誘惑禁止条例 ※性犯罪被害は条例違反にあたらない 作:大中小太郎
前編 ~おくすり~ (挿絵追加)
いまや人間界と妖魔界は、電車で隣町に行くような気安さで行き来できる。
妖魔界の魔人種たち――俗称サキュバスたちも、見かけない場所は多くない。
例えば南陵颯真は、魔人種とのクォーターだ。
隣にも、フィオレという幼馴染が住んでいる。
フィオレはドワーフ系の魔人種だ。
ドワーフというと、昔はサンタクロースのような髭の鍛冶屋を思い浮かべたらしい。
現代におけるドワーフとは妖女の一人種で、小柄で豊満な体型であることが特徴だ。
フィオレもその例にあぶれず、身長はなんと140センチにも足りない。
ランドセルを背負ったら小学生にしか見えないだろう。
それでいて胸や尻は大きく発育しており、小柄に対してアンバランスなロリ巨乳。
ボリュームのある茶髪のウェーブヘアは、どこか外国のお人形のよう。
性格は気弱で、いつも颯真の後ろに隠れがちな、主体性に欠ける子だった。
「颯真くん、今日のお夕飯、なにがいい?」
例えば学校からの下校中、そう聞いてきたときも――
「んー、なんでも」
「そう……」
颯真がそう答えると、まるで傷ついたようにしゅんとしてしまう。
「……カレーで」
「うんっ。じゃあカレーにするね。あ、辛さはどのくらい?」
「いつも中辛だろ?」
「あはは、そうだよね。ごめんね」
こうして颯真が注文を付けると、どこか安心したように笑い、癖のように謝るのだ。
傍から見ると、颯真がフィオレを高圧的に従えているようにも見える。
その原因は、颯真の風貌にもあった。
ドワーフ系は、女性は『小柄で豊満』となるが、男性は『大柄で毛深い』。
人間とのハーフだと毛深さが消えて、大柄だけが表れる傾向にある。
颯真がその例だ。
背丈は185超、肩幅もあり筋肉質で、堀深い顔立ちは目付き鋭く強面だ。
街ですれ違ったら息を殺して道を開けそうなくらいには、プレッシャーを与える容姿だった。
「フィオレちゃん、また南陵くんに精神DVされてる……」
「亭主関白っていうか、フィオレちゃんも不満があれば言えばいいのに……」
「あんた同じクラスでしょ? 言ってやりなよ」
「え、やだよ。南陵くん女でもグーで行きそうな顔してるもん……」
同級生からそんな声を聞くのも、耳慣れたものだ。
人付き合いが狭く無愛想な颯真に、その印象を解くことはできていない。
「えっと……颯真くん、ごめんね?」
「なんで謝るんだよ」
「うん……」
やがて同級生の目が無くなると、フィオレは遠慮がちに颯真の袖を抓むのだった。
大昔の日本は夫唱婦随――女は男の三歩後ろを歩くもの的な慣習があったという。
颯真とフィオレの関係は、どうにもそうした時代錯誤を感じさせる。
家は隣同士で実質同居。
颯真の両親が妖魔界に赴任している間は、フィオレが甲斐甲斐しく家事をしている。
朝から颯真より早起きして朝食を作り、お弁当を持たせ、シャツがほつれていれば学校内でもせっせと裁縫、そして口癖のように『ごめんね』を繰り返す。
これで颯真に愛嬌があれば印象も変わるが、無口な颯真は「されて当然」という態度に見える。
男女同権思想に熱心でなくても、「流石にそれはどうよ」と思われる構図だ。
もちろん、颯真にも言い分はある。
フィオレは端的に言うと『決められない子』だ。
指示待ち人間とか、そういう手合いなのだ。
自分の意思決定で事を進めて、自分の責任になるのを殊更に嫌う。
だから、『誰かがそう言ったから』『そう決まってるから』という理由を求める。
そういうフィオレが、自分の意思決定を求められると、大抵まごついて、隣にいる颯真に視線で助けを求める。
結果、颯真が「じゃあこれで」と決めることになり、所有物扱いしているように見えるわけだ。
「荷物置いたら、すぐに行くね」
「おう」
颯真とフィオレの家が見えてくると、フィオレが自宅に入っていく。
そして、制服から着替えたらすぐに、颯真の家にやってくるのだ。
家を空けがちな颯真の両親に『颯真の生活を見てやってほしい』と頼まれたから。
颯真の役に立つことで、愚鈍な自分でも颯真に見限られないのだと思えるからだ。
「お待たせ、颯真くん♡」
そんなフィオレでも――年頃のサキュバスだ。
颯真の部屋に来たフィオレの服装は、そこはかとなく露出がある。
白いニットセーターは肩が少し開いており、ショートパンツから素足が伸びている。
彼女がこういう格好になるのは、颯真の家に来るときだけだ。
街へ出るときなどは、もっと地味にしている。
フィオレは自分が魅力的ではないと思っており、不特定多数の人間に評価される環境だと、服装によるセックスアピールなど怖くてできないのだ。
自分が『女』であることを、安心して訴えられるのは、幼馴染の颯真だけらしい。
「~~♪」
エプロンを着けてカレーを作り始めたフィオレの姿を、颯真は居間のソファーから観察する。
小学生めいた小柄なのに豊沃な体型、いまは結われている長く豊富なウェーブヘア。
容易に組み伏せられそうな弱々しさに、手触りの良さそうな肉付きの肢体。
颯真の目には、服装で主張などされなくても、『女』として十分に魅力的だ。
ドワーフのロリ巨乳体型は賛否あるが、颯真はいたって肯定派である。
「そ、颯真くん?」
「ん?」
「えっと、ちょっと、視線が……ううん、なんでもない♡」
フィオレは困ったように振り返ったが、途中で言葉を切って調理に戻る。
颯真の視線を背中や尻に感じて、体をもじもじさせながら……
――さも隠し味であるかのように、怪しい小瓶の液体を、颯真に出すカレーの皿に振りかけた。
(……バレバレなんだよなぁ)
見ていない振りをした颯真は、「できたよー」と微笑むフィオレに呼ばれて、食卓に向かう。
(さて……今日の『分量』はどのくらいだ?)
