前回の流れはこれで終わりです。さぁ、ふざけんぞオラァ!
ってことで続編です。本人は至って真面目ですが、周りの環境は真面目にはなりません。だってこのすばですし!
という事で、またお暇な時にでもお付き合いください。
「良く戻ったセレスディナ。此度の作戦、お前の立てた策略が見事に功を成し、アクセルの街は我らが軍門に下った。流石は一流の諜報員だ」
「あぁ、楽なもんだよ。これくらいはな……」
カズマの元を離れて3日。痕跡を残さないように魔王城に帰還したあたしの耳に入ったのは、アクセルが攻め落とされたという報告だった。あいつらなら上手く逃げたハズ……そう考えていたあたしだが、その詳細を聞いて自分の行動を後悔することになる。
「では、改めてセレスディナ様にも報告いたします。侵攻中の深夜の爆裂魔法による嫌がらせは堪えましたが、侵攻戦は我らの大勝利。英雄と名高いサトウカズマ、キサラギキョウヤの両名も無事討ち取り、死体も回収済みとのことです。既にアクセルの街に抵抗する戦力はなく……」
「……はっ?」
詳細報告の開始からほんの数秒、あたしの最も聞きたくなかった名前が耳に入る。カズマが討ち死にした?それで死体の回収まで済ましたって、それじゃあいつはもう蘇生が出来ないって事じゃ……
ガッ!
「おい!サトウカズマのパーティーはどうなった?!あれは相当厄介な連中だ!そう簡単に死ぬとは思えない!」
あたしは冷静さを欠き、その報告を読み上げているトロールの鎧を掴む。それでもアクアさえ生きていれば、まだ蘇生の可能性が残る。だから、せめてアクアだけでも……
「落ち着いてくださいセレスディナ様!ご安心ください。女神アクアは子供達の命と引き換えに我が身を差し出し、めぐみんと呼ばれる紅魔族は爆裂魔法で中隊を道連れに四散、ダクネスと言うクルセイダーも、人民の盾となったまま事切れていたそうです。セレスディナ様の懸念する危険因子に、もはや生存者はありません」
「そうかよ……その詳細は報告書でくれ。それと、長旅で疲れたから今日は休む。あたしの部屋には誰も寄らせるな……」
「りょ、了解しました」
あたしの希望を打ち砕くように、突き付けられたカズマ達の死。それを受けたあたしは、必死に冷静を装いながら魔王の前から立ち去った。そして、自室に戻って布団を被ると、カズマに貰った指輪を掴み、声を押し殺して泣いた。
「なんでだよ……お前らは、街の危機なんて知らねぇって逃げるタイプの冒険者じゃなかったのかよ……どうしてこんな所で命かけて、そんなカッコいい死に方してんだよ……これじゃ、あたしが殺したみたいじゃねぇかよ……」
この作戦の立案は誰か、あいつらに戦う力と理由を与えたのは誰か、思考を巡らせれば巡らせるほど、あたしは自分が許せなくなる。だが、それで何かが変わるわけじゃない。死者が蘇る訳じゃない。この戦争に加担した時、こういう状況も勘定に入れた筈だ。だから、あたしはただこの戦争を終わらせることしかできない。選ばれた人間しか幸福になれない、この社会もろとも……
………翌日………
「魔王様、アクセルより定期報告です!アクセルへの王国軍の反撃は苛烈なれど、その強固な城壁が我らの助けとなり敵を撃退!ご息女はまさに武神の如き活躍とのこと!こちらに被害は殆なく、援軍も不要との事です!」
「おぉ!娘が戻らないので心配していたが、そのような状況だったか!道理で報告者以外戻らぬ訳だ……お前もよく報告してくれたな。今日はゆっくりと休め!」
「はっ!ありがとうございます!」
翌日からの侵攻軍の報告を聞く限り、どうやらアクセルはたいした抵抗もなく魔王軍に下ったらしい。消耗している筈の侵攻軍が戻らずに防衛戦を敷くには、アクセルからの安定した支援が必要不可欠。つまり、街の人々は何事もなく生き残っていることになるのだが、それをカズマへの裏切りと取るか、慰めと取るか、今のあたしには判断できない……
