※この作品はR-18です。

TSF短編集   作:ゔぁいらす

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日輪特機サンバイザー 〜ウチのレッドがある日文字通り紅一点になりまして〜 「chapter:2.女になった大和」(非R-18作品)

サンバイザーの三人が集まるブリーフィングルームに大和が一番乗りでやってきてコーヒーを飲んでいる。

 あれから数日が経ち、医療班の治療により怪我はなんとか完治した大和だったが未だにその姿は褐色の少女のままだった。

 ブリーフィングルームに毎朝一番にやってくるのは大和の日課で、それは女の体になったからといって変わることはなかった。

 しかしながら治療や身体の検査で女の身体になってからここに来るのは初めてで、元々着ていた服のサイズが合わなくなった代わりに支給されたインナーを身に着けていて、以前よりも縮んだ背丈で見るブリーフィングルームはいつもと変わらない見慣れた景色のはずなのにどこか違って見えた。

 しばらくいつもと変わらないはずのブリーフィングルームを眺めながらコーヒーを飲んでいると風磨が部屋にやって来て……

「大和……相変わらず一番乗りだな。足はもういいのか?」

 女の姿のままの彼を気遣うようにそう言った風磨の言葉に大和は複雑そうな表情を浮かべる。

 そしてこれまでは肩を並べて話していた風磨の顔を今は見上げなければ見ることが出来なくなった事に自分が女になってしまった事を痛感させられていた。

「ああ……足の方はな……」

「それはよかった。一時はどうなるかと心配していたんだぞ? で、その身体に関しては?」

「お前が心配してくれるなんて珍しいな。身体の方はまだ検査の結果待ちだ」

「そうか。そういえば昨日やっと検査が終わったと聞いたが」

「そうなんだ。検査とはいえ女になった体を隅々まで調べられて……まだ自分でもちゃんと見てないのに……」

 大和はよほど検査で恥ずかしい思いをしたのかその事を思い出して顔を真っ赤にする。

「……それは災難だったな……」

 風磨はそんな変わり果てた彼を少し可哀想だと思ってしまい、気まずくなったのかお互いに一言も発さず重苦しい空気が部屋を漂う。

 それからしばらくしてそんな重い静寂をかき消すようにブリーフィングルームのドアが勢いよく開き虎太郎が入ってきた。

「おはよーさん皆の衆! って大和……まだそのまんまなんか……」

 元気よく飛び込んできたは良いものの未だ少女の姿のままの大和を見て責任を感じていた虎太郎は表情を暗くする。

「だからそう気負いするなって。お前を守れたんだからそれで良かったじゃないか」

 虎太郎が気負いしていることに勘付いていた大和はそう言ってみせるが当の本人はそんな優しさが逆に辛くて仕方がなかった。

「良くないわ! もっと自分を大事にせぇや!」

「俺はただ自分のやりたいことをやった。結果的にお前たちを助けられたんだから後悔はしてないさ」

「もう……! そういうとこやでほんまに……!」

 大和の言葉に虎太郎は思わず目頭が熱くなり再び目に涙を浮かべる。

 その時、部屋の扉が開きサンバイザーを束ねる組織であるE.G.M.(EARTH.GUARD.MENTOR)極東基地特殊防衛対策局長官[[rb:朱川 > あけかわ]]が部屋へと入ってきた。

