※この作品はR-18です。

見えざる帝国で働く下っ端男の娘滅却師がバンビエッタの性奴隷にされるお話   作:清姫

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 続くかどうか分からない。
 評価してくれれば続くかも……。

 


手違いで女モノの制服を渡された

 

 見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)

                    

 

「マリエッテ。こっちもやって置いてくれ!」

 

 書庫の荷物を右へ左へ、運ぶ、小さな影。

 段ボールを何個も重ねて、移動するものだから、前が見えずふらついている。

 そんな中、廊下の奥から少女の上司の声が聞こえてきた。

 

「はい! 只今」

 

 女性モノの制服に身を包み、大きめの帽子と身体を覆うポンチョ型のマント、顔は見え難いが儚げで庇護欲をそそられる顔立ち。

 

 一人でいそいそと、整理に追われる様はまるで、忙しい人の元に訪れた小さな妖精。

 

 そんな平の平、末端の妖精(笑)滅却師(クインシー)こそ、僕。マリエッテ・マリリージェである。

 

 

 

 

 

 原因はほんの些細な出来事だった。

 やっとの思いで滅却師の一員になることができ、これで母の薬を買う事が出来ると意気込んで来た本部で、何かの手違いで女性の制服を手渡された。

 

 当たり前の事だが、僕は男。

 確かに女性的な顔立ちをしているが、性別が違う。

 開いた袋を窓口に返し、ちゃんと男の制服を貰おうとした時、急に新人の招集がかかった。

 

 制服を交換している暇はない、だからと言ってスカートを履いて列に並ぶ事なんて出来ない。

 頬を伝う汗、再度招集を告げる無感情なアナウンス。

 入ってそうそう、遅刻何てしたら首が飛ぶ、間違いなく飛ぶ。ここは、現世の会社ではないのだ、時間内に言った場所に来れない者なんて無能として切り捨てられる。現に、首になった人を見たことがあるから分かる。

 

 過ぎる病床に伏せる母の笑顔。

 天秤にかけて、僕が覚悟を決めた。

 

 制服に袖を通し、スカートを履き、ロッカーに荷物を突っ込み、周りを見ずに集合場所へ。

 

 なに、今日の仕事が終わった後で、改めて総務に言って変えて貰えばいい。

 

 と思っていたが、無情にも物事と言うのは進んでいくもので。

 

「マリエッテ・マリリージェ。書庫整理係に任命する」

 

「謹んで拝命いたします。―――それで、ですね」

 

「終わったら直ぐに席へ戻れ!!」

 

「はいぃぃーッ!!」

 

 また別の場所で。

 

 

「ここがお前達の部屋だ! 二人一組、仲良くするように」

 

「あの......」

 

「申し出は、総務に通せ!」

 

「はいぃぃーッ!!」

 

 

 またまた別の場所。

 

 

「え? 仮に男が女の制服を配布されて、そのまま仕事をしていたら? 上に報告して、何らかの処分が下ると思います。何せ、女性の空間にいたんですから、規則違反ですので」

 

「............すみません。何でもないです」

 

 

 こうして、僕は私として生活するようになった。

 男だとバレれば、絶対に首だ。

 そうなったら、折角の安定した仕事がなくなってしまい、家に送る仕送りが出来なくなってしまう。

 弟も妹もまだ小さい、父がいない今、一家の収入源は僕だけ、だから、仕送りが出来なくなるのは困るのだ。

 

「頑張らないと」

 

 自身を誤魔化す為に、あらゆる手段を用いて、マントと大き目の軍帽を手に入れることに成功したから、身体のラインと顔を隠すことが出来たのはいいモノの、一つ問題に直面している。

 

「マリエッテちゃーん!」

 

 整理を一段落させ、今度は各々の部署に必要な書類を届ける為、台座に書類を載せ、運んでいると後方から猫なで声が聞こえて来た

 

「アレックスさん......」

 

 その声の主は僕の一つ上の先輩アレックスさん。

 こちとら金の為に必死にやっていると言うのに、戦闘の才能があるからとそうそうに戦闘部隊所属になり、優遇されているらしく、暇があり、時折こうしてナンパしてくる。

 男の僕から見ても十分イケメンに分類される端正な顔立ちではあるが、正直言ってウザったいことこの上ない。

 

 男とバレれば不味いから、出来るだけ人と関わりを断っているのにこいつは......。

 

「申し訳ありません。仕事がまだ終わっておりませんので、これで失礼します」

 