「そうだ。アクセルの街の冒険者はどうした?あいつらはそれなりの勢力の筈だ。そう簡単には制圧なんて出来ないだろ?」
「領主の降伏後には我々の庇護下に入っています。本より野生の魔物程度しか狩れない連中ですので、直ぐに保身に走りました。見張りや街の管理など、取るに足らない雑務はあやつらにやらせています」
「そうか……まぁ、あいつららしいと言えばらしいな……」
なんでそこにカズマ達が入ってないのか、それだけが腑に落ちないが……
「それとウィズ様なのですが、素晴らしい商品を取り揃えて我々の補給線を支えております。彼女に出資することで、我らの軍備も安泰ではないかと報告が挙がっております。こちらに送金用の魔導具も来ておりますし、この提案には余程の自信があるものかと……」
「あのウィズがだと?!そんな馬鹿な話があるか!セレスディナ!お前がアクセルに居たときはそんなに繁盛していたか?!」
「いや、赤字に追われて内職やクエストの手伝いに駆り出されていたぞ。まぁ、カズマの商品は売れていたし、新しい兵器の開発もしていたから、それを指しているなら分からなくもないが……」
ひょっとしたら、バニルか誰かがカズマの製品を作り続けているのかも知れない。カズマがこの世界に何を残したのか気になるし、今度あたしも店を訪ねてみようか……
「異世界の品に更には兵器だと?!それが例の銃と言うものなら、我らの軍備は更に盤石になる!よし、早速そこに投資だ!セレスディナ、日本の製品はどれだけの売上を出していた?」
「軽く見積もっても数億だ。大きな戦争が当面無いのであれば、大量に投資しても損はないだろうよ」
それに、それでカズマの名前が広まるなら、少しは手向けになるかも知れない。いや、手向けなんて取り繕いは辞めよう。ただあたしが、カズマの名前を残したいだけなのだから……
「では、軍備から10億をウィズの元へ送れ!魔王軍の軍備を増強し、次の戦に備えるぞ!」
「はっ!直ぐに取り掛かります!」
ただ、カズマの武器が人に向くなんて、あいつも望んでないだろうけどな……
…………3日後…………
「おい、流石に報告役しか戻らないのはおかしくないか?投資用の魔法陣も使い捨てだったし、アクセルの内情が何も掴めないってのはどう考えてもおかしいだろ?」
「ふむ…そう言われると違和感があるな……」
アクセル攻略から3日。あたし達は謎の不気味さに襲われていた。連日の報告はまさに理想的で、あたし達の戦争は信じられない程の快進撃と言える。だが、どう考えても戦力が合わない。王国軍相手に連戦するなら、明らかに戦力が不足している筈だ。完璧にハマったとされる高度な戦術も、魔族の知性では実現が難しい。そうなるとこの状況は二択、アクセルが見捨てられ、攻めて来ているのが雑兵の場合、そしてもうひとつは……
「この勝利が巧妙な罠の場合か……」
「そんな馬鹿な!あの軍隊を全滅させ、尚且つ討ち漏らしも出さないなど不可能だ!それに連絡役には洗脳の痕跡も何もなかったぞ!何をどうしたらこんな嘘などつかせられる?!」
これが罠だと想定した場合、実は1つだけ嘘の報告をさせる方法がある。目の前にいる現実の女を夢だと勘違いさせる程のプロが、あの街には大量に居るからな。
「今日は娘が戻る予定だったよな?それなら、まずはアイツから話を聞こう。それで相対的な判断をするしかねぇ。ここにいる最低限の護衛をアクセルに送るのは、流石にリスクが高いからな…」
「そ、そうだな。我が娘ならば、嘘にも幻惑にも騙されることはない筈だ。とりあえずはその報告を……」
バタンッ!
「おっと、これはなんと言うグッドタイミングか!不安で仕方ない残り僅かな魔王軍の皆様!元幹部の吾輩が、汝らが求める情報をお持ちしたぞ!」
「「バニル?!」」
緊張感の走るあたし達の間に、呼んでも居ないバニルが顔を出す。存在を秘匿していたコイツが顔を出すなんて、余程の理由が無ければありえない!まさか、コイツがアクセルに加担しているのか?!
