なかった。まぁ、子供が大人に蹴られたんだ。そりゃ声なんて出るはずがない。

 

「悪く思うなよ。俺はこんな辺境の領地で終わるなんて御免なんだ。今回の魔王暗殺は失敗したが、次はきっと上手くやる。あぁ……お前らは最高の囮だったよ。本当に従順でさぁ!」

 

「そんな……」

 

この殺戮が起こった原因を知ったあたしは、今までに無い感情をその身に宿らせた。悲しみでも絶望でもない。ただ目の前のこいつを殺してやりたいと言う復讐心……あぁ、きっとそれが見初められた理由だったんだ。この祠に封印されていたとされる。邪神のレジーナ様に……

 

[あら?私の封印を解いたのは随分と可愛らしいお嬢さんね。貴女の望みは何かしら?]

 

「望み……叶えて…くれるの?」

 

血を流して朦朧とする意識の中、あたしの頭に響く声。今では聞こえなくなってしまったが、きっとアレがレジーナ様の声だったんだろう。

 

[なんでもなんて約束は出来ないけれど、恩人のために全力を尽くしましょう。貴女の願いを聞かせてくれる?]

 

「それなら……こいつを殺して!なるべく惨たらしく!後悔でさえ生温いほどに!!」

 

[あはははは!良いでしょう!子供とは思えないその憎しみ!私は復讐と傀儡を司る女神レジーナ!その復讐の願い、私が叶えてあげるわ!!]

 

いや、これなんか美化されてるな……確か正確には……

 

[出られたわ〜!まさかこんな大変な時に出られるとか予想外だけど……ありがとねお嬢ちゃん!なんか願いとかある?]

 

「マジあいつぶっ殺したい!」

 

あぁ〜、確か怒りと出血でハイになってた気がするわ〜殺意もマシマシだったわ〜。

 

[えっ……いやいや、そこは助かりたいとか皆を戻してとか、そういう子供らしい願いじゃ……]

 

「……できるの?」

 

[………無理だけど]

 

「じゃあ言わないで!ちなみに、惨たらしくあいつを殺すのは出来るの?!」

 

[えっと……そういう力を貴女に与えるだけなら?]

 

「ならそれで!!」

 

[えぇ……この時代怖い……この幼女も怖い…まぁ、不本意ながら専門家だし?汝を我が信徒として認めましょう!いまこの時より、この力を自らのモノとするが良いわ!]

 

レジーナ様の言葉を聞いたあと、何故かあたしは死体に触れて回った。まるで力の使い方を分かっていたかのように、嫌悪感も恐怖も無く、ただ近場の死体を、家族を、友人を、次々と傀儡へと変えていった。思えばアレが、人の死を軽く見るきっかけだったのかも知れない。

 

「お、おい……なんだお前は……なんだその力は……化け物…お前は化け物だ!」

 

「上等だよクソ貴族……お前みたいなのが真っ当な人間なら……あたしは化け物で十分だ。さぁお前ら……ソイツを食い殺せ!」

 

「や、やめろ!なんでだ!なんでアンデッドが人の言うことを聞くんだ!辞めろ!まだ死にたく……あぁー!!」

 

変わり果てた町の住人を使って、あたしはその貴族に人生初の復讐を果たした。そして、そのまま倒れた私は、その様子を見ていたシルビアによって魔王軍に拾われる事になったそうだ。

 

………………………………

 

「はぁ…まさかアレを夢に見るとはな……」

 

見たくもない昔の夢を見たあたしは、起床と同時に額の汗を拭い取る。見慣れた天井に少しだけ気が楽になるが、それでも身体は汗だくで……あれ?そうでもないな?

 

「大丈夫かセレナ?うなされてたけど、起こすべきだったか?」

 

「あぁ、カズマさん。お気遣いありがとうございます。私は大丈夫ですよ」

 

目覚めたあたしの隣には、心配そうにあたしの手を握るカズマが居た。そうか、こいつが居たから、あたしはそこまでうなされずにいられたんだな………んっ?そもそもなんで居る?!

 

「あの、カズマさん?なぜ貴方がこんな朝早くに起きているのですか?」

 

「おいおい。セレナがうなされてて起きたんじゃないか?さっき確認までしたろ?」

 

「いやおかしいですから!何時からですか!何時から貴方はここに居るんですか?!隣の部屋でうなされた声は聞こえませんよね?!」

 

こいつ、また夜這いに来てやがったな?!

