セレナをここまで後に引けない関係にしたので、そろそろ他の嫁候補達を参入させましょう。ご安心ください。アクアはちゃんと対象外です!
ということで、またお暇な時にでもお付き合いください。
カズマ達との日常は、なんの問題もなく平和そのもの。と傍から見れば見えるだろう。だが、人間関係とは影でジワジワと変化していくものだ。だから、こういう時にこそ気を配れるのが、プロの諜報員というものだ。
「やはりカズマとセレナの関係は怪しいと思うのです。ダクネスはそうは思いませんか?」
「馬鹿なことを言うなめぐみん。セレナは天涯孤独でカズマに救われたんだ。頼りたくなるのも仕方ない。それに、セレナは信仰深いプリーストなんだぞ?恋愛なんてするはずがないだろう?」
予定のない日は早寝早起き。そして朝から祈っていると言う設定を付け足すことで、あたしに対する話は自然とこの就寝前に行われる。自分の予定を監視対象と明確にずらすことで、逆に予定をコントロールできると言うわけだ。お陰で盗聴も簡単だし、イメージ戦略もお手の物だ。
「甘いですよダクネス!先日は二人きりで無断外泊!そして度々行われる二人っきりの勉強会!あの二人の関係が発展していても、なんら不思議はないのです!」
「いやしかし、セレナはプリーストなのだぞ?流石にそれはご法度で……」
「分かりませんよ!女神に仕えるクルセイダーが、交際もしていない男にキスをすることがあるのです!ありえないと言い切れるのですか?!」
「わ、私を引き合いにだすな!そりゃ、絶対ないとは言い切れないが……」
あ〜、遂にあたしらの関係が疑われ始めたか…予定より少し早いな。
「と言うわけなので、明日は二人を尾行します。手を貸してくれますね?」
「いきなりだな?!まぁ、気にならないと言えば嘘になるし、私も二人の仲は知りたいが……」
「決まりですね!では、明日は爆裂散歩に出たと言うことで、先に家を出ましょう!朝食は外のカフェで済ませて、変装用の服を買って尾行開始です!」
「それ全部私に払わせるつもりだな?!」
「あ、それならお土産よろしくね?シュワシュワで良いから!」
「アクアは来ないのか?!というか買ってこないからな!」
あの3人の財布事情に興味はないが、それでもこのパーティーの関係が崩れるのは困る。いや、むしろ関係が進展して子供でも出来れば、それが一番脅威の排除になるんじゃ……
「そうだな。そんなにカズマが愛しいなら、あたしが関係を取り持ってやるよ……なぁ、ダクネス、めぐみん……」
ただアクアは隣で酒を飲んで話題にも入ってこないが……まぁ、アクアだし良いか……
……………………………
「錬金術に手を出した以上、それを戦闘に活用しないとな。ということで、自分であらゆる武器を作れる程度には、鍛冶スキルも鍛えるぞ!」
カズマの戦力増強は、本来ならあたしの目的とは逆の意味を持つ。だが、放っておいても成長するであろうカズマに対し、あたしがその成長をもたらしたと言うのは大きなアドバンテージになる。少なくとも、迷いなくあたしに弓は引けなくなるだろう。カズマは変なところで義理堅いからな。
「なぁセレナ。俺の武器って弓と短剣なんだけど……別に初級でも作れるし、普通にメンテナンスは自分でするぞ?」
「まぁ、普通のモノならカズマには簡単だろうな。だが、カズマが作るべきは薬の仕込める特別製だ。どんなに有効な毒を作ろうと、塗るだけじゃ消費が多すぎる。効率的に毒を運用できる武器を作れば、その消耗は最低限で済むって訳だ」
それに、そういう特殊レシピは習得が大変だからな。師という立場を長く続けるにも都合がいい。
「言いたいことは分かるけど、鍛冶なんて個人で何度もやるものじゃないだろ?アルバイトでもするのか?」
「まぁ、そこはあたしの腕の見せ所だな。ほら、さっさと出掛ける準備をしろよ。二人でデートと洒落込もうぜ?」
………………………………
「彼女さんは素材が良いので、きっと何でもお似合いになると思いますよ。もし婚約でしたら、こちらの一級品のモノなんか……」
「それ、プリーストも落とせますか?!」
「そ、それは流石に……」
「じゃあ良いです」
「えぇ……」
カズマを連れてあたしが訪れたのは、アクセルで人気のアクセサリーショップ。プリーストのあたしは華美な装飾は身に着けないので、ココに来た理由は別にある。そう、カズマのレベリングと金儲けの為だ。
