そしてとうとう作戦決行当日、大和と虎太郎は準備を万全にしブリーフィングルームで待機していた。
あの日別れてからお互い少し気恥ずかしくなって基地で顔を合わせてもまともに会話を交わせていなかったので虎太郎は勇気を出して声を振り絞った。
「しっかし風磨の奴遅いなぁ……いっつも集合時間の30分前には涼しい顔してるようななやつやのに」
「あ、ああそうだな……確かあいつ休暇初日真っ先に飛び出して行ってそれっきり帰ってきていない様だが一体どこへ行ったんだろうな?」
あれからまともに話していなかった二人だったが案外今まで通り普通に話せることに安堵しつつ虎太郎はおどけて続けた。
「もしかして逃げたとか?」
「バカ言え! あいつがそんな事する訳ないだろ!?」
「せ、せやな……あいつはそんな奴とちゃう……ごめん」
「お前の冗談は良く度が過ぎるんだ全く…………」
それからしばらく待っているとブリーフィングルームの扉が開き風磨が息を上げて部屋へ入ってきた
「す、すまない……遅くなった……!」
「気にせんでええって! まだ集合時間の10分前や」
「どこへ行っていたんだ?」
「ああいや……大切な人に挨拶をしに行っていた……必ず生きて帰ると」
風磨はそう力強く覚悟の籠もった声で言った。
予想外の言葉に大和と虎太郎は驚いてしまう。
「大事な人!? お前いつの間に!!なあ風磨、それ誰なん教えてーな」
「やかましいぞ虎太郎!! いずれお前らにも話す。しかし今はその時ではないだろう?」
「そ、そうだな……」
「ああせやな……!」
そう風磨に言われて虎太郎と大和は顔を見合わせてお互いに頬を赤らめ、風磨はそんな二人を不思議そうに見つめる
「おいお前ら……何かあったのか?」
「い、いやなんでもあらへん! なあ大和!」
「へっ!? あ、ああそうだ! 風磨、お前も言っただろう? 今はそれどころではないと!」
「……そうか。ま、お前らのプライベートな事にまで踏み込むつもりはないが……」
風磨がそう言ったのを聞いて大和と虎太郎はほっと胸を撫で下ろすのだった。
そしてとうとう作戦決行時間になり、長官が部屋に入ってきて作戦の最終確認を終えると……
「君たちにとって泣いても笑ってもこれがジャガンボード帝国との最後の戦いになるだろう。しかし願わくば私は戦いが終わった後もまたここで君たち三人と笑って話をしたいと心から願っている。無論私だけでなくE.G.M.極東基地……いや全世界の人々が君たちの作戦成功と無事をいのってくれているはずだ……作戦を成功させてまた君たちの顔を見れることを私は心待ちにしている。それでは健闘を祈る。 日輪特機サンバイザー…………出動!」
三人は長官の言葉に敬礼で返すとスカラベースに乗り込みブースターを点火させ離陸する。
空高く飛び上がったスカラベースは第二宇宙速度を超え地球目掛けて接近するジャガンボード帝国の宇宙要塞へと一直線で向かっていった。
そして三人はジャガンボード帝国の野望を止めるべく要塞に侵入し、幾多の障害を乗り越えとうとう中枢へと足を踏み入れる。
そこでは女帝ヘラジーナが待ち構えていて三人は苦戦を強いられた。
しかし彼ら三人は必ず生きて帰る。その決意の元全てを賭けて放ったサンバイザータイフーンがヘラジーナを貫き、とうとうジャガンボード帝国の女帝を打倒したのだった。
「「「見たかジャガンボード! これが……愛の力だァァァ!!!」」」
爆散するヘラジーナを見て三人は自然とそう叫んでいて……
「あれ……? ワイと大和はまだわかるけどなんで風磨まで……?やっぱ大事な人ってそういう…………」
「そういうお前たちこそ………」
互いに不思議そうな顔をしてお互いに顔を見合わせる。
その時要塞が大きく揺れて辺りが崩れ始めた。。
「ま、まずい! ヘラジーナを失って要塞が崩壊を始めたのか!?」
「クソッタレ! ワイらを意地でも生きて返さんつもりか!?」
サンバイザータイフーンに全エネルギーを賭けた三人はその揺れの中で立っていられないほどに消耗していた。
