※この作品はR-18です。

この孤独な闇職者に福音を   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

2連載です。この更新速度で2連載は無謀ですよね?って思いつつ、真の隙間商法のプロ(最低な称号)としては、ライバルが居ないなら手を出すしかねぇ!って思った次第です。

またお暇な時にでもお付き合いください。


この二人に不運な再会を

諜報員の仕事と言うのは、何も情報を集めるだけじゃない。嘘の情報を流したり、時には撹乱や政治利用なども行う。まさに見えない武器で戦うプロだ。

 

「魔王軍!本キャラバンに向かって進行中!その数、少なくとも1000!」

 

「こ、こんな数に勝てるはずがねぇよ!逃げろ!積荷なんていいから逃げるんだ!」

 

「これは秘密裏に作った新型武器の数々だぞ!魔物共に渡せるものか!」

 

「ならそれで戦えよ!俺は死んでまで報酬なんて要らねぇからな!」

 

「くそっ!俺を置いていくな!」

 

不可解な魔王軍の進行ルート、存在しない武器の闇市場の噂、そして不自然な鉄鉱石の流通経路に、最近頭角を現した鍛冶ギルド……その全てがあたしの掌の上だなんて、きっと誰一人考えつかないだろう。情報とは、まさしく対局を変える武器だ。

 

「最新の装備が150人分……流石ねセレスディナ。次はいつかしら?」

 

「財源の立て直しに二月って所だろうな。だが、情報の出処を探られることを考えれば、3ヶ月は置くべきだ。保険はかけておく方がいい」

 

あたしの隣で戦利品を眺める女は、魔王軍幹部のウォルバク。智将にして化け物じみた攻撃力を持つアークウィザードであり、なんか元々は女神だったらしい。そして乳がデカい。人間離れしてデカい。

 

「そう言えば、貴女あの4人の仇に手を出すなって言ったそうね?魔王が頭を抱えてたわよ?」

 

「仕方ねぇだろ……何度でも蘇生する奴を相手にするなんざ、普通に考えて分が悪い。お前もそいつらの顔と名前を……」

 

「嫌よ。知れば知るだけ情が湧くわ。私は自分の仕事をこなすだけ、もし邪魔をしに現れたら………その時は何度でも殺すだけよ」

 

あぁおっかねぇ。でも、なんか負けフラグにも見えるな。いや、万が一にもありえねぇか?こんな化け物じみたやつが負けるなんて…

 

「そうかよ……そんなこと言ってお前さんが殺されんなよ?相手のアークウィザードは、爆裂魔法しか使えないが究極にそれを突き詰めてるらしいからな?」

 

「えぇ、そうならないように万全で挑むわ。保険もちゃんとかけてね…」

 

ふわっ

その余裕そうな笑みを浮かべたまま、ウォルバクは風魔法で馬車に乗り込む。これから軍事拠点を攻めるというのに、まるでピクニック行くかのような余裕を持って……

 

「さて、それじゃあたしも次の目的地にいくか…今度は流通を狂わせにさ……」

 

………………………………

 

「あぁ、やっぱりポーションは品薄ですか……」

 

「そうなんだよ。今年は生産量が異様に少なくてね。ほら、薬草が美容に効くってあったろ?あんなのが流行るとねぇ……」

 

諜報戦とは、何も直接ターゲットを狙うとは限らない。あたしの用意した偽の情報……と言っても、あながち嘘とも言えない美容に薬草風呂が良いと言う情報は、こうしてポーションの品薄状態を生み出した。こうなると王国軍の遠征隊は自由に動けず、戦況はあたしたちに有利に動く。この間に、軍事拠点をいくつか潰す予定だ。

 

「一応、代わりの物が無いか探してみます。旅に怪我はつきものですから……」

 

「すまないねぇ…こんな状態じゃうちも商売上がったりだよ……」

 

さて、後は代用品があれば買い占めて、再生産直前に高く売るだけだ。武器に関しちゃ代用はいくらでも効くが、流石にポーションに代替品はないだろう。あっても高けりゃ財政圧迫にはなるし、軍事力の低下は免れない筈だ。

 

「あれは高い。あっちは量産できない。あれは…………皮膚が緑になるってなに?!」

 

「おっ!お客さんお目が高いね!こりゃ少し特殊なハイポーションさ!回復量はハイポーションなのに、なんとお値段はポーションと同じだよ!」

 

嘘だろ?!このタイミングでこの新薬!これじゃあたしの3ヶ月かけた計画が………ん?

