※この作品はR-18です。

誘惑禁止条例 ※性犯罪被害は条例違反にあたらない   作:大中小太郎

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幕間(ヒロイン視点)

 

 

誘惑禁止条例。

人間界に続々と渡ってきた妖女(サキュバス)による誘惑(チャーム)を禁じるもの。

多くの妖女は、これを恨んでいる。

目の前に男という宝物が、ご自由にお取りくださいとばかりの無防備さで溢れているのに、誘うこともできないなんてと。

 

私……ヘラという名の妖女は、それに含まれなかった。

 

故郷では就労や留学で人間界に渡ることが支援されており、人間界もそれを歓迎している。

生国と日本の双方から各種支援を受ける形で、この町にやってきた。

人間界には妖魔界の魔法技術が続々と輸出されているが、それを使える人材はまだ不足している。

その好待遇に期待して、私は『渡界』してきた。

誘惑禁止条例を恨まないとはそういうこと――男目的ではなく仕事目的だったからだ。

 

彼――火野陽司さんと出会ったのは、就労先の田舎町。

出会った瞬間、仕事一筋だった私は崩壊した。

心と体が一目惚れしたとでも言おうか、対面した瞬間に、心身が魅了されてしまった。

 

妖女は自分と好相性の男を嗅ぎ分けるという。

妖魔界では男性それ自体が希少なので、その嗅覚が役立つ場面はあまり無いのだけど、男性がごろごろ居る人間界では、それが劇的に機能する。

 

『人間界に行けば、必ず運命の人と出会える』

 

人間界を知る妖女たちは口を揃えてそう語るが、てっきり誇張だと思っていた。

出会った瞬間……『彼の子が欲しい』と、心も体もそれ一色になるなんて……

 

『実は、僕も一目惚れでした』

 

彼が照れ臭そうに笑ってくれたときは、気絶するほど嬉しかった。

 

 

 

ここに来て、誘惑禁止条例が私たちを阻んだ。

実質的に男女の婚前交渉を禁じた、時代に逆行するかのようなルール。

私も彼も真面目だったから、それを守って節度ある交際をしようとした。

若い男女だ。当然のように限界を迎える。

 

だから――結婚した。

 

夫婦になれば、条例の対象外だ。

誘惑(チャーム)を含め、妻が夫を求めることは禁じられていない。

これも若さ故の勢いというか、挙式などいつでもできるとばかりに籍を入れた。

結婚するまでは清い体で、現代でそんなことをしたのは、私たちくらいだろう。

もちろんその後の結婚生活は……これまでの反動で、恥ずかしいくらい燃え上がった。

 

これが、私と夫の話。

夫と共にこの世を去った、私の青春時代。

恋して、交際して、結婚して、愛し合う――ごく普通の男女の人生だ。

 

それを、他の誰かともう一度なんて、思ってはいない。

 

再婚なんてしない、絶対にしない。

恋も交際も結婚も愛も、全ては夫とだけ。

私のそれらは、体だけを残して、夫と共に旅立った。

だから、命がそれを追いかけるまで、それはしない。

夫を忘れて誰かに恋したりしない、ごく普通の男女の関係になんて誰ともならない。

 

これだけが、夫を守れなかった私に許された、愛の証明だから。

 

なのに、多くの『優しい人』は言う――そこまでする必要はないんだよ、と。

いつか心が伴う日が来たら、新しい人生を送ってもいいんだよ、と。

病死した夫の母ですら、死期を悟ったように言い残していった。

夫ですら、自分が死ぬと知っていれば、そう遺書に書いただろう。

 

あくまでこれは、私の意地。

妻は夫の死後も貞淑に徹すべしなんていう、誰かの要求に従ったわけじゃない。

ただ、私がそうしたいから。

夫を愛し続けたいから、夫だけの女でいたいから。

そうすることで、私の心にまだ残っている彼を、薄れさせずに守れる気がしたから。

 

だからどうか、私の幸せを願う方々……

夫の死で生まれた私の傷を、埋めようとしないでください。

どんなに痛々しく見えても、抜け殻のようになったいまの姿でいさせてほしいのです。

 

この体はどうなってもいい、この先の人生が不幸でもいい。

せめて夫への愛だけは、欠落という形で、ずっと守り続けていたいから。

 

そんな負の祈りを捧げていた私は、いま――

 