 その姿を見た三人は姿勢を正して敬礼をするが長官の面持ちはどこか厳しいものだった。

「感傷に浸っている所に水を差す様で悪いが大和くん、君の身体の検査結果が出た」

「「「!!」」」

 その言葉を聞き三人に緊張が走る。

「で、結果はどないなんですか!? 大和は元に戻れるんですか!?」

「お前が騒いでどうこうなる問題じゃないだろ落ち着け」

 逸る虎太郎を風磨は静止し、長官は目を伏せながら静かに告げる

「結論から言うと元に戻る事はできない。つまり現状の結果では一生このままだ」

 その長官の言葉を聞き、部屋には重苦しい空気と沈黙が流れる

「え? うそやろ長官……冗談キツいで……冗談なんやろ!? な? 冗談やって言ってくださいよ長官!! そんな冗談笑えへんで?」

「虎太郎!」

 目に涙を浮かべ声を荒げて長官に詰め寄る虎太郎を風磨が静止する。

 元に戻れない。そう告げた長官も表情から心苦しさを滲ませていた。

「それで……俺が元に戻れないというのは……?」

これから一生女の身体で生きていかなければいけないかもしれないことを告げられた大和は恐る恐る長官に尋ねる。

「ああ。これが結果だ」

 長官は持っていた封筒から大和の検査結果を取り出して壁に張り出していく。

「大和くん、君の身体は全て異常なしという結果だった。女に変わっている時点で異常がないと言うのもおかしな話なんだが今の君は完全に異常のない健康そのものの十代後半くらいの女性の身体ということになっている。すなわち何らかの異常が働き今の身体に変質しまっている訳ではなく君の身体は元からその女の体だったと完全に遺伝子レベルで書き換えられてしまっているという事だ。これは君だけでなくあの怪人の光線を浴び君同様に姿を変えられてしまった人々全てが同じ結果だった。こうなってしまっては我々E.G.M.の科学力を持ってしても……しかしながらその身体になっても戦闘を続行できた様にスーツとの適合率は元の身体の時と大差が無かった点が不幸中の幸いと言ったところか……」

「そうですか……」

 大和はその事実を受け止めるように深く息をつき、風磨も悔しさを顔に滲ませ唇を噛んでいた。

「そんな……! なぁ、なんとかならへんのですか? こんなんあんまりや……!」

「虎太郎……もういいんだ……俺がお前をかばったのは俺がそうしたいと思ったからやったんだ。ただそれだけなんだ……」

 まだ大和の身体を元に戻すことを諦めきれず声を出して涙を流す虎太郎に大和は絞り出すように言った。

 大和自身が一番辛いはずなのにこうして自分のことを気にかけてくれた事がただただ申し訳なく、そして悔しく虎太郎は涙を流した。

「大和ぉ……」

「ありがとうな。お前が悲しんでくれるだけで十分だよ」

「うう……すまん大和……ワイ……絶対なんとかしてお前のこと男に戻せるように頑張るから…………」

 大和は優しく虎太郎の頭を撫でてやり、その手つきはとても優しいものでその温もりに虎太郎の目からは大粒の涙が溢れてきて彼は一生大和に着いていこう。そしていつか必ず彼を元に戻す方法を見つけると心に決めたのだった。

「ああ。その通りだ。今現在のE.G.M.の科学力では不可能かもしれないがシソーマの能力の解析や今後技術が進めば可能性はあるかもしれない…………叶うかどうか分からない希望を抱かせるのも残酷な話かもしれないが我々も君の身体の治療方に関しては今後とも探していくつもりだ」

「……はい」

 長官は深く頷いた大和を複雑そうな表情で見つめると更に話を続けた。

「今回のことはいくらイレギュラーなケースとは言え君を前線に赴かせてしまった結果起こってしまったことだ。我々としても最善のアフターケアを尽くさせてもらう。それと非常に言いにくい事なんだが後任のアカホークについてだが……」

「後任……?」

 大和はその言葉で一瞬頭が真っ白になり表情は一気に強張る。

「そうだ。現在のスーツの出力では君の今の少女の身体では耐えることはできない。そんな危険な状況で君を前線に出すわけには行かないんだ」

「つまりそれって……」

「ああ。君にはアカホークを辞めてもらわなければいけないということだ。もちろん新しいポストも用意するつもりだし悪いようにはさせない。君はこれまで精一杯この星のために尽くしてくれたのだからその身体での生活は慣れないことも多いと思うがE.G.M.を挙げてサポートさせてもらうつもりでいる。この判断は私にとっても心苦しいことではあるが分かってくれるね?」

長官にもその判断は苦渋の決断だが戦闘によって二度と元の身体に戻れない姿になってしまった上少女になった大和を危険な戦闘に赴かせることを躊躇しての事、そして今の身体ではまともに戦うことが出来ないのではないかというE.G.M.上層会議による判断だった。