 

「あの、説明文の皮膚が緑色になるって言うのは……」

 

「あぁ、これ飲むと人の皮膚がオークみたいな色になるんだ。まぁ気になさんな!半年もすればもとに戻るから!それに、緑色の皮膚に憧れる人も特定数いるだろ?」

 

「居ませんよ?!私の知る限りそんな人はいません!」

 

やっべぇ!なんだこの斬新すぎる罰ゲーム!つうかもう色が緑色のヘドロじゃん!飲めんのかこれ?!

 

「ちっ…この前ウィズさんには売れたのにな…」

 

あいつ馬鹿じゃねぇの!これが売れるとでも思ってんの?!と言うか、胡散臭い店であいつの名前が絶対に出るのは何なんだ?!

 

「お嬢さん!ポーションをお探しならこの錠剤型ポーションなんていかがかな?少し効果が出るのに時間はかかるけど、携帯に便利だよ!」

 

「そ、それは本当に便利じゃないですか!お値段はいかほどで?」

 

「ポーションより少し高いくらいさ!まぁ、苦過ぎて飲み込めた人を知らないんだけどね……」

 

「致命的な欠陥品じゃないですか?!」

 

「えぇ…ウィズさんには売れたのになぁ……」

 

だから馬鹿なのかアイツは!元気でやってるとかより、まず店の経営が気になるわ!!

 

「お嬢さん!それならこの最新の……」

 

「ウィズさんは買いましたか?」

 

「あぁバッチリさ!」

 

「じゃあ良いです!」

 

駄目だ!ポーションが品薄すぎて、遂に変なのが湧いてきてる!いや、作戦的には良いのか?でも、確認作業したくねぇ!

 

…………………………………

 

「ふぅ……酷いキャッチセールスにあったな……だが、あたしの作戦は大成功みたいだ。あとは頼んだぞウォルバク…」

 

こうして下準備が終わったら、あたしは別件の仕事に取り掛かる。だが、ここらで少しだけ楽しんでも良いだろう。変装して高級店に行くか、目立つことを避けて宿で飲むか……まぁどちらにしろ一人であることに変わりはないんだ。慰め程度に楽しもう。

 

「こう言う時、カズマさんが居てくれたらなぁ……」

 

「あぁはいはいカズマさんですよ……ってセレナ?!」

 

「へっ……カズマさん?!」

 

なんでコイツここに居んの?!

 

「き、奇遇ですね?カズマさんはここへ何をしに?」

 

「あぁ、ちょっと副業で稼ぎに来てて……セレナはなんでここに?」

 

「私は教えを広める旅の途中です。ポーションなどを買いに来たのですが、どうやら品薄だったようでして……」

 

「あぁ、変な美容法が流行ったからな……そうだ。臨時収入が入ったんだけど、折角だから飲みに行かないか?」

 

「………変な期待してます?」

 

「いや!決してそんなことはないぞ!セレナはプリーストだもんな!」

 

あぁ、コイツずっとあたしを気にかけてんだ。可愛いやつめ!

 

「冗談ですよ。ほら、エスコートしていただけますよね?」

 

「あぁ、喜んで!」

 

スッ

差し出されたカズマの手を、あたしはなんの警戒もなく掴む。あたしは誰も信じちゃいない。でも、カズマには絶対の信頼を寄せているように演じ続ける。それがこの男の、正しい扱い方だから。

 

_____________

 

「なぁ、また部屋飲みで良かったのか?」

 

「当たり前だろ?美味いツマミで酒を飲んで、くだらねぇ話で盛り上がる。これが正しい酒の楽しみ方ってやつだ!」

 

「いや、セレナが良いならいいんだけどさ……」

 

カズマは高級店を指さしていたが、あたしはそれより宿を選んだ。こうして肩の力を抜いて飲める酒は、間違いなく高級店のワインより美味い。と言うか高級酒の味の違いとか分かんねぇしな!