「ねーねー、いい加減俺と付き合ってよー。自分で言うのも何だけど俺ってけっこう優良物件だと思うよ? 顔は良いし、狩猟部隊(ヤークトアルメー)だから、将来も明るい。正直な所、他の女の子からお付き合いの申し込みもきてるんだ」

 

「そうですか。凄いですね。では―――」

 

 お前に構ってる暇ないんだよ。

 

 

「ちょっとー! 諦めないからね!」

 

 

 速足でアレックスの元を去って行く。

 後ろから聞こえる、声は無視して廊下を進む。

 兎に角、あの男から離れたい一心で、注意散漫になっていた為、曲がり角からやって来る人に気付かず、そのまま曲がった。

 

「わっ!」

 

 台車と一緒に自分と相手が倒れ、書類が床に散乱する。

 

 

「いっ! チッ! ちょっとあんた! 何処に目付けてんのよ!」

 

 相手の少女は臀部を摩り、立ち上がると、苛立ちを顔に張り付けながら、僕の胸倉を掴み上げた。

 

「す、すみません」

 

 少女らしからぬ強い力。

 足が地面から離れ、壁に打ち付けられた為背中に鈍痛が走る。

 

 バンビエッタ・バスターバイン!?

 

 見えざる帝国の精鋭部隊。陛下を長とするこの大地に於いて、幹部を務める強者。

 聖十字騎士団(シュテルンリッター)の一人。

 

 上司の上司の更に上の上。

 僕みたいな平では言葉を交わさない程、雲の上の存在。

 

「こっちは朝からムシャクシャしてるってのに! あんたどうしてくれんのよ!」

 

 そんな無茶苦茶な。

 しかし、それが聖十字騎士団。この見えざる帝国では強さこそ全て、強ければ大抵のことは罰することなく許される。

 それが、例え、およそ場末の酒屋でしか起こりえないような、理不尽とも呼ばれる言いがかりによる暴力であっても、陛下は許されるだろう。

 

 とりあえず、謝らないと。

 

「す、すみません。バスターバイン様!」

 

「誰が謝って欲しいって「バスターバイン様」―――ん?」

 

 鬼の形相で壁に押し付け、グッと上に掴み上げた僕を睨み上げているバンビエッタ。

 今にも、噛み殺されそうな寸前で、僕の来た道から声が聞こえて来た。

 

 アレックスがこちらに駆け寄り、傍まで来ると、膝を付き深々く頭を下げる。

 

「あんた誰?」

 

「はっ! わたくし、狩猟部隊(ヤークトアルメー)所属、アレックス・テッラシックと申します。バスターバイン様のお怒りごもっともかと存じますがどうかお待ちを! マリエッテの不始末の責は全て、わたくしにあります。罰するのなら、どうかこのわたくしを!」

 

「へー............ま、良いわ。今回は許してあげる」

 

 ぱっ、と手を離し、『あんた私の部屋に来なさい』とアレックスに言い残すと、僕に目もくれず自身の部屋に帰って行った。

 

「......ごめんねマリエッテちゃん。お詫びはまた今度ちゃんとするから」

 

 そう言いながら、テキパキと散らばった書類を整理してから、起き上がらせた台車に乗せ、衝撃で落とした軍帽をそっと僕の頭に乗せると、去って行った。

 

 

「......厄日だ」

 

 確かに、曲がり角をよく見てなかった僕にも責任はあるが、そもそもあの男が僕に言い寄ってこなければ、あんな状況にはならなかった。

 

 

「―――サインお願いします」

 

 だけど......。

 バンビエッタから助けてくれたのもまた事実。

 

「―――どうぞ」

 

 ............ご飯くらいなら一緒にいって上げても良いかな。

 一回だけ、友達としてなら、アレックスと遊んでも良い。

 

「あくまで、お礼としてだから」

 

 仕事が終わり、空になった台車を付きながら、人通りの少ない廊下で誰も聞いていない言い訳を言い放った。

 

 グシャッ! ベキッ!

 

「......ん?」

 

 書庫に戻る途中、聴きなれない音が聞こえて来た。

 

「何だろう」

 

 水水しいものを切るようなそんな音。

 直ぐ近くだったのもあり、発生源を探ろうと、時折聞こえる音を頼りに、歩き始めた。

 

 グシャッ!

 

 近づいてくる。

 

「......」

 

 全身の背が逆立つのが分かる。

 身体が、行くなと言っている。

 なのに、動く足を止めることが出来ない。

 

 好奇心は人を殺すと言うのを、身体の髄まで思い知らされることになる。

 

 目の前には僅かに開いた扉、音はそこから漏れていた。

 

 

 ベキッ!

