誘惑禁止条例 ※性犯罪被害は条例違反にあたらない 作:大中小太郎
「二人をどう思うって……」
ユスティネとニナをどう思うか――シーアはそう尋ねてきた。
藤次はその問いの意味するところを少し考えて、小さく笑う。
「心配しなくても、俺はシーア一筋だぞ?」
「はうっ♡」
微苦笑して言うと、シーアは意表を衝かれたように驚きつつ、耳まで赤くなる。
「ま、またそうやって……おとぎ話でしか聞けないようなことばかり……っ!」
藤次の腕を枕にしていたシーアは、腕の肉をやんわりと抓ってきた。
「そういう話ではなく……いえ、すごく嬉しいのですけど……」
「ん? 俺がニナちゃんやユスティネちゃんに浮気するかもって話じゃないのか?」
思えば、シーアという婚約者がいるにも関わらず、年頃の女性を家に住まわせてしまった。
招いたのはシーアだが、女心というものが悪い想像に駆られても不思議はない。
「浮気、ですか……そうでした、人間界は一夫一妻ですものね。
あぅ……どうしましょう。これだと、なんだか私だけ、はしたない女みたいな……」
なにやら悩んでいるシーアの結論を待つ。
「その、旦那様? 妖魔界は、原則的に一夫多妻制なんです」
「ああ、知ってるよ。国や地域によって色々あるみたいだね」
妖魔界と一言にいっても、地球の十倍の人口と国家がある。
シーアの故郷がどのような婚姻形態なのかは、思えば聞いていなかった。
「私の国では、それほど厳密な決まりはありません。
最初から複数の女性と男性が結ばれることもあれば、妻が一人ずつ増えることもあります」
「…………」
それを聞いて、藤次もようやく、シーアの言わんとすることが理解できた。
「シーア、君は……あの二人も妻にしないかと言ってるのか?」
驚きの声を怒気と誤解してか、シーアが小さく震える。
髪を撫でて安心させると、シーアは遠慮がちに説明し始めた。
「その、いまはまだ身軽ですが、いずれ私のお腹も大きくなります。
子供が産まれたら尚のこと、家事と育児の人手が必要になると思うんです」
それはまあ、そうだろう。
「人間界では夫婦で家事分担というのが基本のようですが、私たち妖女は『妻たち』で分担するのが普通です」
「そうか……確かに、その方が安心かもしれないな」
主婦の仕事がどのくらい大変かはさておいて、育児が重労働なのは論を
ノイローゼになり、泣き止まない我が子を殺してしまう母親でさえいる。
それについて親だけ責めて終わるよりも、負担軽減を考えるべきだろう。
一時金だとか夫の育休だとかいう、焼け石に水でしかないものではなく、もっと確実な方法。
妖魔界の家庭は――『親の数を増やす』という形でこれを解決している。
「私たちにとっては、母親は複数いるのが当たり前で、同じ夫の子なら我が子も同然に助け合うのが普通なのです」
「確かに、単純に人手が多いっていうのは、強みだな……」
子供の夜泣きが激しいなら、昼担当と夜担当の母に別れればいいのだ。
体調を崩したりした日には、他の母たちを頼ればいいのだ。
昔の人々は祖父母や近所が助けていたが、核家族化でその協力態勢が崩壊しているという。
妖魔界はその逆、育児とは一族や地域を挙げての大事なのである。
「そうか、子供のことを考えて、苦楽を共にしてくれる家族が、もっと必要だと――そう言いたいんだな?」
「はい……も、もちろん、旦那様が一夫一妻にこだわるのであれば……」
「いいや、そこは遠慮しちゃ駄目なところだ」
藤次はこの問題について、シーアが一歩引くべきではないと感じた。
もはや最近は珍しいくらいだが、藤次は一夫一妻の両親に育てられた。
だから漠然と、家事育児をシーアに任せてバリバリ働こうと思っていた。
しかし、視野を広げてみれば、よりシーアの負担を減らして我が子にも幸いする選択肢があったようだ。
これは真剣に検討しなければならない。
「シーアは、いいのか? あの二人と、その……」
「ユスティネもニナなら、同じ夫を妻とする『義姉妹』になっても、上手くやっていけます。
それに……」
シーアは、言ってもいいのか迷う間を置いてから、どこか艶っぽい表情で口にする。
「あの子たちも……旦那様に、抱かれたいと思っているはずです」
「っ!?」
その言葉は意外だった。
なにせ今日会ったばかりだ。
ユスティネはともかく、ニナにいたっては、かなり警戒されていた気もする。
「妖女には、分かるんです。自分にぴったりの血を持ってる殿方が……心よりも先に、身体が分かっちゃうんです」
掛け布団の中で、シーアが足を絡め、胸板を撫でてくる。
こちらを見上げるその微笑は、どこか魔女のようですらあった。
男を誘惑するのみならず、邪な道へとそそのかす、艶美な魔女だ。
「でも、人間界にはあの条例もありますから……」
誘惑禁止条例――妖女が男性を誘うことを禁じた条例。
出稼ぎ労働者であるシーアたちのような妖女にとっては特に、違反すればビザ失効もありうる。
だから、ユスティネもニナも、身体に正直なことはできないというわけか。
「旦那様さえ、よろしければ……」
シーアの手が、布団の中で胸板から腹筋へと下り、臍の下へと静かに移動する。
細い指先に触れられた逸物は、話を聞いている間に勃起していた。
シーアには、何度も触れさせて奉仕させてきたというのに、まるで今日初めて異性に触れられた童貞のように、強い興奮を覚えた。
ともすればシーアの表情すらも、少年をたぶらかす美女のようですらある。
無垢な少年に「いけないこと」の味を教えようとするように――彼女は耳元で囁いた。
「あの子たちから……
藤次は答えなかった。
答えない代わりに、シーアに覆い被さり、もう一度セックスをした。
胸の内に生じた、どす黒い欲望を、大慌てで吐き出すように。
シーアは藤次の手付きから胸中を察して、それ以上は何も言わなかった。
(あの子、たちを……っ!?)