「ちょ……長官……俺はまだ戦えます!」

 突如長官から引退勧告を言い渡された大和は一瞬足元が一気に崩れ去ったような虚脱感に襲われ、必死になって食い下がった。

「せやで長官! ワイら半年近くも一緒に戦ってきたんやで!? それを急に突然やってきた新しい奴にリーダー面させて今まで通りやれってことかいな!」

「虎太郎の言う通りだ。第一前回の戦闘でも女の体になりながらも大和が戦ってくれたからこそオレと虎太郎はこうして無事で居られるんです。彼をアカホークから外すというのは早計すぎるのではないでしょうか?」

 大和とずっと共に戦ってきた二人だったからこそ長官のその言葉を簡単に受け入れられるものは誰ひとりとしておらず、三人は長官に対して抗議を続けた。

「しかしだな……確かに突然のことでまだ後任自体は決まっていないとは言え上層会議の決定で……」

「まだ後任は決まってへんねやろ? それならもう少しだけ時間をくれまへんか長官! 元はと言えばワイを助けたせいで大和はこんな姿になってもうたんや。今までもそうやったようにワイが精一杯大和を助けてみせますから……せやからもう少しだけ大和に……ワイらに時間と猶予をください……! この通り!」

 虎太郎はその場でベッタリと地面に額をつけて土下座をする。

「虎太郎……お前……」

「オレからも頼みます長官。オレ達がこれまで戦ってこれたのは熱苦しくともここまでチームをまとめ上げてきた大和の手腕あってのものです。それを急に女になったからと言う理由だけで除隊する等あの怪人の受け売りではありませんが世間にどう説明するのですか? 少しの間猶予をください!」

 風磨も深々と頭を下げた。

「風磨……」

「「お願いします! 大和に……我々にチャンスをください!!」」

 二人の必死の説得に長官も心を動かされつつあった。

 そして深々と頭を下げる二人を見た大和は彼らの前に立つ

「お願いします……俺はこの国を……そして地球を守るためにこのE.G.M.に入ったんです……だから…………だからまだ……俺をアカホークとして戦わせてください……!こんな身体にされてアカホークでも無くなってしまったら俺は……俺は…………」

 大和は縋るようにそう言いながら深々と頭を下げる。

 そんな三人の姿を見た長官は息を大きく吐いた。

彼らの戦いをずっと目の当たりにしてきた長官にとっても上層の下した判断には疑問が残っていた。

その上長官自身の大和をアカホークから降板させる理由もあくまで治癒できないダメージを負ってしまった彼をこれ以上危険な戦闘に駆り出す事に抵抗があったからであったが三人の決意をひしひしと感じ心を動かされたのだ。

「わかった……君たちがそう言うならばその言葉を信じさせてくれ。ひとまず上層部には私がなんとかして取り合っておく。それとこの検査結果を利用してスーツを今の大和くんの体に最適化した出力に調整しなおしてもらうよう技術班に私から直談判してみるよ。しかし私としても君たちに対し正しい指揮を下し危険な任務下でありながらも君たちを守る義務がある。今後少しでも戦闘に支障が出ると判断した場合は即刻アカホークから降りてもらう他にない。そのために後任探しも平行させてもらう。それだけは理解してくれるね?」

「……はい! ありがとうございます長官! 必ずアカホークとしての責務は果たして見せます!」

「「ありがとうございます!」」

 三人は長官に再び深々と頭を下げた。

 

 結局その日は怪人が現れることもなく夜になりブリーフィングルームには当直の虎太郎一人が一人消灯され最小限の照明がぼんやりと照らす部屋の中で壁に拳を叩きつけていた。

「クソッ……! ワイがもっとマシに戦えてたら大和が女になることもクビになる話も出んで済んだのに……」

 彼の吐き捨てた言葉が薄暗い部屋に響く。

 口では気負いするなと言いながらも長官からアカホークの任を降りる様に促されたときの彼の表情が虎太郎の頭にこびりついて離れなかったのだ。

 全ては自分の油断と力不足が招いたことだと。

「それやのにあいつに要らん気ぃまで使わせて……あいつがいっちゃん辛いはずやのに……ほんま情けない……情けないで虎太郎……!」

 彼はたった一人己が無力を呪い、自分以外誰も居ない暗闇がそんな負の思考を更に大きく膨らませていく。

「……っとアカンアカン……ワイが暗なってもうたらまた大和に……それに風磨にも変な気ぃ使わせてまうな……これ以上迷惑かけられへんしサンバイザーのムードメーカがこんな事じゃあきまへんわ……」

