※この作品はR-18です。

誘惑禁止条例 ※性犯罪被害は条例違反にあたらない   作:大中小太郎

58 / 73
僕を誘惑した罪でブタになる(後編)

 

 

 

クラスカーストを決める要素は、必ずしも『長所』ではない。

もちろん、あればあるほどいいのだが……例えばこのクラスの頂点は、きっとミースだ。

 

彼女は可愛らしい子だが、際立った長所はすぐに思い浮かばない。

特別に成績優秀でもないし、妖女としては平凡な庶民だ。部活などで多大な功績も挙げていない。

 

ただ――愛されている。

 

ひとえに性格のよさによるものか、彼女はクラスメイトのほぼ全員に、好かれている。

彼女の言葉ひとつで空気が和らぎ、彼女が難色を示すと皆がそれに配慮する。

まるで小さな子供を主役として可愛がる親戚一同みたいだ。

 

きっとそれも、クラスカーストを左右する大きな要素なのだろう。

容姿端麗で頭脳明晰で家が太くて文武両道でも、教室の全員に嫌われていたらピエロだ。

 

言うなれば、マスコット。

他にカースト上位にランクインするような生徒のいない教室の、微笑ましい主役だった。

 

「……豚?」

 

そんな彼女が――自分の豚になると言った。

むしろそう呼ばれるのは僕の方じゃない? と、隼樹は首を傾げる。

鼻腔を持ち上げるように反れた鼻筋が悪印象な、不細工な顔。そして肥満体。

豚なんて呼び方、小学生の頃から百回以上はされてきたと自負している。

豚の真似をする方法は知っていても、人を豚にする方法はさっぱり分からない。

 

「あ、ごめん。人間界じゃ意味が通じないよね。

 えっと……妖魔界で言う豚っていうのは、生き物じゃなくて……」

 

ミースは目隠しをしているというのに、隼樹の表情を読み取ったように説明する。

 

「その資格もないのに男性を誘惑してエッチしちゃった女のことを、そう呼ぶの」

 

妖魔界では男性が希少だという。

それに乱暴狼藉をしてしまった女への非難も、相当に重いだろう。

 

「つまり、性犯罪者の異名? 警察が強姦を『弓』って呼ぶみたいな?」

「ううん、そういうレベルじゃなくて……犯罪奴隷って言えばいいのかな?

 本当は『奴隷よりも悪い』って意味があって、それこそ人権が無いような扱いなの」

 

妖魔界の一部地域には奴隷制度があるという。

しかしその待遇については明確な決まりがあり、過酷な労働はさせられても虐待はできない。

その奴隷よりも更に下の待遇を指す言葉で、人間界の言語に適切なものが無いので、俗称の『豚』を用いたのだろう。

 

「昔の妖魔界だと、男性に乱暴しちゃった女性は、夫婦や恋人でもない限り死刑なの」

「死刑……」

「うん。でないと被害者の出身地が武装蜂起するまであるから、昔は本当にそうだったの」

 

男性という生殖資源を狙って戦を起こすこともある世界では、相応のケジメが必要らしい。

 

「そういうとき、命だけは見逃してもらうために、被害者やその親族の奴隷になって償うの。

 扱いは奴隷よりも一等下で、死ぬようなこと以外はどんな待遇でも文句は言えないの。

 裁判で決まった期間ずっと、被害者やその家族の恨みが晴れるまで……

 そうすることで、加害者側の一族や領地は、被害者側の信頼を取り戻すの」

 

ある領地の女性が、別の領地から来た男性を逆レイプした。

妖魔界では『逆』ではないが、とにかくそれに男性側の領地が大激怒する。

その場合、加害者の首を刎ねるよりも効果的になりうるのが、加害者を被害者側に裁かせること。

 

「まあ……分からなくもない、けど……」

 

心情的には、同意できる部分もある。

例えば男性が女性をレイプして、裁判で妙に納得の行かない判決が下るよりは、被害者側が一番納得できる『刑務』をさせた方がいいのではないかと。

被害者女性の父親が気が済むまで殴って、親族が徹底的に奴隷扱いして、もう被害者とその縁者の心に憎しみが残ってないという状態になったとき、加害者は初めて加害者ではなくなるのだろう。

 

「あくまで、昔の風習だけど……私が望月くんに許してもらう方法……他に、無くて……」

「いや、でも……」

「その代わり、私のしたこと、内緒にしてほしいの。誘惑レイプしたなんて知られたら」

 

