前回なんとなく重い話につながる終わり方をしました。さて、伏線回収といたしましょう。またお暇な時にでもお付き合いください。
「悪いなセレナ。こんな場所しか無くてさ……」
「構わねぇよ…あたしへの配慮だってことは、ちゃんと分かってるからさ…」
人通りの無い裏路地のベンチに、あたしはカズマと一緒に座っていた。あれからカズマの仲間に色々と聞かれたりはしたが、それでも致命的なミスは何もなく、ただあたしを流れのプリーストだと思っていることだろう。まぁ、アクアのやつがアクシズ教徒だと勘違いしていたのは懇切丁寧に訂正したが……
「ダークプリースト…そしてセレスディナと言う名前……何度確認しても間違い無かったし、冒険者カードに嘘はつけない。だから、これが真実なのは間違いないんだよな…」
「あぁそうだ。その内容に間違いはない…」
カズマに返された冒険者カードを眺めながら、あたしはこの先の対応を考えていた。魔王軍にカズマを勧誘するか、それともウィズのように人畜無害を貫くか、難易度が低いのは後者だろうが、それは問題の先延ばしでしかない。だから、ここでカズマを本気で勧誘して、もしそれで駄目なら……ここで手を下すしか……
「辞められないのか……」
「あぁ、残念だけど。あたしはこんな生き方しか知らねぇし許されねぇんだよ…そんなの理解しているはずだろ?」
「……そうか。なら、この話は俺達の秘密って事で終わりだな。辞められない理由は話したくないんだろ?
「へっ?いや…普通ならここでもっと追求するだろ?!なんでお前そんなにアッサリと…」
カズマのあたしへの反応は、まるで何も知らなかった頃のままだ。でも、普通そんな対応が出来るはずがない。あたしは魔王軍幹部で、この戦争に関わってて……
「俺も、昔そうだったからな。悪の道に手を染めてさ…聞かれたくないってのは理解できるよ……」
「お、お前…それでもあたしを側に置けるのかよ!アクアとかに危害を加えるとか考えないのかよ!」
「セレナはそんなことしないだろ?お前は線引が出来ているからな…」
ははっ…マジかよコイツ…あたしの事をここまで理解して話を進めてんのか…
「だから、いつか辞められる時が来たら辞めてくれれば良いよ……中二病はさ!」
「へっ?!」
いや待て?ダークプリーストの冒険者カード見て中二病って言ったかこいつ?!普通に考えて中二病はねぇだろ?!
「神に反旗を翻すとかさ……昔は憧れたもんだよな…」
「えっと…いや、流石にそんな馬鹿な事は考えてなくて……」
「そりゃそうだろ?それでアクアを襲われたら溜まったもんじゃないからな。それに、セレナはちゃんと日常生活に支障をきたして無いしな。めぐみんと違って!」
あ〜、これ凄い前例が眼の前にいるからかぁ〜。これ一応乗っかっておいた方が良いよな?あたしが脅威と思われない為にも……
「ふっ…よくぞ見破ったなサトウカズマ!神に牙剝く我が信仰を!」
「……………」ジー
あれ?何これ、なんで無言なの?これじゃあたし完全に恥ずかし損じゃん?!
「た、頼むからなんか言ってくれ…これ、完全にやらかしたみたいじゃんか…」
「いや、流石にそのレベルじゃ無いと思ってたからさ……でも、恥ずかしがってるって事は本当は辞めたいんだろ?」
本当にどころか先ず中二病じゃねぇからな?!て言うかレベルって何?!
「そ、それに関しては……出来れば今すぐにでも改めてくれると……」
「それはダークプリーストを卒業してからな?」
この野郎!ダークプリーストを中二病要因だと思ってやがる!お前が女神の眷属じゃなきゃ、すぐにでも傀儡にして足を舐めさせ……いや、それはなんかエッチだから辞めよ…パシリ位にしよ……
「分かったよ…でも、他のやつには……」
「アークプリーストだって伝えてやるよ。だから、早く卒業出来るように頑張れ!」
あぁ!畜生グーで殴りてぇ!助かったけど納得行かねぇ!!
