セレナの関与により、カズマの戦力が劇的に伸びたり、実はあんまり伸びてなかったり……手段問わないのにイマイチ上手く行かない馬鹿のコラボレーション企画です。ラブコメのオマケですが、またお暇な時にでもお付き合いください。
カズマと一緒に過ごすようになり、もうかれこれ2ヶ月が過ぎようとしている。新たな選択肢を得たカズマの成長は目まぐるしく、今日も初心者とは思えない大活躍をしている。そう、私は思っていた……
「カズマ!初心者殺しが何頭かそっちに向かってます!茂みの中から不意打ち来ますよ!」
「こっちで勝手に対処する!めぐみんは本隊から目を離すなよ!」
今日のクエストは初心者殺しの群れの討伐。あの猫科生物が群れになることは稀で、本来なら群れて一家族のモンスターだ。最近はこういう不運を引き当てる事にも慣れてきた。いや、慣れたくて慣れてないのだが……
「『千里眼』からの『狙撃』3連!」
シュパパパッ!
「がふっ!」「ぐふっ!」「きゃん!」
弓を番える動作から無駄が無くなり、そして千里眼と狙撃を同時に行えるようになったカズマにとって、もはや茂みなんて無いに等しい。これは1つのスキルしか使えなかった頃から見れば、考えられない進歩だろう。すまん魔王!正直これは教えるんじゃなかった!
「くっ!こちらもそろそろ限界だ!もう噛ませられる場所がない!」
「いや噛ませる必要全くねぇよ!普通にデコイに集中しろ!」
そして、あの変態にも慣れつつあるのに自分でも驚きだ。頑張って慣れるような次元の生物じゃないのに…
「カズマさん。群れの後続が追いつくまでまだ少しあります。抜けてきた初心者殺しは私達で対処しないと、めぐみんさんが万全で撃てません!」
「だな。じゃあ、ちょっと背中は任せるぜ!」
ダクネスを抜けてきた初心者殺しは全部で7頭。その目的は近場にいるあたし達だ。まぁ、それならそれで丁度いい。最後尾にいるめぐみんを狙われたら、作戦が総崩れになるからな。
「まずは先制する!『スローイングダガー』+『狙撃』!」
シュシュッ!
「ぎゃふっ!」「がふっ!」
カズマの主な戦闘方法は、汎用性の高い近〜中距離戦闘。それはパーティーのバランスを元にカズマが考えたモノだが、その戦闘スタイルはかなり特殊だ。まず、今投げたのは正しくはダガーではない。鋭利な刃の形をした氷だ。
「2体沈黙!残り5体です!」
「よし!残りは近接戦闘だ!行くぞセレナ!」
「はい!援護します!」
カズマの右手にはちゅんちゅん丸が握られ、そして左手には自作の手袋をハメている。あの手袋には特殊な型が仕込まれていて、そこにクリエイトウォーターで水を入れ、フリーズで凍らせると投擲用のダガーが出来る便利アイテムだ。攻撃力に期待出来ない初級魔法を、まさか武器の製造に使うとは……カズマは常にあたしの予想を超えていく。
「取り敢えず1頭……『パワースラッシュ!』」
ズダン!
「ぎゃふ!」
カズマの放った一撃目は、ソードマスターや戦士が使うパワースラッシュ。重い一撃を放つことが出来るが、その後で若干の隙が出来るスキルだ。そう、本来なら次の敵が来る時には使わない。そう、本来なら……
「シャー!」「ガァー!」
武器を振り下ろしたカズマに向かって、同時に飛びかかる2頭の初心者殺し。普通ならばそこから切り返すなど出来ず、この状況はピンチの筈だが……
「『上段回し蹴り』からの『シールドバッシュ』!」
「「ぎゃふっ!」」
カズマに飛びかかった2頭は、連撃であっけなく地面に叩き落される。剣で大振りを放った直後でも、脚と反対の腕はなんの問題もなく動く。と言うか、地面にめり込んだ剣なんてもはや握っても居ない。そして、左腕の袖の内側に自作の盾を仕込んでシールドスキルを使うと言うのも、カズマの姑息なアイデアの1つだ。
シュバッ!