戸惑う隼樹の言葉に被せるように、ミースは懇願する。

彼女が何を恐れているかは、隼樹にもなんとなく分かった。

 

まず、法的な裁きが下される。

ミースの家族は子供が性犯罪者になったと聞いて卒倒し、ミースを徹底的に責め、家庭に生涯の禍根を残す。

きっと隼樹の家族に土下座しに来て、隼樹の家族もさぞや戸惑い、苦悩することだろう。

 

ましてや隼樹とミースはクラスメイトだ。

これが教室に知れたら? とんでもない空気になる。

正義感のある妖女子はミースを蛇蝎の如く嫌うだろう。

男性の性被害が認知されている世代の男子だって、彼女をゴミのように見るかもしれない。

被害者の自分は急激に腫れ物になって、恐る恐る声を掛けられたり、掛けられなかったりする。

 

(ああ……それは、嫌だな)

 

あの教室が、そんな凍てついた環境になるのは、嫌だった。

隼樹はあの教室で少し浮いているくらいだが、居心地がよかった。

イジメを受けていた前の学校と比べれば雲泥。

治安のいい教室で、ミースを中心に和気藹々としている空気を感じるのが、心地よかったのだ。

 

性犯罪の被害者が泣き寝入りする心理が、少し分かった気がした。

 

「望月くん……もしかして、『豚なんていいから許してあげよう』とか、思ってる?」

「え? あ、いや……」

 

いま言おうとしていたことだった。

 

「それは、駄目だよ……望月くん、言ってたよね? 家族や世間に死んで詫びようかと、って」

「まあ、言ったね」

 

そのときは自分が加害者だと信じきっていた。

誘惑禁止条例ができる以前は、そういう被害男性も多かったと聞く。

 

「私、望月くんをそこまで追い詰めちゃったんだよ? 絶対、簡単に許しちゃだめだよ……

 それに……私もなの……本気で、死んで償おうかと思ったんだよ?」

 

ミースの震える声を聞いて、隼樹は息を呑む。

 

「今日一日、いつ望月くんに糾弾されるんだろうって、びくびくしてたんだよ?

 私の学校生命が次の瞬間に終わるかもしれないって、まともな人生今日が最後かもって」

 

ミースは体を抱いて、目隠しに覆われていない口元を引きつらせていた。

隼樹がそうであったように、ミースも今日は自分の愚かさと醜さを呪う一日だったのだ。

 

「だから……ちゃんと、償わせて? こんな罪悪感、あと一日だって抱えてられない……っ」

 

震える彼女の気持ちが、分かってしまった。

なまじ極悪人ではないから、自分のしでかした罪に耐えられないのだ。

 

だから『豚』などという、妖魔界の古い風習を持ち出して、自分を罰しようとしているのだろう。

そうすることで、自分は誠意を尽くし、被害者自身から許され、綺麗な人間に戻れるのだ。

 

「分かった」

 

隼樹は考えた末、そう答えた。

 

「豚……とかいう風習の感覚は、まだよく分からないけど。

 ミースさんの誠意は伝わった。それできっぱり手打ちにしよう」

「っ、本当!?」

 

目隠しと首輪を付けたまま、喜びの表情を浮かべるミース。

少しおかしみを覚えながら、隼樹は続ける。

 

「ただ、今日のところは……まだ」

「あ、うん、そうだよねっ。昨日の今日だもんね……っ」

 

これ以上は具体的な話ができそうもない。

隼樹がそう伝えると、ミースも理解して、目隠しを外す。

くりくりとした大きな瞳が戻ってきて、隼樹は何となく目を逸らす。

 

(ちょっとくらい、何かしてからでも……いやいやっ、なに考えてるんだ僕は!)

 

残念に思っている不埒な自分を、首を振って追い払う。

 

「じゃあ、学校では内緒で……明日の放課後からで、いいかな?」

「えっと、時間帯は妥当だけど……豚って、結局なにをするつもりなの?」

「んー、とりあえず普通の奴隷みたいに家事とか? あと、望月くんのしたいことならなんでも」

 

さらりと口にされた「なんでも」という言葉に、隼樹の方が困る。

誘惑があったとはいえ、自分を乱暴した男にそういうことを言うのはどうなんだ、と。

そんな隼樹の胸中を察してか、玄関で靴を履いたミースは、少し頬を染めて振り返る。

 

「……ちゃんと、私をブタさんにしてね?」

 

妙に蟲惑的な微笑を残して、彼女は去っていった。

 

(――首輪、外し忘れてるみたいだったけど、いいのかな?)