味の感想も言わない颯真だが、フィオレが作ってくれた料理を残したことは、一度もない。
○
食後、颯真の体に異変が起き始めた。
媚薬の効果が出始めたのだ。
全身が熱く火照り、下半身に血が集まっていく。
「……っ」
ジーパンの中で逸物が脈打つ。張り詰めたそれが、窮屈だと訴えている。
妖魔界の媚薬は強力だと聞く。
無味無臭の強烈な精力剤であり、嘘か真か健康にも効果覿面らしい。
「そ、颯真くん? その……大丈夫?」
「ああ……」
心配そうに覗き込んでくるフィオレに、颯真は何でもない風を装いつつ答えた。
盛ったフィオレが気付いていないはずがない。だが気付かないふりをしている。
嘘の下手なフィオレの態度はぎこちなく、期待と興奮に頬を染めている。
(どの口が言うんだか……)
と思うが、むしろ『口で言えない』から、媚薬を盛ったのだ。
誘惑禁止条例――
妖女による『
誘惑の定義が曖昧であるため、実質的に女がセックスを求めることを禁じている。
小心者のフィオレは、これを遵守していた。
恋人のいる妖女なら、車の通らない道路で信号無視をする程度に破っているのに。
破ったら人間界から追放されるという誇張を真に受けて、そのリスクを冒せない。
それでも、フィオレは条例の抜け穴を知っていた。
即ち――性犯罪による被害は、条例違反には当たらない――と。
「ほ、本当に、大丈夫? 風邪かなぁ?」
白々しいことを言いながら、フィオレは颯真の額に手を当てる。
そのまま前髪を掻き上げ、自分の顔を近づけた。
「…………」
フィオレの顔が近付く。吐息がかかる距離。
キスをする直前のように、見つめ合う。
「はぁ……♡」
フィオレの瞳は、明らかな情欲に濡れていた。
普段は子供っぽいくせに、こういうときだけは、大人びた色香を感じさせる。
「フィオレ……お前、また媚薬を盛っただろ?」
「え? えぇ? な、なんの、こと……?」
颯真はフィオレの背中を抱き寄せて追及する。
フィオレは、颯真から目を離さず、抱かれるがまま颯真の膝に片足を乗せた。
もはや惚けているとすら言えない。
「悲しいなぁ。俺の可愛い幼馴染が、こんな悪いことするなんてな」
「あぅ……ごめんなさい……」
認めるの早すぎるだろ……と思いつつ、颯真はフィオレの背を撫でる。
怒っていないと伝わったのか、フィオレは安心したように、颯真の胸にしなだれかかる。
「まったく俺なんかより魅力的な男、いくらでもいるだろうに」
「そ、そんなことないもんっ! 颯真くんは、その……」
フィオレは媚薬混入がバレたときよりも声を高くする。
そして、もじもじとしながら、上目遣いにこう言った。
「か、かっこいいもん。背も、高いし。顔は、ちょっと目付き悪いけど、精悍だし。
体付きも、逞しくて……すごく、男の子っぽいというか……あぅ♡」
言っている途中で颯真の体を意識したのか、フィオレは恥ずかしそうに言葉を切る。
「フィオレ」
颯真はフィオレの顎を掴み、上向かせる。
「ん……っ♡」
唇を重ね、舌を差し入れた。
フィオレの口腔を蹂躙するように、ねっとりとした動きで絡めていく。
「んんっ♡ ちゅっ♡ んむ……んふ……んむ……っ♡」
颯真とフィオレは、お互いの唾液を交換しながら、貪るようにディープキスを続ける。
フィオレは自ら積極的に舌を動かして、颯真の口付けに応えた。
媚薬を盛られたのは颯真だけのはずだが、フィオレも口にしたのではないかと思わされる。
「ぷはっ♡ そ、颯真くん……だ、だめ♡ キス……キスまで、だから♡
それ以上は……エッチ、だからぁ♡ わいせつ、だからぁ♡」
フィオレはそう言いながら、颯真の膝を跨ぐように乗り、体面座位のような姿勢で尻を下ろす。
ノースリーブのトップスに押し込められた爆乳が、颯真の胸板に潰れていた。
「おいおい、媚薬を盛っておいて被害者面か?」
颯真の両手が、フィオレの尻肉をショートパンツ越しに掴む。
「ひゃう♡ そ、そこぉ♡ お、おしり、さわっちゃ♡ あっ♡ あんっ♡
颯真くぅん♡ おしり、だよ? お尻、触ったら、痴漢、なんだよ? あっ♡」
言葉では警告しながら、颯真を見上げる顔は嬉しそうだ。