「貴様!このタイミングで顔を出すとは、まさか裏切っていたのでは無かろうな?!」
「おっと魔王よ、言い掛かりは辞めて貰おう。吾輩は魔王軍の幹部として勇敢に戦い、そして女神と英雄の前に敗れたのである。そして、残基による復活から療養を経てここに居るのだ。結界が崩壊寸前であることを考えれば、それが嘘ではないことは想像できよう?」
療養って……お前の残基システムって割りと即座に全快するだろ……いや、あたしも人のこと言えないけどさ……
「……その言葉を信じるとして、真実とはなんの事だ!持ってきた情報をこちらに渡せ!」
「ふむ、本当ならば即座に渡したいのだが……吾輩もいかんせん生きていかねばならぬ身。命からがら手に入れた情報を無償とは……」
「えぇい回りくどいな!それはいくらだ!」
「なんと特別価格!61万とんで65エリスである!」
こいつはこの状況でもそれをやるのか?!いや、悪魔族の常識はあたし達には理解出来ないし、そもそも魔王より強いとされるアイツにとって、この状況もさほど危機では無いのかも知れないが……
「おい!狙いすましたかのような私の全財産はやめろ!流石にそれはおかしいだろ?!」
「……では、侵攻軍のことは諦めるのだな?」
「なっ!何故そこで軍が出てくる?!」
嘘をつかないバニルの口から、決定的な名が上がる。つまり、バニルの手にある記録水晶には、この戦争における重大な何かが記録されているのだろう。もしそれが罠の真相であるなら、その情報は今すぐにでも欲しい。
「魔王、これは従ったほうが良い。危機的な状況への対応は早いほうが良いし、もし問題がないならアクセルで負債は取り返せる。今は何より情報だ」
「おい待て!これは私の個人的な資産でだな?!」
「魔王軍と個人の財布どっちが大切なんだ!」
あたしは自分の財布だけどな!!
「くっ!背に腹は代えられないか……もしこれが下らない情報なら覚悟しろよ!」
「まいどあり!いや、最高の情報であることは約束しよう……あぁ、まず吾輩にとってはな……」
………
「……アクセル侵攻作戦2日目。人間共を恐怖のどん底に落とすため、本日よりこの魔導具を使って映像を残すこととなった。折角の映像なので姫様に一言いただこうと思う。姫様、お願いします」
バニルの持ち込んだ記録水晶は、魔王軍が記録に使用していたもの。確かにこういった情報を残せと指示をしたが、何とも緩い感じがする。というか、娘は姫呼びされているんだな……
「ふぇ?!えっと、こほん……我が名と父の名誉にかけ、この戦をかにゃ!………必ずや勝利して見せる!………と、撮り直しを頼む!」
「「「「「「かわいい」」」」」」ほっこり
いや、可愛いじゃねぇよ。戦争だぞこれ。
「セレスディナ。うちの娘、天使過ぎないか?」
「うるせぇ黙ってみてろ」
「えっ?なにこのプリースト優しさの欠片もない!」
なんであたしがお前に優しくするんだよ!あたしに優しくして欲しいなら、せめて潜入調査の資金を増やしてから言え!
