誘惑禁止条例 ※性犯罪被害は条例違反にあたらない 作:大中小太郎
最近は、妖魔界と人間界の間で『通話』をすることも可能になっている。
それを利用して、久しぶりに母と会話をしていた。
「そう……残念ね」
耳にした実家の近況は、親族の縁談がお流れになったこと。
私の実家は貴族家の傍流で、本家は領主の地位に就いている。
しかし一族の間には、いま『子供』がいない。
お世継ぎがいない一族は領主の座から降りるのが、国の慣習だ。
人間界からすると、まるで大昔の武家のような話だが、それが通る。
「相手側はなんて? ……え?」
破談について、未亡人である自分の存在が災いしたのかと懸念してみれば、母の説明は予想外のものだった。
縁談の相手となる男性――つまり生粋の妖魔界人の男だ。
その人が『結婚』それ自体を拒んでいるのだという。
夫という役割に拘束され、自由を失うのは嫌だと。
家の強権によって結婚させられ、何人もの女と子を作らされ、男児はまだかと催促される。
男性にそのようなことを押し付けるのは、男性差別なのだと。
人間界との出会いは、そういう妖魔界の封建社会に、何かと影響を及ぼしているのだという。
縁談の男性もそれに刺激され、『他者の押し付けた役割になんて従わない、僕は僕だ』的な思想になっているらしい。
人間界に住んでいるから分からなくもないが、それは『役割の完全放棄』ともとれる。
なんにせよ、そのような精神状態で円満な夫婦もへったくれもない。
よって縁談の『入札』は中止、実家は別方面から
「そう……仕方ないわね」
そんなに男が欲しいなら人間界に有り余っているのでは? とも思うだろう。
しかし血統を重視する一族だと、『異世界人』というのはハードルが高い。
ただ、お家断絶よりはマシなので……いまとなってはそれも選択肢だという。
今後も婿を取れなかったとき、それが一族の救世主になるかもしれない。
そこで、未亡人である自分に「夫の弟さんにお情けを掛けてもらってはどうか」と提案されるに至ったわけだ。
縁談が流れたことで、その期待感はより強まった。
「ええ、夫のことはもう平気よ。周りの人たちがよくしてくれているから」
電話口の母は、娘の傷心に気を配りつつも、探りを入れていた。
――弟さんとの関係はどう? と。
未亡人の娘に申し訳ないと思いつつも、期待を込めた問いだった。
その人と深い関係になれていたりはしないか、と。
以前なら「夫を裏切れというのか」と激怒したかもしれないが……
「いい人よ」
修吾のことを、そう伝える。
イエスでもノーでもない、質問を回避する答えだ。
肉体関係にあることはもちろん、犯されているだなどとは、母にも伝えていない。
もし寵愛を授かっていると言えば母は喜ぶだろうが、それが修吾を実家の政略に巻き込む可能性もある。
だから修吾との関係は明言せず、子供だけ授かって妖魔界に帰るつもりだ。
「え?」
ふと、母からの言葉に、耳を疑った。
「……お見合い? 彼と?」
ヘラが、ではない。
――もしよければ、縁談が流れた一族の娘に、彼を紹介してくれないか。
そんな頼みが、一族の本家から実家に届いたという。
「……っ」
ヘラの手がスマホを握り込み、僅かに軋む音を立てる。
修吾さんが? お見合い? 私の親族と?