 

「おいおい、野暮なこと言うなよ?俺とお前の仲だろ……」

 

ちゅっ

「んっ……こら馬鹿……別にあたしらの恋人でもねぇのに……もう…」

 

偶然とは言えウォルバクの無効化に成功したあたし達は、またしても国から多額の報酬金を得た。まぁ、そうなりゃあたしやカズマが真面目に働くはずもなく、こうして平和な日常を謳歌している。と言っても、これは別に魔王軍だけがピンチという訳じゃない。あの前線基地の酒樽にバニルに押し売りされたレベルリセットポーションを混ぜて置いたので、祝杯は今頃大混乱だろう。たまには役に立つ悪魔だな。

 

ドタドタドタ……バタンッ!

「セレナ起きてる?!」

 

「あっ、おはようございますアクアさん。直ぐにカズマさんをやっつけますので、少しお待ちくださいね?」

 

ギチギチ

「あっうん……カズマさんも懲りないわね……」

 

「ギブギブ!というか何でキャメルクラッチ?!最近殺意高くない?!」

 

まぁ、大混乱なのはこっちも同じだ。めぐみんとダクネスの脅威は相変わらずなので、あたしとカズマは付かず離れず、この微妙な関係を継続している。二人が手を組んで魔王軍を攻めた場合、少なくとも数千の被害が出るだろうしな。

 

ぐきっ

「ぐふぅ!」

 

あっ、やり過ぎた。

 

…………………………………

 

「それで、アクアはなんで焦ってたんだ?」

 

「えっ、それ今なの?!朝ご飯の用意が終わってからなの?!」

 

寝坊組のアクアとカズマが早起きしたことで、珍しく朝からこの家の食卓が埋まる。アクアは相談が後回しで不満そうだが、そりゃお前の相談より飯だろう。いや、それにしたってカズマの作る朝食は美味いな。今度から叩き起こそうかな?

 

「それで、今度はどこのツケですか?ギルドではないですよね?」

 

「アクシズ教の問題なら私が一緒に行こう!今度はなんと言って怒りを買ったんだ?!」

 

「なんで皆私に責任がある前提なの?!今回の件は、私に落ち度はないもん!」

 

と顔を真っ赤にしているアクアだが、そんな話を誰が信じるというのか……たまには自分を省みろ。

 

「はいはい可哀想ですね。で、実際に何があったんだ?」

 

「……レベルが1に戻ってるの」

 

「へぇ…そりゃ大変だ。あ、セレナ醤油とって?」

 

「はい。私にはマヨネーズを……って」

 

「「「「えぇ〜?!」」」」

 

まさかコイツ、前線基地から酒をくすねてきたのか?!だとしても女神にそんなの効くのか?!

 

「なにか悪いものでも食べたんですか?!ほら、カズマが目を離すから!」

 

「無理言うなよ!俺だってアクアのこと四六時中なんて見てられないって!つうか拾い食いでレベル下がるか?!」

 

「あり得なくはない。ポーションの材料は大半が身近な植物だ。だが、そんな偶然が……」

 

「なんで拾い食いを誰も否定しないの?!高貴な女神がそんなことするわけ無いでしょ!これは間違いなく呪いか何かよ!」

 

「えっ!高貴な女神って呪い効くんですか?!」

 

「そ、それはその……お酒の席とかで気を抜くと……」

 

「えぇ……そんな俗な理由で…」

 

つい癖でツッコミを入れてしまったが、これは中々に興味深い。どうやら女神というチートな存在も、酒の魔力には勝てないらしい。と言っても、もうレベル1なので今更アクアを罠にハメる必要もないな。まさか、バニルの真の狙いはこっちだったのか?

 

「しかし、アクアの回復と蘇生がないのは不味いですよ。カズマが死んだらおしまいじゃないですか?」

 

「そうだな。レベルロックのかかるものでも無いようだし、地道に上げ直すことは出来ると思うが……先にカズマが死にそうだな?」

 

「おい、俺がなんでいつも死んでるか分かって言ってんのか?お前らだけでレベル上げに行くか?!」

 

「まぁまぁ、抑えてくださいカズマさん。でも、良い機会ではないですか?きっとアクアさんにも休息が必要なんです。レベルはのんびり上げましょう」

 

そうなりゃ、取り敢えず魔王軍は安泰だしな!