「地図にあった農村を確認しました!住民は既に避難しておりますが、ここで水の補給が可能です!」
「よし!先ずは銀と小鳥を使用して毒の確認をしろ!馬車のタンクを満タンにしたら、再びアクセルに向かって進むぞ!」
銀と小鳥による毒の確認も、あたしの指示した通りの対応だ。だが、カズマの発案が採用されていたら、この後の展開は不味いことになる。そう言えば報告者も話していたな。夜中の爆裂魔法の件を……
………
「じ、時刻は午後11時!隊の近くに爆裂魔法が撃ち込まれて混乱中!クソっ!例の頭のおかしいやつの嫌がらせか!なんか腹の調子も悪いし!既に敵の術中にいるのか?!」
「狼狽えるな!父上との通信は途絶えるが、全ウィザードで大規模なディスペルの魔法を展開する!これなら爆裂魔法と言えど我々には届か……[ドーン!]ひぃっ!…届かないのよね?!これ大丈夫なのよね?!」
「大丈夫ですから落ち着いてください!」
深夜に奇襲をかけられた魔王軍は、娘の機転により何とか被害を出さないで済んだ。なんて、きっとこいつらは考えているのだろう。それさえも罠だなんて、きっと思いもしないで……
…………
「侵攻作戦3日目。昨晩の3発の爆裂魔法により不眠の者が多数……だが、死傷者は0に済んだ。これも姫様の機転が……[ちゅんちゅん!ちょろろろ!!]…おい何事だ?!なんだこの爆音の小鳥の囀りと小川のせせらぎは?!」
ザッパーン!
「け、携帯トイレから爆音と大量の水が出てきました!何部隊か水に流されて隊列を離脱!また、最初の街の水は薄い聖水だったようで、腹を下す者が続出しています!」
「先ずその携帯トイレは何処から出てきた?!なんでそんなヤバいものがある?!」
「無人になった村に取り残されていたものを、何名か奪還したようで……」
カズマの執拗な嫌がらせは、どうやら魔王軍には効果抜群のようだ。たとえ将が罠と警戒しても、その傘下に居る兵たちは決して賢くない。ゴブリンやトロール等の魔物が含まれる以上、こうした簡単なトラップもかなりの効果を生む。多分、カズマはそれを実体験で理解しているのだ。馬鹿なら常に隣りにいるから……
ダパーン!
「ひ、姫様の天幕にも被害!直ぐに無事の確認を……」
「わー!!待て待て来るな!まだパンツ履いてないから来るな!と言うか流されたから替えを履くまでちょっとタンマ!」
いや、あいつも馬鹿サイドかよ?!魔王の次があれとかスゲー不安なんだが?!
………………
「侵攻作戦3日目の夜……明日は、遂にアクセルへ攻め込む……これで、長かった侵攻戦も終わり……ひぃ!」
ドーン!
既に満身創痍の魔王軍の上空、眩い閃光とバカでかい爆音があたりを包む。あぁ、ここまで徹底されたら精神も限界だろう。魔法への耐性なんて致命的に落ちているはずだ。だから、多分この青い光は爆裂の残光ではない。何かの魔法が、発動した光なんだろう。
「な、なんだこの強烈な眠気は……なっ?!お前はまさ……zzz」
ドサッ
「『スリープ』悪いな。ネタバラシはまだ先のお楽しみだ」
「ふふふ……闇に紛れるのにこのローブは悪くない……中々面白いシチュエーションじゃないか……」
「だろ?でも、今日の所は名乗るなよ?こいつらが起きたら厄介だからな」
あぁ、あたしはなんて浅はかだったんだ。刺客を恐れてミツルギと名乗るあいつが、誰よりも狡猾に生きようとするアイツが、そう簡単に死ぬなんてあり得ない。そうだよな、サトウカズマ!
「馬鹿な?!奴は真っ先に死亡を確認したんじゃなかったのか!連絡係は何をしていた?!こんな状況で被害0なんてあり得るのか?!」
爆音と混乱が収まり、不自然なほど静かになった記録装置に映り込んだのは、間違いなくあたしの知るカズマだった。そして、その後ろにチラチラと映り込む紅魔族の奴らに、夜空を飛び交う大量の淫魔達。これが偽装された勝利である何よりの証拠だろう。そりゃ洗脳の痕跡も何も残らないだろうさ。良く出来た勝利の夢に酔い。それを信じて報告してるんだからな!
