「んん“っ…………あっ、イクっ……」
もろもろの用事を済ませて自室に戻ったオレは、いつの間にかベッドに直行していた。
乳首とお尻の穴を弄る手が止まらない。おまんこに蓋をされてから今日でちょうど4日目だ。つまりは今日、ようやくこの忌々しい貞操帯が取り外されるのだ。というか、取り外してもらわないと取り返しがつかなくなる。
弄れば弄るほど子宮が熱を帯びて余計につらくなることは分かっているのに、目の前の快楽を優先してひたすら他の場所を弄り続ける。そしてさらに熱がこもって、切なさが増して…………まさに悪循環である。
それが分かっていたから、今日までなんとか鉄の意志で一人遊びを我慢していたというのに……。これじゃあ何のために耐えてきたのか分かったものではない。
まだ少しは頭の片隅にまともな思考回路が残っているが、日を追うごとにその割合はどんどんと減ってきている。現にさっきから体と口は全く言うことを聞かない。人目を憚ることなく嬌声を上げて一心不乱に一人遊びに励む姿は、はたから見ればとても滑稽な姿だろう。でも、全然止まらない。
そういうわけでひたすらオナニーに興じていたオレは、ご主人さまが部屋に入ってきたことに全く気付かなかった。そして、これがすべての過ちだった。
「……ねぇ」
「んあ“っ…………あっ、あっ、あっ、ん”ん“~~~っ♡」
「おーい」
「ふぅ、ふぅ、はぁ……♡」
「カエデ!!!」
「……ふぇ?」
鋭い声が浴びせられ、オナリすぎてぼやけた視界がクリアになる。ぽけーっとしながら振り向くと、ご主人さまが額に青筋を浮かべて仁王立ちしていた。一瞬で現実に引き戻される。
「私が呼んでるのに、返事の一つもせずにオナニーしてるってどういうこと?」
「あぅ、それはそのぉ……」
どうしようどうしよう。視線の圧が凄い。それに耐えられなくて、所在なさげに視線を彷徨わせる。
「ねえ、何とか言ったらどう?」
「も、申し訳ありませんでしたご主人さま……」
「何が?」
「あの……オナニーしすぎてごめんなさい」
――おいバカか!? バカなのかオレは? オナニーのしすぎを謝るとか、どうかしている。脳の破壊がここまで進行していたなんて。ああもう終わりだ。さようならオレの人生。
しかしどうしたことだろうか。オレの謎発言を気にも留めない様子で、ご主人さまはふうん、と素っ気ない声を出した。そして、圧が消えた。……これは、許されたのか?そんなことある?
そう思った次の瞬間、ご主人さまはにちゃりとした笑みを浮かべた。
「ねえカエデ? そういえばそれ外すの今日だったよね?」
「あ、はいそうです……」
鼠径部に取り付けられた黒々とした貞操帯が指差される。
「これから出かけるから、ついてきなさい。もし帰ってくるまでに一回もイかなかったら、ソレ、外してあげるよ。もしイったらまたしばらくそのままね」
「……っ、はい」
――正直、いける気がする。さっきまでは我を失い性感帯を弄っていたけど、急に現実に引き戻されたせいでかなり冷静になった気がする。こもっていた熱もどこかへ散ってしまったようだ。
……いや、ムラムラしていることに変わりはないが。
「支度したら玄関まで来なさい。あ、服はそこの衣装棚のを使いなさいね」
「わ、わかりました」
そういうとご主人さまはすたすたと部屋を出て行った。
そして、一人になったオレは件の衣装棚をゆっくり開く。どの服も良い素材を使用していることが素人目からでも伺える。デザインも悪くない、と思う。うん、ただなあ……
「やっぱり、外に着ていく服じゃないよなあ、コレ……」
この給仕服――要はメイド服――ではダメなんだろうか。ダメなんだろうなぁ。
「はあ……」
というか、コイツらを着たとて何になるんだ。貞操帯が丸見えじゃないか! あまりに変態的過ぎるだろ、どうすればいいんだ……
その場で頭を抱えるオレだったが、その時ある服が目に入った。隅っこのほうに隠れていたので今まで気づかなかったが、これは……
「はあ、つまんないの」
ご主人さまがじとりとした目でオレを見る。
「な、なんですか。ちゃんとご命令には従いましたよ」
「いや、そうなんだけどさあ……」
深いため息である。すごく残念そうだ。
「あーあ、せっかく恥ずかしい恰好が見られると思ったのになあ」
「え……そ、そんなの、ひどいです……」
「はあ……」
オレが着る服は基本的にご主人さまが管理していて、例の衣装棚には本来なら露出度の高い服しか入っていなかったはずだった。
しかし、なにしろ数が多い。最近ご主人さまがコスプレプレイにハマったせいでその数はより一層増えた。それで違う服が紛れ込んでしまったのだろう。
さて、オレが今着ているのは、まあいわゆるミニスカ和服みたいなものだ。前にコスプレプレイをやった時に着せられた服のうち一つである。
どこでこんなものが売っていたのか見当もつかないし、はっきり言って周囲から浮きまくりだ。実際、かなりジロジロ見られている。
だがまあ、そんなことはどうでもいい。珍奇な恰好ということ、ただそれだけだ。問題ない。少なくとも変態だとは思われないからな!