 

「そんなの困るわ!私の活躍を待ってる人が沢山いるの!多少危険でも、効率的なレベリングに行くべきよ!」

 

「あ、あのアクアがそんな真面目なことを?!どうしちゃったんだよ?何食ったんだ?」

 

「だから拾い食いはしてないってば!だってこんな……こんなしょぼい宴会芸じゃ、飲み会が盛り上がる訳無いじゃない!」

 

チョロチョロ…

アクアの取り出した扇子の先。普段なら勢い良く出てくる水がちょちょぎれる。いや、流石にそこは女神の意地とか威厳とかを先に出そうな?そんな理由で危険なレベリングは……

 

「確かに不味い!このままじゃアクアが本当の意味で役立たずだ!すぐに行くぞ!」

 

「そうですね!アクアの唯一の安定した収入が途絶えてしまえば、それはもうただのニートですもんね!」

 

「二人共言い過ぎだぞ?!しかし、危険なレベリングには惹かれるな!」

 

「えぇ……本職って芸人でしたっけ……」

 

まぁ、何だかんだ言って、結局こいつらはアクアには甘い。甘やかさない為に文句を言っているが、こんな見え透いた嘘では流石に……

 

「なんか……やる気無くしたんですけど……」

 

いやこれに気付かないってあるか?!

 

…………………………………

 

「えっと……マジでここなの?」

 

「なんだよ不満か?相手はゴブリンだぞ?」

 

嫌がるアクアを引きずりながら、あたし達はゴブリンの巣穴にやってきた。と言っても、ここは廃山になった元鉱山。巣穴の規模は他とは比べ物にならず、今のあたしらでも勝てるか分からない。というか、そこら辺に転がる人骨や折れた武器を考えれば、どう考えてもレベリング向きじゃない。まぁ、妨害が必要ないのであれば、あたしとしては有り難いのだが……

 

「ねぇ?カズマさんは何をしているの?まさか墓荒らしに来ただけなの?」

 

「ちげーよ!お前らも早く落ちてる武器を集めろ!持てるだけ持ったら、一番高い入口にテレポートするから!」

 

いや、まさか高地からそれを投げて倒すとか言わないよな?そんなレベリングならあたしは帰るぞ?!

 

「あの、カズマさん?やはり無茶はしない方が……」

 

「へーきへーき。今回は二次災害の件も心配ないし、ギルドと地主にも許可を取ったからな!」

 

「えっ、地主にも?」

 

「うん、地主にも」

 

うわぁ……これ絶対にろくな方法じゃねぇよ……

 

…………

 

ゴブリン。子鬼とも呼称される亜人モンスターの一種。通常、肉体的な強さは10歳程度の子供と大差なく、低レベル冒険者により簡単に狩られる存在である。だが、それは人里にはぐれて来た愚かな個体にのみ有効な理論。自分が弱いと理解している奴らは、群れをなし、潜み、欺き、待ち伏せ、時には毒でも人質でも何でも使う狡猾な存在である。ちなみに、メスも居るので女騎士を犯すとかはない。そう言うやつはヒトナーと呼ばれる特殊性癖であり、その集団が起こした事件により、今も良くない偏見を受けているそうだ。

 

「まぁ、そういう訳でここに居るやつはまぁまぁヤバいんだよ。だから、ここに居るのと正面切って戦うことはしない。ほら、これ使ってやっちまえ!」

 

「えっと……このゴミ山を押し流せばいいのね?じゃあ、貰ったマナタイトで……『セイクリッド・クリエイトウォーター』!」

 

ダパーン!

アクアの呼び出した大量の水が、かき集めたゴミと共に鉱山に流れ込む。最初このゴミは嫌がらせの類だと思っていたが、この濁流を見れば嫌でもわかる。これは、鋭利なゴミをブレード代わりにした、いわばミキサーのようなものなのだと……

 

「な、何だこれは!洪水だと?!」「な、何かに掴まれ!流され……ぎゃー!」「水に触れるな!あの中には武器やら瓦礫が混じっているぞ!」「触れるなって……ここには逃げ道なんて……あぁー!」

 

「えっ、なにこの地獄絵図……私が予想してたより数倍エグいんですけど……」

 

「くっ!何というご褒美スライダー!私も飛び込んでもいいか?!」

 

「駄目ですよ?!というか、よくこんな血も涙もないやり方を思いつきましたよね……」

 

「殺して…くれ…」「くそぅ…人間め……」「呪ってやる……末代まで呪ってやるぅ…」

 