腕の中に収まる小さな体は、その小柄に反して女体の柔らかさに満ちている。
そんな抱き心地のフィオレが、小学生かと勘違いする容姿で、悦楽の顔でこちらを見上げる。
「っ」
その背徳感が、颯真の劣情に火を点けた。
媚薬を盛られた体で、よく我慢したというべきだろう。
「部屋に行くぞ」
「きゃっ」
颯真はフィオレをお姫様抱っこで持ち上げると、ダイニングを出て自室に向かう。
「そ、颯真くん……♡ はぅ♡ 抱っこ♡ 逞しい……♡
あ、そうじゃなくて……ま、待って? へ、部屋で、何するの? ゲーム?」
フィオレは颯真の腕に抱かれて縮こまり、不安そうだが頬を染めた顔で聞いてくる。
「なにって、お前をレイプするんだよ」
「ひうっ♡」
はっきり断言すると、フィオレの体がびくんっと震える。
「そ、そんなのっ、言っちゃだめだよ♡ ぜ、絶対、ダメなんだよ?
犯罪……犯罪、だからぁ♡ 颯真くん、警察に、掴まっちゃうよ?」
フィオレは熱い吐息と共に、心にもないような説得を始める。
「警察? なら俺は、媚薬を盛ったお前のことを通報しなきゃなあ?」
「やっ、ごめんねっ、謝るからっ。出来心なのっ。
ほんのちょっと……い、悪戯くらいのこと、してもらえればって♡」
颯真の足は止まらない。
ダイニングを出た後は、廊下をゆっくりと歩く。フィオレの頭や足が壁にぶつからないように。
「ね、ねえ、落ち着こう? 颯真くんは、そんな、悪い人じゃないよぉ♡
いつも、私のこと、庇ってくれる……優しい颯真くんに、戻ろう? ね?」
フィオレは颯真の服を指で抓みながら、期待に目を輝かせていた。
「ほら、私、こんなに小さいんだよ? 颯真くんみたいな、おっきな男子に襲われたら、勝てないよぉ♡
どんなに、頑張っても♡ 颯真くんに、負けちゃうんだよ? 好き放題、されちゃうよぉ♡」
懇願……と言うべきなのだろう。
だが、果たしてこれは、何を懇願しているのだろうか。
「その後、フィオレはどうするんだ? 俺のこと、訴えるのか?」
「や、やだぁ♡ 颯真くんが、居なくなっちゃう……一緒に、居られなくなっちゃう」
これについては本気で涙目になっていた。
そう言う間にも、二人は廊下を渡りきり、颯真の部屋に到着する。
「なら、どうする?」
フィオレは、足を止めた颯真の腕から、扉のドアノブを見た。
颯真の両手はフィオレを抱くことで塞がっている、つまりドアを開けられない。
颯真は顎を動かして、フィオレにドアを開けるよう促した。
「ど、どうって……」
フィオレは颯真の顔とドアノブを交互に見て、まごついたようなことを言う。
幼馴染である颯真はよく知っていた。
フィオレは『決められない子』で『流される子』だ。
子供の頃から、颯真に手を引かれたり、颯真が無遠慮にああしろと命じるまで、動かない。
だから、このときも――
「そ……颯真くんが……決めて?」
自分が犯されるか否か、犯された後でどうするか――そんなことさえも、颯真に投げた。
颯真はフィオレの答えを聞くと、静かに生唾を飲んだ後、口角を引く。
「なら……
「はぅぅ♡」
耳元で囁くと、フィオレはまるで愛の言葉でも聞かされたかのように赤くなる。
誘惑禁止条例の抜け穴は、性犯罪被害。
結果として、誘惑を禁じられたサキュバスたちは、男性との密事をそういう方向性で妄想するようになった。
いわゆる、レイプ願望である。
すると、それに関連するワード――脅迫の文言や泣き寝入りといったものが、ある種の『殺し文句』になってしまった。
気弱で大人しいフィオレもまた、そんなサキュバスの一人だった。
「……うん♡」
フィオレの手が、ドアノブを動かして、扉を開く。
決められないフィオレだが、そのことだけは、フィオレの意思だった。
○
颯真とフィオレは、幼少期から兄妹も同然に育った。
だから颯真は、
昔のフィオレは男の子みたいだった。
駆けっこは速いし、球技も上手かった。
サキュバスは人間女性よりフィジカルが強い。
それは幼少期から表れるもので、フィオレも人間の女の子より腕力と体力があった。
小学校高学年にもなると、胸が大きくなり始めた。
人間でも早熟な子は発育し始めるけど、妖女はこのあたりが顕著だ。
体だけではなく、性への目覚めも、人間より早い。