事の最中、藤次の脳裏を、否応なく二人の姿が過ぎる。
ユスティネの豊満な肢体と、ニナの起伏ある細身を……この手に……
藤次は善人だ。
セックスの機会が多いこの時代において、女は元妻くらいしか知らないという堅物だ。
そんな自分には似合わない、昏い欲望が――今宵、心の奥底に、根付いてしまった。
○
朝の訪れを感じる。
ここ最近はシーアとのセックスもあって、目覚めがあまりよくない。
仕事に響くから何もせずに眠ろうと決意しても、結局はシーアの身体に溺れてしまうせいだ。
十代の若僧でもあるまいし、今日こそは劣情に流されないぞ――と、藤次は決意する。
「西条様? 朝でございます」
そんな藤次の決意が、耳に届いた少女の声で消滅した。
不十分な目覚めのせいで顔は見えないが、自分をこうして起こしてくれるのはシーアしかいない。
「もう、西条様? そろそろ――きゃっ!?」
だからいつものように、シーアをベッドに引っ張り込む。
ぽすんっと、柔らかな感触が胸板の上に乗る。
胸の感触だ。
いまさらシーアの胸が触れたくらいで取り乱しはしないが、いつもより大きく感じる。
「西条様っ? あの、私――」
「なってないぞ。まったく駄目なメイドだな」
掛け布団を退けて、下腹部を露にする。
パジャマの中では、シーアとの関係以降すっかり身勝手になった肉棒が、朝の隆起を作っていた。
「っっっ」
「いつもみたいに、朝勃ちの処理をしてくれ――」
シーアは息を呑んでいた。
いまさら自分の朝勃ちなんて、驚くこともないだろうに……と、顔に目を向けると、
「っ!?」
ユスティネだった。
道理で手に触れる体格が違うと思ったら、シーアではなかったのだ。
察するにシーアに頼まれて自分を起こしに来たのだろう。
それを自分はシーアと勘違いして、朝勃ちの処理をしろなどと……っ!
「……っ♡」
ユスティネはといえば、藤次の手で身体を股間部に寄せられ、硬直している。
目は見開かれ、藤次のテントを凝視していた。
顔は耳まで赤くなり、唇は震え、目は潤んでいる。
「あ、すまない、その、てっきり――」
とんだ勘違いだ。訴えられたら負ける、なんなら社会的に死ぬ。
助命嘆願のため詫びようとした藤次に、ユスティナは――
「……かしこまりました」
自らベッドの上に乗り、藤次の足を跨ぐようにして四肢をつく。
「
ユスティネがメイド服の胸元を開いた瞬間――勘違いだと言えなくなった。
大きい――シーアのそれより数段も豊かな乳房が、自分の股間のすぐ傍で開示される。
深い谷間、視覚だけで伝わる柔らかさ、腿に触れる下乳の感触、立ち上る妖女の香気。
それら全てに、男の本能をぶん殴られた。
まるで心を童貞に叩き返されたかのように、脳が目前の乳房に埋め尽くされる。
結果、パジャマのズボンから肉棒を取り出すユスティネの手を、止めることができなかった。
「あぁ……っ♡」
ユスティネもまた、同じような状態だった。
目の前に表れた男根に目を丸くして、藤次の顔も見ていない。
知性と理性を吹き飛ばされたような、情欲の目だ。
それこそ、男が目の前にある女の乳首へ吸い付こうとするように――
「んっ♡ ちゅっ♡」
ユスティネは、何の躊躇いもなく、藤次の先端部に口を付けた。
亀頭の先端に、どこか遠慮するように舌先が触れ始める。
「ふぁ……んっ♡ じゅるっ♡ んんっ……♡」
藤次が拒まないのをいいことに、ユスティネは鈴口から裏筋にかけて舌を這わせていく。
さらにカリ首や竿の部分にも、唾液まみれの口腔を絡ませていった。
「んっ♡ んむっ♡ ぢゅるっ♡ ぷぁっ♡ はむっ♡」
夢中だった。
こちらが命じるまでもなく、ユスティネの口淫は激しさを増していく。
シーアがフェラをする時と同じだ。
妖女が持つ口内性感帯を刺激するため、目の前の肉棒を積極的に呑み込んでいく。
「ぢゅるるるっ♡ ぢゅむっ♡ んぐっ♡ ふぅぅっ♡」
喉奥まで使って、根元から先端まで余さず愛撫する。
手慣れた風俗嬢のように大胆かつ丹念なフェラチオだ。
それを、今日初めて男根を見たようなユスティネが、本能的に行っている。
(シーアだけじゃない、妖女って、皆こうなのか……っ?)
一心不乱に頭を上下させるユスティネを見て、藤次は息を呑んだ。
そう思う余裕があったのは、ユスティネの舌使いに、まだ素人臭さがあったからだろう。
「ぷはっ♡ 西条様の、おっきぃ♡ 美味しぃ♡ 私で、興奮して、くださってるっ♡」
息継ぎのために口を離したユスティネは、脈打つ肉棒を嬉しそうに眺めていた。
藤次を見上げる瞳にはハートマークさえ浮かんでいるように見える。
「ユスティネ……」
「西条様、もう少し、させてください♡ 私、頑張って、気持ちよくしますから――んむっ♡」
再びユスティネは、肉棒を口に含んでいった。
息継ぎをしたのはそのためだったのだろう――今度は喉奥まで亀頭を受け入れた。
「んぐっ♡ ぐぶっ♡ んぉっ♡」
苦しげな声を上げるユスティネだが、その顔には苦痛よりも喜悦が見える。
涙目になりながらも、逸物の根元へキスするように、必死に顔を前後させている。
(本気か……命じてもいないのに、根元まで……っ)
舌技の不足を吸引力で補おうとするような、凄まじいバキュームフェラ。
上顎で擦り、喉奥で引き絞る、貪るようなフェラチオが、藤次の肉棒を限界に導く。
「くっ、出るぞっ!」
「っ♡」
ユスティネは一瞬、動きを止めて――
「んっ♡ んん~っ♡」
どくんっと、吐き出された精液を受け止める。
「ぢゅぶっ♡ ちゅるるるっ♡ んっぐ……♡」
それどころか、尿道に残っていた白濁液を吸い上げ、当たり前のように嚥下してしまった。
「あっ♡ ああぁぁ……旦那、様ぁ♡ 申し訳ありません、わたし……飲んじゃいました♡
西条様の許可もなく……大事な、貴重な、子種を……っ♡」
ひどく背徳的なことをしてしまったように、ユスティネは謝っている。
その顔は上気しており、完全に発情してしまった身体からは妖女のフェロモンが立ち上っていた。
「っ」
思わず、生唾を飲む。
ユスティネが自分とセックスしたがっているとは、シーアからも聞いていた。
しかし、これほどとは……
勘違いとはいえ奉仕を命じられ、一も二も無く従い、夢中で肉棒を頬張るほどだったとは。
(しても、いいのか……?)