……………………
「ということで、今日はセレナの歓迎会だ。では、セレナから1言お願いします」
「えぇー、リハビリも兼ねてカズマさんのパーティーでお世話になる事になりました。アークプリーストのセレナです。皆様、どうぞよろしくお願いいたします」
中二病認定には納得行かないが、それでも助かった事に変わりはない。冒険者なら情報も集まるし、何よりカズマがリーダーなら冒険者カードを隠して報酬も受け取れる。折角だし、少しの間甘えさせて貰うとしよう。幹部討伐のパーティーなんて、荷物持ちでもすれば大金が舞い込んできそうだしな。
「まぁ、私ほどの癒やしの力は無いにしても、ずっとソロだったんだから戦闘力はありそうよね?支援は私に任せて前衛よろしくね!」
「お前、病み上がりのセレナに前衛って正気かよ……」
「安心しろ。私が盾になるのだから、セレナは容赦なくそのメイスで敵と私を殴ってくれ!」
「何故貴女を巻き込む必要が?!」
なんかこれ労働環境悪すぎないか?!
「全く……セレナはせいぜい遊撃ですよ。すぐに下がれないと危ないでは無いですか…」
「あぁ、めぐみんさんはお優しいので……」
「私の爆裂の余波に耐えられるのは、もはやダクネス以外居ませんからね!」
いや撃つなら下がるの待て!と言うかダクネスも巻き込んじゃ駄目だろ!いつもその後どうしてんだよ!
「カズマさん、あなたのパーティーは魔王軍幹部を倒すほどの実力なんですよね?これはちょっとしたジョークって事で……」
「………ごめん」
「謝らないでくれます?!今一番リアルで恐ろしい反応ですよそれ!私もうお留守番でお願いします!」
「一人にしないで!常識枠が一人なのがすごく辛いから!セレナが居れば凄く助かるから!」
「なんで病み上がりの私に助かるとか言うんですか?!」
ヤバイ…この反応はマジでこいつらが地雷だと物語っている!あたしの身の安全を考えるなら、そして復讐の加護を隠し通すなら、このパーティー参加は避けたほうが……
「打ち上げにはお酒も出すし!」
「プリーストにする勧誘方法ではありませんよね?!」
でもそれは飲みたい!打ち上げの酒は飲みたい!と言うかこの場でも飲みたい!ただ、流石にプリーストとしては……
「何を言ってるのかしら?お酒も等しく神からの恵み。そして、人々が笑顔で共に歩む為の潤滑剤なの!それを先輩に勧められて断るなんて、そんな意識で神が喜ぶかしら!」
「いや、流石にその理論は…はっ?!」
止めんな止めんな止めんな!押せ押せ押せ!お前も押せぇ!!
「か、神様ってのは寛大なもんだろうし……俺達としても一緒に飲んでくれたら気兼ねないんだけどなぁ……と言うか圧がすごいな〜…」
「そ、そんなに進められては仕方ありませんね!仲間との調和を乱すことを神は望まないでしょう!と言う事で、これは有り難く頂戴致しますね!」
やったぁ!これで公に酒が飲めるぅ!
「ま、まさかアクアの説得が通じるプリーストが居るなんて……」
「まぁ、一人だけ飲ませないのも可哀想だしな。そっちの方が私達も気が楽だろう?」
「私は飲ませてもらえてないのですが?!」
「小さいうちから飲むとパァになるからな!」
あっ、それでもアイツは駄目なんだ……
「さぁ!今日はセレナの歓迎会だから思いっきり飲むわよ!この前のポーションの売上もあるし!全員にカズマさんが1杯奢ってあげるわ!」
「さっすがカズマだぜ!」「カズマさん素敵!」「最高だぜカズマぁ!」
「アクア!お前また勝手に…」
「良いじゃない。だって、これから皆で助け合っていくんだから、何事も最初が大切よ!」
「いや、そう言われるとそうなんだが……」
「お代わりください!」
はぁ〜しみるぅ!
「おっ!プリーストの癖にやるじゃねぇか?なんなら俺と勝負しようぜ!」
「ここで断ると白けしてしまいそうですね。お受けしましょう!」
「いいわね!私も参加するわ!」
「ちょっ!俺の金ですけど?!」
なんだこれスゲー楽しい!まさかプリーストとして飲める日が来るなんて思わなかったな……
「おいカズマ!アレやってくれよアレ!」
「ちょうどクリスも来たしな!」
「へっ?カズマくんの奢りって言うから来ただけなんだけど?!待ってまさか!」
「「「「スティール!スティール!スティール!」」」」
いや、それを肴にするのは最低だろ……マジで嫁にいけなくなるぞ……
「しょうがねぇよな!これをやらなきゃ白けるからしょうがねぇ!悪いなクリス!『スティール』!」
「いやぁぁー!…………あれ?」
「ん?なんかいつもよりレースが多くてお洒落な気が…と言うかクリスより少し大きい?」
あれ?なんかいきなり下半身が涼しくなったような………うそっ?!
「……あの、カズマさん?」
「はい、カズマです。あっ、まさかこちらの下着は……」
「……返してください。と言うか握りしめないでください!」
こいつなんで後ろにいたあたしの下着を取れるんだよ!
