「ほらアストレア様、ベッドですよ」
「うぅ……ん」
珍しく呑み過ぎてしまったアストレア様を抱きかかえて帰宅した僕は、意識も朧気なのか曖昧な返事をするアストレア様をベッドに下ろす。身に触れていた僕の手が離れていくのを感じたか彼女は袖をきゅっと摘まんで可愛らしく抵抗する。
「ア、アストレア様?」
「あつ…ぅぃ……」
「えと、お風呂……は今日はもう無理だろうし……身体を拭くタオル、持ってきますから」
「ベルが……やって頂戴……」
「………」
ゴクリと喉を鳴らす。
酒と汗の…決して不快ではない匂いが鼻孔をくすぐる。肌に張り付く胡桃色の髪を掃うようにして彼女の額を撫でて潤った唇に目がいってはつい、指でなぞる。
「んちゅ……ちゅるっ」
「っ!」
意識してか無意識か、唇に触れている僕の指を軽く咥えてチロリと舐める。慌てて引き抜いて飛び退くようにして部屋を後にする。
「タ、タオル……持ってきます!」
パタパタと足音を立てて、部屋を後に。ベッドの上で糸の切れた人形のように仰向けになって寝転がるアストレアは呻き声を上げては寝言のように僕の名を呼んだ。離れていく僕を、求めるように。
桶に水を入れて、タオルと飲み水も合わせて神室へ戻る。女神様は仰向けの状態で膝を立てていたけれど、そのせいでロングスカートがズレ落ちて瑞々しい肌が露出されていた。
「アストレア様、戻りましたよー?」
眠っているのだろうか、覗き込むようにして声をかける。まだわずかに意識があったのか、これまた艶めかしく呻いて僕の方に寝返りをうって瞼を開いた。熱を帯びた瞳はトロン、としていて…吸い込まれるように彼女の瞳に見惚れた。彼女は僕の存在に気付いたのか、嬉しそうに柔らかく、微笑む。
「大丈夫ですか?」
頬に触れれば、桶に水を入れたせいで僕の手は僅かに冷えて、そのせいか、ぶるりっとアストレア様が身震いして、けれど心地よい冷たさだったのか、すぐにうっとりとした表情を浮かべ始めた。僕はベッドに腰かけ、アストレア様の頬を撫でながら、言う。
「えと……身体、自分で拭けますか?」
「……して、くれないの?」
「…………」
「いい、からぁ……私…動けないわ……身体、熱くって…眠たくて……くぁあ……ベルになら……いい、からぁ……んぅう…んっ……じゃあ、お願いね……終わったら……一緒に、寝て頂戴……」
「う、くぅ……いつもより十割増しくらいにアストレア様、えっちだから……なんだこの、なんだ……!?」
有無を言わせない。やがてすぅすぅと寝息をかきはじめた彼女はしっかり夢の中に旅立ってしまったらしい。僕はどうしたものか、やっぱりライラさん達の手を借りようか……なんて考えて、こんな酔いつぶれたアストレアなんて見たことなくて、独り占めしたい欲が沸いてきて……喉を鳴らして、タオルを手に取った。
「脱がせますからね……アストレア様」
そうだ、今更じゃないか。
小さい頃からお世話になっている女神様に色々見られたこともあるし、見たこともある。唇の感触だって彼女の肢体の感触だって知っている。うん、今更だ。恥ずかしいしドキドキすることに変わりはないが、他でもないアストレア様が「良い」と言ったのだから、良いのだろう。僕は彼女の肢体を包んでいる、穢れを知らない純白の衣に手をかける。袖、胴衣、スカート、そして下着…順番に、女神様がお召し替えしている時、どんな風にしていたかを思い出しながらゆっくりと起こさないように、脱がしていく。本拠内が静かなせいもあってか、衣擦れの音がやけに大きく響いた。脱がした後の衣は綺麗にまとめて椅子の上に置いたけれど、それにはアストレア様の体温と匂いがしっかりと残っていて、更にはお酒が回ったせいで上気し、わずかに汗を吸ったのか湿っぽく両腕で抱えていた僕は数瞬、固まってしまった。何せ、大好きな女神様の匂いと温もりが今、手元にあるのだから。
「うぅ~……」
僕が体調を崩してしまった時も、こんな風に着替えさせられたりしたんだろうか?身体を拭いてもらったことがあるような気がしないでもないけれど、昔のことすぎてイマイチ覚えていない。顔を埋めてしまいたい衝動に抗いながら、改めて女神様の方へと向き直ると、そう……そこにはいたのだ、一糸まとわぬ―僕が脱がしたんだけど―眠れるアストレア様が。
「すぅ……すぅ……」