フィオレもまた、学生服を着るより前にはもう、異性の肌やセックスに関心を示していた。
「颯真くん、おっぱい見たい?」
「み、見たくねーよ!」
そんなやりとりをしていたことを覚えている。
このくらいなら、子供っぽくて微笑ましいとも言える。
しかし、サキュバスはそれに留まらないこともある。
「颯真くん、あれしてみようよ」
「あれって?」
「映画とかでしてるあれ。女と男が裸で抱き合うの」
「え、やだよ……」
「なんでー? 気持ちいいことだって本で読んだよ?」
あの頃はフィオレの方がマセていたというか、セックスに触れる機会が多い現代の弊害というか。
軽はずみな興味で、颯真とフィオレはベッドシーンの真似事に興じた。
一緒にお風呂に入るくらいの感覚で裸になり、ベッドの上で毛布を被って、抱き合ってみた。
「やんっ、くすぐったい」
「フィオレ、上に乗ると重いよ……」
「じゃあ、颯真くんが上から覆い被さって?」
「え? なんかやだ……」
意味も理解せずにしていた、セックスごっこである。
――親に見つかって、滅茶苦茶に怒られた。
特にフィオレの母親のお怒りはすごかった。
垣間見ただけだが、颯真の母に対する謝りっぷりも、かなり本気だったと記憶している。
妖魔界において男は希少、男を危害する罪も相応に重い。
自分の娘が希少な男を辱めようものなら、母は自らの手で娘を公開鞭打ちする、なんて時代もあったそうだ。
そんな妖魔界の精神文化に影響されてか、現代は『女性による男性への性加害』に厳しい。
女教師が男子児童にわいせつな行為をして猛バッシングというのも、見飽きたニュースだ。
旧時代で言うと、出来心で痴漢した男性の人生が終わるくらいのニュアンスである。
子供のお遊びでなければ、フィオレは本格的に責任を取らされたかもしれない。
「ごめんね、颯真くん……」
それ以来、フィオレは颯真に謝ることが多くなった。
問題の一件を謝っているのではなく、些細なことでも反射的に。
よほど折檻がひどかったのか、性的なことは口にしなくなったし、颯真の体に触れなくなった。
活発な性格はいつしか引っ込み思案になって、ドワーフ系であるため小柄が目立つようになり、言動も遠慮がちになった。
よく颯真の世話をするのも、妖魔界にある『加害者への罰として、被害者の奴隷になる』という風習によるものらしい。
気がつけば、颯真とフィオレの関係は、昔のように『対等』ではなくなった。
颯真が歩いて、フィオレがその半歩後ろをトコトコとついてくる。
夫唱婦随というよりも、気がつけば構築されていた主従めいた関係。
経緯を知らない周囲からは、颯真がフィオレを不当に従えているようにも見える。
颯真はそれが気に入らなかった。
周囲の噂なんかよりも、フィオレが自己主張を忘れて、自分に盲従することが。
世話をしてくれるのは助かるが、通じ合っている気がしない。
かといって突き放す気にもならず、惰性でそんな関係が続いていた。
だからだろうか――
おかしな話だが、ちょっと嬉しかったのだ。
フィオレが媚薬を盛った男が、自分であったことが。
○
「んんっ♡ ぢゅぷっ♡ ぢゅるるっ♡ ぷあっ♡ はぁっ♡」
フィオレはベッドに腰かけた颯真の前にしゃがみ込み、一心不乱にペニスを舐めていた。
「ほら、しっかり気持ちよくしてくれよ。お前の盛った媚薬でこの有様なんだぞ?」
ふんぞり返るような姿勢で、颯真は薄笑いしながらフィオレを見下ろす。
面相の悪さもあって、女を辱める鬼畜外道にしか見えない。
「ちゅっ♡ れろぉっ♡ じゅるるっ♡ ふあ♡ ごめんね? 颯真くん♡ ちゃんとするからぁ♡」
媚びるような甘い声音で謝ると、フィオレは小さな口を限界まで開き、喉奥まで飲み込むように肉棒を迎え入れていく。
「おごっ♡ ぐっ♡ おっ♡ ごっ♡」
亀頭を半ば呑み込むような口淫は、ほとんどイラマチオに近い。
人間より性感帯が多いサキュバスには、喉奥にもそれがあり、自分の快感を追及することで自然とイラマチオになってしまう。
「っぐ。こいつ、こういうことばっかり上手くなりやがって」
「あむ♡ れる♡ えへ♡ 本当? 私、上手にできてる?」