「しかしオレは死ぬわけにはいかないっ! オレを待ってくれている人がいるからだ!! お前たち二人もそうなんだろう!?」
三人の中で風磨が真っ先に力を振り絞って立ち上がると一際熱く二人にそう言った。
「なんや風磨……いつにも増してアツいこと言うやんけ」
「ああ。しかし風磨の言うとおりだ。お前にも思っただけで心が熱くなる……そんな人ができたんだな……俺もそうだ。だからこそ俺たちはなんとしてでもここを三人で脱出しE.G.M.極東基地に戻るんだ!」
風磨の言葉に見を奮い立たせ二人もなんとか立ち上がる。
「せやな! ナイスやで風磨」
三人は生きて地球に戻るため大急ぎでスカラベースへと向かう、その間にもジャガンボード帝国の生き残りがなんとしてでも三人を道連れにしようと妨害を試みてきたがそんな妨害を物ともせずただただ三人は帰りを待つ大切な人の事を思いながらスカラベースへとたどり着き、とうとう崩れ行く要塞を脱出したのだった。
そして脱出したスカラベースから崩壊する要塞の姿を三人は見送る。
「見ろ……ジャガンボード帝国の最期だ……」
「ホンマに終わったんやな……」
「……ああ……オレ達の戦いは無駄ではなかった……ということだな……」
道中に仕掛けた高性能爆弾と要塞自らの崩壊のおかげで粉々に砕け散った要塞の破片は地球に降り注いだが大気圏で燃え尽き報道では季節外れの流星群と報じられ、人々は彼ら三人の命と地球の命運をかけた戦いなど知る由もなく空に流れる流星に想いを馳せるのだった。
そしてボロボロになりながらも帰還した三人を見た長官は大人気なく大号泣し三人を迎え入れ、それからは戦いで負った傷の手当やメディカルチェックを受けたりしながら平和な時間を過ごした。
そんな戦いの終結から約一週間後、三人は再びブリーフィングルームに集められていた。
部屋の中には三人の作戦完遂や勝利を称える垂れ幕、それに関係各所から送られた花束等が並べられておりお祝いムード一色に染まっている。
「三人とも……よく頑張ってくれた。E.G.M.を代表して……いや。地球人を代表してお礼を言わせてくれ……本当にありがとう……そしてご苦労さま。地球が救われたのは君たちのおかげだよ」
長官は深々と三人に向け頭を下げた。
「そんな大げさな! なあ風磨!」
「ああ。オレたちは日輪特機としての仕事をやり遂げただけです。オレ達がこうして戦えてこられたのはそのための支持やアシストをしてくれた長官やE.G.M.極東支部の人々のおかげでもある……それにオレは日輪特機に入って……少しは変われた気がするんです。感謝するのはこちらの方ですよ長官」
「風磨くん……それに大和くんは女の身体になってからもよく頑張ってくれた。最早上層部に君の実力を疑う者はいないよ ただ……結局君の身体を元に戻す方法を見つけられなかったことだけは本当に申し訳ない。これからもE.G.M.の総力を上げて君を治療す……」
そこまで言いかけた長官を大和は静止した。
「もう良いんです長官……」
「大和くん……? い、いや……諦めないで欲しい。 確かに現在の我々の科学力で元に戻すことは不可能でもいずれ君の身体は必ず我々が責任を持って……」
長官は大和が身体をもとに戻すことを諦めてしまったのかと必死に説得をするが大和の心はもう決まっていた。
「長官、俺がこの身体になってしまったのは俺が虎太郎を守りたかったその結果です。長官が責任を感じる必要は全くありません。それに……この身体になって初めは戸惑うことばかりでアカホークすら続けられるかどうか分からないと言われた時は自分が自分で無くなるようで怖かったです。しかし風磨も虎太郎もそんな俺に変わらず付き添ってくれて……男の身体じゃ気づけなかったことにも気づけて少しは変われた気もするんです。だからこれは諦めじゃない……俺はこの身体とこれからも向き合っていきたい。今はそう思えるんです。」
確かに長官の言うように男の体に未練が無かった訳ではない。