下着も何もない、産まれたままの姿の女神様は本当に無防備で、煽情的で、艶めかしい。何度目かもわからない唾液を飲み込む音がやけにうるさく響く。
「……すご、い」
たぷんと重力に沿って傾く胸。小さい頃から一緒にお風呂に入れられたり…最近じゃあ、触らせてもらったり吸わせてもらったこともあるけれど、それでもやっぱり近くで見ると迫力満点だった。
「くぅ……くぅ……んん……」
彼女の上体を一度起こし、僕は彼女の後ろに座る。彼女は身を委ねるように身体を弛緩させている。桶に入れた水でタオルを濡らし、絞ってから抱き着くように後ろから前へ手を回し、普段は穢れを知らない白の衣に納められている悩ましい胸を清める。
「んっ……」
ヒヤリとした感触が伝わったのか、短い喘ぎのような吐息を漏らすアストレア様。それにドキッとしたけれど、そのまま続ける。【ファミリア】の中で一番大きい―次にマリューさん―は弾力のある手応えを返してくる。確かな重量感を享受しつつ、丁寧に一ヶ所の漏れもない様に、膨らみの全てを優しく拭き清めていく。ゆっくりと、注意深く、丹念に、傷付けないように。
(柔らかい…)
別に初めて触るわけじゃないけど、やっぱり、そう思ってしまう。お姉さん達のとは違って別の柔らかさというか…。タオル越しとはいえ、ふわふわとした重みがあって、軽く添えただけで、なだらかな膨らみは優しく僕の指を受け止めた。手のひらには収まりきらない大きさで、けれどしっかりと弾力がある。圧倒的な存在感と重量感。重みを感じながらゆっくりと押し込んでみると、自らの存在を激しく主張するかのように僕の手に弾力を返してきた。
「うぅ~……」
思わず、彼女を背後から抱きしめる。両腕の中で大きな胸がむぎゅっと形を歪ませるけれど、その感触にさえ興奮してしまう。毎晩のように彼女に足を絡められ、胸を押し付けられて抱き枕にされている僕……よく、今まで理性を保てていられたなと自分のことながら感心してしまう。おまけに今、アストレア様は夢の中だ。胸を揉んだって、舐めたって、そうそう起きっこないはずだ。そんな胸をいつも僕は独り占めしていると思うと、なぜだか優越感が湧き上がってくる。
「ちょっとだけ……」
そろそろと手を伸ばして指だけで鷲掴みにして、アストレア様の胸を静かに揉み始めた。
「んっ……」
アストレア様の跳ねるような声。
……起きちゃった?
「…………ん……くぅ……くぅ……」
手を止めると、また静かに寝息を立てはじめる。まだ目を覚ましてはいないことがわかって、何故かほっとする。起きている時だって言えば触らせてもらえるんだろうけれど……なんだろう、イケナイコトをしている感じがするから、なのかな。再び、指だけを胸の柔らかな感触の中に埋める。
「んん……ふぅ…………んっ…………んー」
寝てる状態でも、反射的に声は漏れてしまうらしい。手のひらで両脇からくっと寄せて上げるように、胸を捏ねる。
「あふ……ん、んんー……ふぅ、ん…………」
柔らかさを堪能しつつ、起こさないように慎重に。
「はぅ……ん…………んん………んー………」
どことなく緊張感のない、間の抜けた寝息。好き放題に揉んでいるだけなのに、反応が伺えてなんだか嬉しい。ついつい揉む手に熱がこもってきてしまう。最初、指先で触れる程度だったのが、今では手のひら全体で捏ねまわして、完全にその弾力を愉しんでいる。
「はぁ……んっ、んん……はぁ…………」
段々、揉むだけでは気がすまなくなってくる。
顔をアストレア様の谷間にうずめて、甘えたい衝動が湧き上がってくる。後ろから抱きしめるようにしていた僕はうなじのあたりに顔を埋めて悶々と息を漏らす。彼女の髪の匂いにうっとりしてしまう。
「ふぁっ……ん、ふっっ……」
「ふぅー…………駄目だ…我慢、できそうにない……ごめんなさいアストレア様」
たまらず、一度アストレア様を仰向けに寝かせた僕は衝動のままに彼女の谷間に顔をうずめていた。アストレア様のむにゅんとした柔らかい胸の間に、自分の顔を挟み込む。
「一緒に寝てるときとか、起きてるときに抱きしめられた時……こんな感じだったかな……」
普段は意識することがなかったのか、そんなことをつい考えてしまう。普段は僕が抱き枕にされている分、このままアストレア様の胸に顔をうずめた状態で、産まれたままの姿の彼女を抱き枕にして、朝を迎えたい…。
「んん……ふぅ………すぅー………すぅー…………」