「標的変更!残り2頭は狙いを私に変えました!迎え撃ちます!」
こんな雑魚、あたしのレベルなら2頭来ても余裕だ。だが、カズマの前でダーティーな戦闘は避けたいし、出来ればレジーナ様の技も使いたくない。うん、やはりカズマに任せるべきだな。
「群れを標的に『逃走』『スピードゲイン』!そして、『必殺』からの『ダブルアタック』!」
ドスドス!
カズマは自分の進行方向より後方にいる敵を標的にすることで逃走スキルを発動。そして、支援魔法のスピードゲインで更に加速し初心者殺しを捉えた。そのまま盗賊スキルの高速2連撃のダブルアタックに、アサシンの急所を狙う必殺スキルの合せ技。脊椎を切られてしまえば、どんな生物でも再起不能だろう……
「……ふぅ、本当に腕を上げましたね」
「あぁ、これも全部セレナのお陰だ。じゃ、俺はダクネスを助けてくるよ!めぐみん!テレポートしたら爆裂頼むぞ!」
「任せてください!」
「セレナの回復は私がしてあげるわ!カズマさん、勇者っぽくやっちゃいなさい!」
「おう!見てろよお前ら!」
魔物の群れに向かうカズマは、もはや勇者の風貌と言って良い。この戦力が仲間にできれば、これほど心強いことはないだろう。なんて、あの時には本気で思っていたのに……
______________
「あぁ〜!!目がぁ!目に麻痺薬がぁ!!」
「無理よ!こんなの絶対に無理だから!早くテレポートしてよカズマさん!また明日頑張ればいいじゃない!」
「いや、なんでこんな事になってるんですか?!」
先日はまるで英雄のように振る舞っていたこのパーティーが、ほんの少しの変化で総崩れになる。その条件は至極簡単で、敵がちょっとでも格上だと……いや、本来なら同格なハズの相手でもこうなる……
「くそっ!今回は中級者殺しの群れかよ!一撃で倒せないとジリ貧になるし、やっぱり強めの麻痺毒を……」
「辞めてよ!さっきそれが飛び散ってめぐみんにかかったのよ!次は絶対に私じゃない!せめて私が離れるまで待って!」
「それでも4体無効化してるから良いだろ!多少の飛沫は上手く避け……あっ!逃げんなアクア!」
「アクアさん逃げないで!早くめぐみんさんにピュリフィケーションとブレイクスペルを!カズマさんも向かい風で使っちゃ駄目ですよ!と言うか、ダクネスさんは無事なんですか?!」
「だ、大丈夫だ!前より深めに食い込んでいるだけで、まだ1時間はいける!くぅ!」
ピューピュー
「所々から血が出てますが?!それ1時間もかからず逝きますよね?!」
前回倒した初心者殺しは、よくよく考えれば雑魚の群れ。レベル差がありすぎて、実はあたしがメイスを振り回すだけでもまぁまぁ殲滅可能な相手だった。だが、今回のは正しく適正レベルの相手、ステータスが低いカズマにとって、この相手は少々……いや、かなり分が悪い……
「くそっ!強力な毒を向かい風で使うわけにもいかないし、でも俺の攻撃力じゃコンボして1頭しか倒せないし……」
「えぇ、逆に驚きましたよアレには……」
あのパワースラッシュからの打撃、連撃コンボ。あれ全部叩き込んでこのチョイ強い位の猫科生物をギリギリとは、流石にあたしも予想外だった。中級クラスの剣士なら間違いなくパワースラッシュだけで狩れるし、中級クラスの盗賊でもダブルアタックだけで狩れる。早い話が、カズマの攻撃力は今でも中級に及ばないってことだ。
「あぁ!私のことを持ち上げてどうする気だ?!巣穴に持って帰って、繁殖用の母体にするのか?!」
「ダクネスさん!この群れ大半がメスですよ!間違いなく保存食です!と言うか、貴女猫科動物産めないでしょ!」
もう!本当に馬鹿だなアイツ!
「………ダクネスの遺伝子が入ったら、丈夫で毛並みの良い猫が産まれそうだな」
「言われてみれば、それは高く売れそうね……」
「お二人は何を言ってるのですか?!」
よがり狂うダクネスを運びながら、中級者殺しの群れがこっちに向かっている。このままぶつかれば群がられて死ぬ。だが、既にボロボロのダクネスに爆裂しても死ぬ。この状況はマジでヤバイ!