ああなるほど、一族には男が必要だけど、別にその相手は私でなくてもいい。
そうなれば……彼が私以外の娘と、よい仲になれば……
彼はもっと若い子と、煩わしくない夫婦になれて……
自分はひっそり、亡き夫を偲ぶだけの人生を……
「――ダメよ」
自分でも驚くような低い声が出ていた。
その後でハッとする。
別に私は、彼の恋人でも妻でもないのに……と。
「彼には……」
息を整えて、意を決して、母に伝える。
「あの人には――
母はそれ以上、見合いの話を続けなかった。
電話を切ってしばらく……私は奇妙な胸の高鳴りを感じながら、その場に立ち尽くしていた。
○
夫と同じ血を引く彼だけど、セックスに関しては夫とは別物だった。
なんと言っても逞しい。
夫は眼鏡の似合う文系で、細身で、セックスのときも優しさと愛情表現を重んじてくれた。
私もそれに甘えて、行為のときはこちらが上になって腰を振ることが多かった。
「ふぅー、気持ちいいよ、ヘラ」
「あんっ♡ よかった、です……♡」
彼はその逆だ。
スポーツをやっていたそうで体付きは男らしい。
こうして風呂場で体を洗わされていると、筋肉の厚みと弾力を強く感じる。
夫よりも強い雄――そんな浅ましい感想が、体に湧いてくる。
「どうしたの? こんなに積極的にしてくれるなんて。珍しい」
「別に、なにも……♡ 修吾さんは、楽になさって……っ♡」
最近、お風呂は一緒に入ることが多い。
彼に全身を洗われて喘ぐこともあれば、今日のように逆もある。
いわゆるソーププレイで、私は仰向けになった彼の胸板に己を滑らせていた。
「その水着、やっぱり似合ってる。ヘラのエッチな体にぴったりだ」
「こ、こんなの……ここでしか着ませんから……っ♡」
私の体は、彼が購入した水着に包まれている。
いや、包まれているというより、飾られているというべきか。
なにせ乳首と秘所に最低限の三角形があるだけで、後は紐というような水着だ。
こんな恥ずかしいものを着せたがるなんて……私を人形だとでも思っているのか。
まるで……自分の所有物であるかのような……
そんな扱いを、嫌だと思っていない自分がいる。
「んぅっ♡ んっ♡ んぅっ♡」
「こーら、いまは俺に奉仕する時間だろ? 自分ばかり気持ちよくなるなよ」
水着越しに擦れる乳首の快感で声を零すと、彼にヒップを掴まれる。
「んあっ♡ ごめん、なさい♡ 精一杯、ご奉仕しますからぁ……♡」
水着がズレるのにも構わず、胸やお腹、両手両脚を、彼の同じ部位に擦り付ける。
体を洗身の道具として捧げ、女肉の感触を味わってもらうために。
「そうそうその調子、プロのソープ嬢みたいだよ。行ったことないけど」
「あっ♡ はぁっ♡ あっ♡ んっ♡」
いつの間にか私には、奉仕の快感が目覚めていた。
夫に対しては、対等であるか、自分が守らなければという目上の感覚だった。
彼は違う。完全に私が格下だ。
これまでのセックスで上下関係を叩き込まれた結果、義弟である彼を目上の存在に感じている。
当初は『逆らえない』というだけだったのに、いまは『尽くす悦び』すら感じている。
私なんかの体で、彼が悦んでくれるなら――と。
日夜、様々な形で体を求められても、唯々諾々と従ってしまうほどに。
最後に彼の要求を拒もうとしたのはいつだったか――もう思い出せなかった。
○
「あああぁぁぁっっっ♡ 修吾さん待ってっ♡ いまイってりゅっ♡ イってりゅからぁっ♡」
「いいねぇ、目隠ししたら急に敏感になったじゃないかっ!」
風呂の後、私は布団で、絶頂したばかりの膣内を突き上げられていた。
目隠しで視覚情報を絶たれた意識は、自然と体の方に集中している。
そのせいで、ごく普通の正常位による抽送でも、いつもより短い時間で果ててしまった。
義弟はそんな私を更に責め立てようと、絶頂の落雷に襲われている子宮に、追加のピストンを送りつける。
「んおっ♡ おぉぉっ♡ おふっ♡」
不意打ちで乳首を軽く抓られて、おかしな声が出る。
奥でイかされているだけで女は狂うのに、乳首イキまで追加されたら、もう声の制御はできない。
女の身体が、妖女の被虐嗜好が、こんなに浅ましいものだなんて、知らなかった。
彼に
「やめっ♡ 許してぇぇぇ♡ こわいのっ♡ イキしゅぎなのこわいのぉぉぉっ♡」
夢中で懇願する。
こんなことが続いたら、来週には気が触れているんじゃないかと、本気で思う。
「よしよし、怖かったね。ほら、いい子いい子」
彼の手付きが途端に優しくなり、子宮口はゆっくり圧迫され、乳房は柔らかく愛撫される。
激しくされた後にこうされると、愚かな私は急に安心しきってしまう。
目の前の彼が、世界で一番優しい男なのだと錯覚すらしてしまう。
(あ、この手付き……あの人と、そっくり……♡)
夫の愛情豊かなセックスを思い出してしまった。
やっぱり兄弟なんだな……と、妙に可愛らしく思ってしまった。
「っ!!」
そんな自分の思考に、強い自己嫌悪を覚えた。
いまのは、夫への裏切りだ。
ある意味、どちらが気持ちいいかを比べるより、酷い思考だった。
体はどうなっても、彼の子を孕んでも、心だけは夫のものだと誓ったのに……っ!