彼女がOKなのは明らかだ。
シーアと比べて大人っぽい体付き……きっと彼女とは違う抱き心地だろう。
そんな、婚約者ができたばかりの男として許されないような邪念が浮かぶ。
しかも、他ならぬ婚約者のシーアが、ユスティネを抱いてもいいと言っている。
もしかすると自分は、まだ目が覚めていなくて、劣情による夢を見ているのではないか……
「西条様……もし、お嫌でなければ……」
ユスティネが懇願するような顔で、何かを続けようとしたとき、
ピピピピ! と、スマホのアラーム音が部屋に響いた。
「「っ!?」」
藤次もユスティネも、何かに叱られたかのように、肩を跳ねさせる。
時計を見れば、そろそろ身支度をしなければならない時間だ。
「……その、ありがとう。気持ちよかった」
「はい……し、失礼しますっ」
最低限の礼を言うと、ユスティネは気まずそうに部屋を駆け出していった。
たぶん、大急ぎで歯磨きをして、口内の汚れを落とすのだろう。
藤次もティッシュで逸物を拭い、出勤の支度を始めるのだった。
○
昼休み、藤次は同僚に現状を相談してみることにした。
以前、藤次に奴隷を雇うことを勧めた同僚だ。
「それは手を出してやるべきだな」
同僚の返答は、藤次の予想していたよりも大胆だった。
社内食堂で愛妻弁当(というにはまだ早いが)を広げた藤次は、目を瞬く。
「手を出すべきって……」
「お前の奴隷、というか婚約者さんが勧めてきたんだろ?
つまり奥さんから見て、今後の出産育児と生活には複数の女手が必要ってことだ。
お膳立てがそこまで整ってるなら、後は据え膳食わぬはなんとやらだよ」
確かに、シーアが嘘を吐く理由はないからそうなのだろう。
「そっか、お前はご両親も前の奥さんとも一夫一妻だっけか。なら戸惑うのも仕方ないよな」
「ああ」
だからこそ、既に妖女と結婚して一夫多妻をしている同僚に聞いたのだ。
「俺はむしろ一夫一妻をしたことないから断言はできないが、負担は軽くなるぞ。
子供なんて夫婦数人がかりで面倒見てやっとだ。女手一つで面倒見るなんて想像もできねぇ」
一夫多妻側からすると、妻が一人で家事育児をするというのは、オーバーワークに見えるようだ。
シーアの妊娠が明らかになった以上、その声は無視できない。
「家計にもいい。男一人と妖女三人の四人夫婦だとすると、一人か二人が家事育児に専念しても、他の二人が養えるだろ?」
お金も当然無視できない。
例えば自分が怪我や病気で休職しても、他に働き手がいるなら安心だ。
「精神面でもなぁ。悩みの相談でも何でも、二人だけの夫婦に比べれば解決しやすいっつうか……
一対一で閉じきった夫婦だと、関係が拗れやすいし修復しにくいと思うんだよな」
一度は離婚している藤次には、少し響く言葉だった。
確かに、一夫一妻の夫婦とは、良くも悪くも『相手しか見ない』わけだ。
家庭という密室の中で、延々と一対一の関係を続けていれば、それゆえの歪みも生じる。
相手の些細な欠点が大きなストレスになったり、不均衡な関係が構築されてしまったり。
その点、一夫多妻型だと、別の誰かが間を取り持ったりすることで、問題の解決を図れる。
人間は群を作る生き物。夫婦と子供だけの最小集団で完結させるのは、むしろ危ういことなのかもしれない。
「妖女と結婚するっていうなら国際結婚だ。相手側の文化に歩み寄るのは必要だと思うぞ?」
「それは、その通りだな……」
普段は軽薄な同僚だが、必要なところはしっかりしていた。
「つーわけで、相手がその気なら他の子も抱いてやれよ」
「いや待て、一夫多妻のメリットは分かったが、それはまた別問題だ」
「なにが問題なんだよ?」
曲がりなりにも大人の端くれ。据え膳だからといって食ってはならない事情もある。
「婚約した子はともかく、他の子は俺が雇ってるわけじゃない。
迂闊に関係をもって万が一のことがあったら、その子たちを雇ってる人が困るだろう」
ユスティネもニナも、藤次の奴隷ではない。部屋を貸しているだけだ。
それぞれ雇い主がおり、稼ぎは仕送りにしている。
こういう状況の女性を、安易に妊娠させるのは無責任というものだ。
「クソ真面目だなぁ。こう言っちゃなんだが、先方だって産休なり寿退職させるなりして他の奴隷を雇うだろ」
「せっかく戦力になったところで産休されて、穴埋めの新人をまた育てなきゃならない苦労は、お前も知ってるだろ」
妖女がいる時代における社会問題のひとつ――産休や育休で人員の穴が空きやすい。
おめでたいことなので責められないが、対応する側は大変なのだ。
「なにをお局様みてぇなことを……でもまあ、逆に言えばそこまで考えるくらいには真剣なわけだ。なぁんだ、相談するまでもなく腹は括れてるんじゃねぇか!」
わははと笑って肩を叩いてくる同僚に対して、特に否定することはなかった。
「まあ、とりあえず避妊してカジュアルにセックスしてみたらどうだ?