「新人にもやりやがったぞ!」「プリーストにも容赦ねぇ!」「流石クズマさんだぜ!」「意外とセクシーなの履いてるじゃねぇか!」「へへっ!エロいプリーストだな!」
こいつら、人のパンツをタダ見しやがって!目にもの見せてやる!『傀儡化』!
「へへへ!パンツのお礼に一杯奢ってやるよ!好きなの選びな嬢ちゃん!」
「そうですか……では、あちらの高級シュワシュワを……樽で!」
「樽かよ?!いや流石にそれは……いや、良いもん見たから奢ってやるか……歓迎の意味もあるしな……」
「毎度ありがとうございます!大樽入ります!」
よしよし!ほら、次はお前だ!
「そちらの方も私をエロい等と……私はプリーストなのに、深く傷つきました…」
「悪かったよ!俺も何か奢るから…」
はい『傀儡化』!
「では、全テーブルに唐揚げを山盛りで!」
「ちょっ?!全テーブルって!……まぁ、パンツ見ちまったし、それくらいは良いか…盛り上がるだろうしな…」
「あぁ、でも揚げ物ばかりでは飽きてしまいますね?女性の方も沢山おられますし……」
「お、俺は燻製を!」「俺は枝豆を!」「こっちは炙り肉を!」
「はい喜んで!今日は皆さんどうしたんですか?!大盤振る舞いじゃないですか!」
「うふふ、。皆さん、宴会騒ぎが大好きみたいですね。気前のいい方は好きですよ?」
さぁ宴会を始めようぜ!馬鹿な男共の奢りでな!
「では皆さん。この素敵な出逢いと、気前の良い冒険者の殿方に……」
「「「「乾杯!!」」」」
……………………………
「はぁ、食ったし飲んだし……たまには悪くねぇな。こんな日も…」
あれからどんちゃん騒ぎは朝まで続き、今はもう朝日が顔をのぞかせる時間になった。あたしは涼しい朝の風で酔いを覚ましている訳だが、どうやら来客が来たらしい。それも、とびきりヤバい奴が……
「ふ〜ん。心配して来てあげたのに、貴女は随分と楽しそうね?」
「よぉウォルバク。心配ってことは、あたしが襲われたのは知ってんだな?」
「魔王の前で、武器もないのに突然心臓を一突きされたドッペルゲンガーがいたそうよ。そんなの復讐の加護でしか有り得ないでしょ?」
あいつ、魔王の前でやらかしたのかよ……
「そりゃ確かにそうだ。それで、あたしはこれから何をしろって?」
「当面は療養しろって言ってたわ。暴走した部下の処分は勝手に下されたわけだし、心臓刺されて生きてるのが奇跡なのに、それで働かせる程鬼畜じゃないわよ」
へぇ、もうちょい過労のことも気にかけてくれねぇかな……
「それに重要な作戦が計画中らしいわ。要になるのは貴女らしいから、今のうちにしっかり休みなさい?」
「そうかよ。それならそうさせて貰うとするわ」
重要な作戦か……さてさて、どんな過重労働なのかね……
「話はそれだけよ。じゃあ、また生きて会いましょう?」
「あぁ、そりゃお互いにな?」
街の外へ向かって歩き出すウォルバクを見送りながら、あたしはこれからの事を考える。あのポンコツパーティーのメンバーとしてやっていくなんて、休養する暇なんてあるんだろうかと……
「にしてもマジでデケェな……歩くとめっちゃ揺れるじゃん…」
「ちょっと!別に好きで大きくないからね?!」
カズマが巨乳好きな可能性を考慮して、勧誘するときにはアイツも呼ぼう。
…………………………………
「じゃあ、本日のクエストを説明するぞ。標的はジャイアントトード5体。ダクネスのデコイで1箇所に集めたら、めぐみんの爆裂魔法でまとめて殲滅。生き残りは俺の狙撃を連続で当てて倒す。アクアは支援で、セレナは接近時の遊撃、と言う事で問題ないな?」
ウォルバクを見送って数時間後、あたしはもうクエストに駆り出されている。何というか、飲み会翌日ってのはのんびりできるもんじゃないのかね……
「作戦に異論は無いけど……なんで飲み会翌日に朝からクエストなの?飲み会翌日って普通は休みでしょ?!」
おっ、良いぞアクア!言え言え!
「お前が飲み過ぎたからだよ!大人しく奢られたシュワシュワだけ飲んどけ馬鹿!」
「仕方ないじゃない!女子ってやつは色んなお酒を少しずつ飲みたいモノなの!カシスとか付いたら飲んでみたくなるの!」
「そんな可愛い量じゃなかったけどな?!つうか途中から芋焼酎のロックだったしな!」
よーし黙ってて良かった!なんならあたしのが飲んでたしな!