フィオレは颯真の太腿に手を置き、上目遣いで見上げながら言った。
「こら、嬉しそうにしたらレイプじゃないだろ?」
颯真はフィオレの頭を撫でる。
撫でる力は、僅かに頭部を肉棒へと導いていた。
「あう♡ ごめんね♡ 言うこと、聞くから♡ 乱暴しないでぇ♡ んんっ♡ じゅぶりゅっ♡」
フィオレはより勢いを付けて、怒張にしゃぶりつく。
傍から見れば颯真の手がフィオレに強要しているように見えた。
しかし実際は、『強要されている』という大義名分を得たフィオレの動きだ。
「フィオレ、もっとだ。喉奥でイクくらい続けろっ」
「んぼぉ♡ おぶっ♡ おぼぉ♡」
颯真がフィオレの頭を押さえつけると、彼女は苦しそうに身を捩らせた。
だが、フィオレの表情は明らかに喜んでいる。
妖女は喉にも性感帯がある。颯真が命じなくても、彼女は同じことをしただろう。
「おっぱいも自分で揉むんだ。おまんこも弄ってオナニーしろ。できるか?」
「ぷあっ♡ うん♡ 出来るよ♡ 颯真くんが、言うなら……んっ♡」
フィオレは颯真の言う通り、服越しに爆乳を掴み、もう片方の手をショートパンツの中へ。
彼氏に口でしながら自慰をする――サキュバスの間では人気のプレイであるという。
颯真は『要求』という形で、フィオレにそれをする『許可』を出したのだ。
「んっ♡ はぁっ♡ あんっ♡ ひぅっ♡」
「お口がお留守だぞ?」
「はぅ♡ ちゅるっ♡ ちゅぷっ♡ あむぅ♡ ちゅぷりゅっ♡」
フィオレは再び口で奉仕を始める。
乳房と秘所を弄る手も止めていない。
胸に食い込んだ五指が服に皺を刻み、半脱ぎになったショートパンツから白い下着が見えた。
「いいぞ、次はおっぱいで挟んでくれよ」
「ふぁい♡」
返事をすると、フィオレは上着をたくし上げて、胸元を露出させる。
白いブラに押し込められた爆乳の谷間が、颯真の意識を奪う。
フィオレが背中に腕を回すとホックが外れ、支えを失った肉房が解放された。
「んっ♡」
たぽん、と重たい音を幻聴させて、双丘が揺れる。
フィオレが少し身体を前に倒すだけで、柔らかな肉が肉棒に触れた。
聞くところによると92のKカップ――小柄には不釣り合いな質量だ。
「思い切り挟み込んで、舐めるんだぞ? 痛くても我慢してくれるよな?」
「うんっ♡」
フィオレは颯真の腹に顔を埋めるように密着、その双丘で肉棒を包み込む。
「颯真くん♡ 気持ちいい? 私のおっぱい、嫌じゃない?」
「ああ、最高だよ」
「よかったぁ♡」
フィオレは心底嬉しそうに微笑み、両手で左右の肉を寄せてパイズリを始めた。
「あぁっ♡ すごい♡ 谷間から、颯真くんのおちんぽ出てる♡ 可愛い♡」
フィオレは愛おしそうに舌を伸ばし、亀頭に絡みつける。
そしてそのまま肉棒を口内に収め、唇をすぼめて頭を前後に動かし始めた。
「んっ♡ ぢゅぽっ♡ ぢゅっぽ♡ ぢゅぷっ♡ ぢゅっぷ♡」
「うおっ」
唾液を潤滑油にして行われるストロークに、思わず声を漏らしてしまう。
それを聞いたフィオレは得意げに目を細め、より激しく動き出した。
「んぶっ♡ ぐじゅっ♡ じゅぶぶっ♡ じゅるっ♡ じゅるるるるっ♡」
フィオレの頭が激しく前後し、颯真の腰が跳ねる。
「フィオレ、出すぞ」
「んんっ♡」
颯真の言葉に、フィオレは一層強く吸い付いた。
「くっ、出るっ!」
「んんっ♡ ん~っ♡」
どぴゅっ! と、颯真の白濁液が解き放たれる。
フィオレはそれを一滴残らず飲み干した。
「けほっ、こほ。颯真くんの、出たぁ……♡」
「よくできたな、偉いぞ」
颯真がフィオレの頭を撫でると、彼女は幸せそうな笑みを浮かべる。
「えへへ。颯真くん♡ ちゃんと、できたよ? これで……許して、くれる?」
口の端から精液を零しながら、小首を傾げる。
その顔は、これで終わりにして欲しいと懇願する女の顔では、断じてなかった。
「ああん? 口だけで我慢するわけないだろ?」
「きゃっ♡ 颯真くん♡ やだ♡ こわい♡」
颯真はフィオレをベッドに引っ張り上げると、押し倒して服を脱がせる。
ショーツも足から引き抜かれ、産まれたままの姿で仰向けに倒された。
「フィオレだって口だけじゃ我慢できないだろ?」
