目の前に広がる雲海は仮想の太陽に照らされて茜色に染まっている。
遥か彼方、文字通り世界の果てまで続いているであろう大空には、鳥の姿一つ見止められない。
まして、つい先ほど飛び降りたプレイヤーの姿など。
ミトは第5層でアスナと和解した後、アイテム作成スキルを鍛え、無事自分の店を構えることが出来た。
店といっても実際に物を売るのは、持ち運びの出来るベンダーズカーペットを使った露天商であり、作成したアイテムを補完する仮倉庫を持っている程度だったが。
それでも生産職──最前線で戦うアスナたちをサポートする立場として、順調な滑り出しだったと言えるだろう。
だからだろうか。たった一人で素材集めとアイテム作成に耽る日々に、鬱屈した感情を覚えたのは。
繰り返されるルーティンワーク、成果の見えない労働がミトの心を僅かであれ蝕んでいたのは事実だろう。
だから柄にもなく、”その”取引に乗ってしまったのだ。
──────素材アイテムを提供する代わりにギルドに加入する、などという取引に。
*********
アインクラッド外縁部────石造りの柵から彼は飛び降りた。ベータ時代、そこから飛び降りた者は数秒の
それはデスゲームと化したSAOでも変わらず、ここから虚空へ身を躍らせることは、尤も簡単なゲームからの退場手段だと知識として知ってはいた。
だが、まさか本当にヒトが飛び降り自殺するところをこの目で見ることになるなど、ミトは思ってもいなかった。
「みんな、死んじゃったね」
「………」
ミトは石柵に握ったまま膝をつくキリトに声をかける。項垂れたまま顔を上げない彼は茫然としたまま私の言葉に答えない。
「………」
そのことについてミト自身何か言うことも無く、2人はただ、夜闇に染まっていく大空を見つめ続けていた。
SAO攻略がクォーターポイントである25層を超えた頃、ミトはとあるギルドに加入することになった。と言っても普段ミトが商売するような攻略ギルドではなく、その背中を追う所謂中層域のプレイヤーだった。彼らはミトに、自分たちが手に入れた素材アイテムを提供する代わりにギルドに加入し、偶にでいいので助っ人になって欲しいと交渉してきた。
一人きりで素材集めに励む日々に僅かばかりの寂しさをミトは渋々彼らの提案を受け入れた。
その後、彼らがもう一人の助っ人として連れてきたキリト共にミトは、『月夜の黒猫団』のメンバーとなったのだ。
そして、今はたった2人の生き残りとなってしまった。
「私たちは、何処で間違えたのかな………」
「………」
「私たちが攻略集団だっていえばよかったのかな」
「………」
「それとも、黒猫団になんて、関わらなければ、よかったのかな………」
世界の全てが死に絶えたかのような沈黙が続いた後、ようやくキリトが口を開いた。
「サチが言ってたんだ」
「なんて?」
「一緒に何処か逃げようって」
「それで?」
「俺、約束したのに。君を守るって約束した……のに」
同じだ。それがキリトの言葉を聞いたミトの感想だった。
かつての私と同じ、護ると誓った誰かを護れず、無力感に打ちひしがれている。
違うのは、彼が最後までサチの命を諦めなかったこと。私にはできなかったことだ。
「ねぇキリト────────今夜は、一緒に寝ましょうか」
気付けば、そんな言葉が口を出ていた。
*********
「ん………はぅ……」
「………ぁ………ん」
ベッドの横に取り付けられた小さな明りだけが照らす寝室でキリトとミトは深いキスを交わしている。
ミトがキリトを壁に押し付けるようにして両手で顔を抑え、むさぼるように舌を絡めている。
「ベッド……行こうか」
ミトに連れられたキリトがベッドに押し倒される。
抵抗する気力の無いキリトの上に馬乗りになったミトは再びキリトの唇を食んだ。
「なんで……こんな」
「さぁ?」
なんでこんなことをするのか。キリトの弱々しい問いかけにミトは薄く微笑むだけで答えない。
(言えるわけないでしょ。君を励ます方法がこんなのしか思いつかなかったなんて)