 

 つくと音が出る台車を廊下に止め、忍び足で部屋の前まで辿り着くと、扉に手をそっとあて、顔を隙間によせ、中を覗き込む。

 

「ひっ!」

 

 引き込むような小さな悲鳴が自身の喉から漏れ出た。

 瞬時に、片手で口元を塞ぎ、その場でしゃがみ込む。

 

 机に腰を下ろし、乱れた服装を整えている黒髪の少女。

 その少女の目の前にズタズタにされた、辛うじて人の形を保っている男の亡骸。

 

 アレックス!

 

 その悲惨な光景から顔を離れられずにいる自分自身に怒りを覚える。

 

 その場を離れろと、どれだけ訴えかけても、身体が動かない。

 扉の向こうから聞こえてくるバンビエッタの呼吸音を掻き消す程の悲鳴交じりの、息遣い。

 

「ん? 誰」

 

「......ッ!!」

 

 腰が抜けた。

 尻もちを付き、動けない僕に無慈悲にも、バンビエッタは迫って来る。

 

「あんた......さっきの。―――ん?」

 

 バンビエッタは小首を傾げ、目線を合わせると、僕の軍帽を叩き落とすと、片手で顎を掴み上げ、喉を見た。

 

「あんた―――」

 

 ―――男ね?

 

 バレた。

 

「あ、あ......」

 

 恐怖で声が出ない。力が入らず動く事も出来ない。

 

 顎に手をあて、少し考える素振りを見せると『ま、こいつでも良いか』と呟くようにいって、僕の手を掴んだ。

 

「まだ、やり足りなかったのよ。ちょっとあんた来なさい」

 

「い、やだ。お願いします! わ、たしは」

 

「うっさい」

 

「い゛っ!」

 

 部屋に引きずりこまれると、今更言うことを聞くようになってくれた口で抵抗し、懇願するが、一蹴りされ、ぐずる僕に苛立ったのか、部屋の中に投げられた。

 勢いよく転がり回り、椅子に頭を打つと、痛みで蹲る。

 

「よく見たら可愛い顔してるじゃない」

 

「......ッ!」

 

「返事しなさいよッ!」

 

「ご、めんなさい! ごめんなさい!」

 

「あぁー。もう良いわ」

 

 マントを雑に外し、明後日の方向に放り投げると、僕のスカートに腕を突っ込み、下着を脱がせに掛かる。

 抵抗すると、その都度拳が降って来た。

 何度も何度も、叩かれ、次第に抵抗する気が薄まっていく。

 

 『最初からそうすればいいのよ』とバンビエッタが陰部を露出させると、自身の下着をずらし、僕に跨ると勢いよくそれを自身の体内へと招き入れた。

 

「んっ!」

 

 味わったことのない感覚に、僕は困惑する。

 恐怖と快感が混じり合い、頭がパンク寸前で、何も考えることが出来ない。

 

「やめえ……っ! てぇえ゛っくぅ…うださ…あ…!い……」

 

「んっ! あっ! あんたはあたしに従ってればいいのよ!」 

 

「痛い! いったい!」

 

 苦悶に歪む表情を見下ろしながら、恍惚とした笑みを浮べる。

 自分自身の喘ぎ声が、部屋中に響き渡る。

 

「さっきの奴より、全然良いじゃない! あいつ、直ぐに逝っちゃってつまらなかったのよ、ね!」

 

「ぶっ! ―――何で、抵抗してないのに!」

 

 涙が耐えず流れおち、バンビエッタの拳が近づいては離れていく。

 下腹部の快感より、顔や上部の鈍痛が勝った結果、再び、逃走の火が灯り、隙を見て逃げ出そうと、好機を待っている。

 

 見逃すな、一瞬の隙、上からこいつを退かし、部屋から出れればそれでいい。

 今まで、バンビエッタが男を殺している何て知らなかった。噂すら立たなかった。

 だから、何とかして、部屋からでて人目のある所まで逃げられれば、追ってはこない筈、能力も建物内では使ってこないだろう。

 逃げれたら、直ぐに上司に報告してそれで―――

 

「―――何て思ってないでしょうね?」

 

「へ?」

 

「やっぱりね」

 

 上下に動きながら、僕の首に両手を伸ばす。

 

 何でバレてるんだ。

 死ぬ、殺される。

 

「がっ!」

 

 息が出来ない。

 苦しい。

 助けて。

 

 足をバタつかせ、手で首元に固定された腕を引き剥がそうとするが、びくともしない。

 

 意識が遠のいていくのと同時に、何かが上ってくるのを感じる。

 

 それが、何なのかは分からない。しかし、自身の身において、それは良くないことだと本能で察し、残り全ての力を振り絞り、泣き叫び助けを呼んだ。

 

「だすげ! 助けてェェェェぇぇッ!!!」

 

「っるさいのよ!」

 

 ゴン!