「お、おいセレスディナ!これはまさか……」
「あぁ、あたしらは勝利なんてしてねぇ。紅魔族の魔力で寝かされて、サキュバスを使ってリアルで都合の良い夢を用意しやがったんだ。この勝利そのものが夢オチとはやってくれるじゃねぇか!連絡役は夢の内容を語るだけで、きっとアクセルの街は平和そのものだろうよ!」
「そ、そんな…ことが…」
だが、それでも1つ疑問が残る。カズマがウィズの協力を得ているなら、魔王軍を殺すなんて真似はしないはずだ。そうなるとあいつらはあの数の魔物をどこへ……
ザザッ…
「映像が切り替わった?!あれは……ウォルバクか?!」
「やっほー!魔王見てる〜?退職金とカズマの投資で温泉宿なんて始めたんだけど、いきなり団体客なんて凄い羽振りが良いじゃない!宿泊費で5億も送られてきたし、このまま2ヶ月ほどのんびりさせるわね〜!あ、残りは退職金に貰っとくから〜!」
「魔王様!慰安旅行の差し入れありがとうございます!」「俺、一生ついていきます!」「魔王様になら抱かれてもいいです!」「さっすが魔王様です!」「アクセルが楽勝過ぎてなんか悪いっす!」
なるほど、まさか魔王相手に詐欺を働くなんて誰も思わないよな。あの投資の話の半額が、軍隊の無力化に使われてるわけだ。そして、その投資先がウォルバクとなれば、あいつらだって疑わないだろうさ。
「なんだそれ知らんぞ?!と言うかあいつら戦争もしないで温泉って……まさかその金は?!」
「あぁ、嘘の報告に書かれてた投資の話だろうな。マジで1人も死なせないで、こっちの懐だけ大打撃だ。しかも温泉ってことは、今頃武器も防具も処分されてるだろうよ。つまり、あいつらは体の良い人質って事だ」
「くそっ!どこまで奴はこちらを愚弄するんだ!」
そんで、あの流れでもう5億がどうなるかと言うと……
「魔王様!ウィズ様から大量の荷物が魔王城に届きました!見張りのものが中身を改めようと封を開けたところ、何故か失神して担ぎ込まれたとの報告です!現在門番殿が解析に当たっておりますが、何のために作られたかもわからないと……」
「なんだそれは?!一体なにがあったのだ?!」
やっぱりウィズのところだよなぁ……
「あぁ、それはあの貧乏店主が仕入れた『驚かすと言う工程を飛ばして失神させるビックリ箱』である。誰もが失神するほどのビックリを体験できると、1名のドMクルセイダーに大好評で……」
「それはもはや兵器だろ?!というか1人しか褒めとらんじゃないか!おい!そんな危険なものを城の中に入れるな!全てどこかに投棄しろ!」
いやいや、そりゃ多分悪手だぞ?あの店に置いてあった商品は、あらゆる意味で取扱い注意だしな……
「これは購入者様に善意で教えるが、アレの中には水を検出して爆裂魔法を放ち、雨雲をふっ飛ばして晴れにする魔導具が含まれるぞ?」
「おい待て!なんだそのヤバいアイテムは!何を目的に作られたんだ!」
「折角のピクニックが雨だと悲しいであろう?それをスッキリ解決するアイテムと言う事で……」
「行き先ごと吹き飛ぶではないか!馬鹿なのか?!作ったやつは荒野か砂漠にしかピクニックしないのか?!」
「落ち着け魔王!あそこに写ってた魔導具の中に、水を出すものがあったよな!もし門番がそれを起動したら……」
「そ、そうだな!先ずは門番にこのことを…」
ちゅんちゅん!ドォーン!!
あっ……これはまさか……
…………………………
「ま、魔王様……どうかお気をつけください……私が多量の魔導具について調査をしていたら、連鎖的に複数発の爆裂魔法が……」
爆音を聞き付けて外へ出ると、魔王軍最強の名を持つ門番のやつがアフロで黒焦げになっていた。まぁ、それも無理はないだろう。散らばる破片を見る限り、こいつは少なくとも爆裂魔法を8発は受けていることになるからな……
「死ぬな!最強と名高いお前がこんなところで死ぬんじゃない!くそっ!誰か治癒魔法に長けたものは居ないのか!」
「あ、ここにエリクサーなら……」
「おぉ!少しは役立つものがあるでは無いか!さぁ、早くこれで回復するのだ!」
「いやでも注意書きが……」
配達員が差し出したエリクサーを受け取った魔王は、即座にそれを門番の口に流し込む。だが、その配達員の声にはどうにも聞き覚えがあるし、なんか注意書きとか言ってたような……
「ごふぅ!ま、魔王様……これは…聖属性のエリクサーで……ぐふっ……」
ガクッ
「門番ー!!」
「ふむ、それは女神が聖なる力でポーションをエリクサーに換えたために、あの店主が売れなくてどうしようか悩んだ商品であるな」
「それを先に言わんか?!」
「配送員が言おうとしていたし、商品名に女神製の聖なるエリクサーと書いてあろう?」
「そ、そんな馬鹿な……あっ書いてる…」
うん、本当にお前は落ち着け?それで魔王務まるのか?加護とか無かったら本気で致命的だぞ?