同情と憐憫だけで女に抱かれる。それは如何に成人前(と思われる)キリトでも屈辱的な、少なくとも愉快なことではないと言うことはミトにもわかる。
(それに、貴方が羨ましいなんて、もっと言えないよ)
羨ましい、とは少し違うのかもしれない。仲間を護るため、その最期の一瞬まであきらめずに戦う。ミトにはかつて出来なかったことをキリトはやってのけた。結果としてサチをはじめ黒猫団の皆を護ることはできなかったが、それでもミトはそんなキリトの姿に憧れ、嫉妬したのだ。
(私にはないものを持っている人を自分のモノにしたくなった)
一言で言えばそういう事だ。自分に欠けたモノを取り込もうとする行為。ある種のカニバリズムによってミトはキリトを抱こうとしている。
「今は黙って、私に抱かれて」
「お、おいミト、そこは……」
キリトのズボンに手を入れ、熱く勃ち上がったソレを撫で擦る。根本から先端にかけて絞るように撫でると、もとより硬かったキリトの猥棒が更に硬度を増す。やがてそれは下着に収まらないほどの巨木に成長した。
「脱いで」
「………」
ミトの有無を言わせぬ圧力に負けてキリトは全ての装備を解除する。少年らしい薄い胸板、男性ゆえに瀬ちょう過程でついた腹筋がうっすら浮き出ているのは単純に脂肪が少ないだけだろう。
「………ぅぁ」
中性的な容姿だと思っていたが、脱いでも女の子みたいだとミトは吐息を漏らす。
今まで誰も、彼自身でさえ触れたことのないであろう桜色の突起を口に含む。
「あっ……ミト、やめっ」
「かわいい声出しちゃって」
悪戯っぽい言葉でキリトを煽りながら、内心で少しだけ驚いていた。
(男の子でも乳首で感じるんだ………)
現実に居た頃、そしてこちら側で倫理コード解除設定を見つけてから、何度かした自慰行為を思い出して、ミトは脚をすり合わせる。
「やば、コレ我慢できないかも……」
言いながらミトも自分の下腹部に手を伸ばす。触れた指先に十分以上の湿り気を感じてそのまま関節一つ分挿し込む。
「……んっ………はぁ」
そのまま何度か指を往復させるとそれだけで快感が訪れる。
「ミト、お前……」
「黙って私に任せて……んはあっ!」
ジュプリ、と音を立ててミトの秘裂がキリトの欲棒を加え込む。
「くっ……うぁ」
「コレ、やばいっ………♡」
思わずこぼれたキリトの喘ぎ声にグチュグチュと腰を振るミトはさらに興奮する。
キリトと繋がったまま前後に動くと丁度キリトの下腹部にミトの淫核がこすれて言いようのない快感に襲われる。
「あはっ、キリトでオナニーしてるみたいっ」
「ミト、待って、俺もうっ」
「まだダ~メ」
今度は上下に腰を振る。次はミトの膣内をゴリゴリと削るような肉棒がミトを絶頂へと導いていく。
「も、もう……限界っ」
「もうちょっと……頑張ってっ」
グチャリグチャリ。ミトが上下にバウンドするたびに溢れ出した愛蜜がベッドを濡らしていく。
「あっ……ここ、好きぃっ♡」
ピストンの中で自分の弱い所────Gスポットにキリトの性器が刺激したのか一際大きな嬌声を上げる。
「あ、あ、あ、もう、ダメぇっ!!」
「ミト、俺もっ」
「来てっキリト!一緒にっ……んんんっっ!!」
「「はああっっっ!!!」」
互いにガクガクと腰を震わせ、ミトとキリトは同時に果てた。
「ん……」
「目が覚めた?」
何度か頬を突かれる感触にキリトが目を覚ますと、こちらの顔を覗き込んで微笑むミトの姿があった。
彼女の顔を見るだけで数時間前の熱夜を思い出して顔が熱くなる。
その代わり、黒猫団を失ったときの言いようのない虚脱感は薄れている。
それを意識して初めて、ミトが何故「一緒に寝よう」などと言い出したのかを理解して、暖かい気持ちになる。
「なぁミト」
「なに?」
それでも、僅かに残るしこり────彼らの断末魔を忘れようとミトに手を伸ばした。
「もう一回、シたい」
「………来て」
今度はキリトが上になって覆いかぶさる。
明りに照らされて浮かんだ影が2つに重なる。
けれど2人は気付いているだろうか。
それはまるで、2匹の黒猫が傷を舐め合っているようだという事を。