僕は一旦谷間から顔を離し、ぷっくりとしている乳首を口の中へと含む。
「んんっ……あ…………ふっ…………はぁ…………」
少しだけ、アストレア様の呼吸が乱れるのを感じる。眠りながらでも、感じるものは感じるらしい。ころころと口内で乳首を舐めまわすと、何もしてなかった時よりも、固くなっているような気がする。寝ながらとはいえ、女神様を感じさせられていることに悦びが湧いてくる。
「んっ……はぁっ、んん……」
普段なら、アストレア様の顔を窺ったり、会話を楽しんでしまう。それはそれでいいものだけど、今はそういうのは抜きで、『揉みたくて揉んでいる』感が凄くて、無言で行為に楽しんで、無性に熱中してしまう。乳首から口を離して、手のひらでもみもみとリズミカルに揉みあげる。
「あっ…………んっ…………ふぅ…………んん」
下から上へと、生地でも捏ねるみたいにぐいぐいと力を込める。それに飽きると今度は手のひらに納まりきらない胸を、なんとか掴もうとしてみる。掴んだ状態で指と指で輪を作ろうとしても、届かない。同時に、自分の指で絞った分、たぷんと胸が突き出されて揺れる。やっぱり……大きい。見ればわかるのに、そんな感想ばっかり浮かべてしまう。今の僕は、ほとんどアストレア様の身体で遊んでいるようなものだった。今度は、突き出された胸の先端、乳首をクニクニといじってみる。
「ふぁぁぁ………っっ」
明らかに、感じている声が漏れ出てきた。酔って眠っている女神様には悪いけど、もっと感じさせたい。そんな感情と共に、興奮してきた自分を自覚する。股間はすっかり勃起しきっていて、痛いくらいで、自然と彼女の身体にぐいぐいと押し付けてしまっている。
「………ゴクリ」
ふっと胸から手を離して、アストレア様の下半身をちらりと見る。これだけやっても起きないってことは、彼女の眠りはお酒も入って相当深いんだろう。何も身に纏っていない彼女は当然、下着だって履いてなくて、カーテンの隙間から差し込む月明りに照らされた彼女の肢体は余すことなく目に入る。僕は唾を飲んでタオルで拭いた時にも当然触れた場所……股の間、女の人のアソコに触ってみたくなって、両手で足を開かせようとした。
「……んんんんんん?」
「……………ぁ」
「………な、にをしているのっ……?」
アストレア様は目を覚ましてしまったらしい。けれど、その頭は覚醒しきっておらずぼんやりとしていて上体を起こしても舟をこぐように身体を揺らして、藍色の瞳で僕のことを見つめてくる。そんな彼女の仕草が、表情が、たまらなくって、やってしまったという罪悪感やら見つかってしまったというあれやこれやがひっきりなしにやってきて、僕は勢いに任せて彼女の唇を塞いだ。
「ちゅ……んっ……ぅ…!?」
「…んっ、ぁ……ごめんなさい、アストレア様……我慢、できなくって」
「………悪い、子」
トロンとして、静かに目を細めて微笑むアストレア様。手を伸ばし、頭を優しく撫でて「いいのよ」と口にはしないけれど、そう伝えてくる。確かいつだったか、「求められて嫌な気はしないわ」なんて言ってたっけ……。唇が離れて、向き合うようにして座る僕とアストレア様の間には沈黙があって、僕は彼女の顔を直視できずにいるとアストレア様はそっと僕の手に指を添えて顔を覗き込んできた。
「…ごめんなさいベル、ちょっとお手洗いに行きたいわ」
「……へ?」
「お酒、いっぱい飲んだから……ね? まだ頭がぼんやりしていて、1人だと危ないし……一緒に来てくれないかしら?」
「……怒ってないんですか?」
「怒って欲しいの?」
「い、いえ……でも…」
「いいのよ、
それに、脱がしてとか拭いてとか一緒に寝てとか言ったのは私だし…年頃の貴方が我慢させるのは可哀想でしょう? そう言うアストレア様は身体を揺らしながらおぼつかない足取りでベッドから降りる。当然、危なげないその動作に僕は慌てて抱き着くようにして支えた。産まれたままの姿なアストレア様に、せめてローブだけでもと羽織らせて僕達は部屋を後にした。
「じゃ、じゃあアストレア様、僕っ、外で待ってますから」
「………私を、置いていってしまうの?」
「な、なんで泣きそうな顔をするんですか!?」
「離さないわ、絶対」
ひそひそと静かに話す僕達は同じ個室にいた。
外で待とうとする僕をアストレア様は置いていかれる子供のようにイヤイヤと駄々を捏ね、瞳を潤ませて、仕舞には便座に座ったまま僕に抱き着いてきた。
