帆高と陽菜が離ればなれになった間に、起こり得たであろう事と、二人が夢の中で、というエピソードです。
東京農工大学については、僕の独自設定です。僕は最近まで東京農工大学が存在する事自体、知らなかったです。尚、東京工業大学は2024年に医科歯科大学と統合、新名称は「東京科学大」になり、その名前は学内外からの提案を参考にした、と2023年1月19日の新聞報道にありましたが、僕は小説には反映させず、そのままにします。
因みに、一人エッチのシーンがある為、R-18と致します。
2021年。
代々木の廃ビル屋上の祠の前にて。
森嶋帆高と天野陽菜は、元の世界に戻る事に成功した。だが、二人はしばし意識を失っていた。
先に意識を取り戻したのは、帆高だった。雨が降り始めてからだった。
「ここは…?屋上…?」
独り言を口にした帆高の隣には、意識を失ったままの、陽菜がいた。
「陽菜…?陽菜!俺達、戻れたんだよ」
軽く陽菜を揺さぶる帆高。だが陽菜の目は閉じたままだ。
「嘘だろ…。陽菜!!お願いだから、目を開けてくれよ!!」
その頃、ビル内部では、警察官の声が響いていた。
「森嶋が登った非常階段は、床が抜けています」
「屋上に行くルートが他に無いか、探せ。後、梯子がビル内に有るか無いか。無いならば急ぎ手配しろ」
「はっ!!」
制服の警察官に、リーゼントの刑事、高井警部補が指示を出す。
一方、凪に飛びつかれた安井刑事は、なんとか凪を落ち着かせた。
「姉ちゃんと帆高に会わせろ!!」
「わかった、わかった。待っていてくれ」
既にこの時点で圭介は公務執行妨害の現行犯で逮捕されていた。
数分後。
「屋上への道が確保出来ました」
「よし。屋上へ行く。足元に注意しろ」
高井と何人かの警察官が屋上に向かう。
屋上にて。
「陽菜、どうして…」
帆高の頬を、大粒の涙が伝う。その涙が、陽菜の頬で弾けた。
その時だった。高井の声が響いた。
「森嶋帆高!!公務執行妨害の現行犯で逮捕する」
帆高は、観念するしかなかった。
二人の制服の警察官が、手錠を掛ける。その時だった。
「こんな事が…」
声を上げたのは、高井だった。
「いなくなった女の子って、彼女か…?」
「はい」
「彼女の為に…、君は…」
「はい」
「いなくなった彼女が、ここにいる…!?そんな馬鹿な!!」
高井が叫んだ直後、もう二人の制服の警察官が陽菜に近づいた。
「陽菜に、陽菜に触るな!!」
帆高が叫ぶ。咄嗟に高井が二人を制した。
「二人共、彼女を丁重に」
高井の指示に二人共に頷いた。
「これで良いか?我々を信じて貰えないか」
「刑事さん…」
帆高が頷いた。
下の階にて帆高が警察官に連行される際、彼は凪に言った。
「凪センパイ」
「帆高…、姉ちゃんは!?」
「陽菜さんは、無事だよ」
「帆高…」
「凪センパイ、俺は警察に行く。陽菜さんにそう伝えて」
「うん」
僅かに涙ぐみながら、凪が頷いた。
陽菜が目を覚ましたのは、帆高が下の階に降りてしばらく後、病院でだった。警察官に抱えられて下に降りた。
病院には、凪と彼を保護した佐々木巡査、陽菜を降ろした警察官二人が同行した。
「ここは…?私、戻れたの…!?」
「目が覚めた様だね」
「お巡りさん…?帆高は…、どこ!?」
「彼は、無事ですが、警察にいます」
「帆高…」
陽菜の目からは大粒の涙が零れ落ちた。
その日。
帆高は、高井刑事から、病院到着後、すぐに目覚めた事、健康状態に異常は無い事、凪との生活が再び許されるだろうという事を知らされた。
数日後。取り調べ終了後。高井が安井に言った。
「あの森嶋が言っている事は、嘘はないですが、不可解な点もありますね」
「捜査に『かも』は禁物だが、現代科学では証明されない事が起こったかもしれないな」
「安井さん」
「森嶋の周辺を洗ってみるか…」
現行犯逮捕された圭介と、彼の証言から須賀夏美、気象神社の神主、荒木研究官、占い師に対して事情聴取が行われた。又、陽菜にも事情聴取がされたが、最終的には、帆高は嘘を言ってはおらず、精神鑑定の必要は無いとされ、送検された。
帆高が送検される前日。
「天野さんに、伝えたい事は有るか?」
「待っててくれ、とだけ伝えて下さい。刑事さん」
「わかった」
高井が頷いた。
その後の少年審判で、帆高には保護観察処分が下された。
2021年12月。
代々木の廃ビルは、解体される事になった。
たまたまそこを通りかかったのは、圭介だった。彼は警備員に声を掛けた。
「あれ、ここを解体するの」