 

「つうかよ。カズマはパーティーの女と甘酸っぱい話とかねぇの?あたしと二人でいて良いのか?」

 

「それなぁ……あるにはあるんだけど、やっぱりその、セレナの顔がチラつくって言うか…色々あって先に進めてないって言うか…」

 

「え?なにお前、そんなにあたしのこと好きなの?!」

 

軽い気持ちでハメたハニートラップだったのに、こいつマジであたしに惚れたのか?いや、そりゃ好都合っちゃ好都合なんだけど……

 

「し、仕方ないだろ……健全な男子にセレナ程の美人は刺激が強いんだよ。しかも可愛くて話しやすくて、それでお互いの初体験の相手とか、気にするなってほうが無理だって……」

 

「いやいやいや!お前あたしの本性知ってんだろ?それで尚騙されるって正気じゃねぇぞ?!」

 

「いや、そのままでもセレナは可愛いし……」

 

「…………………ふぇ?!」

 

こんなガサツな不良女に何いってんだよ?!なんか変な声出たじゃねぇか!

 

「ま、マジで言ってんのかよ…口調を戻せとか抗議してた癖にさ…」モジモジ

 

「そりゃ俺的には清楚系が好みだったんだよ……でも何ていうか、セレナはそっちの方が心から楽しそうって言うか…セレナらしいって言うか…そっちで笑ってる方が可愛いって言うか……」

 

「はっ?いや、可愛いって…あたし…そんなの…」

 

うおぉー辞めろ!素のあたし相手に甘酸っぱい空気を出すんじゃねぇぶっ殺すぞ!素の時にじゃどうやって返せば良いか分かんねぇんだよ!あれか、取り敢えず素っ気なく返事しとけば良いのか?!ウォルバクみたいに「あら、ありがとう」的な返しが正解か?!

 

「………あ、ありがと」テレテレ

 

「お、おう…どういたしまして?」テレテレ

 

あぁ違う!余計に甘酸っぱくなってんじゃねぇか!もう耐えられねぇ!この空気はあたしには耐えられねぇよ!好感度はもう充分なはずだし、ここはもう突き放すしかねぇ!

 

「で、でもな!何を言われようとあたしはプリーストだ!カズマのものにはならねぇからな!」

 

「そうやって未練を断ち切ろうとしてくれるのは、セレナの優しさなんだよな……」

 

いや、お前あたしのことどう見えてんの?!補正かかりすぎだろ?!

 

「ありがとうセレナ。俺やっぱりセレナが好きだ。友達として、これからも仲良くしてくれ…」

 

「お、おう…まぁ、友達としてなら、良いけどさ……」プイッ

 

うぅ、まだ顔が熱い…こんな空気どうしたら変えられるんだよ。誰か教えてくれよぉ……

 

「………」ジー

 

…ん?

 

「………」ジーーー

 

「………いや、お前さ?この流れで人が目を離したスキにパンツをガン見するのは違うだろ?」

 

「いやその……セクシーなのが見えたのでつい……」

 

お陰で頭は冷えたけどさ。なんか……なんかさぁ!!

 

_________________

 

「へぇ、あれからそんな事がねぇ……」

 

初恋みたいな空気から開放され、あたしらはまた仕事のグチで盛り上がっている。成果は求めるのに金は出さない上司(魔王)の話に、金を稼いでも浪費する女神。金の問題はどこへでもついて回るらしい。

 

「でも、大金で殴って花嫁掻っ攫うとは思い切ったよなぁ…」

 

「おう、我ながらやってやったぜ!」ドヤッ!

 

「いや、そもそも借金の理由お前らじゃん?」

 

「そ、そこはほら……な?」

 

いや、な?じゃねぇだろ……

 

「でも、セレナの上司?教会の偉い人か知らないけどさ。セレナに甘え過ぎじゃね?普通は組織で仕事ってするのに、殆どセレナのワンオペじゃん!」

 

「そう!それなんだよ!普通に人材不足が深刻でさぁ!誰か来てくれたら楽になんのによぉ!」

 

まぁ、人手不足の1番の原因はお前らなんだけど……

 

「いっそ転職とか考えないのか?そんなブラック企業に勤めてたって、なんも楽しくないだろ?」

 

「楽しかねぇよ。でも、ある意味一番向いてる仕事だし、給料も悪くないしな?」

 

それに、あたしには他に居場所なんてねぇしな……

 

「そうかぁ……俺には会社勤めとか絶対に無理だろうなぁ。今回も小狡い金稼ぎに来たわけだし…」

 

「おぉ!そう言えばカズマは副業で来たって言ってたな?どんな副業なんだ?」

 

「あぁ、薬草採取からポーション自作して、品薄になってる所に割増で売りに来たんだよ」

 

「へぇ〜……えっ?!」

 

ポーション?コイツいまポーションって言ったか?!