「くそっ!狡猾な男だと聞いていたが、まさかここまでの事をして来るとは……サトウカズマめ!許すまじ!」
「いやそれは自爆だろ」「自爆であるな」
認めたくないのは分かるけど、流石にそれはねぇわ。
「おいちょっと待て!流石にそれ全部俺のせいはおかしい!というか、この荷物の出処もウィズなんだが?!なんなら、俺は誰も傷つけてないんだが?!」
「き、貴様はサトウカズマ?!よもや配達員に化けて忍び込むとは小賢しい真似をするではないか!」
あぁ、やっぱりあの配達員はカズマだったのか。本当に無事で良かったと喜ぶべきか、この危機的状況を嘆くべきか、と言うかまさか魔王討伐に来たとか言わないだろうな……つうか全然こっち見ねぇし、やっぱり記憶はねぇんだな……
「お父様、お待ちください!サトウカズマの言う事は本当です!あの詐欺まがいの行為の主犯はバニルとウォルバクであり、この男は無血で戦争を止めただけなのです!」
「なに!娘よそれは本当か?!おいバニ……あやつ、もう居らぬではないか!あいつ本当にいいかげんにしろよ!」
バニルのこの行動は相変わらずとして、荷物の中から飛び出した魔王の娘が、何故かカズマのことを擁護している方が気になる。口の周りにカスタードクリームが付いているあたり、こいつも多分スイーツとかで籠絡済みなのだろう。にしても食べ物で釣られるってどうなんだろう。まぁ、こっちにそんな美味いものはないけどさ……
「サトウカズマはアクセルと魔王軍の停戦を望んでおり、その為に我が軍に死傷者の一人も出さずに無力化しました!この男の提案は一考に値する話と判断し、私が共に馳せ参じたと言うわけです!」
「そ、それが本当であるなら、サトウカズマを無下に扱えば魔王としての沽券に関わる……分かった。話を聞こう」
要求ってのは、恐らくアクセルとの不可侵条約的なもんだろう。ただ、事実としてあたしらの軍は敗北して、軍隊が丸ごと捕虜になっている。そうなると、カズマからはもう1つくらい要求があると思うんだが……
「俺からの要求は2つだ。確保した魔王軍は全員無事で帰すから、アクセルへの不可侵条約を結んでくれ。既に勇者を送る担当者がこっちに来てるから、新しい勇者が来るのは俺かアクアが死んだ場合に限る。少なくとも、俺が無事な限りはアクセルを攻める理由はない筈だ」
「ほぅ、私を前に嘘をつく気概など無さそうだしな。その言葉が真実ならば一考しても良い。して、もう1つの条件とはなんだ!」
「それは……」
「それは?」
カズマの纏う雰囲気が一転し、突然重苦しいモノへと変わる。アレだけの人質を抱えてなお緊張するって言うのは、恐らくただ事ではないのだろう。カズマは魔王に、一体何を要求すると言うんだろうか……
「言えないのなら私から言います。お父様!わたしとサトウカズマの結婚を認めてください!!」
……………は?
「「はあぁぁぁーー?!!」」
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
魔王軍幹部は恐ろしい。敵とか仲間とか問わず恐ろしい。という事で、門番さんは雑に退場です。すまん!
次回からは魔王の娘とカズマの甘酸っぱい新婚生活が始まるかも知れませんが、またお暇な時にでもお付き合いください。