「あああぁぁぁっっっ♡ イクっ♡ ごめんなさいっ、またっ、イキますぅっ♡」

 

夫の居ないこの家で、義弟の慰み者になっていた。

 

 

 

 

パンパンパンッ――と、男と女の肉がぶつかる音がする。

私の家の、義弟の部屋の、布団の上で。

私のヒップと彼の下腹部の間から、何度も鳴り響いている。

 

「あっ、ああんっ、ひぃんっ♡ 修吾さんっ、もう終わりに――ひああぁぁっ♡」

 

私は背後からのピストンに喘ぎながら、必死に言葉を紡ごうとする。

彼――夫の弟である修吾くんは、私が拒否の言葉を口にすると、抽送を強める。

 

「まだだよ。ヘラさんが完全に屈服するまで、続けるからね!」

 

彼はそう言って、さらに激しく腰を打ち付けてくる。

パンパンと響く音に、グチュッグチャと粘っこい水音が混ざる。

両手首は掴み取られ、背後に引き寄せられており、私の上半身は布団から浮いていた。

 

「んあっ♡ だめぇ……こんな、乱暴なの、おおっ♡ 無理矢理、イかせて、ばっかり♡ あっあっあっあっあっ♡」

 

両手を後ろに引かれて、バックから突かれる。

まるで手綱で操られる馬のように、私の体が踊らされる。

髪を振り乱し、乳房を淫らに揺らし、背中と喉が逸れて、喘ぎ声が口をつく。

 

「なに? 愛情たっぷりなのがいいの?」

 

修吾くんは急に力を抜くと、私の体を優しく抱き寄せる。

しかしその声音は、手付きとは裏腹に怒ったような声音で、怖かった。

 

()()()()()()()()()()()()()?」

「っっっ!」

 

彼の言及が、夫を思い出させた。

女の悦楽に染まって忘れかけていた自分に、気付かされた。

 

「あ、ああぁぁ……っ」

 

なんて――卑しい女なんだろう。

 

夫を喪って以来、男を絶っていたこの体は、義弟の肉棒に容易く陥落した。

妖女の体が、亡き夫と同じ血を流すオスを、どうしても欲している。

意思とは無関係に走る性感、絡み付いてしまう膣、喉をつく女の声。

どんなに高尚を気取っても、所詮は人も動物の一種。

夫をどれだけ愛していても、私の体はオスを求めるメスだった。

 

「ごめんなさい……ごめん、なさい……っ」

 

でも、それ以上に許されざることは、夫への愛を忘れること。

体が修吾くんを求めることも、犯されて感じることも、肉体の本能的な働きに過ぎない。

 

けど、『忘れること』は別だ。

それだけは、体ではなく、心の裏切りだから。

それだけは、あってはならないのだと――彼が思い出させて()()()

 

「ヘラさん、泣かないで。辛いなら、()()()()()()、優しくしてあげるよ?」

 

修吾くんの声は、無理して嗜虐的にされていた。

止める気なんかないと見せかけて、本当は優しくしたいのだと、感じ取れる。

 

知っていた。

修吾くんが、女性に乱暴できるような男ではないと、知っていた。

それでも、私をレイプしているのは――

 

「……で」

 

――私の体が、男に飢え乾いていたから。

――私の心が、夫以外を拒んでいたから。

妖女としての私は男が欲しいと体で言って、妻の私は夫だけだと心で言う。

その矛盾を解決するために、彼は……似合いもしない悪人になろうとしている。

 

「優しく、なんて……しないで……っ」

 

首だけ振り返って、横目に彼と目を合わせる。

私はどんな顔をしていたのか、彼は驚いた顔をした後、生唾を飲んでいた。

ああ、きっと……さぞや淫らで、嗜虐嗜好を煽るような顔をしていたのだろう。

 

「そうだよね」

 

修吾くんは薄く笑うと、結合を維持したまま、私を膝に座らせる。

 

「んあっ♡」

 

後背座位の姿勢で足を広げさせられた私は、角度の変わった彼の剛直に声を零した。

背中が厚い胸板に寄りかからせられる。

夫と結婚したとき、まだ十代だった義弟は、いまや立派な男の体付きだった。

 

「ヘラさんは、兄貴を愛してるから。裏切るくらいなら、犯された方がマシだよなっ!」

 

彼は私の胸を掴みながら、子宮口を突き上げた。

 

「ひあぁぁぁっ♡」

 