 彼は自分に言い聞かせるように、そしてそんな自分が滑稽に思えて自嘲した。

 虎太郎自身大和程戦闘のセンスが無いことも風磨程頭が切れる訳でもないことは重々承知していて、自分に課せられた役割はどんな苦境でも明るく前向きに皆を鼓舞する三枚目に徹するべきだとこれまでの戦いの中で自覚している。

 それにサンバイザーが結成された当初は考え方の違いから良く衝突を起こしていた大和と風磨の間に割って入るチームの緩衝材としての役割も果たしていたが最近は二人が衝突することも少なくなりその役割は薄れてきているそんな自分が今日も大和の足を引っ張りあろうことか体を女に変えられ大怪我を負わせてしまった。

 この調子では一番役に立たないのは自分だと言われている様な気がして怖かったのだ。

 しかしこれ以上そんな自分の過ちを悔い無い頭を捻ったところで大和が元に戻るわけでもない。

 それならば自分はいつも通り明るいムードメーカーを演じていよう。

 そう心に誓った彼は気分を切り替えるように両頬をパンと叩いた。

「せや、まだ夜も長いしキンキンに冷えたエナドリでも飲んで頭冷やそ!」

 

 虎太郎は部屋を出ると廊下を少し歩いた先にある自販機にやってきた。

「ったくほんまケチな組織やで……キタイガー様が寝る間も惜しんで当直しとるっちゅーのにちゃっかり飲み物代は取るんやから」

 そんな事をぼやきながら自動販売機に210円を投入しエナジードリンクを購入し喉に流し込む。

 喉をヒリつきと炭酸の弾ける感覚が通り過ぎ軽くゲップをして一息ついていると静寂に包まれたE.G.M.基地の廊下からの先から小さな声が聞こえてきた。

「んっ……んぁっ……こんなんじゃ……だめ…………だぁっ……」

 その声はか細い少女の震えた声で廊下の先から聞こえてくる。

「何やこんな夜遅くに……一体どこのカワイ子ちゃんがナニしてるんやろ?」

 虎太郎は興味本位で声のする方へ歩みを進める。

「はぁ……はぁ……はぁ……まだまだっ……んっ……んんんんんっっ──────!!! このっ……これ……くらいぃっ……!」

 声は近づくに連れどんどん大きくなっていき、とうとうその声が扉越しに聞こえる場所に虎太郎は辿り着く

 そこはE.G.M職員が利用できるジムのような部屋で、夜中にこの部屋を女性が使っている所など見たことがなかった彼は首をかしげた。

「こんな夜更けにここ使う物好きな女の子なんかおったっけ……? あのー……もう消灯時間とっくに過ぎてますけど?」

 虎太郎はそう言いながら扉を開けると彼の目に飛び込んできたのは明らかに身の丈に釣り合わない重さのベンチプレスのバーを無理矢理持ち上げようとしている褐色の少女……いや女になった大和だった。

 虎太郎が入ってきた事に気づいた大和はベンチプレスから手を離す。

「お、おお虎太郎……恥ずかしい所を見せてしまったな……」

「大和……何してんの?」

「これか……? いくらこんな貧弱な身体になってしまったとは言え風磨やお前に迷惑はかけられないからな……この身体でアカホークとして戦い続けていくためこうして鍛えていたんだがついこの間までは簡単に持ち上げられていた重さも満足に持ち上げられないんだ。情けないだろ?」

 大和は自嘲し、そんな彼を見た虎太郎は再び自責の念に駆られてしまう。

「大和ごめん……ワイのせいで」

「言っただろ虎太郎、気負いをするなって。これは俺自身の問題なんだ」

「ちゃうって! 大和が女になったんはワイが油断してもうたからやろ!? そのせいで大和は女になっただけとちゃうアカホークの座まで奪われそうになって……」

「もう良い済んだ話だって言っただろ? 結果的に長官は俺にチャンスをくれた。例え女の身体になろうとも努力すればきっとお前達の足を引っ張ることもアカホークを降ろされることもなくなる!だから……んんんんんんっっ──ー!! 男たるものこの程度でへこたれる訳にはっ……!」

