ジャガンボード帝国との最終決戦からおよそ半年が経った頃。
戦いが終わり一応は世界に平和が訪れたことで日輪特機は解体され、三人はそれぞれ新たな職に就き新たな目標を見出し始めている。
そして虎太郎と大和の意思を汲んだ長官の計らいで彼…いや彼女は戸籍を女性に変えやっとのことで正式に入籍の手続きを済ませ結婚式を執り行う事となっていた。
式場の控室の前で似合わないタキシード姿の虎太郎がゆっくりとドアを開けるとそこにはウエディングドレス姿の大和の姿があり…
「……虎太郎、似合っているか? こういうのはどうも慣れないし落ち着かなくてな……」
恥ずかしそうに長いスカートの丈をゆらゆらと揺らしながら大和は言った。
純白のドレスを着飾り、そして綺麗にめかし込んだメイクをした大和の姿は最早花嫁そのもので、褐色の肌とドレスのコントラストに虎太郎は目を奪われる。
「当ったり前やん! なんせワイとお前で一緒に選んだんやからな!」
「そうか……そう……だな。 ああ。とうとうここまで来てしまったんだな……この身体になってから今日までとても長かったようなあっという間だったような……」
大和は鏡に写ったウエディングドレス姿の自分を見た後感慨深そうに遠くを眺め、そんな彼の肩を虎太郎は優しく叩いた。
「せやな……ホンマにワイら……結婚するんや。きっとお前を女に変えた怪人が見てたら『結婚が幸せのゴールで正しい形ある等という風潮を流布することは間違っています!』とかなんとか言って怒りそうやけど……」
虎太郎は大和を今の姿に変えたポリコレイノスの真似をしながらそんな事を言うが大和の決意は固く……
「言わせたいやつには言わせておけば良いんだ。俺はそうしたいからそうした……ただそれだけなんだ。それを否定する権利など誰にもありはしない。そうだろう? 虎太郎は……俺みたいな男としても女としても中途半端なヤツじゃ嫌だったか?」
「何を今更そんな訳無いやん! 長官の計らいもあってワイらはこうして名実ともに夫婦になれるんやから……これからもよろしく頼むでリーダー!」
「いや、これからは日輪特機の同僚としてではなく二人の夫婦としてだな……」
「そ、そうやな……それじゃあ今後ともよろしゅうワイの可愛い奥さん!」
「……ああ」
虎太郎の言葉に嬉しさと恥ずかしさを感じた大和は顔を赤くして俯きつつ小さな声でそう言った。
二人でそんな事を話しているうちにとうとう式の時間が近づいてきて、式場には長官を筆頭にE.G.M.の関係者や二人に縁がある人たちが集まり始めていたのだが風磨の姿が見当たらない。
いつもは遅刻など全くしない彼が式場に現れないことを二人は不安に思っていた。
「なあ大和? そういや今日風磨見た?」
「いや見ていない……連絡もしてみたんだが返事がなくてな」
「ワイもや。何しとんねんあいつ……最終作戦当日もギリギリになるまで来んかったけど今日に関してはマジで遅刻やぞ……?」
「あいつが遅刻なんて……何もなければ良いんだが……」
しかし時間は待ってはくれず、とうとう式は風磨不在のまま始まってしまい……
パイプオルガンが鳴り響く中ヴァージンロードでは亡くなっている大和の父親の代わりに長官が彼の隣を歩いており……
「大和くん……君が虎太郎くんと結婚すると聞いた時は驚いたが……でも今の花嫁姿……とても似合っているよ。うう……なんだか君が本当に私の娘みたいに思えてきて泣けてきたよ……」
大和と手を繋いで歩きながら長官はもう片方の手で顔を拭う。
「ありがとうございます長官……」
「もし虎太郎くんが何か不貞を働いたら我々E.G.M.が総力を結集してキツイお灸を据えさせるからね」
「は、はい……そうならないように虎太郎にもキツく言っておきます……」
「虎太郎くんも 大和くんの事頼んだよ?」
「当たり前やないですか!任しとってください!」
ヴァージンロードの上でそんな話をしながら虎太郎へと隣を譲った長官、そして大和と二人で新婦の前に立ち、永遠の愛を近いキスをしようとしたその時……
「すまないっ! 遅くなった!!!」
式場の扉がバンと開き息を上げた風磨が現れ、辺りは喧騒に包まれる。
「お、おい風磨! 今めっちゃええとこやぞ!?」
「い、いやすまない……でも間に合ってよかった。二人共本当におめでとう!!互いに戦いを駆け抜けた戦友として……そして二人の親友として祝いの言葉とこの花束を送らせてくれ!!」
そう言って風磨は手に持っていたボロボロの花束を掲げ二人の門出を祝福した。
「なんやそのボロボロの花束……まあええわ。その言葉と気持は大事に受け取っとく。それにしてもせっかくええムードやったのに一気に騒がしくなってもうたな」
「しかしこっちのほうが俺たちらしくて良いじゃないか。風磨が居なければ始まらないしな」
「それもそうやな。それじゃあ大和……」
「……ああ、虎太郎……愛してる」
急なことにあっけにとられた二人だったがその喧騒など物ともせず二人は誓いの口づけを交わし、式場は拍手に包まれた。
その後行われたブーケトスを風磨は人並み外れたジャンプ力でキャッチし、披露宴までの休憩時間に二人の元に謝罪にやって来た。
「遅れてすまなかった……」
「どないしたん風磨? お前らしくもない」
「い、いや……お前らに祝いの花束でも買っていこうと思って柄にもなく花屋へ行ったんだ。こういうとき縁起の良い花なんかも前日までにしっかり調べてな。それで花屋を出た時にひったくりと遭遇してしまって……」
「大丈夫だったのか?」
「ああ。これでも地球を守った元日輪特機の一員だからな。そんな小悪党に遅れは取らないさ。ただナイフで刺されそうになって携帯は壊されたがひったくられたカバンも無事に持ち主に返したし犯人もその場で警察に突き出してやった。それで色々時間がかかってしまってな……せっかく用意した花束もボロボロになってしまった訳だが」
「そうか……でも無事で良かった」
「せやでいつも遅刻なんてせん風磨が遅れてくるもんやから心配しとったんやぞ!」
「ああ。心配かけてすまなかった。しかしこれから披露宴のスピーチもあるしな。しっかり練ってきてやったから楽しみにしておいてくれ。では先に披露宴の会場で待っているぞ」
そう言って風磨は先程掴み取ったブーケを大事そうに抱えて後ろ手に手を振りながら二人の前を後にした。
「それにしてもあいつ……なんであそこまでしてブーケを取ったんだろうな?」
「わからへん……でも風磨もなんか大切な人おるって言ってたやん。多分その子に告白するためちゃう?」
「そうか……! 俺たちだけ幸せになったら少し忍びないし風磨も俺達みたいに幸せになれれば良いな!」
「せやな! さ、披露宴の準備はよ済ましてまお! 皆待ってんで!」
そして二人はお色直しを終え披露宴も大成功に終わったのだった。