「そうですが…」
「いや、俺、ここで一時期働いた事があってさ。確か屋上に祠があって、それをどうするのか、と思ってね」
「はあ」
警備員が首を傾げた直後、一人の作業員が声を掛けた。
「今日から作業を始めるところですが、今日は現場確認のみです。祠については、まだそのままです」
「いくら廃ビルとは言っても、ちゃんとやるべき事はしないと。罰当たるんじゃない?何なら、神主知っているけど」
「そうですか。わかりました。私はこういう者です」
そう言って作業員は名刺を渡した。監督ではなく、主任だった。
「有り難う。じゃあ、これ、俺の名刺。監督さんに宜しくお伝え下さい」
そう言って圭介は名刺を渡した。
数日後。圭介に監督から連絡が入り、祠の魂抜きが行われる事が決まった。圭介はすぐに気象神社の神主にその旨を話し、神主はそれを快諾した。
その日、圭介の事務所に安井刑事が立ち寄り、ビルの解体工事を知った。安井は高井刑事と佐々木巡査に連絡を入れた。
同日。佐々木は陽菜のアパートを訪ねた。
「こんばんは。凪君」
「え、ええーっ!?」
「今日は君を叱りに来たんじゃないの。陽菜さんは?」
「姉ちゃんなら、もう少しで帰ってくると思うけど…」
「そう…」
「ただいま」
「あ、姉ちゃん、おかえり。姉ちゃんにお客さんだよ」
「こんばんは。おじゃましてました」
「貴女は、あの時の婦警さん…。まさか、帆高に」
「そうじゃないの。あの代々木の廃ビルが解体される事になって、屋上の祠も、魂抜きをする事になった、って須賀さんからお話があったの。それで、貴女達にも、来て頂けないか、とお話が…」
「そうでしたか…。行きたいのはやまやまですが、学校もありますので…。須賀さんや皆さんに宜しくとだけお伝え願えますか」
「わかりました。おじゃましました」
「はい。また、いらしてください」
「お巡りさん、有り難うございました」
陽菜と凪は一礼した。
「姉ちゃん…」
「うん…」
そう言って二人は、窓の外を見た。
それから更に数日。気象神社の神主により、祠の魂抜きが行われた。巫女二人と解体業者、圭介、夏美が参加した。
その日の夜。帆高と陽菜は、不思議な夢を見た。
帆高と陽菜は、天空に浮かぶ、緑の大地にいた。互いに何かを話してはいるが、声は聞こえない。
但し、二人共に、「お前達の選択、悔いが無いならば、それで良い」とだけ聞いた。
そして竜が去ったところで目が覚めた。
「陽菜さん…」
「帆高…」
その夢は、その日一度きりだった。
12月下旬。
帆高に来客があった。保護司が帆高宅を訪ねた際に、安井刑事と気象神社の巫女を連れて来たのだ。
安井刑事と巫女から、あの代々木の廃ビルが解体された事を聞かされた帆高は、巫女に不思議な夢を見た事を話した。そして、陽菜も不思議な夢を見た事、その夢を見た日が祠の魂抜きの日だった事を知った。
2022年。
陽菜は中学校を卒業し、高校生になった。
帆高は高校2年生になり、東京の大学進学に向けて本腰を入れた。
この時代、大学の統廃合も進んでいた。国公立と私立の垣根を越えた合併もあった。
帆高は気象や環境に興味を持ち、幾つかの大学をピックアップした。第1に東京農大と東京工大と農工大が統合した新しい国立大の東京農工大学、第2に東京海洋大学、第3に東京理科大学である。
帆高は陽菜に再会するという目標に向けて、真剣に学問に打ち込んだ。
しかし、時々、陽菜に渡した指輪を見ると、自分の中の陽菜への想いが抑えきれなくなり、自分の手が男性器に伸びてしまう事がある。
「くうっ…、ひ、陽菜さんっ…!!」
この時は、大量の白濁をぶちまけてしまう。
一方の陽菜も、高校入学後、何人かの男子から告白されたが、全て断った。クラスメイトの女子に、彼氏について聞かれたが、「今、離ればなれになった幼馴染みがいるから」と誤魔化していた。
しかし、帆高の事を考えると、身体が疼いてしまい、乳房や女性器に手が伸びる。
「ああっ…、ほ、帆高っ…」
二人共、会えないが故に想いが募る事もあった。
そして2024年。
帆高は目標としていた東京農工大学に合格して、上京した。
上京してアパートを借りた後の事。
晴れ女の件で依頼人の老婦人に筋を通し、そして、川沿いを歩いていた時の事だった。
「陽菜さん…?」
「帆高…?」
プロローグ 終わり
この先は、第3章、インターミッションの予定です。
当初は2回で終える予定だったインターミッションですが、後何回かを予定しています。