「カズマさん!もう四の五の言う暇もありません!どんなに汚い方法でも良いので、なんとかこの状況を打破できませんか?!」
「くっ!これだけは使いたくなかったが、流石に命には代えられないか……お前ら!俺の身体にちゃんと触れとけよ!そいっ!」
「ちょっと?!その瓶の中身はなんなのよ?!一瓶丸ごとって、それ間違いなく致死量とかじゃないの?!」
群れに向かって瓶を投げたカズマは、今度は急いで弓を番えている。群れに毒を入れるのは常套手段でも、群れにダクネスが、そして風下にあたしらが居るのにそれはしないだろう。じゃあ、アレは一体……
「安心しろよ。これは……お酢だぁ!!『狙撃』」
パァン!
魔物の群れの少し上空、カズマが自分で投げた瓶を撃ち抜く。そして、そこから派生した霧が、ゆっくりとこっちに降り注ぎ………
「「「「くっさ!!!」」」」
うわっ、これはマジでキツい!メッチャ発酵のキツイやつじゃん!
「あっ!でも凄い効いてるわよ!中級者殺しがダクネスを離したもの!と言うか悶えているもの!」
そりゃ口が塞がってりゃキッツいだろうよ!ただでさえ匂いに敏感なのに!
「よし!作戦通りだ!『テレポート』!」
いや、マジでテレポートは真っ先に覚えてもらって本当に良かった!これで割りと命を拾ってるもん!
……………………………
「と言う事で、前回の反省を元にパーティーの問題解決に向けて会議を行います!」
あたしは臨時メンバーではあるが、流石にこの状況は見過ごせない。この甘やかされた快適な生活を守るべく、せめて中級冒険者くらいのクエストはこなして欲しい。と言うか、なんかあたし療養中のほうが死にかけてんだもん!なんなら魔王軍幹部ってバレてる方が納得できるわ!
「会議っていうか……俺だけ?」
「当たり前だろ?もうあいつらには何も期待してない」
「あっ、うん……セレナも慣れてきたな……」
まぁ、あんだけ振り回されればそうなるだろ。野良犬だって学習するレベルだぞ。
「しかし、まさかセレナがこのパーティーの事をそこまで考えてくれるなんてな!こりゃ正式加入も近いな!」
「ちげぇよ馬鹿!前回のアレのせいであたしの体臭が酸っぱいって噂がたってんだよ!それはそれで興奮するとか言う奴まで居るし!これ以上馬鹿な事に振り回されたくないだけだ!」
「えっ、運動後の脇は多少…」
「あぁん?!」
「いえ!全身石鹸と花の香りがします!」
あたしはそんなに臭くない!ちゃんと洗ってるし!と言うかその臭いイメージを改めろ!
「でも、対策って言っても俺のステータスじゃあんなもんだぞ?だからって、今の汎用性を捨てる訳にもいかないし……」
「いや、実は解決案は何となく見えてんだよ。ステータス上げるなら、アクアの支援魔法で良くねぇか?」
「………あっ!」
いやね?あっ!じゃないんだよ。アクアのこと自走するハイポーションかなんかだと思ってんのか?!
「でもなぁ…アクアって戦闘開始すると安全地帯まで逃げようとするし、事前の支援魔法が早すぎて戦闘時に切れてたりするんだよなぁ……」
「えっ?この前は近くにいたよな?」
「うん、勝ってるときは近くにいる」
「えぇ…」
どういうことだよ…それどう考えても勇者を導く女神のやることじゃねぇよ……お前も良く今まで面倒見てたな…
「あと、アクシズ教の支援魔法だからなのか、あの魔力量の割に効果が薄い気がしてさ。これなんか関係あんの?」
「あぁ、そりゃ信仰心による補正が入るのがプリーストの魔法だからな。アクアは女神そのものだから、魔力量が10として、ここにカズマの信仰心をかけるとその効果が……」
「0なんだけど?」
「い、いや待て待て!曲がりなりにも御神体だぞ?信仰っていうのはあくまで信頼とか信用とかをどれだけ向けられるかって話で、仲間としての信頼も加算される訳で……」
「えっ?むしろそのせいで0なんだけど?」
うわぁ、なんて曇りのない目をしてやがるんだコイツ……内容はさておき、こりゃマジで嘘なんて付いてねぇわ……
「なぁカズマ?お前は神様に対するありがたみとかねぇわけ?」
「少なくとも、アクシズ教にあると思うか?」
「……ごめん」