「カズマさん、店員さんを困らせてはいけませんよ?すみません店員さん。私、あまり華美な装飾品は好きではなく、日常的に身に着けられるモノをいくつか見繕って頂けますか?」
「はい!直ぐに人気のものをご用意します!」
「……それで、これと俺のレベル上げになんの繋がりがあるんだよ?身につけるだけでステータスが上がる装備なら、普通に魔導具店に行くべきだろ?」
「鍛冶スキル向けにそんなものありませんよ。ですが、ただ作り続けるだけでは材料費がかさむだけです。それなら、売れそうで簡単なものを作って売れば良いのです」
店員が手に取っているアイテムは、その大半が指輪とピアス。この街に富豪と呼べる者はいないし、さほど年収も高くない。そうなれば、狙いは銀細工の指輪だろう。
「こちらが今の売れ行きでして、特にハートのアイテムなんて……」
「売りたいけど売れてないアイテムは結構です。ハートなんて、子供にしかウケないものは……カズマさん、なんで顔を覆っているのですか?」
「……良いセンスとか…思ってないし」
うわダサいやつ居たわ〜。予想外に近くにいたわ〜。流石にそれはねぇよ?
「取り敢えず、コレとコレをください。支払いは現金で……」
「ここは俺が出すよ。こんな所で払わせるとか、流石にカッコ悪いだろ?」
「カズマさん…」
ふふっ、なんだよ。少しは男の甲斐性ってやつがあるじゃないか。まぁ、こんな安物数点で、あたしの心は奪えないけどな!
「あっ、ごめんセレナ。足りなかったから3000エリスだけ出して?」
「……あなた本当に締まりませんね?!」
………………………………
「さて、金もおろしたし飯も食ったし!次はどこ行く?」
「そうですね〜」チラッ
後方18m、口元にスカーフを巻いて盗賊服を来ているのはダクネスだろう。胸がはち切れそうだから多分間違いない。そして、隣の口布をかけた踊り子はめぐみんだ。踊り子なのに色気がないから間違いない。と言うか、その変装は逆だろ普通……
「折角ですからお茶でもしましょう。ほら、そこの喫茶店なんて盗み聞きしやすいデザインで丁度良いですよ?」
「いや何が!それの何が丁度いいの?!」
後ろの二人に丁度いいんだよ。
…………
「ご注文は?」
「私はアッサムのホットミルクティーを」
「俺はクワトロベンティーエクストラコーヒーバニラキャラメルへーゼルナッツアーモンドエキストラホイップアドチップウィズチョコレートソースウィズキャラメルソースアップルクランブルフラペチーノを」
えっ、なにそれ商品名か?!
「はーい!アッサムのミルクティーと馬鹿の全部盛り入ります!」
「バカは酷くない?!」
いや、馬鹿だろその商品名は……誰だよ発案者…
「で、話したいことってなんだ?」
「あら、女の子がカフェで話すことなんて決まっているではないですか。恋バナですよ?」
ガタッ!
あたしの分かりやすい撒き餌に、しっかりと反応するカズマの後ろのバカ2人。全く、本当に単純で分かりやすい。と言うか、あたしに見えてるのに隠れない辺り、それで変装できてるつもりかよ……
「恋バナって……俺の?」
「私はプリーストなのですから当たり前でしょう?めぐみんさんもダクネスさんも、明らかにカズマさんが大好きではないですか?結局どっちが本命なんですか?」
がばっ!
いやそんなに身を乗り出すなって!気付いてないあたしが馬鹿みたいだろ?!
「それは……まだ全然決められて無いです…」
「あら、そうなのですか?どちらも良妻になりそうですのに、随分と奥手なのですね?」
「だって、片方選んだらもう一人は居なくなるだろうし……」
あぁ、こりゃ典型的な優柔不断男だな。あのパーティーが心地良いんだろうけど、現役を継続されると困る。ということで、3人まとめて引退して貰おう!
「では、いっそのこと二人共娶ってしまえば良いじゃないですか。どっちも諦めないなんて言ってたら、他の男性に取られてしまいますよ?」
「プリーストのセレナがそれを言うのか?!」
「えぇ、魔王軍幹部をこれだけ倒した英雄ですもの。貴族のような生活をしても、誰も文句など言いませんよ。それに、あの二人だって可能なら一緒に居たい筈です。お互いのことを大切に思うのは、仲間だって同じなんですからね?」
そして、あわよくばどっちも妊娠して引退すればいい。カズマの後ろの馬鹿二人もちょっとソワソワしているし、これはいける!