 

玄関の扉が閉じられた後、隼樹はそんなことを考えるのだった。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

同時刻――

 

「イーリス? どうかした?」

「あの、龍斗さん……来る途中、首輪を付けた子とすれ違って……」

「それは……お洒落ではない方の?」

「はい。たぶん、本格的な方の……それに、うちの高校の制服で……」

「そ、そうか。近所に、そういうご趣味のカップルがいるのかもな」

「…………」

「…………」

「ちょっと、通販のカタログでも見てみる?」

「龍斗さんが、そう仰るなら……♡」

 

同じアパートに居る同級生のカップルに思わぬ刺激を与えたことを、隼樹とミースは知らない。

 

 

 

 

 

 

ミースが帰った後、隼樹はネットの質問掲示板を開く。

 

【聞きにくい内容なんですが、助けてください――】

 

若者に人気のお悩み相談サイトだ。

主に恋愛やセックスに関するもので、以前はいじめ問題について相談していた。

時間帯もちょうどよかったのか、ミースとのことをざっくり説明すると、回答が集まってくる。

 

【『ブタ』にしてくださいって、それは誘ってるんじゃないか?】

【俺もそう思う。要は「私のこと好きにして」って意味だろ】

 

ミースの誘惑レイプについては明かさなかったが、回答者たちも詮索しなかった。

回答を見ると、察せられているような雰囲気がある。

 

【質問者、妖女と付き合った経験は?】

【――ありません。以前に住んでたところは人間女子ばかりでした】

【それじゃあ仕方ないかもな】

【誘惑禁止条例ってあるだろ? 妖女はあれを回避しなきゃいけないんだ】

【だから自分から誘うんじゃなく、相手の男が襲ってくるよう仕向けるんだよ】

【逆に言えば、露骨な襲ってムーブは誘ってるってことだ】

【――それって、こっちが性犯罪者にならないんですか?】

【相手が訴えたらなるかもしれないけど、話を聞くに可能性は低いだろ】

【妖女は金より種だからな。警察に突き出したらどっちも手に入らない】

【というか、ガードを緩めて迫らせるなんて、旧時代から人間女子もしてたサインだろ】

【――ちょっと信じられません。僕はかなり不細工ですし、デブですし、コミュ障です】

【自分の劣等感で相手の気持ちを決めちゃダメだろ】

【少なくとも妖女にとって、恋愛やセックスの対象外になるほどNGじゃないな】

【そこが人間女子とは違うところだな。ちなみに妖女のNGは種無しとセックスレスだ】

 

聞いてみた限り、ミースは自分を誘っているらしい……と、隼樹は理解する。

ミースから誘惑レイプしてきたのだから、好意や性欲を向けられているとは察していた。

しかし、自分の人生に女性から好意があるとは想像しておらず、心の向け方が分からない。

 

【――妖女って、本当にそういう風に誘うんですか? 世の中のカップルもそうなんですか?】

 

襲ってのサインだ何だと聞いても、いざそうして勘違いだったら取り返しが付かない。

ミースの行動が本当にそうなのか知るために、隼樹は回答者たちにサンプルを求めた。

 

【俺は同居してるんだけど、露骨に甘えてくるのがサインになってるな。膝に乗ってくるとか】

【僕も相手とは同居してるけど、夜に部屋の扉が半開きなら夜這いしてって意味になってる】

【俺の彼女は食事に媚薬とか盛ってくるぞ? あとは精が付く妖魔界料理を出してくるとか】

【目の前で露骨に寝たフリしてくるぞ】

【服装とかも分かりやすいよ。明らかに露出が多いとか】

 

回答者たちには相手がいるらしく、自然な体験談が続々と寄せられる。

 

【――もし、それが勘違いだったりしたときは?】

【妖女に限ってはその思考がよくない。マジで手を出さないのが失礼だから】

【昔のセクハラ親父かよってくらいスケベでいいんだよ。人間女子には厳禁だけど】

【妖女が居ない環境で育ったのは本当らしいな。マインドが完全に人女向けだ】

【いまどき珍しいぞ。夫婦のコンドーム使用率が世界最低で少子高齢化してた時代のメンタルだ】

 

自分は遅れていたんだろうか……と、隼樹は焦りのようなものを感じた。

 

【これは、本腰を入れて助言してあげた方がよさそうだな】

 

