それからまた一年程月日が流れ……
とあるマンションの一室で以前より少し落ち着いた髪型をした虎太郎がスマートフォンで誰かと通話をしている。
そんな彼のスマートフォンにはあの時2人で撮ったプリクラが貼られていて、薬指には指輪が光っていた。
「ああもしもし? ……ワイは元気やで! え? ワイやなくて大和……?ああ。大和も母子ともに健康。寧ろ身重やっちゅーのに元気すぎて困っとるくらいやで。 お前の方は最近どないなん? ……えっ!? それホンマ!? とうとうお前もか〜……いやぁおめでとう! しっかしお前逆玉もええとこやな! わかったわかった。また詳しい事分かったら教えてや! スピーチと余興は任しとき! えっ、それはいらん? 冷たいやっちゃなぁ まあええわ。 じゃあまた! ほんならヨメさんにもよろしく!」
虎太郎は電話を切ると、その顔には自然と笑みを浮かべていた。
「どうした? 何か嬉しそうだったが?」
彼の声を聞いてゆっくりと奥の部屋から出てきたのはサイズに余裕のある服を着た大和だった。
その腹部は大きく膨らんでおり新しい命が宿っていることが見て取れ、膨らんだ腹の中に宿った命を労るように優しくさする大和の指にも指輪が光っている。
虎太郎はそんな彼に通話の相手とその内容を嬉々として話し始めた。
「ああその話やねんけどな、風磨からやってんけど遂に分かってん! あいつの言ってた大切な人! いつぞや護衛した大和に似てる某国のお姫さん!」
「えっ!? それじゃあまさか……!」
「うん! 色々難儀したらしいけどお姫さんが国を亡命して風磨にプロポーズしに来たらしくて近々入籍するんやて! いやぁ……お前と入れ替わってワイと三人でサンバイザーとして一緒におった時なんかええ感じになってんなぁとは思ってたけどまさかそこまでとは思わんかったわ」
「そうか……! それはめでたいな! あいつの事だ。きっと良い旦那さんになるだろうな!」
「しっかしめっちゃ逆玉やなぁ……それにしてもお姫さんもお前に似てるし風磨ももしかしたらお前のことちょっとは好きやったんかもしれへんな」
「それじゃあお前は俺よりお姫様の方が良かったのか?」
その虎太郎の言葉に大和は少し拗ねたような表情でそう尋ねる。
「そんな訳あれへん! 確かにお姫さんの方がお金持ちやしおっぱいもデカかったけど……それでもワイは大和のほうが大好きやで!」
「おい虎太郎……二言くらい余計な言葉が聞こえたんだが……? それにあの時どれだけあのお姫様の身代わりが恥ずかしくて大変だったか……それに狙ってきた怪人から辱めだって受けて……俺がそんな目に遭っている間お前らは俺に変装したお姫様と悠長に市街を観光してたんだったよな…?当時は任務だからと何も思わなかったが今思い出したら腹が立ってきた……」
虎太郎の言葉を聞き、見た目はそっくりながらも豊満なバストを持っていた某国の皇女とそんな彼女の胸に少しでも気を惚けさせている彼への嫉妬心や当時の不満、その他諸々の感情が湧き上がってきた大和は眉間にシワを寄せて彼を睨みつけ、台所に置いてあった包丁をまるでアカホークとして敵と対峙する時のように構えてみせた。
「ああいや今のは……そう! 関西式ジョークで……それにお姫さんと街観光したりしてたんはあくまで任務やて!! お姫さんが日本を見て回りたい言うからワイら二人とおった上で大和に変装しとったら安全で色々回れるっていうE.G.M.とあの国の偉いさんの判断で……」
虎太郎は必死に弁明を試みるがその言葉を聞いている間も大和は眉をピクピクと震わせ怒りを顕にしていく
「ごちゃごちゃうるさいぞ! それに浮気したらサンバズーカの刑だと言っただろ!?」
「堪忍やて大和〜! それにこれは結婚どころか告白する前の話なんやから時効やろ時効!!」
「ダ〜メ〜だ〜! お前が一番愛してるのは俺だって100回言わないと許してやらないからな!お前はもうじきパパになるんだぞ!?今日という今日はお灸を据えてやるから覚悟しとけ!!安心しろ。峰打ちにしておいてやる……!」
虎太郎は必死に弁明を試みるが大和は包丁をぎゅっと握りしめ彼に狙いを定めた
「わかったって! 堪忍や大和! だからとりあえず包丁を武器みたいにして持つのはやめてーな!!それに今はお前だけの身体ちゃうねんからもうちょい大人しく……ちょ…………大和さん………?」
「問答無用!!……きゃぁっ!」
虎太郎に飛びかかろうとしたその時大和はバランスを崩してしまい、咄嗟にそんな彼を虎太郎は受け止めた。
「大丈夫か大和!?ったく……さっきも言うたけどお前一人の身体ちゃうねんしお前ももうすぐママになるんやからお腹の中の赤ちゃんのためにももうちょい大人しくやな……」
女みたいな悲鳴を上げ転びそうになってしまった上虎太郎に抱きとめられ大和は顔をかっと赤らめ急にしおらしくなってしまう。
「……う、うるさい………!お前にだけは言われたくない………」
「いくら他の女の子が金持ってようがおっぱいデカかろうがワイの一番は大和やって」
その言葉に大和の胸の鼓動は更に速度を増していく。
「……バカ…あんまりそういう事をこんなタイミングでシラフで言うな恥ずかしい…………」
「さっき言うとったやろ?大和を一番愛してるって100回言わんと許さへんって…それじゃあ………ワイ、藤浪虎太郎は……」
虎太郎は息を吸い込み大きな声で先程大和に言われた事を言い出そうとしたので彼は急に恥ずかしくなってそんな虎太郎を止めようとする。
「わーっ!!やめろ虎太郎!わかった!!さっきのことは許す!やっぱり良い!!お前の気持ちは十分わかったからこれ以上ドキドキさせないでくれーっ!!というかいつまでぎゅってしてるんだそろそろ離せーっっ!!」
「ワイ藤浪虎太郎は藤浪大和を世界で一番愛してまーす!!これ後99回?晩飯時までに終わるやろか?」
「もういいっ!お前の気持ちは十分伝わったからもういいーっ!」
「ワイ藤浪虎太郎は藤浪大和を世界で一番―――」
そんな二人の新婚夫婦の騒がしい声がマンションに響く。
世界を救った戦士二人の新たな戦いはまだ始まったばかりなのだ。
しかしどんな困難が立ちふさがろうとも二人なら超えていける。
大和も虎太郎も確かに互いにそう感じていたのだった。