最初に形を考えるんじゃなくて、親密になってから然るべき形を考えてもいいだろ。
ああ、誘惑禁止条例のフォローも忘れずにな?」
「カジュアルに、か……」
堅物な藤次の人生には、縁の薄い概念だった。
○
その後、ときおり上の空になりながらも、一日の仕事を終えて帰宅する。
以前は積極的に残業をしていたが、最近は定時上がりだ。
通勤は車であり、自動運転のサポートを受けながら道路を走る。
(いままで調べてこなかったが、いまどきハーレムなんて普通なんだな……)
先の同僚以外にも話を聞いてみた結果、自分の常識の狭さを思い知った。
ある妖女の女性社員は、義姉妹と一緒に夫を持っており、子供を義姉妹に預けて働いていた。
ある若手の男性社員は、学生時代には妖女と子供を儲けており、その後も妻子を増やしてきた。
姉妹を同時に妻として迎えた者や、頼まれて子種だけ提供してきた『
旧時代からすれば、性の乱れも甚だしい。
しかし婚姻や恋愛の多様化は進み、乱れているのが普通の状態で安定してしまったようだ。
こんな時代であれば、自分のように『金で雇った奴隷たちと関係を持つ』くらい、悪徳でもなんでもないのかもしれない。
(いいのか……あの子たちに、手を出して……)
朝から繰り返してきた自問への答えも、変化していた。
朝のうちは『そんな不徳なことはできない』だったものが、いまでは『皆やってること』になりつつある。
(シーアも勧めてくれている。あの子たちもその気。逮捕されるわけでもない)
世間に許容されていると分かった途端、押し殺していた浅ましい念も、表に出てくる。
例えば――ユスティネ。
シーアやニナと同年代とは思えない、あの成熟した肢体。
特に豊満な胸などは、きっとシーアとは異なる抱き心地だろう。
今朝のフェラチオを見る限り、性欲は強い。
弱点はどこだろうか? 好きな体位はなんだろうか? 抱けば一度で分かりそうだ。
それに――ニナ。
体型はシーアより一回り大人という程度で、メイド服より学生服が似合う。
容姿に不満はないが、あの性格……まだこちらに気を許していないように見えた。
シーアが言うには、セックスはしたがっているという。
あの態度は、身体の欲求に精神が追いついていないことからくる『お年頃』の反応だろう。
つまり――押し切ってしまえば、ヤれる。
存外、ああいう子に限って、女の悦びを知れば一変するのではないか。
なにせ、どちらも妖女だ。
シーアのような清純な子さえ、犯されることに悦びを見出してしまう天性のマゾメス。
広く深い性感帯への蹂躙を求め、生殖本能の強さゆえ、子種のためならプライドも簡単に捨てる。
きっと、一度抱いてしまえば、時を待たず従順になっていくだろう。
従順になって失うものよりも、得られる多幸感の方が多いからだ。
(後は、誘惑禁止条例か……)
妖女は男性を誘えない。
形だけでも性犯罪被害ということにしないと、セックスすること自体が違法になる。
シーアとの関係は、雇い主という立場を利用した『強要』という体裁をとった。
ユスティネとニナを抱くためには、何かそういう工夫をしなければならない。
例えば、住まいを焼失した彼女らの弱みに漬け込んで……
「…………」
赤信号で停車すると同時に、藤次は気付いた。
(なにを、考えてるんだ? 俺は……)
自分はいま、
もちろん体裁上のものでしかない。彼女たちが本気で拒否するなら手を引く。
それでも、女性を辱めるための計画を真剣に立てている自分がいる。これは事実だ。
(いつの間に、そんな男に……)
性犯罪者になんて、自分がなるはずないと思っていた。
いくら欲情したからといって、女性を脅したり、乱暴したりするはずないと。
仮に相手が望んでいても、法や立場が許さないなら、しっかり断れる男なのだと。
不埒者を蔑視しており、自分は欲求に駆られても踏みとどまれるのだと、確信していた。
なのに――いざ『襲ってもいい状況、犯していい女』を目の前にぶら下げられたら、これだ。
「はは……」
合法か違法か、相手が望んでいるか否かは、問題ではない。
自分が、倫理に背くことに熱心であるという事実が問題だ。
人並みに倫理観があると思っていた自分は、実は紳士でも聖人でもなかったのだ。
シーアと関係を持ったあの日から、自分はとっくに、不徳な猿になっていたのかもしれない。
(だったら……今更か……)
胸の中に残っていた躊躇いが、いま消えた。
開き直ったとも言えるし、腹を括れたとも言える。
車は間もなく自宅マンションに着く。
家に帰れば、自分をたぶらかす、可愛い妖女たちが待っている――
○
「「「お帰りなさいませ」」」
玄関の扉を開くと、シーア・ユスティネ・ニナという三人の褐色メイドが、丁寧なお辞儀で迎えてくれた。
先日まではシーア一人で、それでも感無量だったというのに……まるで貴族になった気分だ。
「ただいま。三人とも、日中に困ったことはなかったか?」
胸の奥から湧き出そうになった邪念を押し殺し、三人に尋ねる。
「はい、私の身体はもちろん、食事も喉を通っております」
シーアが喜ばしそうに微笑んで、藤次から鞄を受け取る。
妊婦はつわりで吐いたり、味覚が変化したりして食事に苦労する。
そんな状態のシーアを家に残していくのは、毎朝の心残りだった。
「私どもも、何も問題ありません。あるのは西条様の厚意への感謝だけですわ」
続いてユスティネが、藤次から上着を受け取る。
今朝のフェラチオもあって、顔を合わせると気恥ずかしい。
ユスティネも同じなのか、表情や声音に妙な艶っぽさを感じてしまう。
「ニナちゃんは問題なかったか?」
「はい。勤め先からそれほど遠くなかったので……それと、呼び捨てでお願いします」