しかし今の大和にはそれ以上に大切なものができていて長官の申し出を断ったのだ。
「本当に……その身体のまま一生生きていくつもりなのか?」
そんな彼の予想外の言葉に長官はそう尋ねたが大和の決意は固く…………
「……はい。そのつもりです。この身体でも俺はやっていける。そう思わせてくれた人がいるから…………なあ虎太郎?」
「えっ!? ワイ? そ、そうやな……」
突如話題を振られ挙動不審になる虎太郎を見て呆れたように、しかしどこか優しい表情で大和は深く大きく息を吸い…………
「もうこの際だ。言ってしまおう。俺、虎太郎と結婚します。」
大和は迷いのない真っ直ぐな瞳で長官に告げた。
「「「ええ────ーっ!!」」」
大和のその言葉に風磨と長官……そして虎太郎も驚きを隠せずそう叫んでしまう
「ちょ……何故虎太郎まで驚いているんだ? お前が言い出したんじゃないか」
「「な、なんだって──ー!?」」
大和が続けて発した言葉に風磨と長官は顔を見合わせ更に驚く。
「や、大和くん……いったいどういう事だね!? それに君は男で……」
「はい。確かに俺は男です。それを否定する気は今後ともありません。しかしそれと同じくらい今の女の身体である自分も受け入れたいんです。そんな俺を虎太郎はずっと近くで優しく見守ってくれて……そして認めてくれた。だから俺はそんな虎太郎とずっと一緒に居たいんです。それにこいつを一人で放っておいたら心配で仕方ないですし……」
大和は二人に今の思いを全て伝えた。
驚いていた長官だったが彼の表情を見て嘘ではないと確信したのだった。
「ほう……最近二人の様子がおかしいと思っていたがそういうことだったのか……」
「ちょ、ちょっと待ってーな……」
勢いで言ってしまった戦いが終わったら結婚するという言葉を予想以上に大和が真摯に受け止めていた事に驚きを隠せない虎太郎は恐る恐る割って入ろうとするが
「何を今更、プロポーズしたのは虎太郎からだろう?」
「「な、なにーっ!?」」
大和の言葉で更に長官と風磨は声を上げる
「お、おい虎太郎!? どういう事だ! 説明しろ!!」
「そ、そうだぞ虎太郎くん!! 一体何が有ったというんだ?」
「ああいやそれはなんというか言葉のアヤというか……でもワイが今の大和を愛してんのもワイから結婚してくれって言ったのも事実やねん」
二人に詰め寄られた虎太郎は大和が女になってからトレーニングに秘密で付き合っていたこと、そして日を重ねるごとに彼の事を徐々に異性として見てしまっていたこと、そして最後の休暇で思い残すことのないようにと言う長官の言葉から想いを伝え、勢いで結婚してくれと言ってしまった事を伝えた。
「……なんと……しかし君たちが心からそう想っているのならば私達は祝福しよう」
「そうか……お前達の大切な人……というのはお互いのことだったのか。オレに秘密にしていたのは少々癪だがお似合いだと思うぞ。幸せにな。おい虎太郎!もし大和の身に何かあったらその時は承知しないからな」
「そうだぞ虎太郎くん!もしそんな事があればE.G.M.極東支部の総力を挙げてだな……」
風磨と長官は二人の言葉をゆっくりと噛み締めていき、そんな二人の言葉をゆっくりと受け入れていく。
いくらきっかけが勢いで口から出た言葉だったとは言え大和の想い、そして自分が今の彼に抱いている想いに嘘は無かった。
「ちょ……なんでワイにだけそんな当たり強いん!?で、でもありがとう。そうか……ワイ、ホンマに大和と…せやな。今更言い訳なんか見苦しいわな。大和、サンバイザーとしてはいっつもお前に助けられっぱなしやったけど今度はワイがお前を幸せにしたる!」
「ああ。しかしそこはこれまで通り持ちつ持たれつだ!不束者だがこれからもよろしく頼むぞ、虎太郎」
その夜、E.G.M.極東支部を上げての大祝勝会にてその事実は基地全体に周知され、困惑する者も少なからずいたが彼らの無事と作戦の成功、そして大和と虎太郎の関係を基地の皆で祝ったのだった。