それにここだけの話、この服かわいいから結構気に入ってるんだよね……。思わず鏡の前でくるりと回って一人ファッションショーをしてしまったほどだ。
……うっ、思い出すと恥ずかしくなってきた。
「うぅ……」
「あれ、ひょっとして疲れた?」
「あ、いえ、大丈夫です! 何でもないですから!」
「ふうん、そう……」
それからは他愛もない話をしながら歩いたが、ふとご主人さまが立ち止まって横を振り向いた。
「ええと、ここかな?」
「おお……!」
つられて振り向くと、そこは花屋であった。軒先には所狭しと花々が並んでおり、風に乗って甘い香りが漂ってくる。
「今日はここに用があるんですか?」
「うん。そもそもさ、今の家ってちょっと寂しくない?」
「それはまあ……」
うんまあ確かに。あんなに広い家だから謎の壺や絵画の一つや二つあってもおかしくないのに、そんなものは一切ない。よく言えば質素、悪く言えばまあ、殺風景だ。どこもかしこも建材由来の単色地獄である。
「だから、ちょっと彩りが必要かなって思ったの。花でも飾ればちょっとはマシになるかなって。どう?」
ご主人さまの脳内にそんな発想をする回路があったとは驚きだが、あの状況が打開されるというのだ。特に反対する理由もないだろう。
「はい、いいと思います!」
「……なんか失礼なこと考えてない?」
「いえそんな、滅相もない!」
あの、鋭すぎやしませんかね?
「と、とにかく行きましょう! ね?」
「……」
ご主人さまのじっとりとした目から逃れるべく、足早に店へと駆ける。
「いらっしゃいませ~」
中に入ると軒先と同じように色とりどりの花が咲いていた。どこか心が浮つくのを感じながらゆっくりと見て回る。
「ん……?」
なんとなく向いた先にあった花に目を奪われた。見た目はまあ、ホウセンカに似ているだろうか。ただ不思議なことに場所によって花弁の色が異なっており、上から下に行くにつれてグラデーションのようになっている。
こんな花もあるのだなあと感心してうなっていると、横合いから突然声をかけられた。
「なにかお探しですか?」
「うわっ!」
「あら、すみません。驚かせちゃいましたか?」
「いえ、大丈夫です。お気遣いなく……」
ああ、店員さんだったのか。目の前のことに集中していたから全然気づかなかった。
「このお花、最近よく売れてるんですよ~」
「へぇ、そうなんですね」
店員さんはオレの隣に立ち、しきりに話しかけてくる。これが営業トークなのか……と、相槌を打ちながら恐れおののいていると、突然店員さんの視線がオレに向いた。
「それにしても、珍しい服ですね、それ」
「あ、そうですよね……」
案の定というべきか、この人も例に漏れずオレの服をまじまじと見てくる。ちょっと居心地が悪い。
「あの……」
「あんまり見ないデザインですけど、かわいいですね!」
「え、あ、ありがとうございます……」
まさか褒められるとは思わなかった。曇りのない目で言われ、面はゆくなる。
「ああ、もちろんお客さんもかわいいですよ!」
「う、あぅ……」
ああもう! そんなキラキラした目で見ないでほしい。ご主人さまは普段こんなことを言ってくれないから、自分のことをこうも直接的に褒められることへの耐性がないのだ。
「か、かわいいなんて……。そ、そんなこと、ないです……」
「いや、本当ですよ! 私は嘘は言いません。もっと自信持ってください!」
「あ、あわわ」
真摯な目だ。店員さんが直視できなくてうつむき加減になる。ああ、頼むからこれ以上オレを褒めないでくれ!