 

 頭を殴られ、視界が揺れる。脳が震える程の衝撃が走り、吐き気がこみあげてきた。

 

 

 コンコン。

 

「バスターバイン様。何か大きな音が聞こえましたが、何かなさいましたか?」

 

 扉の向こうから声が聞こえた。きっと騒ぎを聞きつけた誰かがやって来たのだろう。

 

 これしかない。これが逃げる為の最後のチャンス。

 

「助け―――」

 

 声を出そうとしたその瞬間。

 

 左手を首から離し、顔の下半分を覆うように掴んでくる。

 声が掌で止められ、上手く外へ伝わらない。

 

ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ンーーーッ!!」 

 

「何でもないわ」 

 

「しかし「何でもないって言ってんの! 文句ある!?」......申し訳ありませんでした」

 

「んん! んん――!!」

 

 行かないで。念じながら右手を扉へ伸ばすが、思いも虚しく、足音は遠ざかって行くのが聞こえた。

 

「くっ! も、もうイクから! ―――ッ!!!!!」

 

「ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ンーーーッ!」

 

 身体に電流が走る。

 快感の波が、僕の身体全てを飲み込んでいった。

 強烈な緩急のある気持ちよさが、絶えずバンビエッタの中へと入っていくのがハッキリわかった。

 

 鈍痛すらかき消すほどの快楽が過ぎた後には、気だるさとズキズキする痛みだけが残り、身体を動かすのも億劫で立ち上がることすらできなかった。

 

「―――あぁー......中々良かったわよあんた」

 

 左手に付いた僕の唾液を舐めながらそう言った。

 

 全く嬉しくない。

 

 叫びすぎで喉が裂けたのか、口の中に血の味がするし、横を向けば直ぐにアレックスの死体から飛び出た内臓が見えるから吐き気が止まらない。

 

「じゃあ、あんたもういらないから」

 

「え? ―――」

 

 刀身が顔に降って来たと思ったら、次には目の前は真っ暗になっていた。

 

 

 

 

 

 次、目を覚ました時には、血まみれの水たまりの上で、服がはだけた状態で寝ていた。

 

「......」

 

「え? ちょっとあんた何で生きてんのよ」

 

 椅子に足を組んで座り、グラスを持っているバンビエッタが、怪訝な顔で僕を見下ろしている。 

 

「......分かりません」

 

 『確かに頭切り飛ばしたのに......』と物騒なことを呟いたのち、サーベルを持って再度こちらに近づいてきた。

 

 そして―――

 

「ごっ!」

 

 心臓を貫かれた。

 口から血を吹き出し、虚ろな目でバンビエッタを見上げる。

 

 痛い、痛い、痛い......。

 

 患部を中心に絶え間ない痛みが、全身に広がっていく。しかし、苦痛が最高潮に達した瞬間、急激に痛みは引いていき、最後には傷も完治していた。

 

「―――とりあえず、身体洗ってきて」

 

 そう言って、部屋に備え付けられた風呂場を指さす。

 

「......」

 

「また刺されたいの?」

 

「ッ! 行ってきます」

 

 疲労がたまった身体に無理やり鞭打って、風呂場に続く扉を開き、入る。

 血で赤くなった制服を脱ぎ、身体を洗った。

 

 

 

 

 

 身体を洗うと、『一先ず私の服着てなさい』と、バンビエッタの予備の制服を渡された。

 血まみれの服に再び袖を通す気になれず、なし崩し的に着る事に。

 

「で? あんた何? 何で刺されたのに死んでないの?」

 

「し、知りません」

 

 顔色をうかがいながら、とぼとぼと吐露するように話す僕。

 今の僕の中では、バンビエッタはいかれた性犯罪者だ。

 幾ら、側が可愛くとも、中身が獣。恐怖の対象でしかない。

 

「......ああそう。まぁ何でもいいわ。―――これから、私が呼んだら直ぐ来なさい」

 

「......このこと、上に報告します」

 

「それで?」

 

「処分が下って。バスターバイン様―――がぁ!」

 

 最後まで言い切るまでにバンビエッタが動いた。

 立ち上がり、自身の座っていた椅子を倒し退かすと、僕の前まで来て胸倉を掴み、顔を寄せた。

 