 

「な、なぁ…ちなみに何本用意したんだ…200本くらい?」

 

「ウィズが用意した全自動ポーションメーカーの稼働実験も兼ねてたから………最低生産数の4000本かな?」

 

「……嘘だろ?」

 

それ軍の備蓄が賄える量だぞ?!あたしの計画が……あたしの3ヶ月がココに来てパァ?!と言うか、最低生産数4000本からしか受け付けない生産装置になんの価値があるんだよ!そもそも、変なもん仕入れないでまずそっちのポーションを売れよ!あいつ本当に馬鹿なのか?!

 

「いや〜材料集めには苦労したよ。でも、品薄で高く売れそうだからな!今日は好きなだけ奢ってやるぞ?」

 

「じゃあ、高級シュワシュワを……」

 

「おう!何本でも任せろ!」

 

「……樽で」

 

「へっ?」

 

「樽で!もう今日は記憶なくなるまで飲むからな!付き合えよカズマ!」

 

「えぇ……いや、良いけどさぁ…明日とか大丈夫かよ……」

 

「んなもん明日考えんだよ!」

 

考えてもどうしようもねぇだろうけどな!

 

____________

 

「はぁ…どうすっかなぁ……」

 

翌朝。酔い潰れたカズマを部屋に寝かせたあたしは、対策を講じるべく商会ギルドを訪れていた。だが、既にポーションは売れてしまい、行き先はやはり軍事拠点。このままだとウォルバクの部隊が危ないが、とはいえ今更どうすれば良いか………

 

「セレスディナ。やはり貴様、それが狙いか…」

 

「ドッペルゲンガー……ラグクラフトの部下が、あたしに一体何の用だ?」

 

路地裏に入ったあたしの前に現れた男は、私をセレスディナと呼んだ。そして呼吸音も体臭も無く、服の裾が風になびかない異質な存在など、ドッペルゲンガー位しか思い当たらない。

 

「知れたことだろう?お前を監視していたんだ。我らの仇に肩入れする。裏切り者のお前にな……」

 

「裏切りとは言ってくれるじゃねぇか?ここで下手に喧嘩を売ってみろ。それこそ滅ぶのはこっちだぞ?」

 

まぁこんな下っ端が、事の重要さを把握しているとは思えないけどな……

 

「そうやってかばい続けてきたのだろう?お前の意中の男をな!」

 

チャキッ

「おいおい。それであたしを殺そうってか?復讐の加護が発動すれば、間違いなくお前もただじゃすまねぇぞ?」

 

こいつ、完璧にあたしを殺しに来てるじゃねぇか…本当に無知なのか?

 

「それ故の分裂体だ。そして、その加護にはもう1つの効果があったはずだ。この町の住人を、全滅させる程の副産物がなぁ!」

 

ドスッ

「ごふっ…お前…それを分かってて…」

 

「さらばだセレスディナ。お前は作戦のために自ら犠牲になったと伝えておこう。この街が滅べば、王国侵攻への足掛かりが……ぐふっ!何故だ…なぜ本体へ…」

ドサッ

 

「女神の力が、そんな下らねぇスキルで防げる訳ねぇだろ…つっても、あたしを守れる力でもねぇんだけどさ…」

 

ガクッ

あぁ、あたしのつまらねぇ人生もこれで終わりか……悪いなカズマ…もし呪いから生き返ったら、この街から早く逃げてくれ…お前との時間は、結構悪く無かったぜ……

 

「あぁでも、こんな結末が分かってたら、頬にキスくらい……してやりゃ…良かった…な」

 

…………………………………

 

「はっ?!あれ、ここって…」

 

死んだはずの私の目の前に、何故だか木製の天井が見える。カズマに聞いた話だと、死んだら目の前には神様が座ってるはずじゃ……

 

「あら、目が覚めた?貴女、昨日ドッペルゲンガーに襲われて一日寝てたのよ。私の治療が無ければ今頃死んでたんだからね?」

 

「ち、治療って……あたし、ナイフが心臓に刺さってたんじゃ…」

 

「そうよ?カズマさんが私の元へ運ぶのが少しでも遅かったら、間違いなく死んでたわよ?くぴっ…ぷはぁ!」

 

そうよ?!心臓刺されて治してそうよって言ったのか?!いや、でもこの青い髪はカズマの証言に一致する。多分こいつが水の女神!ただ、なんで酒飲んでんだ?