「だが、これで採算が取れるな。報酬は3等分で良いのだろう?」
「へっ?3等分……私の取り分は……」
「セレナの分はあるぞ。めぐみんは生活費を保証する代わりに山分けは無しって契約なんだ。そして、アクアのツケを俺が肩代わりしてるから、こいつも今は同じ条件ってことになってる」
「へ、へぇ……中々立て込んだ事情がお有りのようで…めぐみんさんはそれで良いのですか?」
「ふふふ!これで我が爆裂に罰金が生じたとしても、民事のお金は払えないので実質無罪なのです!」
いや有罪だよ。取り立てようが無いだけで普通に有罪だよそれ。あれ?そう言えば民事の罰則って……
「あの、ダクネスさん?民事罰って固定金額、払えない場合は財産の何割かだったと思うのですが、それでも駄目なら強制労働とかあったような……」
「あぁ、めぐみんは問題を起こし過ぎて、どこの施設も受け入れてくれないんだ。だから、刑事罰にさえならなきゃ本当に無敵で……」
いや、それくっそ迷惑なだけじゃん!何加担してんだよダスティネス!
「あぁ……いつか私が管理するようになったら、収監するたびに泣かされるんだな……しかし、それもめぐみんの為で……」ゾクゾクッ
「貴女、本当に貴族令嬢なのですか……」
なんつうか、こいつが領主になりゃ勝手に滅びそうだぞこの街……
「よ〜し!これ以上セレナにパーティーの欠陥を悟られる前に行動開始!」
「割ともう手遅れな気がしますが、戦闘では普通に活躍してくださると信じます……」
と言うか、そうじゃなきゃ幹部共が浮かばれねぇよ……
………………………
「なんでよぉー!どうして私にばっかり蛙が来るのぉ!!」
「おい!なんでこっちに逃げてきてんだよ!支援終わったら、アクアは囮しか出来ねぇだろう!素直に食われとけ!」
「流石にそれは気の毒過ぎますよ!でもこっちには来ないでください!」
クエスト開始から10分。早くもカズマの立てた無難で単純な作戦は崩壊し、あたし達は蛙に追いかけ回されることとなった。それもこれも、全て馬鹿の身勝手な行動により引き起こされた訳だが……このパーティーにはバカが多過ぎる。
「おい!なぜ私をすぐに吐き出した!早く!もう一度ヌメヌメを味あわせてくれ!体にカレー粉まで振ってきたのに!」
「刺激物じゃないですかそれ!そりゃ蛙も拒みますよ!と言うか、捕食行動してるだけの蛙には、デコイの効果は殆ありませんからね!」
「そうなのか?!」
知っとけよ上級職だろ?!
「あのー。そろそろ飲み込まれつつあるので、私の救出も急いで貰っていいですか?」
「なんでめぐみんさんは遠くの群れを撃ったんですか?!近場の3匹を狙っておけば、あと2匹倒して帰れたんですよ?!」
「そ、そこはほら!結果として4体いけましたから……」
「そのせいで近場の3体に追われてるんですが?!そして貴女が食べられてるの8匹目ですからね?!」
ほんっとにこいつら、頭おかしいんじゃないのか?!
「ほら分かるでしょ?!皆のせいで私がピンチなの!早く助けてよカズマさぁん!」
「お前が追われてんのはダクネスの横に行ってフォルスファイヤしたからだろうが!それもこっちに逃げて来たら、落ち着いて狙撃も出来ねぇよ!」
あぁもう、これじゃ埒があかねぇ!
「カズマさん!蛙を倒すのに必要な矢の本数は?この距離でも倒せますか?!」
「一匹に5本は必要だ!接近されるまでに撃てるのは精々4本、この距離じゃ倒せても一匹だ!」
「なら矢にこの薬を塗ってください!そこまでの即効性はありませんが、間違いなく1本で仕留められる毒です!3匹に一本ずつ撃ち込めば、後は逃げていれば勝利です!私はめぐみんさんの救出に向かいます!」
「わ、わかった!」
くそぅ!こんな所で貴重な毒を失うなんて!でも、流石に蛙には食われて死ぬのはごめんだぞ!
「ちょっとセレナ!蛙に打撃は効かないのよ!貴女メイスしか持ってないじゃない!」
「問題ありません!はっ!」
ゴキャッ!
「おぉっ?!ありがとうございますセレ…ごふっ!」
ぺちょっ!
よし!めぐみんは吐き出された!