「んん? どうしたの? やっぱり物足りない?」
「んっ♡」
義弟の問いかけも、外れてはいない。
彼に調教されてしまったこの体は、私の意思とは裏腹に獰猛なセックスを望んでいる。
犯されるくらいの荒々しさがないと、辿り着けない絶頂があると、犬みたいに覚えてしまった。
「……て」
その淫らな体と、自己嫌悪に駆られていた心が、目的を一致させた。
「犯して……犯してくださいっ♡ いつもみたいにぃ、無理矢理、私を奪ってぇ♡」
自ら腰をくねらせ、見えない彼に手を伸ばす。
女が絶対に口にしてはいけないようなことを、媚びた声音で歌う。
目隠し越しでも、彼の嗜虐心に火がついたことを、肌で感じた。
「いいよ。いけない兄嫁に、お仕置きしてあげる」
不思議なくらい優しい声音がすると、腰が彼の両手に掴まれる。
どちゅん! と、休まされていた子宮が、お腹の側へと押し潰された。
「ひぎゅぅぅぅっ♡♡♡」
軽い絶頂を伴う快感が炸裂する。
一度ではない、彼が腰を突き入れる度にだ。
体には、先ほどの絶頂が余熱を残していた。だからあっという間に燃え上がる。
「そうっ♡ それぇ♡ 犯してっ♡ もっと♡
被虐趣味とは別の動機が、そう叫ばせていた。
犯されればいい。こんな私なんて、滅茶苦茶にされればいい。
夫を裏切り、夫の弟を誘惑し、悦んでしまっている私なんて。
最近は心の中ですら、夫を忘れる時間が増えてきた私なんて。
「おぉぉっ♡ しゅごいのっ♡ イったばっかりなのにっ♡ またイっちゃうのぉぉっ♡」
だから、これは罰なのだ。
行きすぎた快感は肉体を苛む鞭になる。
彼にそれを振るわせることで、夫への贖罪にする。
自ら鞭を受けることが、夫への愛の証明なのだと――私はそう思い込むことにした。
「っ……いいとも、イキまくって痙攣してるおまんこ気持ちいいからね!
ほらっ! もっと喘げ! 獣みたいな鳴き声を上げちまえっ!!」
彼も悦んでくれている。
粗忽に扱っても悦んでくれる女というのは、男の夢みたいなものらしい。
自分が虐げられるのは、不徳な関係を持たせてしまった彼へのお詫びも兼ねてのことだ。
「んおっ♡ おっおっおぉぉっ♡ しゅごいっ♡ 修吾さん素敵ですっ♡ あぅんっ♡
私のからだぁ♡ ああぁぁっ♡ もっと、好きにしてっ♡ ぁぁぁっ♡ いいのぉっ♡」
抱き上げられ、体面座位で揺らされながら、彼を雄々しくするための言葉を紡ぐ。
体は快感のために、心は贖罪のために。
そうして心と体が一致すれば、後は何も考えずに喘ぐだけ。
「ほら、腕を出して」
いつの間に用意したのか、手錠で両手首を拘束される。
両腕が体の前に揃えられるそれは、どこか祈るようでもあって、いまの私には最適だった。
「後ろを向けっ。ドMなお尻を叩きながら突きまくってやるよっ!」
「はいぃっ♡」
乱暴な命令にも、抵抗なく従う。
お尻を突き出し、揺らして誘う――もうこの一連の動きは癖になってしまった。
「思い出せよ。ヘラの旦那さんは誰だ? 俺の兄貴だよな?」
パシッ! と軽くヒップを打たれる。
「ひうっ♡ そう、です……陽司さん、です……ごめんなさい……っ♡」
打たれている。暴力を振るわれている――
「じゃあ、いまヘラが尻を振って誘惑してる相手は誰だ!?」