「でも、そんなハーレムみたいなこと言ったら嫌われるだろ?」
「そうですね。今のままでは嫌われるかも知れません。だから、ちゃんと二人を愛してあげてください。二人共大切にすると伝えられるまで、二人が納得してカズマさんのモノになるまで、誠心誠意大切にしてあげれば良いのです。失うのが怖いのであれば、それしか方法はありません」
そして、あわよくば二人共妊娠して戦線離脱!あたしは労せずカズマを無力化出来るって訳だな!
「そうか……そう言われたら、確かに他に方法なんて無いんだよな……少し頑張ってみるよ…」
「はい。応援しますね!」
出来れば子作りまでな!
「それでその……セレナは…」
「あ、私はプリースト辞めないので!」
「あっはい…」
うわっ露骨に凹んでやがる。愛されてんなあたし。実は結ばないけどな!
「では、そろそろ行きましょう。道具はちゃんと選びたいですからね?」
「あっ、ちょっと待ってくれ。これ飲んで喉乾いたから水もらってくるわ」
「それ飲み物の意味ありました?!」
やっぱり馬鹿の飲み物じゃねぇか!
………………………
「さて、これでお膳立ては出来たし、そろそろあいつらが顔を出すかな?」
カズマと鍛冶ギルドに来て2時間。試作品制作を始めた所で、あたしは外の空気を吸いに出た。鍛冶場の熱気は息苦しいし、そろそろあいつらがこっちに来る頃だろう。
「おやセレナ、偶然ですね?」
「あらめぐみんさ……いやなんでその格好で?!」
変装姿で出会っちゃ駄目だろ?!そこはちゃんと着替えてから来い!記憶に残ってたら即アウトだぞ?!
「その格好と言うことは、やはり気付いてたんですね?」
「あっ…」
しまった。あまりの馬鹿さ加減にツッコミを入れちまった!でも流石にそりゃ想定外だって!お前馬鹿なのか賢いのか分かんねぇな!
「まぁそれは良いのです。セレナが私達に気付いていたとしても本題はそこではありません。ねぇダクネス?………あれ、ダクネス?」
めぐみんが現れた方向を見ると、何故かダクネスは小柄な少年に詰められていた。いや、でもこの骨格は……女か?
「ねぇ?それ絶対に当て付けだよね!あたしと同じ服とかさぁ!」
「ち、違うんだクリス!これはあくまで変装でだな?!」
「そんなに身体のラインを見せて変装?!ダクネスの1番の特徴が隠れてないじゃん!」
「おい?!流石にそれは酷くないか?!」
あぁ、言われてみれば同じ服だな。スタイルに差がありすぎて分からなかったわ。
…………
「それで、どうしてセレナはカズマを焚き付けたんだ?」
「何度も思わせ振りな態度を取りながら、何故か自分は一定距離を保とうとする……本当に意味が分かりませんよ」
「へぇ、それは確かに気になるね。何が目的なの?」
あたしへ詰め寄る3人の疑問は、やはり想定した通りだ。まぁ、クリスの奴は完全に野次馬だが、ここは素直に話しても良いだろう。裏付けはカズマが用意しているしな。
「カズマさんは私の恩人ですから、出来ることなら幸せになって欲しいのです。それに、子育ては早い方が良いですからね?」
そう、出来れば魔王軍幹部がこれ以上減る前にお願いしたいところだ。
「なるほど。セレナの言うことにも一理あります。しかし!恋愛とは己の力で勝ち取るもの!なので、今後私への応援は不要です!私は、自分の力でカズマを手に入れてみせますから!」
「そうだな。セレナの気持ちは有り難いが、めぐみんがそう言うなら私も手助けを受けるわけにはいかない。これは私とめぐみんの勝負だ。セレナからの施しは、その気持ちだけで十分だ」
ほう、こりゃ面白いもんが見られそうだ。この鍛冶場でカズマが何をしているのか知ったら、その言葉を飲み込みたくなるぞ?