下腹部から脳天へ、稲妻が登るように走る快感。

たった一突きで、声を堪えきれないほどに達せられていた。

 

「ははっ! いい声だよ。もっと喘いでっ。喘げっ!」

 

無理して絞り出したような高圧的な命令が、私の胸を甘辛く締め付ける。

従わなきゃいけない、従ってあげたい――似て非なる感情が同時に巻き起こった。

 

「ああぁぁぁっ♡ 奥っ、だめっ♡ あっあっあっあっ♡ 子宮っ、んおっ♡ おっおっおっ♡」

「ほら、体はこんなに悦んでる。いいんだよ、心は兄貴のものでもっ。

 その代わり、体は好きにさせてもらうからなっ!」

 

修吾くんは、動機が肉欲だけであることを強調する。

心には触れず、体は犯す。これはそういうセックスなのだと。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡♡♡ だめだめイっちゃうっ♡ またすごいの来ちゃうぅぅっ♡」

 

男が女に接する方法としては最低なはずのそれが――最高だった。

 

「ははっ、すごいイキっぷり。おまんこ大喜びしてるじゃないか。

 心は兄貴のものでも、体は俺が欲しくて堪らないんだなっ」

 

夫を愛する私の心を尊重しながら、浅ましい体を満たしてくれる。

 

「いいんだよ。イっていいんだよ。ヘラさんだって妖女なんだから、仕方ないんだっ!」

 

犯されてるから仕方ないんだと、感じさせてくれる。

 

「こんなにイキまくってたら、兄貴より俺を好きになっちゃうんじゃない?」

「ひぁぁぁっ♡ なり、ませんっ♡ あああっ♡ なら、ないっ♡

 あの人っ、だけっ♡ 愛してるのはぁ、あの人だけっ、だからっ♡」

 

どんなに犯されても心は明け渡さない――という姿勢で、夫への愛を証明させてくれる。

 

「偉いね、ヘラさんは妻の鑑だよ。

 そういう、貞淑な未亡人を快楽に乱れさせるのが、堪らないんだよっ!」

 

悪いのは自分なのだと、自分が兄嫁に劣情を抱いただけなのだと、罪を背負ってくれる。

 

「出すぞ、兄貴と同じ血を引いた男の子種だっ、ちゃんと受け取れ!」

「あ゙あ゙あ゙っ、出てるっ♡ またっ、中にぃ♡」

 

嫌がっているように叫びながら、心も体も拒んでいなかった。

夫の遺伝子を引き継いだ子供を作るために、夫の弟の精子を受け入れる。

そんな罪深い自分の目的が、いま果たされていた。

 

「はひっ♡ あぁぁぁ♡ ゆる、して……」

 

謝る。

夫に、そして修吾くんに。

こんなに卑怯で、浅ましく淫らな自分を、どうか許して。

女の劣情と妻の意地、それを同時に満たすため、自分以外を悪人にする私を。

 

「ヘラさん……」

 

膣内射精と同時に大きく絶頂した私を、修吾くんは布団に寝かせた。

意識がほとんど落ちている私に、何かを言う余力はない。

 

「ごめんよ……」

 

イキ狂った末に気絶する私の顔を見て、彼が謝っている。

 

(ああ、やっぱり……優しい……)

 

暴力の後に優しくされたからとか、そういう心理じゃない。

未亡人になった私に優しくしてくれた人は、たくさん居た。

再婚してもいい、辛かったら無理しなくていい、実家に帰ってもいい。

私の夫への愛を蔑ろにする『優しさ』が、この町には溢れていた。

 

彼だけが――自分を汚してまで、夫を尊重して、体を慰めてくれた。

 

脅して、犯して、屈服させて、身勝手に体を貪る。

行為の卑劣さとは裏腹に、その選択は、他の誰よりも優しかった。

 

だから、目が覚めたら……全部忘れてあげよう。

何事も無かったかのようにしてあげよう。

朝ご飯を作って、笑顔で挨拶して。

彼が、罪悪感で困らないように。

一夜の過ちくらい気にしない、寛容な女になってあげよう。

 

もし、それで彼が図に乗って、また私を求めてきたら?

 

そのときはまた、夫への愛を貫けるように……

嫌がる私を、怖れることなく、屈服させてくれますように。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

兄嫁視点でした。
堕ちる未亡人のエロさは内面描写あってこそですので。
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