「んっ♡ そんなこと……ひゃうんっ♡」
颯真はフィオレの両脚を大きく開かせ、その間に陣取る。
彼女の秘所は、すでに濡れそぼっていた。
「俺に媚薬まで盛って、こんなに濡らしておいて、白々しい淫乱だなぁ」
「ひゃんっ♡」
颯真はフィオレの陰核を摘まむと、指先で転がし始める。
「いいよ、悪者になってやるよ。俺が犯してやるから安心しろ」
フィオレに覆い被さりながら、逸物を彼女の陰唇にあてがった。
「あああっ♡ ごめん、ねぇ♡ 颯真くんっ♡ 私、ずるい子で……っ」
フィオレは謝りながら、颯真の背中に腕を回す。
誘惑が禁じられているから、襲わせる――それは相手を悪者にする行為でもある。
男女の間でセックスの導入といったら、多かれ少なかれあることだが、フィオレは罪悪感を強く抱いているようだ。
「誰にも、言わないから♡ 颯真くんの、好きにしていいから♡ 嫌わないでぇ」
「嫌うわけないだろ」
颯真は額にキスしてやりながら、片手で怒張の向きを整え、フィオレの入口に侵入させる。
「あぁぁぁぁっ♡」
フィオレは待ち望んでいた快感に、背筋を仰け反らせた。
まだ先っぽだけだというのに、妖女の鋭敏な性感はそれだけで達していた。
「こんなにエロくて、可愛くて、甲斐甲斐しく世話してくれて」
言葉と共に、ゆっくりと奥へ進んでいく。
「んぅっ♡ はぁっ♡ ふあぁっ♡」
「体は小さいのに、おっぱい滅茶苦茶でっかくて」
フィオレの膣内は、まるでそれ自体が意思を持っているかのように肉棒に絡みついてきた。
「フリでも何でもなく、本当に犯したいくらい、お前が好きなんだよ!」
言いつつ、腰を押し付ける。
するとフィオレの最深部に到達した。
「あああああああああああ♡」
子宮口へのキスと愛の告白、同時に受け取ったフィオレの心身が感極まる。
絶頂に達し、膣壁が肉棒を締め上げた。
見下ろすと、颯真の怒張がフィオレの膣内に根元まで突き刺さっている。
小さな体に男根が突き立てられた姿は、あまりに犯罪的で、颯真に昏い興奮を呼び起こした。
「颯真――くんっ♡ いま――好き――って♡ あひあっ♡」
照れ隠しも兼ねて、颯真は腰を振り始める。
ぱんっ、ぱちゅんっ! と、肌と肌がぶつかり合う音。
抽送のたびにフィオレの身体が跳ね、ベッドが軋んだ。
「んおっ♡ おっ♡ おぉっ♡ しゅごいぃっ♡ おくまできてりゅうっ♡」
フィオレは瞳を潤ませ、舌を突き出して喘ぐ。
その表情には苦痛の色はなく、ただ快楽に蕩けきっていた。
「気持ちいいか? 俺のレイプ、気持ちいいか?」
踊るKカップを掴み取りながら問うと、フィオレは颯真の手首を握り、より強く自分の乳房を押し込んだ。
「きもちいっ♡ 気持ちいいからぁ♡ 颯真くん、気に病まないでっ♡
お薬だからっ♡ 颯真くんが興奮してるの、お薬のせいだからっ♡
私をレイプしちゃってるのもっ、私のせいだからっ♡ だからぁっ♡」
いまさらだが……フィオレは淫乱だ。
地味で大人しい癖して性欲だけは強い、というタイプだ。
「よしよし、もっと犯してやるからなっ!」
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あああぁぁぁっ♡」
颯真はフィオレの腰を軽く持ち上げて、幼女のような小柄をダッチワイフのように使う。
抽送でフィオレの身体が弾むたび、その巨乳もたぷんたぷんと揺れた。
「イってるな? おまんこ痙攣してるぞ? イってるときは言うって約束だろ!?」
片手でフィオレの腰を支えつつ、もう片方の手でクリトリスを擦って命令する。
「あひ♡ ひあぁっ♡ いくっ♡ イクのとまらないよぉっ♡」
フィオレは泣きながら、シーツを掴んで顔を左右に振っていた。
「そんな顔するなよ。罪悪感が出ちゃうだろ?」
「やだっ♡ だめだめっ♡ 止めちゃやだぁ♡ あっ♡ ちがっ♡ いまの無し――」
フィオレがハッとしたのは、『誘惑』と取れる発言をしたから、だけではない。
颯真に対して『このまま続けていい』という許可を出してしまったからだ。
「言ったな? 今日も手加減しないぞ!」
これでも遠慮していた颯真は、フィオレの両脚を左右に開いて、本格的に腰を突き落とす。
ばぢゅんっ!