「分かりました。では、私からカズマさんへの提案は取り下げます。自分たちの力でのみ競いたいと言うのであれば、それは仕方がありませんからね!」
「ん?提案って、セレナさんはカズマくんに何か提案したの?焚き付けただけじゃなくて?」
「えぇ、鍛冶屋に来ているのもその件で……」
バタン!
「出来たぞセレナ!あれ?なんで皆が集まってんだ?」
おぉ、タイミングバッチリじゃん!そして、お目当てのものもちゃんと出来てるな!
「いえ、私達は偶然遭遇したところです。所で、カズマは鍛冶屋で何を作っていたのですか?」
「あぁ、そうそう。めぐみんには魔力強化で、ダクネスには体力強化の指輪を作ってんだ。金取る前にテスターが必要だし、二人なら役立ててくれるってセレナが……」
「あっ、その件ならお断りされてしまいました。私の提案は受け取らないとの事で……」
ガシッ
「あら、どうしましためぐみんさん?」
そんな必死な顔であたしの肩を掴むなんてさ?
「ま、魔導具職人の娘としては、魔導具を無駄にするのは認められません!なので、今回に限り受け取りたいと思います!」
「あっ、別に要らないならあたし貰うよ?盗賊スキルも魔力使うからね?」
「えぇ、私もプリーストのスキルで魔力を使いますし、要らないのであればこちらでもお引取りを…」
「駄目です!これはカズマが私のために作ったものです!経緯がどうあれ譲れません!」
おい、魔導具職人の件どこいった?
「二人共意地悪すんなって……ほら、手を出せよめぐみん」
「あっ……はい…」
すっ
咄嗟に右手を差し出しためぐみんの中指に、カズマはその指輪を通した。そんな幸せそうな顔をして、やっぱりお前も女の子だな。
「………大切にします」
「気にすんなって。クエストで着けないと効果無いだろ?それに、壊れたら直すし、なくしたらもっとスゲーの作ってやるよ」
「むぅ…これだからカズマは……デリカシーが足りませんよ…」
はいはい。そんなニヤニヤしながら言ってもな?
「さて、次はダクネスだな?ほら、手を出してくれ」
「……頼む」
シレッと左手を差し出し、そして薬指をカズマに向けるダクネス。清廉潔白な名門貴族も、恋愛には手段を問わないらしい。なんというか、狡い奴だな……
「んっ?なんか入らない?すまん。こっちの指で……良し入った!」
すっ
どうやらダクネスの思うようにはいかないらしく。カズマの指輪はダクネスの中指に収まった。まぁ、だとしても十分凄いだろう。カズマは何度か握った手の感覚から、あいつらのサイズを予測しているんだからな。
「くっ!大切にすりゅ!」
「えっ、なんでそんな悔しそうなの?!」
いや、そこは気付いてやれよ……
「でも良いなぁ。ステータスアップの指輪って高いし、サイズが合わないと落としちゃうから貴重なんだよね。あたしも欲しいなぁ〜」
「あるぞ?ほら、クリスには敏捷性アップの奴な?」
すっ
「わぁ!ありが……へっ?!」
カズマがクリスの分まで用意していたのは、多分義理堅さとかそういう理由なんだと思う。だが、例えそうだとしても、それを左手の薬指にハメたら、間違いなく誤解を招くことになるわけで……
「えっと……その…なんでこの指にいれちゃうかな?」
「いや、なんか自然と?」
「自然と?!」
こういうとき難しいのは、無意識、自然、何となく、入れやすい位置だった。というのが意味合いとして同じであったとしても、表現を変えるとその解釈は大きく変わる。つまり……
「なぁクリス。それは私が買い取ろう。もっと高ステータスなモノをオーダーメイドできる金額を出すぞ?」
「えっ…目が怖いよダクネス……」
「私の父ならそれより高性能なモノが作れますよ。さぁ、盗賊なら、損得勘定でそれを手放すべきでは?」
「嫌だよ!折角のプレゼントだもん!2人にもちゃんとあるじゃん!」
「「だとしてもそれはズルい(です)!」」
さっきまで真剣勝負とか騒いでた癖に、本当にお前らはカズマが好きだな。まぁ、狙い通りで何よりだが……
「あとさ。セレナにもこれを……」
スッ
「あら、私にまで……へっ?!」
あたしにまで左手の薬指?!しかもなんか宝石入ってる?!