ユスティネとは対照的に、あまり目を合わせてくれない。
しかしその態度も、改めて見ると、思春期の男の子が年頃の女性の前で照れるのにも似ている。
自惚れかもしれないが、異性として意識されているのだろう。
なにはともあれ、三人とも日中に問題は生じなかったようだ。
「旦那様、お飲み物はコーヒーでよろしいですか?」
「西条様、郵便物が届いておりましたが、お持ちいたしますか?」
居間のソファーで寛いでいると、シーアとユスティネが、どこか競うように世話を焼いてくる。
シーアはいつものこととして、ユスティネはどころか、自分の存在をアピールしているようにも見えた。
「……ユスティネ? 旦那様のお世話は私の仕事よ?」
「シーアは妊婦さんだもの、無理はさせられないわ♡」
笑顔で見つめ合うその視線も、どこか張り合うようである。
ニナはそこに加わらず、夕飯の支度を始めていた。せめてもの家賃代わりだと言って、積極的にシーアの仕事を手伝っている。
「飲み物は何か冷たいものを。郵便物は持ってきてくれ」
「「かしこまりました」」
命じると、シーアとユスティネがお辞儀して離れていく。
藤次はその片方、シーアの手を握って引き留めた。
「だ、旦那様?」
まさかここで身体を求めるつもりかという顔をされるが、流石にそんな要件ではない。
耳を貸すように手振りすると、シーアがエルフ耳をこちらに寄せてきた。
「……今夜は、ユスティネを部屋に呼びたい」
「っ!」
シーアが目を見開く。
藤次は注意深く、その反応を窺った。
シーア以外の女性を抱きたいと、他でもないシーアに伝えたのだ。
背徳感を伴う動機が胸を打つ。まるで危険な火遊びをしているかのよう。
そんな藤次に向けて、シーアは――
「はい」
いつも通りの、可愛らしい笑顔で。
しかし瞳の色は、どこか魔性を感じる妖女の色で。
まるで我が事のように、嬉しそうに笑っていた。
「今夜、部屋に向かわせます」
好色な主人の命令に対応するメイド長のように、シーアは頷くのだった。
ほんの少し、自分のことを忘れないでほしいと訴えるように、藤次の手を握って。
そんなシーアに軽いキスをして、安心させる。
「…………」
そんな二人を、キッチンで聞いていたニナが、耳まで赤くなりながら横目で見ていた。
○
夜――シーアは藤次の部屋ではなく、あてがわれた自室で休む。
これまで毎夜毎晩のように勤めていた夜伽を、今夜はしない。
代わりに寝室へ訪れたのは、ユスティネだった。
「西条様……お待たせしました……」
「おお……」
扉を開いて入室したユスティネは、艶やかなネグリジェに身を包んでいた。
薄手の生地が透けて、下着がはっきりと視認できた。
外国人女優のような長身と豊満さが、常夜灯の薄明かりに浮かび上がっている。
「とてもよく似合っている」
「あ、ありがとうございます……♡」
心から嬉しそうに、そして安心したように、ユスティネは微笑んだ。
藤次が無言で手を伸ばすと、意味を理解して藤次に近付き、ベッドの縁に膝を乗せる。
「嫌じゃなかったかい?」
「嫌だなんてっ。いえ、その……西条様には、多大なご恩がありますから……」
妖女は誘惑できない。
だからユスティネは「抱かれたい」という主旨の言葉を直前で呑み込み、言外の肯定に留めた。
藤次もそうした、『強要』という体裁を作るために言葉を選ぶ。
「君たちを助けたかったのは本当だよ? でも……俺も悪い大人だからね。
こんな可愛い子と同じ家に暮らしていては、どうしてもそそられてしまう」
「はぅ……♡」
ユスティネの手首を引くと、彼女の肢体が胸の中に倒れ込んでくる。
「妊娠したシーアに無理はさせられなくてね。ここしばらく、欲求不満なんだ。分かるね?」
「はい……西条様も、男の方、ですもの……♡」
緊張に強張っているユスティネの背を撫でると、彼女は肩の力を抜いて、藤次の胸にしなだれかかる。
「とりわけ、君は魅力的すぎる。男を狂わせる身体をしている」
「そんな……私のような
恐る恐る顔を上げたユスティネは、目を潤ませ、唇を震わせていた。
怯えている様子は、一切ない。
湯気が立ちそうなほど熱い吐息は、発情した妖女の色香で染められていた。
「君だって子供じゃないんだ。何もされずに寝泊まりできるなんて、思ってないだろう?」
「っ♡ もちろんで、ございます……自分の立場は、よく、理解しておりますから……♡」
脅しの言葉を連ねるほど、ユスティネは目に見えて興奮していた。
誘惑禁止条例を前提とした『脅迫』はラブコール、犯されることでしかセックスできない妖女にとって、甘美な口説き文句となる。
「誰にも言わないと、約束できるかい?」
「あっ♡ はい……決して、誰にも……」
背中を撫でる手が腰からヒップに近付くと、ユスティネの身体が震える。
「多少は乱暴にされても、我慢できるかい?」
「っっっ♡ はい……私のような妖女に、お気遣いは、無用ですから……っ♡」
人間より頑丈で性感帯が深い妖女にとって、男の粗忽さは快楽へ繋がる『愛情』だ。
だから、自分を抱きたいという気持ちが行きすぎている男性は、喜んで受け止める。
それが女の誇り、受け入れてあげられるのは自分だけなのだと、脳内麻薬を分泌させるのだ。
「いい子だ、ユスティネ」
「……どうか、ユネとお呼びください」
ユスティネは藤次の首後ろに腕を回して、近付いてくる唇を受け入れた。
「んむっ♡ ちゅぷっ、れるっ♡ ぢゅるるっ♡」
藤次の舌がユスティネの口を犯すようなキス――それは最初だけだった。
数秒後には、ユスティネの方から吸い込むような、貪り合うような接吻に変わっていた。
(この子、なんて……これが、男に抱かれたことのない女のキスかよ……っ!)