「ああもう照れちゃって! かわいい~~~」
「っ~~~」
ちょっと待って。なんだか頭がぽわぽわしてきた。顔が火照ってくるのを感じる。恥ずかしくて、体をもじもじさせてしまう。
「うふふ、本当に、かわいい……」
耳元で声が聞こえる。全身が熱い。あっ、あっ、これ以上はだめ――
「ちょっと」
「あ、あら? お連れ様ですか?」
「…………ふぇ?」
気が付くと後ろにご主人さまがオレの肩に手を置いていた。いや、置くというより掴んでいる。圧迫感で少し痛い。
「行くよ、カエデ」
「は、はい……」
ちらりとご主人さまの顔を見ると、そこには何の表情もなかった。オレには分かる。これは怒っているときの顔だ。
オレは自分の行いを振り返るが、どうしても機嫌を損ねることをしたようには思えない。混乱しながらご主人さまを追って慌てて店を出る。
「あの、ご主人さま……」
「何?」
「あの……」
「何よ」
「な、なんでもありません……。すみませんでした……」
おそるおそる話しかけるが、放たれる不機嫌オーラに押されて言葉が出てこなくなる。オレは諦めてとぼとぼと道を歩いた。
「――こっち」
「うわわ!」
ふいにご主人さまが乱暴にオレを強引に引っ張って、いかにも怪しげな細くて暗い路地に引きずり込む。両脇の建物には所々によくわからないシミが付着しており、埃っぽいにおいが鼻をつく。
「うぅ……道、間違えてませんか?」
「いや? こっちで合ってるよ?」
びくびくしながら問いかけるオレに素っ気ない返事をし、すたすたと奥に進む。
そして、右へ左へと曲がってたどり着いたのは茶色く煤けた建物であった。特に看板もなく、古びたドアだけがぽつんと通りのほうを向いている。
「ふんっ」
ご主人さまがオレの顔を見て不快そうに鼻を鳴らし、そして建物の中に入っていく。オレもその後に続いてドアをくぐった。
「あ……」
中には冒涜的な光景が広がっていた。まず目に入ったのは、棚に陳列された不気味に光る桃色の液体である。他にもいろいろな色の液体が並んでいるが、その中でも異様な存在感を放っている。
「じゃあちょっとここで待ってなさい」
「分かりました……」
言いつけに従い通路の隅っこで待つが、しばらくしてもご主人さまは戻ってこない。
手持ち無沙汰なので周囲をぐるっと見回すと、奥のほうに冒涜的なブツが山のように並んでいた。よく見ると家にあるのと同じものがある。ああなるほど、ここから仕入れていたのか……。
うわ、あれは……
「っ、う“う”~~~」
店の雰囲気に中てられてか、さっきから体が疼いてしょうがないのだ。いつの間にかお尻と胸に伸びていた手を慌てて押さえつける。
でも、あれ挿れられたら気持ちよさそう……って! 見ちゃダメなんだって!