 大和は必死にバーを持ち上げようとするが全くビクともしない。

「大和……ワイが言えた事やないけど無茶はせんといてくれや! そんな鍛えてない身体でこの重さが持ち上がる訳ないやろ!?」

「いや……! 努力と根性さえあればこのくらい……俺はこれまでずっとそうしてきたんだ……ふんっ……んんんんんっっ!!」

 大和は焦っていた。

 自分がアカホークから降ろされるかもしれないという不安。

 そして自分が女になったことで責任を感じている虎太郎や表情には出さないが風磨に心配をかけてしまっているという心苦しさ。

 そんな様々な焦りが彼の細くなった腕を動かしていたがいくら彼が必死に力を込めても全くバーは動かない。

「待てや大和! こればっかりは根性論でどうこうなる問題とちゃうねん! そんな無理したら鍛えるどころか体壊してまうやろ!」

「こ、虎太郎……しかしこの程度持ち上げられなければ地球は守れないだろ……? それにこんな身体にされてアカホークでもなくなったら俺は……俺じゃなくなってしまうんだ!だからなんとしてでも……アカホークで居続けなきゃいけないんだ…………!!」

 大和は虎太郎の言葉に耳を貸さず再びバーを無理にでも持ち上げようとするがバーが持ち上がることはなく腕は震え腕が悲鳴をあげているように見えた。

今の彼の様子と長官の前でも発していたアカホークでなくなったら自分が自分でなくなってしまうという言葉が虎太郎にも重くのしかかる。

 大和は人一倍責任感が強くサンバイザーのリーダーとして苦悩していた事を虎太郎は知っていたからだ。

 そんな彼が今の身体では到底無理のあるトレーニングをする痛ましい姿を虎太郎は見ていられなかった。

同時に自分の中の罪悪感が胸をズキズキと突くような感覚に襲われ思わず大和の手を掴み彼を止める。

「大和……!」

「虎太郎……離してくれ…………!!これくらい持ち上げられないと俺は…………!!」

「その身体になっても相変わらずストイックなんはええことやと思う…………でも鍛え直すにしても順序があるねん! ワイも付き合うからまずは今持ち上げれる重さ探すところからや! な?やからいっぺん手離して」

虎太郎はこれが自分のサンバイザーでの役割なのだからと胸の痛みを隠すように態と明るく振る舞ってみせる。

「良いのか……? お前当直だろ? これ以上お前たちに迷惑をかけるわけには…………」

「かめへんかめへん。なんかあったらワイの赤星ばりの俊足ですぐ戻るがな! それに大和がそうなったんはワイの責任やし無理して体壊されたら戦うどころちゃうし……そうなったらお前とサンバイザーできへんくなってまうやん……お前と風磨とワイの三人でこそのサンバイザーやろ?」

 虎太郎のその言葉を重く受け止めたのか大和はバーから手を離す。

「あ、ああそうだな……また突っ走ってしまった。まずはこの身体でやれる事からやっていかないと……だよな?」

「ほんまそういうトコやで? ま、ワイ一応ジムのインストラクターの資格持っとるから任してや! ほらじゃあまずはいちばん軽いんから……」

「あ、ああありがとう虎太郎……んっ♡」

 虎太郎からひとまずこの部屋に置かれている一番軽いダンベルを手渡された大和はその重さに驚きと情けなさを感じると同時にインナーのシャツが胸に擦れて変な声を出してしまった。

「ど、どうしたんや大和!?」

「い、いや……このくらいなんとも……」

大和は自分の出してしまった声と一番軽いと言われたダンベルすらまともに持ち上げられないことを誤魔化す為必死にそのダンベルを持ち上げようとしてそれを虎太郎は咄嗟に止めた。

「やから無理すんなて! この重さはここでは一番軽いけどそこそこ重いやつやから……それじゃあ今日は無理せん程度に身体慣らす所から行こか。今の身体じゃ前と得手不得手もちゃうかもしれへんし……こういうのは積み重ねが大事やからな。それに大和一人にやらせとったら危なっかしそうやし迷惑やなかったらこれからも手伝うわ」

「あ、ああ……すまない虎太郎」

 こうして虎太郎は自分のせいで大和を女の身体にしてしまったという責任感そして大和はアカホークとしての重圧という互いにベンチプレスよりも遥かに重い物を抱えながら二人はトレーニングを続け夜が更けていった。

 

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