淫乱――今朝のフェラチオの時点で分かってはいたが、彼女もやはり妖女だった。
餌を与えられた動物のように、男の身体へ食いついてくる。
「ふあっ♡ あんっ♡」
無自覚に乳房に触れると、甘い声を上げながらも、舌を絡め合うことを止めない。
「んっ♡ んんっ♡ ちゅっ♡ ふぁふ♡ ぢゅるっ♡」
唇を甘噛みされ、親指で乳首をくすぐられる度に、ぴくんっと身体を震わせる。
(こんなに、貪欲で、敏感で、大人の身体をして……っ)
シーアよりも肉感的な抱き心地に、否応なく興奮が高まっていく。
気がつけばユスティネの身体をベッドに倒し、仰向けにして覆い被さっていた。
「はぁっ♡ はぁっ♡ あ、西条様……私、逃げませんから……お、落ち着いて……っ♡」
ネグリジェを破くような勢いで胸元を開かせ、黒いブラをめくり上げる。
ブラの端に引っ掛かっていた爆乳が、ふるんっと躍動しながら、上から下へと踊り出た。
本能のまま片方を掴み、もう片方の乳首へと吸い付く。
「ふあぁぁぁっ♡」
じゅるるっ、と音を立てて吸うと、ユスティネは喉を見せながら悶えた。
蕾を舌先で転がし、右手で柔肉を揉み回すと、腹の下でユスティネの腰が左右によじれる。
「あっ♡ わた、しっ♡ ああぅっ♡ 吸われて、りゅっ♡ あぁぁ♡ 殿方にぃ♡ 胸をっ♡ こんなっ、こんなにぃ♡ 求め、られてっ♡ ああぁぁっ♡ 西条様ぁ♡ どうか、そのまま」
「藤次だ」
「ひぁぅぅぅっ♡」
命じるように言いながら、ツンと尖った乳首を軽く抓ってやる。
軽い絶頂を声にしながら、ユスティネは恍惚とした笑みを浮かべた。
「藤次、様ぁ♡」
快感を受け入れ、服従した女の顔だった。
「ははっ、まったく、こんなに簡単にメスの顔をしてっ!」
藤次は凶悪な笑みを浮かべながら、右手をユスティネの下腹部に。
胸元からネグリジェの下に腕を侵入させ、臍の下から下着の中に指を入れると、濡れそぼった花園が指を包む。
「きゃうっ♡ 藤次様っ、そこっ♡ そこはぁ♡」
「君も、妖女なんだな……っ!」
軽く割れ目を撫でる程度だというのに、中指があっさりと内部に受け入れられる。
陰唇が指の腹に吸い付き、ざらついた膣内が物欲しそうに締め付けてきた。
指先を曲げて膣壁を撫でてやると、ユスティネの全身が面白いほど敏感に震える。
「慣れているな? 本当に男を知らないのか?」
「知り、ませんっ♡ 器具、でしか……っ♡
こんな、風に、触れていただくのはぁ♡ 藤次様が、初めてですっ♡」
妖女にはよくある、成長過程で処女膜を失い、指やディルドで自己開発している淫乱乙女だ。
「なら、これを入れても大丈夫だな?」
藤次が逸物を取り出すと、目線を下げて見つけたユスティナが息を呑む。
口を半開きにして目を剥く顔は、お淑やかな彼女とは思えない間抜け面だ。
「はいっ♡ 受け入れられますっ♡ どうか、シーアと同じように、してくださいっ♡」
ユスティネは自ら足を左右に開き、荒い呼吸に胸を揺らしながら、藤次に身体を明け渡す。
瞳孔がハートマークになり、口端からはヨダレが垂れそうだ。
早く犯してほしいと言わんばかりの淫らさに、生唾を飲む。
「なら、遠慮はしないぞ!」
藤次は腰を沈め、息子の先端部をユスティネの渓谷に触れさせる。
「はい♡ 藤次様の、お好きなように――んぁぁっ♡」
遠慮しないとは言ったが、その実ゆっくりと、ユスティネの膣内に侵入していく。
「あぁぁっ♡ 入って、くるぅっ♡ 男の、方がっ♡ 私の、中にぃ♡」
初めて受け入れる実物のペニスに、ユスティネは歓喜の震えを見せる。
「お、奥にっ♡ まだっ、奥にっ♡ あっ、あっ、あっ♡」
腹の中を拡張されながら迫ってくる肉棒に、ユスティネは大きく口を開け、目を見開いた。
「どうだ、初めての男は……っ!」
「すごいっ♡ こんなっ♡ 私の、身体っ、変わってく――あああぁぁぁっ♡」
ぴたりと、先端部が降りていた子宮に接触すると、ユスティネは嬌声を上げた。
ペニスから子宮に電流でも通じたように、彼女の全身に何かが駆け抜けていく。
「はひっ♡ ふあぁぁっ♡ これっ♡ あっあっあっ♡」
「イったのか。入れられただけで、奥でイったんだな?」
がくっ、がくん! と、ただ挿入されただけで、ユスティネは震撼していた。
「ああ、私いま、女に、女になってる♡ 藤次様ので、いま初めて、女になってるんですっ♡」
ユスティネは両頬を押さえ、自分でも信じがたいというような幸福感を顔に出す。
蜜壺は生まれ変わったように絡み付き、両足は無自覚に藤次の腰を掻き抱いていた。
男を知らなかった身体が、逸物を差し込まれた途端、然るべき機能を初めて起動させたように。
「これは、本当に大丈夫そうだな……」
軽く気圧されながらも、藤次は腰を動かし始めた。
処女に対するものではなく、シーアと同じくらいのペースで。
「くぁぁぁっ♡ 動いて、りゅっ♡ あああぁっ♡ 気持ちいいっ♡ 藤次様っ、わたし気持ちいいですっ♡ あなたのそれでっ、気持ちよくなれてますっ♡」
「ああ、ユネの中も気持ちいいぞっ」
驚きと歓喜が入り交じったような顔で、ユスティネは藤次にしがみつく。
「嬉しいっ♡ 私、藤次様に、ご奉仕できてるっ♡ 女としてっ、お役に立って――あああぁぁぁっ♡」