そりゃそうだよな。アクシズ教が相手じゃ流石にな……
「なぁ、セレナの支援魔法なら、俺にも効果が有るんじゃないのか?エリス教徒だろ?エリス様なら信用あるぞ?」
「あぁ…それなんだが、あたしが信仰してんのはレジーナ教なんだよ。あんまり有名じゃねぇし、それをいきなり信じろなんて言われても普通に無理だろ?」
「へぇ、アクアとエリス様以外にも神様っているんだな。いや、アクアが神様なんだから別に沢山いるのか?」
「いや、別にテストされて神様になるわけじゃねぇだろ…」
あぁ、こりゃ本当に駄目なパターンかも知れない。信仰補正ならカズマのステータスが低くてもそれなりの効果が望めたっていうのに、こいつは信仰心なんて持ち合わせてないって感じだ。そうなると、やっぱり道具に頼る方法の方が安定か、あんまりヤバいもん教えたくないんだけどな……
「なぁ、一応聞くけどよ。カズマの世界って神様いねぇの?」
「そんな感じの存在は居るぞ?俺の国だと万物に八百万の神様が居て、有名所は立川に住んでるそうだ」
「いや多いな?!でも、有名所は居るんだろ?それなら、その有名所みたいにアクアも……」
「有名所の片方をクリスマスで祝って、その翌週に別の有名所にお参りするんだけど……これ信仰って言っても……」
「良い訳ねぇだろ舐めてんのか!」
本当に信仰心0かよ!普通は心の拠り所が必要じゃねぇのか?!今まではどんな生活してたんだよ!
「仕方ねぇ…無いよりマシだし、次のクエストはあたしが支援魔法をかけてやるよ。全く信用のない馬鹿よりは、他人でもちゃんと神様してるやつのほうが信じられそうだしな…」
「おっ、サンキュッ!じゃ、俺は次のクエストに向けて新薬でも開発するわ!」
「お、おぉ…でも、もう臭いのはやめてくれよ……」
あと餃子用にお酢を持ち歩くのも、出来れば辞めて欲しい……
………………………
「いやぁぁー!!助けてカズマさん!食べられる前に早く降ろしてぇ!」
「……ねぇカズマさん?私達、確か採取クエストに来たんでしたよね?」
「あぁ、俺も薬の材料欲しさにダクネスの話に乗ったつもりだったんだが……これなんか違うよな?」
「なんでそこで冷静なのですか?!これは結構なピンチですよね?!あぁー!逆さ吊りは駄目です!パンツが見えます!」
「くぅ!触手が私の身体の中に……あぁ、これは新発見だ!悪くない、悪くないぞ!」
眼の前で逆さに釣られるバカが3人。薬草採取にしては報酬が高いと思ったが、どうやら人食いプラントの狩り場だったらしい。こいつは薬草にだけ栄養を分け与え、その薬草に釣られた生物を狩る特性を持っているのだ。依頼書の細かいところにも、ちゃんと目を通すべきだったな。
「このモンスターは地面に張った根っこで標的の場所を判断するので、こうして岩の上に居れば安全です。でも、ここからどうしましょう?」
「それが、俺の攻撃力じゃツルが切れないんだよな。そうなると、やっぱり火を使うべきか?」
「根っこにブランデーとか吸わせれば良く燃えますけど、簀巻きの3人がフランベされちゃいますよ?」
「えっ、なにそれ怖い…」
そもそも火をつける発想が怖いって自覚を持て。まずここ森だからな?
「『パワード』!『スピードゲイン』!『プロテクション』!『ブレッシング』!私の支援魔法があればイケる筈よ!スパッと一思いにやっちゃって!」
そう言えば、アクアの支援魔法がどれ程のモノか見るのは初めてだ。人食いプラントのツタは強度があり、中級の剣士では切れるか分からない。さて、どうなるか……
「自信はないがやるしかないか……『パワースラッシュ』!」
ザシュッ!
「やったか?!」
「馬鹿!ダクネス!今そのセリフは……」
「キシャーー!!」
ダクネスのフラグ発言とは関係なく、カズマの一撃はツタを切断するには至っていない。武器が小刀でカズマの体格もあるだろうが、アクアの支援では半分まで刃が入るのが限界のようだ……いや、十分凄いんだけどさ……
「くそっ!ポンコツ女神じゃこんなもんか!せめてエリス様の支援なら!」
「ちょっと?!それはカズマさんがポンコツだからでしょ!」
うん、どっちもポンコツだからこんなことになってんだぞ?
