強力な怪人ゲバルダスを新たな必殺武器サンバズーカで倒した次の日三人は休暇をもらい、思い思いにしばしの休息をとっていた。
風磨はそんなその休暇で敵の分析や前回の作戦の反省点を洗い出していて、気がつけばもう夜になっていて、基調な休暇が気づいた頃には終わってしまう。
そんな心惜しさにため息をつき彼は夕飯を取る為に部屋を出て基地内の食堂で一人食事をし始めた。
そこに食事をトレーに載せた虎太郎がやってくる。
「お、なんや風磨? ぼっち飯か?」
声をかけられた風磨はまたうるさいやつが来たと言わんばかりに大きなため息を一つ付いた
「断じてぼっち飯ではない。一人で食ったほうが早く食えるし落ち着くだけだ」
「またまた~せっかくなんやしこの虎太郎が一緒に飯食ったるやんか!」
「誰もそんな事頼んでいないんだが?」
「そんな冷たいこと言わんと……ってあれ? 大和は?」
「あいつは女の身体になった騒動やらなんやらであれから全く休めていなかったからな。久しぶりに近所の商店街に顔を出しに行くと言っていた」
「ほーん……そうなんや。あいつ暇さえあればあの商店街近くの幼稚園とか老人会とかに顔出しに行ったりしとったもんな。殊勝なことやでほんま……折角の休みなんやから素直に休みゃええのに」
「ま、あいつはああいう人助けが趣味みたいな所があるからな……それが十分に休暇になるんだろう」
風磨と虎太郎は大和の話をしながら食事を続けた。
「あ、せや! なあなあ風磨プリンくれへん?」
「何を言ってる? お前より遥かに今日一日頭を使っているからお前よりも糖分が必要なんだ誰がやるか」
「ええやんけープリンぐらい……」
「ぐらいとはなんだ欲しかったら自分で買ってこい」
定食に付いてきたおやつのカップに入ったプリンを巡って二人で小競り合いをしていると大和が長い髪を揺らしながら食堂にやってきて定食を受け取ると二人の隣に座り定食の乗ったトレーをバンとテーブルに叩きつけた。
「お、おかえり大和……どないしたんや? なんか怒っとる……?」
「どうしたもこうしたもない!! 誰も俺が大和だと信じてくれないし話しかけても英語ワカリマセ〜ンとかお嬢ちゃんかわいいからおまけとか人を見かけでしか判断してくれないんだ!! 俺は男だし外国人でもないのにだぞ!!」
大和は休暇で起こった事の愚痴を二人にこぼし始めた。
どうやら誰も今の彼を飛鷹大和だとすぐに信じてもらえなかったりその以前とは全く違う外見故に外国人観光客と勘違いされて煙たがられたり視線が気になったりと散々だったようで……
「そ、それは災難だったな……その容姿でそう言われても説得力が無いと言ってしまえばそれまでだが……」
「それに行きつけのカレー屋の店長の視線は何かいやらしいし女の人ってみんなこんな環境で生活してるのか!?」
「い、いや皆がそうとは限らへんやろうけど……でも急に外国人に話しかけられたら身構えんのはわからんでもないわ……なんか一回胡散臭い寄付してくれっていうのにめちゃくちゃ付き纏われたことあるしワイ外国語とか全然喋られへんし……」
「おいおいそれは一応グローバルな組織に属してる身としてどうなんだ?」
「だから俺は日本人だぁぁぁぁぁ!!」
大和の悲痛な叫びがE.G.M.極東基地にこだまする。
「あまりそう気に病むな大和……お前が元の体に戻るまでの間の辛抱だろう?」
「うう……今ならあの怪人が言っていた少数者の生き辛さみたいなのが少しは分かるかもしれない……この身体も髪の手入れは面倒だしトイレだって……うう……男に戻りたい……」
風磨の気遣いももう二度と男には戻れないかもしれないと言われた今の大和には辛いものがあり、うなだれるようにテーブルに突っ伏した。
それからというものサンバイザーのリーダーであるアカホークが突如女性に変わったことが各種メディアによって報じられ先代が失踪したとかあらぬウワサが囁かれたり様々な憶測が飛び交ったりリーダーが女性のチームになったことに対しての賛否が巻き起こったりと世間では様々な声が上がった。
そんな世間からの声や女性としての生活を余儀なくされた上で更に熾烈さを増すジャガンボード帝国との戦いに大和は身を投じていく事となる。
初めは股を大きく開いて座りパンツが丸見えになってしまったり男だった時の癖が抜けず駆け込んだ男子トイレの小便器で立ち小便をしようとしてしまったりと女の身体になったことによりガラリと変わってしまった生活、そして街に出るたびナンパを受けたりぶつかられたりトイレが異様に混んでいたりと女の身体になったことで気づいた不便さや不満、それに日本人離れしたその外見から変に気を使われたり距離を取られたりという彼を見る世間の目が大和を苦しめた。
大和を苦しめていたのはそれだけではなく、彼が女になった事で彼を甘く見る怪人やいやらしい目で見る怪人も現れ、怪人の触手によりあられもない痴態を晒されたことや口調まで女のようにされてしまった事や、更に怪人に乗り移られ露出度の高い衣装で虎太郎と風磨と戦わされてしまったこともあった。
そんな慣れない女の身体での生活や戦いの日々を送っていく中で虎太郎は毎晩約束通り彼のトレーニングに付き合う等献身的なアシストを続け、風磨や長官のサポートも心の支えにしながら彼は徐々に女の身体とその生活に適応していきファイトスタイルも今の身体に最適な物へと変わっていった。
熾烈を極める戦いを乗り越えはじめは懐疑的だった一部の世論やE.G.M.上層も彼の活躍を次第に認めていくようになりいつの頃からかアカホークを交代させるという話もなくなっていた。
それに少女の身体になったことは難儀することや困惑することだけでなく作戦において有利に働くことも少なからずあり、怪人に狙われていた博士の屋敷に見習いのメイドとして潜入して護衛したり、女子校を狙った怪人の作戦を暴くため海外からの転校生として女子生徒に紛れ込み被害を最小限で食い止めたり、プロモーションや資金調達のため水着姿でグラビア撮影をしてその結果スポンサーや支援してくれる企業や組織が増えたり、某国の皇女が来日しジャガンボード帝国に狙われていた時はその皇女と彼の容姿が偶然似ていたことを利用して影武者としてその皇女と入れ替わって護衛したりしたこともあった。
こうして大和は女の身体になりながらも風磨、虎太郎と共に日輪特機サンバイザーとしてジャガンボード帝国と戦い地球を守り続けたのだ。
しかし時が経つにつれ女性としての生活も板についてきて、徐々に身体も女性として成長していくのを目の当たりにして今の自分が紛れもなく女であること、そして一向に男に戻る方法も見つからず二度と男に戻れないかもしれないという事を薄々と身を持って感じていた。
いくらそれらを否定し、自分は男だと何度言い聞かせても日に日に乖離していく心と体の差に悩みながら彼はそんな女としての自分を受け入れるに受け入れられないまま戦いを続けている。
そんな戦いの中で三人の絆は更に深く固く結ばれていったが虎太郎は大和のトレーニングを手伝ったり戦いを共にしているうち、いつの間にか少女になってしまった彼に友情よりももっと大きな感情を抱いてしまっていたのである。
外見は女になろうとも心は男のままである大和にそんな淡い恋心を抱いてしまった虎太郎はそんなモヤモヤを胸に秘めながら戦い続けるのだった。