何度か腰を前後させただけで、ユスティネの膣内が絶頂の震えを起こした。
「またイったのか? イったなら言うんだ。声も我慢しなくていい」
「イって、ましゅっ♡ 藤次様にっ、イかせて、もらって――ああ、私、こんな身に余ることっ♡
藤次様のっ、大事なもので、気持ちよくしていただいてるなんてっ♡」
快感が強いせいか、同じセックスでも妖女では『してもらっている』という感覚になるようだ。
そんなに喜んでもらえると、男冥利に尽きるというもの。
「だったら、慣らし運転はもう充分だなっ」
藤次はユスティネの横に手をつき、膝の位置を整えると、腰を縦回転させるように抽送する。
「ひぁうっ♡」
下から上に引っ掛けるような肉棒の動きに、ユスティネの腰が激しく跳ねた。
たった一度の動きでそれだというのに、藤次の腰は加速する。
ユスティネは藤次にしがみついたまま、振り落とされまいとするかのように脚を絡めて固定した。
「はげっ、しいっ♡ こんな、こんなにっ♡ あっあっあっ♡ 気持ちいいなんてぇっ♡ ああイクまたイってますっ♡ 藤次様ぁっ♡ これっ♡ 素晴らしすぎてっ♡ んあぁぁぁっ♡」
「まだだ、妖女の快感はそんなものじゃないぞっ!」
藤次はシーアとのセックスで知っている。
まだ弱点を探っている段階でしかない。
本物のセックスによる快感を初めて知ったユスティネが驚いているだけだ。
「君の弱いところは、ここだろう!?」
藤次は見出した角度に固定して、ユスティネの弱点に向けてのピストンを開始した。
「ひうっ♡」
ずん! と一突きしただけで、ユスティネは目を見開く。
そこから、同じところを連打すると――
「んあああぁぁぁぁぁっっっ♡ だめぇぇぇっ♡ イってりゅっ♡ あああっ♡ 何度もっ、すぐにぃっ♡ はぅぅぅっ♡ イってましゅっ♡ ずっと、ずっとぉっ♡ こんなっ、こんなことっ♡ 信じられ、ないっ♡ あぎゅぁぁぁぁぁっ♡♡♡」
察するに、人生で初めて味わうのだろう連続絶頂。
突かれる度にイってしまうような状態に陥り、ユスティネは藤次の背中に爪を立てる。
見る影もなく歪んだ顔で、ケダモノめいた声を寝室に木霊させている。
「藤次様っ♡ お待ち、くださいっ♡ ひゃふっ♡ わたひっ♡ どうかしちゃうっ♡ あああぁぁぁっ♡ こんな、のっ♡ 続いたらぁっ♡ おっおっぉぉぉ♡ 溶けちゃうっ♡ からだじゅうっ、とけちゃうのぉっ♡」
オーガズムの連続で、身体が砕け散りそうな錯覚を覚えているのだろう。
手心を懇願するユスティナに、藤次は腰を緩めようとして――
「――駄目だ、待たない」
いつの間にか心を支配していた嗜虐心に、そう言わされた。
上半身を起こし、ユスティネの乳房を両手で掴みながら、ひたすら腰を振る。
「ひぁぁぁぅぁぁぁっ♡ とうじしゃまっ♡ どうかっ♡ あああぁぁぁイクイクイキましゅっ♡ いまおっぱい駄目でしゅっ♡ おっぱいまで変になりましゅっ♡」
嫌がる彼女を更なる快感に導く。
ユスティネは首を左右に振って、半狂乱になっていた。
(おい、止めろ……この子は、今日が初めてなんだぞ……)
自分の中の倫理的な部分が、自分を説得しようとしている。
たとえ快感だとしても、慣れていない女性にそれを叩き付けるのは、暴力に類する。
それを拒む女性を無理矢理に責め立てるのは、本当にレイプ同然だ。
「ああぁぁだめだめっ♡ 分かんなくなりゅっ♡ イってりゅのかぁ♡ ないのかぁ♡ もう分かんなくなりましゅっ♡ ゆるしてっ♡ ゆるしてぇっ♡」
もはや意識を混濁させているユスティネに、腰が止まらない。
見たい、もっとその淫らな姿を見たい。
自分とのセックスがいかに気持ちいいのかを骨の髄まで叩き込み、二度と手放せないようにしてやりたい。
そういう、男の抑えられない情欲から、抜け出せない。
(こんなに、泣いて、怖がってるのに……っ)
シーアであれば受け入れてくれた。
妊娠前は、こうでなければ物足りないというくらいに。
しかし、不慣れなユスティネには過大なセックスだ。
だからこれは暴力で、いけないことで、止めなければならないのに――
「受け止めてくれるんだろうっ!? ユネ! もうすぐだっ! もうすぐ俺もイクからな!」
止まらない。
ここ最近、シーアと全力のセックスができなかったせいか、自分の中の狼が止まらない。
ユスティネの肉壺はシーアと比べて柔らかく、初々しい反応でありながら優しく包み込んでくれる。
どこか母性すら感じるそれに甘えるように、藤次は汗を散らしながら前後運動を加速させた。
「イクっ♡ イってくれりゅっ♡ 藤次様っ♡ きてぇっ♡ わたひの、なかでぇっ♡ あっあっあっあああぁぁぁっ♡」
藤次が射精を予告すると、ユスティネの反応が変わった。
男性がいま自分の膣内で達しようとしていると知り、妖女の本能が加熱している。
連続絶頂の負担にも適応してきたらしく、身体を駆け巡る悦楽の強さも、もう怖れていない。
「いい子だっ! 流石は妖女だなっ! もっとイってくれ! 俺がイクまでっ、ずっと!」
「はいぃいっ♡ イってましゅっ♡ ああ嬉しいっ♡ イクの嬉しくなってりゅっ♡ はひぃいいいっ♡ きてっ♡ きてぇっ♡ あひあぁあっっっ♡」
虚ろな瞳で歓喜を歌いながら、ユスティネは藤次に合わせて腰を振る。