「あひゃああんっ♡」
フィオレは目を見開きながら、再び達してしまった。
「またイってる。臆病なくせに、体は犯されるの大好きじゃないかっ!」
「らって♡ あひっ♡ そうま、くん、がぁ♡ あああぁぁぁ♡ なんど、もっ♡ はひゅっ♡ れいぷ♡ んあぁっ♡ して、きた、からぁ♡ あっあっあっあっあっ♡」
抗議しながらも嬌声を高めていくフィオレ。
可憐な顔立ちが快感に歪み、毎日聞いている声が艶やかに喘ぐのを聞いていると、颯真の心に得も言われぬ悦びが湧いてくる。
「お前が、誘惑するからだろ!」
颯真は腰のストロークを長く取り、より強く肉棒を子宮に衝突させる。
「あひぃっ♡ あぅんっ♡ して、なぃっ♡ 誘惑、なんて、してないもんっ♡」
フィオレは蜜壺を掻き回されながら、白々しい言い訳をする。
その顔には笑みが垣間見えており、どこか颯真の怒りを煽っているようにも見えた。
「嘘吐けっ、このドスケベ! 幼馴染にムラムラして、薬を盛ってまで、犯させようとして! こうして犯されたら、イキまくってるくせに!」
颯真はフィオレを抱き上げ、体面座位の姿勢で抱え上げる。
フィオレは抵抗せず、颯真の背中に手足を回してしがみついた。
豊乳が胸板に潰れる感触を味わいながら、颯真は腰を突き上げていく。
「あっあっあっあっあっあっ♡」
フィオレは下からの突き上げに合わせて喘ぎ、自分からも腰を揺すっていた。
膣内は愛液で溢れかえり、抽送のたびに泡立って、肉棒と秘裂の間に糸を引いていた。
「まったく、みんなに教えてやりたいよ。フィオレがこんなに悪い子だって。
幼馴染を薬物で発情させて自分を襲わせるマゾメスだってなっ!」
「ふぁぁっ♡ 言っちゃだめぇっ♡ お願いだからぁっ♡」
フィオレは瞳を潤ませながら、颯真の唇を奪う。
舌を差し入れ、颯真も答えて舌を絡める。
「んっ♡ ちゅっ♡ 内緒に、するからぁ♡ 颯真くんに、迷惑かけないからぁ♡
エッチな気持ち、私で解消してっ♡ 颯真くんならっ、私の体、使っていいのぉ♡」
フィオレはそれこそ肉便器になろうとするようなことを言う。
都合のいい女であることで、颯真から見放されないようにしているのだ。
昔からそういうところはあったが、女の悦びを知ったことで、より颯真に依存し始めている。
「いいぞっ。犯してやるよ。被害者にならせてやるよっ」
颯真は突き飛ばすようにフィオレを倒し、体を反して四つん這いにさせる。
バックで突かれることを理解したフィオレは、少し怯えながらも、颯真の手に逆らわない。
「お前はずっと、俺の言いなりになってばかりだからな。
こういう要求されても、逆らえないんだ。そうだろっ?」
「うんっ♡ ごめんねぇ♡ 颯真くんを、悪者にして……
逆らわないから♡ 颯真くんの言うこと聞くからぁ♡」
フィオレは謝りながら、尻を高く上げて振りたくっていた。
早く挿入してほしい。後ろから乱暴にして欲しいというアピールだ。
「おねだりするのも、俺が命じたことだ。ほら、従えっ!」
命じたことはないが、そういうことにした。
「ひうっ♡ めいれい……命令、されて、りゅ……からっ♡」
尻を叩きつつ、肉棒の先端を割れ目にあてがうと、どちらのせいかフィオレの体が震え上がる。
「颯真くぅん♡ きてぇ♡ 颯真くんのおっきなので、私のこと……いじめて♡」
フィオレは甘い声で催促してくる。
「よく言えました、っと」
ずぶぅっ!