パシン! とより強く叩かれる。
私がいま、どんなに不徳なことをしているのか、再認識させるように。
「あぁっ♡ 修吾さんっ、ですっ♡ あの人のっ、弟にっ♡ 許してっ♡ 許してぇっ♡」
いけないことをしている――そう実感するだけで、子宮から全身に興奮が広がる。
でも、仕方ない――
「そうだ、謝るんだ。兄貴に懺悔するんだ!」
パパン! と、両手が時間差を付けて叩き付けられる。
その痛みと衝撃にさえ、全身に甘い痺れが広がった。
亀頭が秘所にあてがわれるのを感じると、甘美な震えが背筋を駆け上がる。
「ああぁぁ♡ ごめんなさいっ♡ あなたっ♡ ごめんなさ――」
ずぷぅっ! と、言葉の途中で、彼の長大なものが子宮口まで滑り込んできた。
「ふぉぉぉっ♡ おっおっぉぉぉっ♡」
一瞬の空白の後、強烈な快感が脳天にまで響いた。
視界が明滅し、呼吸が止まる。膣内を圧迫する剛直の質量に、子宮と意識が潰される。
「ほらっ、アヘ顔ばっかりしてないで、兄貴に言うことないのか!?」
「んぁぁごめんなさいあなたっ♡ 気持ちいいっ♡ あなたの弟さんのセックス気持ちよすぎるのぉっ♡ おっきくてっ、硬くてっ、雄々しくてぇっ♡ わたしのおまんこ新しくされちゃったんですっ♡」
夫への告解を叫びながら、彼の興奮を煽る。
もっと興奮してくれれば、もっと気持ちよく、ああ違うこれは罰なの罰だから――
「ああぁぁまたイっちゃうっ♡ 何度もっ♡ あなたのときよりいっぱいあぁイクまたイっちゃうのぉぉぉっ♡」
突かれる度にイって、イってる途中に突かれ、一度目が終わる前に二度目三度目とイキ続ける。
「許してあなたぁっ♡ 赤ちゃん欲しいのっ♡ あなたが残してくれなかった忘れ形見っ♡
修吾さんにもらうのぉっ♡ あなたの血を残すためっ、だからぁっ♡ あひっ♡
気持ちいいの許してっ♡ んおっ♡ イクの許してぇっ♡ あっあっあっあっあああっ♡」
早鐘を打つ心臓よりも早いペースで、絶え間なく反響するオーガズム。
気がつけば揉まれていた胸からも、彼に叩かれる尻からも、別の絶頂が合奏のように加わる。
「お゙お゙お゙ぉ ぉ ぉ っ♡♡♡ 来てるのぉ♡ あなたよりすごいイクの来てるのぉぉぉ♡
これしゅきっ♡ 犯されイキしゅごいぃぃぃっ♡ 見てっ♡ あなたっ♡ 見てぇ♡
あなたの弟さんっ♡ 立派にっ♡ わたしのこと孕ませてっ♡ あひゅぅぅぅっ♡」
ああ――もう、無理――あたま、真っ白――
自分で、なにを――言ってる、のか――
「――っ♡ っっっ♡ ――、――――っ♡」
自分で自分の声が聞き取れなくなった後も、私はなにか言っていた。
きっと、聞かされている彼でさえ、伝えるのをためらうような内容だろう。
そんなことすら、どうでもよかった。
気持ちいい。ただ気持ちいい。
イってない瞬間が無いくらいの悦楽の極地に、いまはただ溺れていたい。
全ての思い煩いから解放される、天国のようなこの時間が、ずっと続いてほしい。
頭の中が全てそれで覆い尽くされる直前――ふと思った。
こんな私に……夫への愛なんて高尚なものが……あとどのくらい残されているのだろうか?
ご一読いただきありがとうございます。
心は浮気していないつもりでも、
いつの間にか独占欲を抱いてしまっていた兄嫁でした。