それと同時に、柔らかかった膣内が打って変わって肉棒を締め上げた。
「っぐ!」
不意打ち気味に、解き放たれる射精感。
「んあぁあぁあぁぁぁっっ♡♡♡」
子宮口に密着した亀頭から、熱い精液が溢れ出す。
それを全身で感じ取ったユスティネは、絶頂に絶頂を重ねていた。
がくがくがくっ! と、ベッドを揺らすほど痙攣して、子宮内を埋め尽くす熱を味わっている。
「は、あ……っ♡ あひっ♡ ふぁぁぁ♡」
意識を失ったらしい。
淫らな呼気だけを口にして、虚空を眺めている。
その顔は陶然としており、涙と涎に塗れていながら、明らかに幸福そうだった。
○
「じゅぷっ♡ ちゅるるっ♡ ぷはっ♡ はむっ♡」
数分後――ユスティネは嬉々として、藤次にパイズリフェラを繰り広げていた。
「藤次様ぁ♡ 私の胸、いかがでしょうか? ご満足、いただけてますでしょうか?」
両手で掴んだ爆乳を上下させ、肉棒を愛撫しながら、媚びた顔で見上げてくる。
「ああ、シーアよりも大きくて、柔らかくて、気持ちいいぞ」
「まあ♡ 嬉しい……こんな乳房でよければ、いくらでも……」
シーアと比べて褒められたことが大きかったのか、ユスティネは妖しげな笑みを浮かべた。
「さっきは乱暴にして済まなかったね」
「いいえ♡ ちょっと怖かったですけど、最初だけでした……あんなに……」
金髪を撫でてやると、ユスティネは乳圧をかけながら、酔い痴れたように続ける。
「あんなに気持ちいいなんて♡ 人生が変わっちゃうくらい、気持ちいいなんて思わなくて♡
女に生まれて、よかったです♡ もっと早くお会いして、犯してもらえばよかったのに……♡」
どうやらユスティネは、完全に男の味を覚えてしまったようだ。
事の最中は怯えていたが、過ぎ去ってみればこの様子……
妖女とは、もしかすると女というものは、誰しもこういうものなのだろうか。
「っ」
藤次の胸に、昏い悦びが生じる。
一人の女を、自分の肉棒で虜にしたという、優越感に似たなにかだ。
「なら、今後も愉しませてもらおうかな」
「ふぁっ♡」
指先で乳首を軽く愛撫してやると、ユスティネが嬉々として震えた。
「はい♡ ご存分に♡ お手々が寂しいときは、私の乳房をお使いくださいませ♡」
「こら、それだと誘惑になっちゃうだろ?」
「あぅ……申し訳ございません」
誘惑禁止条例を思い出させると、ユスティネはしょんぼりする。
なまじ快感を知ってしまったために、誘惑できないということの重みが増したのだろう。
だから、藤次の方から、こう言うのだ――
「俺が命令したときに、断らなければいい」
「んむっ♡ ぢゅぶっ♡」
頭を押して肉棒を咥えさせる。
言われるまでもなく頭を前後させたのは、フェラチオを兼ねた『頷き』だ。
いつでも犯していい――と、態度で訴えている。
そんなユスティネが、シーアには申し訳ないが、可愛らしく思えた。
「これからも、可愛がってやるからな?」
ユスティネの口淫が、よりいっそう激しくなる。
少し経つと、寝室には再び、ユスティネの喘ぎ声が鳴り響くのだった。
○
二人の睦み合う声は、他の部屋にも届いていた。
「ふぅ……♡ あっ♡ ……んっ♡」
一人、ベッドで身悶えるニナのところにも。
(してる……ユネが、あの男と、セックスしてる……っ)
ニナとユスティネが借りている部屋には、いまニナだけしかいない。
きっと、今日は朝までニナの個室だろう。
それをいいことに――ニナの両手は、寝間着の中で乳首と陰核に触れていた。
耳に届くユスティネの喘ぎ声が、たとえそれが無くても伝わってくる男女の燃え上がる気配が、そうさせていた。
(脅されて、襲われて、犯されてるんだ……っ)
本当にそうなら部屋に乗り込むべきだが、そうではないことは分かっている。
今日、藤次が帰ってくる前、シーアの口からユスティネに『指名』が伝えられたとき……ユスティネの顔を見ていたから。
顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうに頷いていた。
(次は……私……?)
あの男は『家賃』として身体を要求したのだ。
同じ居候である自分にだって、同じ脅迫をしてくるだろう。
(男の、手が……ここに……っ♡)
そう思うと、生まれたときからの付き合いである自分の手指が、急に物足りなく思えた。
エルフの耳が拾うユスティネの声は、ニナの身体を完全に発情させている。
くちゅくちゅくちゅっ! と、指で秘所を掻き回す音が、自分でも驚くほど大きい。
(なら、ない……っ! 私は……あんな風に、なったりしない……っ!)
頭の中でそう念じながらも、口から零れる声は高くなっていく。
蕩けた顔には、理性と欲情の葛藤が浮かんでいた。
(例え、抱かれたって……媚びたりなんか、しないんだから……っ!)
抱かれること自体を拒もうとしていないことに、ニナは気付いていなかった。
ご一読いただきありがとうございました。
更新がちょっと遅れたのもそうですが、長くなっていて申し訳ございません。
後編はニナ回なので、どうしても中編にまとめざるをえず。
後編はもうちょっとコンパクトになるよう頑張ってみます。
※毎度のごとく、誤字報告をいただきありがとうございます。
なんか凄い量の訂正をいただき、頭が下がるばかりです。