「仕方ありません!上書きになりますが、私が支援魔法をかけます。どうか、私の信じるレジーナ様を信じてください!」
「わかった!もう他に方法も無さそうだしな!」
「『パワード』!『スピードゲイン』!『プロテクション』!『ブレッシング』!来ますよカズマさん!」
ツタに切れ目を入れられた人食いプラントは、その千切れそうなツタをカズマに向かって振り上げる。岩場から降りれば補足される。なら、せめてここで迎撃を……
「『パワースラッシュ』!」
パァン!
まぁ、実のところ予想通りだったわけだが、カズマの攻撃はあっさりと弾かれ、そのままぶっ飛ばされたカズマが飛んでくる。あっ、よく考えたら岩場から降りれないんだし、これあたしが不味いんじゃ……
「ストップ!カズマさんストップー!!」
ガシャーン!
「あっぶねぇ…何とか直撃は避けたけど、これもレジーナ様のご加護ってやつか?」
「えぇ、きっとそうですよ…ブレッシングしてなかったら、直撃して二人共大怪我してもおかしく無かったですからね……」
真っ直ぐぶっ飛んできたカズマは、そのままあたしの股の間に着地した。スンスン。服が巻き込まれて尻もちを着いたが、幸運なことに大きな怪我はしていないようだ。スンスン。さて、そうなると次の対策を講じないと……んっ?
「あの、一応確認したいのですが……今何してます?」
「………レジーナ様から、甘くて芳しい寵愛を受けているところかな」
「人のパンツの匂いを寵愛扱いしないでくれます?!」
てっきりスカート越しにカズマに座っていると思っていたが、まさかスカートの中に居るのかよ!あれ?昨日は念入りに洗ったよな?!
「カズマ!次が来てます!セレナにセクハラしてる場合じゃありませんよ!と言うか、これ完全に殺す気ですよ!!」
「キシャー!」
シュバッ!
あっ……これは本当に駄目だ……眼の前に迫る絶望は、多分あたしの全てを持ってしても回避しようがない。一本でも危なかったツタの攻撃が、まさか同時に10本以上なんて……
「『トリプルアタック』」
シュパンッ!!
「……へっ?」「今のは……」「か、カズマさん?!」「何も、見えなかったぞ……」
眼下に散らばる切断されたツタの破片は、まるで包丁で切られた野菜のような断面をしている。そして、その中心に立つのは、間違いなくカズマだ。さっきの声もカズマのモノだったし、つまり今のはカズマがやったのか?!
「『スローイングダガー』」
スッ…ドササッ!
「いたっ!」「ふぇ?!」「お構いなく!」
放たれたダガーは目でも追えなかったが、それが捕まっていた3人を開放したのは理解できる。なんだよ、この圧倒的な強者の雰囲気は……カズマのステータスじゃ、こんな戦闘出来る筈がない。これじゃまるで、本物の勇者みたいじゃねえか……
「なるほど……これが支援魔法って奴か。確かに俄然負ける気しねぇな!」
「き、キシャー!!」
根を踏めば場所が補足されると分かっていて、カズマは岩場を自ら降りた。あの臆病者がそんなことをするとしたら、それは勝ちを確信したってことだろう。つまり、カズマの実力はマジって事だ……
「シャー!」
「『ダブルアタック』」
パァン!
カズマに伸びた触手は6本。それが3本ずつ同時に地に落ちた。間違いない。アイツは今、本当に勇者と呼べる力を有している!
「討伐対象じゃないが、ここで狩らせてもらうぜ……『ルーンオブセイバー』!」
ズダン!!
まさに一刀両断。上級冒険者でも両断出来ない人食いプラントの花を、カズマは一撃で真っ二つにした。これは、遂に勇者の力を解放したのか?!
「カズマまだです!人食いプラントは雄花と雌花が一対になっています!直ぐにもう一輪が襲ってきますよ!」
「だ、大丈夫よ!カズマさんは女神の力で本物の勇者になったもの!そんなのまたサクッと瞬殺よ!」
あぁ、もし本当に覚醒したのなら、こいつは魔王クラスの実力者だ。だが、だとしたらきっかけはなんだ?ぶっ飛ばされて頭を打ったとかか?