「セレナのお陰で、俺は前に進めそうだからさ。お礼代わりに魔石を入れてあるんだ。よかったら受け取ってくれ。邪魔だったら売って金にしても構わないし、誰かに譲るのもセレナの自由だからさ?」
「えっと…これはその……」
あぁ、目の前3人の目が怖い!これは上手く言い訳しないと取られる奴じゃん!いや、別に執着とかねぇけどさ?緊急時には換金できるわけだし?でもつける理由は………
「だ、男性避けに丁度よいので、有り難く着けさせて頂きます。それに、いつかまた旅に出た時には、これで皆さんを思い出せますからね?」
よし!どうだこの完璧な言い訳は!これであたしから奪うのは不可能だろう!と言うか、もし奪ったら人として色々と疑うレベルだぞ!
「いえ、大丈夫ですよ。そんな必死に言い訳しなくても……」
「あぁ、流石にそんな顔をされてはな……」
「譲ってなんて、言えないよね…」
「へっ?…………あっ…」
向かいにある店のショーウィンドウに映るのは、熱に浮かされたように赤くなった自分の顔。そして、必死になっても戻らない緩みきった口角は、もう言い訳が出来ないレベルで嬉しさを表現している!うぉー!負けんなあたしの表情筋!最近やたらと負けっぱなしだぞ!ちょろい女じゃないと証明して見せろぉ!!
「それ、実は幸運値が上がるんだ。俺が自分用に作った奴と同じでさ。やっぱり、旅をするなら運に助けられることもあるかなって?」
「そ、それは確かにありがたいのですが……」
それじゃペアリングじゃんかぁ!付けれねぇよ!こんなの付けたらカズマとラブラブだと思われるから付けられねぇよ!お前は恋愛観ポンコツか?!ナチュラルになにやらかしてんだよぉ!
「良いのですよセレナ。想い続けるだけなら、きっと神様も許してくれますよ?」
「あぁ、心の問題は信仰とは別だ。それでも信仰を選んだことをエリス様はきっと誇って下さる」
「プリーストが独身でも、神様的には得しないんだけど……まぁ、人を好きになるのは自由だよね!」
「本当に辞めてください!本当にそんなんじゃないんですからぁ!!」
………………………
「………なぁ?セレナ最近機嫌悪くないか?」
「べっつにー!」
あの指輪騒動から3日経ち、カズマの鍛冶スキルは瞬く間に進歩していった。そして………
「カズマの幸運のリング凄い流行ってるよね?」
「可愛いのに幸運値上がるって言うのがいいじゃん?ステータスアップじゃ恋は実らないけど、運が良ければ何かあるかもだし!」
「売れてます!カズマさんの商品がすごく売れているんです!まぁ、私の商運はあがってないのですが………」
カズマの指輪は初日から大ヒットして、あたしと同じものをもう30人くらいが着けている。なんであたしのと同じデザインで作るかねコイツは!別に売れてるから良いんだけどさ!売れるもの作れって言ったのもあたしなんだけどさ!
「………なぁ、なんで主力をこのデザインにしたんだよ?あたしが好きなデザインじゃあるけどさ。流行りのデザインとは方向性が全然違うだろ?カズマだって、流行りのほうが綺麗だって言ってたじゃねぇか」
「仕方ないだろ?改めて見たら、こっちの方が綺麗だって思えたんだよ。ほら、やっぱり道具は身に着けないとだろ?」
そう言ってあたしの手を取るカズマの顔は、自分の作品に誇らしげだ。置かれた指輪を比べたときは、間違いなくあっちの方が高評価だった。なら、きっとコイツはあたしを見てこっちが良いと思ったんだ。流行りのデザインを付けた三人より、この異なるモノを付けたあたしを見て……
「あぁそうかよ……なら、発売記念に酒でも買って帰ろうぜ?最近内職ばっかで飲んでないだろ?」
「別にそれは構わないけど、なんか機嫌良くなってない?」
「最初っから悪くねぇって!ほら、早く帰って肴作れよ!あたしはテリヤキが食いたい!」
「分かったから背中を押すなって!そんなに急かしても直ぐには出来ないぞ?」
いいから前見て歩いとけよ……あたしのこの、緩みきった顔が戻るまではさ……
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
カズマの籠絡と言いつつ、着々と魔王の天敵を強くしているセレナさんですが、魔王に愛着はないんだ。ごめん!
ということで、ここらでこんなラブコメをちょこちょこ挟みつつ、魔王をしばくための本編も進みます。
相変わらずの不定期ですが、またお暇な時にでもお付き合いください。