「あんたら何百人の命より私一人の命の方が重いのよ! それとも何? あんたはここが『現世と同じで悪いことをしたら裁かれる』とか思ってる訳?」

 

 眉間に皺を寄せ、怒りを体現したような顔に、怖気づいてしまい、何も言い返せなくなった僕を見て。ニタリと笑い、服を掴んだ手を離すと、倒した椅子を直しながら話を続けた。

 

「でも、あんたがもし言いたいって言うのであれば報告すればいいんじゃない? 別に大した罰は受けないと思うけど」

 

「そんな......」

 

 脅せば、自身の行いを改めてくれる。何て淡い希望を抱いたのが間違いだった。

 目の前のこれが、純然たる悪。

 弱肉強食の世界から飛び出してきた、野獣だ。

 言葉ではどうしようもない。

 

「―――それに、私だってあんたの秘密知ってるってこと忘れないでよね」

 

 コップを傾け、獲物を狙うかの目で僕を見る。

 

「秘密? ―――ッ!?」

 

 最初何のことか分からなかったが、バンビエッタが下腹部に手を当てた瞬間、理解した。

 

「男のクセに女の制服着てるなんて。上が知ってるのかしら? 仮に私の秘密を暴露されても、力があるから今まで通りに生きていけるけど、力のない(・・・・)あんたがそのことバラされたらどうなると思う? もうお母さん(・・・・)に薬買って上げられなくなるんじゃない?」

 

 所々の言葉を強調して、言い放った言葉は、僕を崖っぷちに追いやった。

 

「何で、そのこと」

 

「お母さんのこと? あの男がペラペラ話してくれたわよ。『マリエッテは家族の為に必死に働いてる』とか『給料の殆どを仕送りに回してるから、いっつも安い食べ物しか食べていない』とかね」

 

 アレックスが何でそんなこと知ってるんだ? 

 もしかして、調べたのか。

 いや、それよりも、僕を守ってくれたことの方が重要だ。

 僕を守って死んだ。

 

「う、うう......」

 

「ちょっと泣かないでよ」

 

「だってアレックスさんが......私を守って......ッ!」

 

 そんな僕を胡乱気(うろんげ)な目で一瞥すると『めんどくさいわね』と懐に手を入れ、取り出したモノを僕に差し出した。

 

「......何ですか、これ?」

 

 バンビエッタの手にあるのは数十枚の金貨。

 これだけで僕の数ヵ月分の給料になるほどの大金。

 

「何って金よ金。―――私と寝れば、金を上げる。まずは一ヵ月分でこれだけ、後はその都度渡すわ」

 

 金貨とバンビエッタを交互に見ると、次第に怒りが込み上げて来る。

 バンビエッタ自身に対しての怒りもそうだが、金貨を見て、一瞬アレックスのことを忘れようとした自分自身に苛立ちを覚えたからだ。

 

「ふざけないで下さい! そんなお金で『あっそ、ならいいのね? 別に私がヤリたい時にあんたを犯すことも出来るのよ?」......ッ!」

 

 足を組み換え、金貨を持った手とは逆の手で、肘掛けに肘をのせ、頭を支える。

 

「どうすんの? 欲しいの? 欲しくないの?」

 

 受け取っても、受け取らなくても、結果が同じなら受け取った方が良い。

 しかし、これを受け取れば、アレックスのことを許すことになってしまう。

 

 葛藤に身を窶していると、不意に、チャイムが鳴り響いた。

  

 終業の時間だ。

 

「帰ります!」

 

 バンビエッタの返事も聞かずに、マントを拾い上げ、扉を開き外に出る。

 

「ん?」

 

「誰だこいつ?」

 

「さぁ?」

 

「バンビちゃんの部下か何か?」

 

 ちょうど部屋の前で、色とりどりの髪色の凹凸カルテットに遭遇。

 丁度その時、自分の胸元がはだけているのに気づき、手に持ったマントで隠すと、その中で一番小さな、僕と同じくらいの身長の子供の手にある軍帽を『すみません。それ私のです』と半ばひったくるようにして受け取ると、碌に人の顔も見ずに走り去った。

 

「おいコラ、礼ぐらい言え!」

 

 

 

 

 

 

 何とか逃げ切った次の日。

 

 

「マリエッテ・マリリージェ。本日付でバンビエッタ様のお傍付きにへと配属する。異例の昇進だ。バンビエッタ様に感謝しろ」

 

 

 全身の血の気が引いた。

 

 

 

 

 

 

マリエッテをTSする能力(切り替え可)をもたせて良いと思う?

  • YES
  • NO
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