「あひぃっ♡」
颯真は一気に奥まで押し込み、フィオレの一番深いところを貫いた。
膣内に広く性感帯が分布したサキュバスの体は、体位が変わるだけで感じ方も別物になる。
気持ちよさの絶対値は同じでも、味が音色が違うように、性感の種類が変わるのだそうだ。
「ひぁぁうぅぅ♡ うしろ、からぁ♡ おかされ♡ 征服、されちゃうっ♡」
まだ颯真は動いていないというのに、フィオレは何度も小刻みに達していた。
膣壁はきゅうっと締まり、肉棒を圧迫する。
その快感が颯真にも伝わり、彼は顔をしかめた。
「っく、そんな物欲しそうに締めなくても、ちゃんと犯してやるよ!」
颯真が腰を動かし始めると、その動きに合わせてフィオレも腰を揺すり始める。
「あぁんっ♡ あひっ♡ はげしぃっ♡ んあぁっ♡ これっ、すぐイっちゃ、ああぁぁっ♡」
フィオレは枕にしがみつきながら、激しいピストンで絶頂し続ける。
彼女の秘所からは愛液が垂れ流しになっており、シーツに大きな染みを作っていた。
「くそっ、エロいなぁ。こんな小さい体なのに、胸とかおまんこは一人前でっ」
颯真はフィオレの腰を掴み、強く引き寄せて肉棒を叩きつける。
ぱんっぱん、ぱつっ、ぱちぃんっ! と、不規則な音が部屋に木霊する。
「あぐっ♡ ああっ♡ それだめっ♡ 奥でっ、暴れるのっ♡ もっとぉっ♡
気持ちいいっ♡ 気持ちいいからぁ♡ 颯真くんのおちんぽすごいからぁ♡」
「ほら、普段は自己主張しないのに、エッチのときだけおねだり上手だなっ!」
フィオレの体は連続絶頂が始まっているらしく、膣内の脈動が激しい。
「ひゃうっ♡ だって、だってぇ♡ 颯真くんとのセックスきもちいんだもんっ♡
なのにっ♡ 誘惑できないっ♡ しちゃいけないんだもんっ♡ だからぁ――」
「ああ、犯してやるよっ。俺もそろそろイくぞっ!」
颯真は背後からフィオレの爆乳を掴み上げ、腰の短い間隔で前後させる。
男が絶頂する前のラストスパートが、フィオレの尻と子宮を連打していた。
「んぉっ♡ おっぱい♡ ああんっ♡ 颯真くんっ♡ いいのっ♡ 私でっ♡ 気持ちよくなってぇ♡ わたしっ♡ だめな子だけどっ♡ 颯真くんのこと、イカせてあげるのぉっ♡」
フィオレは突かれる度に絶頂しながら、颯真への想いを口にした。
颯真は胸を掴んだまま硬く抱き寄せ、言葉より体で返答する。
「んおおおっ♡ おふっ♡ ふおっ♡ おっおっおっおっ♡」
フィオレもやがて言葉を失い、自分の中で颯真が達するその瞬間まで、間断なくイキ続けた。
「っく、出るっ!」
「あああぁぁぁっ♡ イクッ♡ 出てりゅっ♡ イグゥッ♡」
射精されたと同時に、フィオレはまた大きく仰け反ってアクメを迎える。
「はぁ……はぁ……っ」
長い射精を終えた颯真は、肉棒を引き抜く。
フィオレの膣口から、どろりと精液がこぼれ落ちた。
「んっ♡ あぁっ♡」
フィオレは余韻に浸るように体を震わせている。
その横顔には、満足感が浮かんでいた。
乱暴された女というには、あまりに幸福そうだった。
「……誰にも、言うなよ?」
「……うん♡」
終わった後は決まって、そう言い含める。
昔のように、大人たちにバレてしまわないように。
昔のように、二人で裸になって、シーツの中に隠れながら。
○
「フィオレ、置いてくぞ」
「ま、待って颯真くん……こ、腰が……」
翌朝、颯真はフィオレと一緒に登校していた。
朝の身支度に手間取るのはいつものことだが、今日は腰痛もあるようだった。
「お前、学校でそれ言うなよ?」
「え? どうして?」
「どうしてって……」
颯真とフィオレの関係は、一応は秘密にしているのだが、フィオレがこの様子だと同級生の女子に隠せているかは怪しい。
まあ、気付いても気付かないふりをするのが、現代における暗黙のマナーだが。
「今日、夕飯は作らないでいいからな」
颯真は気を遣ったつもりだった。
自分のせいで腰を痛めたフィオレに家事はさせたくないし、ましてやセックスをする気もない。
「あ……うん……」
しかしフィオレは、残念そうな顔をした。
どこか居場所を奪われたような、遠ざけられたような顔だった。
「……俺も手伝う」
「うんっ」
前言を撤回すると、途端に嬉しそうな顔になる。
下手に気遣うよりも、普段通りにさせて手助けする方がマシだと判断した。
フィオレのそういう面倒なところも、いまさら改めさせようとは思わない。
だからせめて、普段よりも歩幅を縮めて、なるべく車道側を歩くのだった。
「それで、颯真くん……」
横断歩道を待つ間、フィオレが制服の袖を軽く引く。
目を向けると、小柄な彼女が精一杯に首を上向きにして、颯真を見上げている。
こちらの袖を指先で抓んだまま、少し顔を赤らめながら、フィオレはこう尋ねてきた。
「今日は……なにが食べたい?」
腰痛になるのは、フィオレだけでは済まなさそうだった。
ご一読いただきありがとうございました。
お久しぶりでございます。
すっかり間が空いてしまいましたが、誘惑禁止条例はまだ続きます。
夫婦以上、恋人未満な感じの幼馴染でした。
後編も同時投稿しますので、よろしければそちらもどうぞ。