カズマの作戦により押し流されて出てきたもの。それは赤い水と肉片と、僅かに原型だけは留めているゴブリンだったもの。そのおぞましさは魔王軍の拷問でも見ないほどで、正直魔王でも耐性はないだろう。これは流石に、井戸に毒(下剤)を入れられるあたしでも引く……

 

「すまん……俺としては弱らせて押し流した所に、この大型ダイナマイトもどきを投げ込ませる予定だったんだが……要らないなこれ……」

 

「あぁ、それは駄目なのです!遂に私の存在意義まで奪う気ですか?!鬼畜!カズマは鬼畜です!」

 

「いや、この光景見たらめぐみんのお役御免なんて鬼畜のきの字もないわよ……」

 

「あぁ…魔王より恐ろしいのが隣りにいると思うと……なんかゾクゾク来るな!」

 

「と言うか、魔王より魔王ですよね……カズマさん……」

 

もう、こいつ次の魔王になればいいのに……あっ!魔王の娘にやるって意味じゃねぇからな!

 

………………

 

「それで、アクアさんのレベルは上がったんですか?」

 

「あぁ、一応少しだけマシにはなったぞ。まだ中級者レベルだけどな?」

 

アクアのトラウマにミキサーが追加された翌日、あたしはウォルバクの呼び出しでウィズの店を訪れた。使い魔を使って呼び出した癖に、呼び出した本人は遅刻すると言うのが怠惰の女神っぽい。

 

カランッ

「あぁ、セレナ…待たせてゴメンね…」

 

「気にすんなよ。どうせ今は暇な身の上だ。それで、呼び出しの理由は何なんだ?」

 

まぁ、どうせまた恋バナとかそんなたぐいの話だと……

 

「この街が、軍の総攻撃の次の標的になったわ」

 

「えっ……えぇ〜?!」

 

「……………そうか」

 

「そうかって……セレナさんは良いんですか?!アクセルの街が戦場になるなんて!」

 

喧しく慌てるウィズには悪いが、あたしはこの事態を予見していた。チート持ちは必ずこの街から現れ、更にはアクアという強大過ぎる力がある。例の作戦で戦力がこちらに傾き、更にアクアの力が弱まったとなれば、この機を逃すはずがないだろう。

 

「……決行は?」

 

「3日後よ。既に進軍済みだって」

 

なるほど、こりゃ猶予も無しか……

 

「ちなみにバニルは?」

 

「買い出しですって、なんか一週間戻らないそうよ?」

 

ということは、ここが戦場になるのもほぼ確定って事だな。仕方ない。カズマに話をするとしよう。

 

「あたしはカズマと話をしてくる。ここの駆け出し共は抵抗しなきゃ殺されないだろうが、アイツらは魔王軍から見てかなりの脅威だ。死ぬか仲間になるか逃げるか……せめて選ばせてやらないとな……」

 

「そうね。ところで、まだ私は必要かしら?」

 

「いや、あたしだけで良い……」

 

「うふふ、成長したわね…」

 

ウォルバクの言葉を無視して、あたしはカズマの元へ歩き出す。半ば脅迫のような交渉だが、アイツならきっと応じるだろう。カズマはそう言うやつなんだ、あたしと同じで……

 

………………………

 

「逃げるの!戦争なんて絶対に無理よ!私のレベルだって下がってるのよ?!逃げてアルカンレティアに引っ越しましょうよ!」

 

「駄目だ!我々がそんな事では、勝ち目がないと多くの戦士が逃げ出すことになる!それでは一方的な蹂躙になり、勝てる戦も勝てなくなるぞ!」

 

屋敷に戻ったあたしの耳に、アクアとダクネスの声が響く。何処から情報を得たのか知らないが、戦争の事が耳に入ったらしい。まぁ、これなら好都合だろう。話を切り出すのも容易だ。

 

「カズマさん、取り敢えず話の経緯を教えてくれますか?」

 

「おぉ、なんかエリス様からの情報でさ。魔王軍が大挙して攻めてくるんだと、それで口論になってるんだよ。あっ、逃げるとしてもアルカンレティアは無しだぞ!」

 

「なんでよぉ?!」

 

アクアの奴は逃げ、ダクネスは戦うと主張、めぐみんは単独での運用が出来ないため、やはりこの場を決めるのはカズマだ。どうせ惚れ込んでるコイツラのこと、カズマには従うに決まっている。

 

「なぁセレナ、今のこの街に勝ち目はあると思うか?」

 