「なるほど蛙のスネを!確かに骨には打撃も有効で、これでは跳躍もできない!」
「めぐみんさん!この場を離脱しますので………右足のサラシを掴みますね!」
ガシッ!
「あぁー!ちょっと待ってください!ヌルヌルに極力触れたくない気持ちは理解しますが!それでは後頭部とか背中が……いだだだだ!」ガガガガガ!
「緊急事態なのでご勘弁を!」
だって生臭いし!
「セレナ!そのまま逃げ続けろ!追ってきてる3匹には毒を入れた!そっちも狙撃する!」
「アクアさんは?」
「大丈夫!無事だ!」
「ぶはぁ!ちょっと!たべられてるのを無事とか言わないでよ!」
うわぁ、これで過半数が生臭いことに……
「でも、毒が回ればアクアさんも脱出できます!これで私達の勝利です!」
「あぁ!後は逃げ回っていれば良いんだな!」
「いや、それなのだが……今回のクエストは食材の確保であって、毒を使って倒した3体は討伐数にカウントされるのだろうか…」
「………セレナ、アレって食える毒?」
「そんな毒が有るわけ無いじゃないですか…普通に食べられませんよ……」
あれ?でもそうなると……
「めぐみんさんの爆裂で消し飛んだ2匹も……」
「あぁ、多分数に含まれないのではないかと……」
………嘘だろ?
………………………………………
「はぁ、結局全員ヌルヌルになるとは……セレナも運がなかったですね…」
「運って……ほとんど貴女達のやらかしじゃないですか。温泉に免じて多めに見ますが、普通に考えたら廊下で正座ですよ?まぁ、今はそれよりも……」
ダクネスが報酬の受け取りに、アクアが蛙の買い取り査定を依頼している間に、あたしとめぐみんはカズマの家の風呂でヌルヌルを落としている。勝手にここに住むことが決定されていたり、家の風呂が天然温泉だったりと、驚くべきことは多々あるのだが、今はそれよりも気になることが1つある。
「……なんでカズマさんが一緒に入っているんですか?」
「あっ、めぐみんとの普段の流れでつい……」
えっ?何こいつら、普段一緒に入ってんの?!
「あぁ、セレナが突っ込まないから忘れてました。普通は待つものですよカズマ?」
「おい待て。今回の落ち度はそっちにあるだろ?それなら、一番風呂の権利は俺にあるはずだ」
「おっと、それならばセレナの活躍でプラマイゼロのハズです。そこにはレディーファーストの精神があっても良いのでは?」
いや、なんでお前らこの状況で冷静に口論出来んの?あたし完全に乗り遅れて何も言えねぇんだけど?と言うか濁り湯で見えねぇからギリギリで冷静さを保ててるだけなんだけど?!
「前にも言ったが、それは俺が欲情するほどのレディーになってから言う言葉だ。少なくとも、今のめぐみんには言われたくない!」
「なにをぉー?!では今すぐにその場で立ち上がって見ろぉ!」
ガシッ!
そこで隠しもしないで取っ組み合いかよ?!恥じらえよ年頃の娘だろ?!
「おい辞めろ!はしたないぞ!全部丸見えだからなお前!」
「それに勃たないとか言ったのは誰だオラァ!」
「お、おいっ!本当に危なっ!」
ぐらっ…バシャーン!
「お、お二人共!お風呂では落ち着いて……へっ?!」
転倒したからカズマのあれがお湯から出て……なんかメッチャ反り立ってる!これ本気で興奮してんじゃん!
「ぶはっ!見えましたかセレナ!勃ってましたか?!」
「み、見てませんし!見ようとも思ってません!」
「もう諦めろめぐみん!俺が勃つとしたら、それはセレナに対してだ!お前の身体目当てじゃない!」
しかもコレあたしに対してなのか?!身体を狙われたらこれで貫かれるのか?!こんなのヘソまで来ちゃうじゃん!
「わ、私は先に出ます!お二人ものぼせないうちに出てくださいね!」
「あっ、セレナ?!」
「おらぁ!余所見とは随分と余裕ですねカズマ!」
あたしは身体をタオルで隠しながら、この修羅場と化した風呂場を後にした。そして、この日から3日ほどフランクフルトやソーセージが喉を通らなくなるわけだが、その理由は誰も知らない。
「あ、あんなにデカいって……裂けちゃうだろ……」
そして、この情けない寝不足の理由も、多分誰も知らない。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
セレナが加わっても日常はそんなに変わりません。このすばは何処まで行こうとこのすばなのです。
また不定期更新ではありますが、次回からは少しずつ関係が移り変わっていきますので、懲りずにお付き合いください。