 

「助けて頂きありがとうございます。私はプリーストのセレナ。貴女のお名前を伺っても良いでしょうか?」

 

「アクア、私は水の女神のアクアよ!と言ったところで、貴女も信じないでしょうけどね……ぐびっ……かはぁっ!」

 

確かに飲酒している姿は女神には見えないが、これ程の治癒力を見せられたら疑いようがない。こいつは間違いなくカズマの言う女神だ。患者の前で構わず飲酒する所も、カズマの証言に一致する。

 

「いえ…あのような致命傷を癒せるなど、正しく女神の御業です。水の女神アクア様、お会いできて光栄です」

 

「へっ?し、信じてくれるの?!」

 

「はい!その実力とお姿を見て、一体誰が疑うというのでしょう!」

 

飲酒はまぁ、相応しくないとは思うけどさ……

 

がちゃっ

「よぉセレナ。怪我はもう大丈夫か?」

 

「カズマさん!ありがとうございます。女神様の癒やしに救われました。もう痛みもありません!」

 

部屋に入ってきたカズマは、まだ酒の残った青い顔をしている。そんな状態であたしを探し回って居たなんて、何というか、マジでキスくらいしてやろうかな……

 

「………本当になんとも無いのか?」

 

「はい。女神様のおかけで」

 

「ふふーん!まぁ、私の力なら当然よ!女神として崇めなさい!ついでに追加のお酒も差し出しなさい!」

 

あれ?なんか、カズマの顔が深刻に……

 

「流石のアクアでも、後遺症は治せないよな……」

 

「ちょっと?!私の治療は完璧よ!後遺症どころか傷跡も無いわよ!」

 

後遺症?!あたし、まさか体の何処かに異常が?!

 

「良いんだアクア…お前は良くやってくれたよ…たとえアクアが女神に見えたとしても、セレナが無事なら充分だよ……」

 

「いやおかしいから!私が凄い治療を施して一命を取り留めたのよ?!普通に信じるもんじゃないの?!」

 

「そんな訳あるか!アルコール買ってこいって言うから消毒用のアルコール買ってきたら、「いや、私に献上するアルコール飲料なんですけど?」って返す奴が女神なんて誰も思わねぇよ!これ絶対に脳に障害残ってるだろ!」

 

え?そんな事要求したのこの女神?!

 

「だ、大丈夫ですから!別に人となりとかオーラで女神って判断してませんから!ヒールの凄さが段違いだったので信じただけですから!」

 

「おかしいから!それを大丈夫って言うのはおかしいから?!私恩人なんですけど!」

 

「あぁ良かったセレナ…もう大丈夫だな…」

 

「なんでよぉー!!」

 

そこは自業自得だろ……

 

………………………

 

「私女神だもん……本当だもん…神々しいもん…」グスングスン

 

部屋の隅っこで酒瓶を抱く女神はさておき、あたしの元へカズマの仲間が集まってきた。まぁこんな事があったのだ。色々と聞きたいこともあるだろう。

 

「では、まずは私から………我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りしもの!そして、魔王軍幹部をもっとも屠りし者!」

 

「とまぁ、このお決まりの事を言う紅魔族がめぐみんだ。もしセレナの事を襲ったのが先見隊かなんかだったら、本隊はコイツが吹っ飛ばすから安心してくれ」

 

「えぇ!魔王軍幹部でも粉砕してやりますよ!」

 

「こ、心強いですね……」

 

おいやめろ。その対象だとあたしが含まれる。と言うかこんなガキだったのかよ…人相書きじゃ分からねぇよ……

 

「セレナ殿、この度は災難だったな。私の名はダクネス、クルセイダーだ。貴女の安全が確保出来るまで、私が貴女の盾となろう」

 

「ありがとうございますダクネスさん。まさかこんな事件に巻き込まれるだなんて、私の信仰が足りなかったのでしょうか……」

 

この金髪がダスティネスの令嬢か、低レベルなうちからベルディアの攻撃に耐えていたタフさを考えると、あたしにコイツを倒す手はないな。信仰心も高いみたいだし、デスも通じそうにない。

 