「ねえ?」
「はうっ!」
そういうわけでオレは目をつぶってしゃがみこんでいたが、突然ご主人さまが声をかけてきた。少し油断していたので、びっくりして飛び上がる。
「話は済んだから、着いて来なさい」
「はい……」
何の話かと不思議に思いつつ、地面を見ながら店内のさらに奥へと進むと、幾ばくも無いうちに目的地に到着する。
そこにはドアがいくつかあった。そのうちの一つに二人で入る。中には広々としたベッドと何脚かの椅子、それから机があった。オレはとりあえずベッドに腰かけた。
「じゃあ、まずはこれか……」
ご主人さまはドアに鍵をかけた後、懐からガラスで出来た小瓶を二つ取り出した。一つには仄かに青みがかった液体が、もう一つには桃色の液体が入っている。ご主人さまは青色の液体を飲み干すと、オレに桃色の液体が入った小瓶を渡して飲むように言った。
怪しさ満点だが、拒否する選択はないので意を決して飲み干す。
「~~~!!」
瞬間、体から汗が吹き出し、性感帯が疼き始める。
「はっ……はっ……」
色から何となく察してはいたが、やはり媚薬だったようだ。
「ねえ、どうしてこんな目にあうのか分かる? カエデ?」
「ふう~~っ♡ ふう~~っ♡」
椅子に座ったご主人さまが問いかけてくる。……どうしよう、全然わからない。だってオレはただ店員さんと楽しく話していただけで、悪いことはしてないのに……
「でも分かんないよね、そうだよね」
オレが何も言えずに黙っていると、ご主人さまはなぜか一人で勝手に納得した。そして足を組んで意地の悪い表情でオレを観察し始めた。
「ん“ん”~~♡ はあっ♡ はあっ♡」
「…………」
オレは全神経を奮い立たせて快楽に流されないようにする。今日を耐えればもう終わりだから。一筋縄ではいかないと思っていたし、今も気を抜けるような状態ではない。でも、折れるわけにはいかないんだ。この程度……!
そしてしばらく膠着状態が続いた末、ついにだんだんと熱が収まってきた。もしや時間が経って媚薬が少し抜けてきたのだろうか。安心した次の瞬間、がたんという音と共にご主人さまが椅子から立ち上がった。
「なにその表情? 余裕そうね?」
「……!」
しまった。顔に出てしまった。
「そんなに余裕なら、もっとキツいの入れてもいいよね?」
「いや、そのぉ……」
「ん?」
「なんでもないですぅ……」
反論を封じられて震えながら待っていると、ご主人さまが葉っぱの入った器を取り出して机に置いた。ぶつぶつ言いながら手をかざして火をつけると、白い煙が立ち上り始める。その煙がオレのところに漂ってきて……
「あ、あ、あ……」
これはダメだ。そう直感したオレは慌ててベッドに飛び込み顔をシーツに押し付ける。しかしその抵抗むなしく、首根っこをつかまれて体がはがされる。そして息をつく間もなく器が乗った机まで引きずられて強制的に匂いを嗅がされた。
「一応解毒剤飲んどいてよかったよ。まさか最初のヤツに耐えるなんて思ってなかったからさあ。そこは褒めてあげるよ」
「あ♡ あ♡ あ♡」
「でも残念。もう無理みたいだね」
イキたい、イキたいよお……!
「いいよ、イっちゃえ!」
…………
「ん“~~~♡♡♡」
「ったく、他のヤツに色目使うのが悪いのよ……!」
何かが聞こえるが、快楽に支配された脳では全然理解できない。背筋がぴんと伸びて、次いで体から力が抜ける。
「はぁ、はぁ……」
息が整うにつれ、体の硬直も解けてくる。そして無意識のうちにまた性感帯を弄ろうとして――そこで、恐ろしい事実に気づく。
……イッてしまった。そうなると――
「あ、あのこれ……」
慌てて手を引っ込め、震える指で貞操帯を指差す。するとご主人さまは冷たい目でオレに言った。
「じゃあ約束通り、それはそのままね」
「あ、ああ……」
今日までだと思ってたから、必死に耐えていたのに……。自覚した途端、絶望とともに急速に切なさが増す。張りつめていた糸が切れてしまい、熱が濁流のように押し寄せる。
「じゃあ、行くよ。ほら、さっさと立ちなさい」
「はぅ……うぅ……」
抗議の声がついて出そうになるが、これ以上ご主人さまの機嫌を損ねたらどうなるか分かったものではない。出来ることといえば、どうにかオレの気が狂わないうちに貞操帯を外してもらうのを黙って待つことくらいだ。
「はぁっ……はあっ……」
さっきの媚薬が全身を苛む。どんどんと熱量が増して行き、まったく収拾がつかない。
「はーっ♡ はーっ♡」
「つらいよね? でもカエデが悪いんだよ? ちゃーんと心から反省するまで外してあげないからね?」
この期に及んでもまだ何が悪かったのかとんと検討がつかない。いつまでこの地獄が続くのかと、オレは暗澹たる気分で部屋を後にした。
少し落ち着きました。ぼちぼち投稿していけたらと思います。ただ更新頻度は遅め(というか不定期?)になると思います。ご了承ください。