プロローグ*
目が覚める。
(あれ、くそ……)
仰向けの状態から身動きが取れない。どうやらベッドに縫い付けられているようだ。
手は頭上でひとまとめにくくられ、足は開脚した状態で閉じることができない。
体を起こすことができないので詳しくは分からないが、おそらく局部は丸見えになっているのだろう。
少し手足を動かすも、ガチャガチャと鎖が音を立てるだけで拘束から逃れられそうな気配はない。
「あ、起きた起きた。気分はどう?」
「っ!」
アリシアが俺の顔を何食わぬ様子で覗き込む。コイツは、よく言えばこの世界での俺の世話人である。まあ実際はそんな生易しいものではないが。
こんな破廉恥な格好をさせておいてまったく悪びれる様子がない。口から罵詈雑言が出てきそうになるのをぐっとこらえ、あくまで従順そうに話をする。
「あの、どうしてこんなことするんですか……? こんなことしなくても、もう逃げませんから…………い“っっ!うぅぅ……」
「いつ私が、お前に口答えしていいなんて言った?」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
どうやらお気に召さなかったらしい。突然俺の乳房が鷲掴みされ無遠慮にこねくり回される。それから何回も平手で乳房がはたかれる。一つも相手のことを考えない、奴隷にでもするような扱いである。
……そうだな、今の俺はまさしく性奴隷といったところだろう。視界が滲む。
「ふひっ、いい顔じゃない。そうよ、そうやって無様な姿でいるのが一番かわいいのよ」
歪んだ笑みを浮かべて俺を見た後、アリシアは部屋の隅へ向かい何やらゴソゴソと棚の中を探る。
「は~い、今からこれをカエデちゃんに飲んでもらいま~す」
俺が首だけを動かして棚の方を見ていることを確認すると、毒々しい色の液体が入ったガラス瓶を左右に振る。
「え、いや……」
「へへへ」
アリシアがベッドの隣に移動し、ガラス瓶を俺の口にあてがう。
「口、開けて?」
「はい……」
ここで拒否したところで、どうせまたしこたま叩かれたあとに結局無理矢理飲まされることになるのだ。覚悟を決めて一気飲みする。
嚥下した液体が食道を通り、胃に入って、それから……
「っつ!!!」
「お、さっそく効いてきた」
頭がぼーっとする。体が熱い。特に子宮のとこは燃えるように熱い。
「よいしょ、っと」
ぎしり、と木材がきしむ音が鳴る。アリシアがベッドに上がってきたのだ。上体には豊かな乳房が実り、容姿と相まってさながら女神のようである。局部に雄々しく反り立つ男根がなければ、の話だが。
アリシアが指で漏れ出る愛液を掬い取り、俺に見せつける。
「ほら、いつもより濡れてるんじゃない? こういうの好きなんだ? とんだ淫乱ね!」
「ぇ、ちが……」
そんな訳ないだろ!さすがにそれは聞き捨てならない。
「それは、さっきの薬のせいで……あ“、あ”あ“っっっ!」
「うるさいなあ!」
どうやらカンに障ったようで、まだ膣穴が広がらないうちに無理矢理イチモツを突き入れられる。
「うぇ、やだ、やだよぉ……」
「そうよ、そうやってチンポ咥えてしおらしくしてればいいのよ。いちいち口答えするな!」
パン、パン、と腰を打ち付ける音が鳴る。奥を乱暴に突かれるたびに胃が揺さぶられてえずきそうになる。
本来であれば、全く気持ちよくないただただ苦しいだけの時間だ。だがこの体はそんな乱暴な行為でも感じてしまうのだ。
アリシアは俺のことを淫乱だというが、確かにその通りかもしれない。好きでこんな体になったわけじゃないのに……。
「ほら、出すよ!」
「ひっ……あああっっ!!」
精液が子宮を蹂躙すると同時に背中が弓なりになり、頭が真っ白になって視界が明滅する。それからびくびくと死んだ魚のように痙攣する。
「さて、これでいいかな」
「……え」
いつもならここから容赦なく二回戦に突入するところだ。ところが今日はたった一回で抜いてしまった。
「え、もう一回やりたい?」
アリシアが口元に笑みを浮かべながら聞いてくる。
「あ、あぅ、ぅぅ……」
拒否することもできず、されど承諾したいわけもなく。なんだかよく分からない声を出しながら唸ることしかできなかった。
「でも、今日はもともと一回だけするつもりだったの」
そう言いながらアリシアは俺を拘束していた鎖を外す。そして俺の体を持ち上げ、壁に立て掛けてある姿見の方を向かせた。
「え、なにこれ……」
「うふふ、これはねぇ……」
下腹部のあたりに、桃色の女性器を模した紋章が浮かんでいる。
「いん、もん……」
「あれ、よく知ってるじゃん!」
薄い本でしか見たことないものが俺の体に浮かんでいた。
自分の体に起こったことが信じられず、もしかしたらただのシールか何かかもしれないと慌ててこすって取ろうとするが、まったくの徒労であった。
刺青のように肌に刻み込まれている。
「うん、しっかり定着してるみたいね。じゃあとりあえずさ……試しに私を叩いてみてよ」
「えっ」
今何て言った? 叩いてみてだと?
アリシアはニコニコしている。さっきも少し反抗的な態度をとっただけでぶってきたというのに……。絶対ロクでもないことを考えている。
「で、でも……」
「私の言うことが聞けないの?」
「はっ、はい!やらせていただきます!」
一段低い声ですごまれ、慌てて姿勢を正す。
こうなったらもうどうにでもなれと姿見から振り返り、向かいに立つアリシアに手を振りかぶろうとした次の瞬間、
「つっ、あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!!」
とんでもない衝撃が全身に走り、一瞬で力が抜けて膝から崩れ落ちる。ついでに潮をまき散らしながら、動物のような雄叫びを上げる。
「おお、うまくいったみたいね」
アリシアが深イキして液体をまき散らしながら痙攣する俺の体を見下ろす。
「この淫紋は特別製でね、ご主人様に生意気な態度をとったり、逆らおうとしたりしたら、こうやって前後不覚になるくらいの性的快楽が与えられるようになっているの」
俯いたままの俺の頭が掴まれ、正面を向かされる。
「今まで街の中で反抗的なこと言ったら、なるべく人から見えないところでお仕置きするようにしてたけど、今度からはみんなが見てる前で今みたいになるからね。ああ、その時が楽しみだなあ! あ、もちろん逃げようとしても同じだからね」
恍惚とした表情で悪魔がのたまう。
一つだけ分かったことがある。それはこの淫紋のせいで、自由になる道が完全に断たれたということ。
「ああ、いいよ、その表情! これからもよろしくね、
……どうしてこんなことになってしまったのか。話は少し前にさかのぼる。