「セレナ、さっきのアレを使うにはセレナの支援が必要だ。すまないが、また力を貸してくれ」
「勿論です。私達は仲間、いくらでも手を貸します!」
なるほど、カズマのあの力の源は、どうやらレジーナ様らしい。これはこれは、なんてあたしに好都合な展開だ!
「よし、じゃあ早速!」
「はい!『パワード』!『スピードゲイン』!『プロテクション』!『ブレッシング』!これで……」
むにゅんっ
………あれ?いまあたしは支援魔法を頼まれたよな?何でこいつ、あたしの乳を揉んでんの?目の前にもう人食いプラント来てるんだけど?!ねぇ!なんで地味に揉むの上手いのお前?!
「あぁ…レジーナ様……このような祝福をありがとうございます……マジ一生信仰します……」
「うわぁ…このクズはセレナの胸を揉んで信仰心を上げてますよ……」
「まぁ、確かに幸運が舞い込んだら神に感謝することはあるが……」
「だからってプリーストの胸揉む奴見たことないわよ……完全に犯罪者じゃない……」
「あの、そう思うなら止めてくれませんか?んっ!仲間の乳を揉む男を止めて…ひゃう…くれませんか?!」
「「「でも他に勝ち目もないし?」」」
いやそんな馬鹿な話があってたまるか!信仰心だぞ信仰心!心の底からその存在にすがり、心の拠り所になる特別な存在への気持ちが信仰なんだぞ?!それが乳揉めたから心から信仰しますって聞いたこと……
「キシャー!」
「うるせぇ!いま良いところなんだよ!レジーナ様の祝福を邪魔すんな!『トリプルアタック』!」
スパァン
「き……シャ…」
…………………えっ、何今の?トリプルアタックって盗賊スキルだよな?それで人食いプラント両断できるの?普通にチート勇者に匹敵するレベルだぞ?!
「ふぅ……ありがとうございますレジーナ様……俺、近々お布施とか用意します!」
あぁ、どうしようマジだ……こいつはマジで女の乳だけで神を盲信できるんだ……どんな宗教観してるか知らないが、乳揉んだ直後だけメッチャ強い!
「どうやら、問題解決の糸口が見つかったみたいだな?」
「いや、なんでそんなスッキリした顔してるんですか?!ちょっと!まさかピンチになるたびに揉む気ですか?!私これでもプリーストなんですよ?!正しき信仰を伝える立場で……」
ぽんっ
「命と乳……プリーストであるなら、どちらが尊いか分かるよな?」
「迷いなく乳と断言しそうな人には言われたくないんですが?!それならアクアさんのでも良いじゃないですか!」
「馬鹿!セレナはレジーナへの信仰を忘れたのか?!代わりにアクアに祈れるのか?!」
「いやそれは無理ですけど!でもだからって……」
ぽんっ
「セレナ……貴女のお乳が犠牲になれば、このパーティーのピンチが救われるのですよ…」
「あの……めぐみんさんが普通の上級魔法を使えるようになれば、私の乳は救われるのですが……」
「安心しろセレナ。それなら私が代わりに揉まれよう。エリス様以外の名の下に汚されるのは不本意だが、それでセレナが救われるなら……」
「いえ、それじゃ何1つ救われませんし、そもそも解決案にもなりませんよね?」
「セレナが私の信者になるのは……」
「信仰心0になったら解決案がなくなるのですが?!」
くそぅ!お前らは本当に心から役立たずだな!それなら素直にカズマのレベル上げたほうがマシじゃんか!
「それならピンチにならないように、今後も俺に色々と教えてくれよ?セレナとしては、そっちの方が望むところだろ?」
「……はぁ、そうですね。やはり楽して解決とはなりませんね。今後も地道に頑張りますか!」
実に不本意ではあるが、一応カズマの切り札を手に入れた。これはあたしが居なきゃ使えないし、状況的には好都合と言えるだろう。まぁ、出来れば使いたくないが……
「それで、次は何を知りたいのですか?各モンスター向けの弱点攻撃とかですか?それともプリーストのスキルとか?」
「……セレナの感じる揉み方」
「いやカズマさん?!」
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
向こうではエリスの☓☓を切り札にして居ましたが、こっちでは緩々過ぎる信仰心がキーパーソンになります。あっ、でも戦闘とか言うほどしないです。やりたかったのは乳揉んで信仰心アップの件だけです。ごめんね!
ということで、また不定期ですが今後ともお暇な時にでもお付き合いください