「えっと……普通に考えたら無理でしょうね。魔王軍は王国軍と拮抗するほどの戦力ですから、駆け出しの街なんて相手になりません。王国軍や各地のギルドからの応援は無いのですか?」

 

「それが、小規模な軍隊が各地に進軍してるらしいんだよ。そっちはどう見ても囮なんだけど、自分たちのリスクを無視して助けには来ないだろうって……」

 

だろうな。その作戦の立案はあたしだし、この国の貴族なんてそんなもんだ。だから、ここは諦めて解散してくれたほうが良い。

 

「しかし!それでは街の人の帰る場所がなくなってしまう!私達が戦わないと……」

 

「ダクネスさんには言い難いのですが……魔王軍は無抵抗な民間人には手を出しません。支配地域も税の納先が魔王軍になるだけで、街の人の安全は守られます。以前立ち寄った街では、そのような統治が行われていました」

 

「そんな馬鹿な!魔王軍がそんな人道的なことを?!」

 

「ありえないでしょ!魔王軍が人道的なら、なんで戦争なんて仕掛けるのよ!」

 

あぁ、熱心な信者と女神は、きっとこう言うと分かっていた。だが、カズマは気付いて居るだろう?お前は察しが良いからな。

 

「いや、その対応は俺も納得できる。悪魔は人の悪感情が無きゃ生きていけないし、ウィズの中立条件を飲んだ所からも魔王軍は真面目な戦争をやっているんだと思う」

 

「そ、そう言われると……」

 

「確かにウィズを敵に回すのは危険です。民間人を狙えば、とんでもないしっぺ返しが来ることになります」

 

そうだ。魔王軍の狙いはあくまでこの国の支配。破壊や殺戮は本来の目的ではない。よくわかってるじゃないか。

 

「だが人を喰う魔物が多くいるんだぞ?!魔王の支配下に着いたら……」

 

「それは俺たちも同じだろ?なんなら魔物同士でも食い合うし、人間だって利益のために殺人も起こる。実は言うほど代わりはないんじゃないか?」

 

「そ、それは確かにそうだが……」

 

そうだ!もっと追い込まれて絶望しろ!これからあたしの出す提案が、なおのこと希望に見えるようにな!

 

「すぐに答えを出せることじゃない。だから、明日また話し合おう。今は頭の中を整理したい」

 

「そうですね。少し、時間が欲しいです……」

 

「あぁ…私もだ……」

 

「いやよ?!私は魔王軍に降るなんて絶対に嫌なんだからね!」

 

あまりに重い決断を背負わされ、屋敷の中に重い空気が立ち込める。頃合いだ。カズマを勧誘するのなら、今以上のチャンスはない!

 

………………………

 

「それで、話っていうのは何だ?」

 

全員が部屋に戻ったところを確認し、あたしはカズマの部屋を訪れた。あの重い空気の直後だけあり、カズマもセクハラをしようとは思わないらしい。流石にセクハラ中に勧誘とかしたくないので、今回ばかりはこの空気に感謝しよう。

 

「魔王軍との戦いのことで、カズマと話がしたくてな……」

 

「そっか、愛の告白じゃなくて残念だ」

 

「ははっ、こんな時も変わらねぇな……」

 

これは間違いなくカズマにとっても危機的な状況だ。だが、それでもいつも通りにあたしに接するのは、こいつなりの優しさなんだろう。

 

「なぁカズマ、あたし……お前に言ってないことがあってさ……」

 

「今更なんだ?ギルドの酒代を勝手に俺につけた件か?それとも、俺のシャツを1枚部屋に持って行った件か?」

 

「馬鹿、そんな下らないことじゃ……」

 

「それとも……セレナが魔王軍幹部って話か?」

 

「えっ……」

 

さっきまで軽かったカズマの声が、突然真面目なモノへ変わる。そして、交渉の主導権を握れると思っていたあたしは出鼻を挫かれ、この一瞬で嫌な汗が身体を伝っていく。まさか、カズマは今までずっと、あたしが魔王軍だと分かって接していたって事なのか?!

 

「まぁ良いか、それを今から話すんだもんな。なぁ、セレスディナ?」

 

いや、出来れば次回まで作戦を立てさせてもらえますか?!

 

 




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

一体いつバレたんだ?!みたいな推理をする人が居たら、そんな真面目な推理は無駄です。私の作品なので……

また不定期ですが、今後ともお暇な時にでもお付き合いください。
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