「しかし、ドッペルゲンガーに狙われるとは運がなかったですね。あれは人を殺して成り代わる事がある恐ろしい魔物です。きっと、人々に信用のあるプリーストを狙ったのでしょう」

 

「なるほど……確かにプリーストってだけで信頼される事はある。それを利用するなんて、なんて外道な!」

 

「その陰湿で根暗な発想はきっと魔王軍のやつよ!やり口が小汚い感じも間違いないわ!」

 

それ全部あたしにも刺さるやつな?いや、自覚はあるんだが……

 

「と言うことだから、貴女は当面うちのパーティーで護衛することになったわ。アクセルまで追ってくるなんて事はないでしょうし、今はしっかり回復に専念してね?」

 

「いえっ!そこまでご迷惑をかけるわけにはいきません!直ぐにでも出ていき…あれっ?」

 

「「危ないっ!」」

ガシッ…バタンッ

ベッド立ったあたしの身体は、踏ん張ることも出来ず倒れ込む。ここでダクネスが手を差し伸べてくれなかったら、きっとそのまま床にキスしていただろう。そう、目の前のカズマのように……

 

「セレナ殿、貴女は本当なら死ぬほどの怪我をして、更には失血死するほどの血を失っているんだ。カズマが貧血になるまでドレインタッチを続けたから話せてはいるが、まだまだ安静にした方が良い」

 

「そうだぞ?じゃないと床とキスする事になるからな…」

 

そうだな。キスしながら言われると説得力凄いな。

 

「貴女、信仰を広める旅をしているそうじゃない?それなら、アクセルなんてまさにピッタリだと思うのよ!誰も私を女神と認めてくれないし!きっと信仰心が失われているんだわ!」

 

自分を棚に上げすぎだろ…カズマの事前情報が無かったらあたしも信じねぇよ…

 

「でもさ。こんな事があったんだからたまには休暇を取っても良いだろ?セレナが死んだら、仲間達も困るだろうしさ?」

 

「そう言う事なら、お世話になります…」

 

まぁ誰も面倒見てくれる奴なんて居ないし、こいつらの情報を集める意味でも、一緒に居るのは悪くないか…

 

「それじゃあ早く帰りましょう!2倍にまで釣り上げたポーション代で、帰ったら思いっ切り飲もうじゃない!」

 

「あれ2倍まで釣り上げたのかよ…足元見過ぎだろ…」

 

「アクアのせいで配送代金が払えないからと、軍事拠点への送付は今日になったそうです。もし、ここで魔王軍に襲われでもしたら………」

 

あれ?それならあたしの策略は成功したんじゃ……

 

『緊急クエスト!緊急クエスト!軍事拠点に魔王軍襲来!物資の不足により敗走しているとの事です!敗走中の兵士を受け入れる為、冒険者の皆様は防衛戦と治療にご協力ください!』

 

……………よしっ!!

 

「え〜と……私達のレベルじゃ足手まといだし、今日のところは帰るとしましょう!そうしましょう!」

 

「そ、そうですね!宿を空けないと、負傷した兵士の皆さんが困るでしょうからね!」

 

「お、おい!ここは私達も防衛戦に……」

 

「はぁ、ダクネスは信仰深いセレナを見捨てるのか……さっき約束したばっかりなのに…次死んだらエリス様に言いつけてやろう……」

 

「おい!エリス様を出すのは反則だろ!分かった!私はセレナ殿の護衛を優先するから!うぅ……折角の楽しい時間が…」

 

残念がり方おかしくねぇか?

 

「そういう事だから、これからよろしくな。セレナ!」

 

「はい、お願いします!皆さん!」

 

じゃあ、たまには休暇を楽しむとしますか、こいつらが相手なら、万が一にもバレはしないだろうし……

 

「それはそれとして。後で二人で話をしたいんだ。主に、セレナの職業とスキルについてさ…」

 

はっ?!カズマの手にあるのは、あたしの冒険者カード……そうか、怪我をした時に身元の確認か何かに使ったのか……

 

「分かった。あたしも覚悟を決めるよ。後で二人で、話をしよう……」




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

会話の節々にネタを放り込んでたら時間が……でも、そうでなきゃこのすばではないので悩んでいる私です。

セレナが居てもカズマのパーティーは何も変わらない……ように見せかけて、次から少しずつ、変化は始まっていきます。

また不定期ですが、お暇な時にでもお付き合いください。
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