「アストレア様…まだ、酔って…!?」
「んぅぅ~………」
お腹のあたりに顔をうずめてぐりぐりとしてくる彼女の頭に手を添える。僕は翌朝、酔いが完全に冷めた女神様の末路を想像して嫌な汗を流しては、これから女神様の貴重な放尿シーンを見ることになるのだと思うと変な興奮が押し寄せてきて僕は咄嗟に両手で耳を覆った。
「どうして、撫でるのをやめてしまうの?」
そんな僕のせめてもの抵抗も、
× × ×
【ディアンケヒト・ファミリア】治療院
「それで……どうなったのですか?」
「えと、この後女神様と待ち合わせをして、
「はあ……」
私は何故、少年と女神の惚気話を聞かされなければならないのだろう…とアミッドは心の中で愚痴を零した。何が女神様の貴重な放尿シーンだ。ウミガメじゃないんだぞ。とあれやこれやと言いたくなってくるのをぐっとこらえる。定期健診も兼ねてアミッドにベルはプライベートなことをかいつまんで話してくれる。信頼故なのだろうが……。
「まさかアストレア様が酔っぱらうと甘えたり泣きそうになってりするだなんて…」
「……今までに、その経験は?」
「たぶん……ないです。あ、あと……意識の無い人を着替えさせるって難しいんですね……」
「それは……まぁ……」
「アミッドさんも、いろんな人達を
「あの、やめてもらえますか? 感慨に耽ったような空気を醸し出さないでもらえませんか?」
「僕なんて、脱がすだけで限界で……えへへ、裸のアストレア様に抱きしめられて眠ったんです」
「へー良かったですね」
「あれ、怒ってます?」
「キレてないですよ」
「だから…その、今度、脱がして着せるの、教えてほしいなあって」
「………」
頬を染めながら、もじもじと身体を揺らし、丸椅子を右に左に回転させるベルはいじらしく可愛らしいと思えなくもない。アミッドとて彼を幼い頃から診ている、腐れ縁や幼馴染なんて言葉だって間違いではないかもしれない。そんな彼が一丁前に女神様に恋をして、女神もそれに応えている。……まあ、小さい頃に「大きくなったら…!」なんて言って女神をその気にさせちゃったのだろうけれど。本人達がそれでいいなら、幸せなら、いいのだろう。
「アリーゼさんに言われたんです」
『駄目じゃないベル、全裸ローブのアストレア様とお手洗いに一緒に入るなんて……首輪をつけて外に出なかっただけお利口だけれど、それでも流石に…すっぽんぽんの女神様と一緒にお手洗いってのはねえ……性癖は人の数だけあるけど、特殊なプレイをアストレア様にさせるのは……せめて、そう、そういうのは、リオンとかにしてあげなさいよ……私? うーん、ベルがどうしてもっていうなら頑張ってみるけど、せめて18階層の森の中にしてくれる? ベル以外の男に裸、見られたくないもの』
「ネーゼさんにも…」
『アストレア様からベルの匂いがするし、ベルからもアストレア様の匂いがするし……その、何、マーキングしあったのか? その、アストレア様にアブノーマルプレイは流石に……えと、私で良ければ、付き合うからさ、アストレア様には……な? 嫌でも、ベルのアレでドロドロになったアストレア様とか……ゴクリ、やべ、興奮してきた』
「あとは輝夜さんに…」
『おしょんしている最中のアストレア様の口内にて我等が兎様は粗相をした、ということですか? 真っ白なおしっこを…ぶちまけたということでございますかあ? 一緒に厠にいくとは、そういうことでございましょう? 流石に女神様を肉べ――』
『言わせねーよ!?』
「ライラさんが止めてましたけど、輝夜さんは何を言おうとしたんでしょうか?」
「………私に聞かれましても」
なんなんでしょうか、【アストレア・ファミリア】は残念な女性しかいないのでしょうか? 秩序は守れても風紀は守れないのでしょうか? アミッドは頭痛が痛む頭を押さえた。
「あ、じゃあ僕、アストレア様と待ち合わせしてるから……行きますね!」
「え、ええ……その、せっかくの逢瀬です。楽しんできてください」
プライベートな話をして、ベルは頬を染めて、アストレアとの逢瀬に興奮しているのか、やはり可愛らしく笑みを浮かべて治療院を出て行った。後日、ベルの口から『大人になった』『女の人、やっぱり、すごい』などという話を聞かされてアミッドは盛大に吹き出した。