誰かが言うと、回答者たちはあらん限りの経験則を教えてくれた。

どこの誰かはさっぱり分からないが……妖女に苦労させられている男性は多いようだった。

 

 

 

 

 

 

「お、お待たせ、望月くん……♡」

 

放課後、今日もミースが隼樹の部屋に来た。

呼び鈴に応じて扉を開けると、彼女は昨日と同じ目隠しと首輪を付けている。

 

「ミースさん、まさかそれ着けたまま来たの?」

「そんなわけないよぉ。呼び鈴を鳴らしてすぐだよ? だ、だからその……入ってもいいかな? 人に、見られると……」

 

たしかに困るので、隼樹は中に入れるよう体をどかす。

ミースは目隠ししているにも関わらす、すっと玄関に入ると、手元に困る様子もなく革靴を脱ぐ。

 

「……それ、見えてるの?」

「うん。透かしが入ってるから。これはね、見えなくするためじゃなくて、『誘惑』をさせなくするためのものなの」

 

なるほど……と、隼樹は目隠しの意味を理解した。

ブタとは妖魔界の女性性犯罪者に対する蔑称でもある。

その措置として『誘惑』を禁じるのは道理であり、目を通じて行う『誘惑』を阻止するのが目隠しというわけだ。

 

「だから、望月くんのお世話もちゃんと出来るよ? ふふ♡ 材料もってきたから、ご飯作ってあげるね」

 

ミースは夕飯を作ってくれるらしい。

まるで彼氏の世話を焼きたがる彼女のようだ。

 

「この食材……見覚えがないものばかりだけど……」

「見たことない? 妖魔界の食材で、最近はスーパーでも見かけるよ?」

 

隼樹の故郷ではそういったものの需要も乏しかった。

 

「噂だけなら。その……健康食材が多いって」

 

いわゆる精が付くものが多いと仄聞する。

 

「なら、妖魔界料理に初挑戦だね。大丈夫、すっごく『元気』になるから♡

 汚れちゃうから、上着脱ぐね」

 

そう言って、ミースはブレザーを脱ぎ、ネクタイも外してしまう。

窮屈なのかシャツのボタンも第二まで外し、小柄に反して豊満な胸元を開いた。

 

「み、ミースさん?」

「え? ああごめん。ほら、私のこれ、おっきいでしょ? 実は制服も窮屈で……」

 

こっちの方が動きやすいからそうしているのだと、あくまでミースはそう言った。

しかし、一人暮らしの男の部屋を訪ねて、上着とネクタイだけとはいえおもむろに脱ぎ、あまつさえ胸の大きさに直言する――

 

【露骨な襲ってムーブは誘ってるってことだ】

【あとは精が付く妖魔界料理を出してくるとか】

【服装とかも分かりやすいよ。明らかに露出が多いとか】

 

ネットで相談した内容が思い出される。

 

(さ、誘われてる、のか? 僕が? いや、そんなまさか。こんな不細工を……)

 

心に深く巣食っている劣等感が、隼樹の思考を曇らせる。

しかし、そんな積年の劣等感を忘れさせるくらい、ミースの魅力は強烈だった。

 

「というか望月くん? 私のこと、そんなお客様扱いしちゃ駄目なんだよ?」

 

ミースはエプロンを装着して魅力を倍増させながら、少し口を尖らせる。

 

「私は……『ブタ』だから、ね? もっとぞんざいに扱わなきゃ」

「ぞんざいにって言われても……どんな風に?」

「性犯罪で服役している囚人を扱う看守みたいに」

「見たことないから分からないよ」

 

囚人や看守の経験もないし、動画を探したこともない。

ミースはなんとしても自分を冷遇させたいらしい。

そうして被害者自身からペナルティを受けることが『ブタ』の趣旨だからろう。

 

「難しく考えず、軽い気持ちで虐待すればいいんだよ?」

「軽い気持ちで急に人を虐待できるほどサイコじゃないよ……」

「んー、じゃあ、望月くんの知ってる悪い人を真似するとか?」

 

悪い人の真似……と言われて、隼樹は脳内のサンプルを探す。

この場合、アニメやドラマの悪役という意味ではないだろう。

もっとリアルに、人を『ブタ』として扱い、虐待状態に置く腐った人間……

前にいた学校でいじめられた記憶が、嫌でも蘇ってきた。

 

「――おせぇよブタ」

「はうっ!?」

 

急にドスの利いた声を発した隼樹に、ミースが震え上がる。

震えてはいるが、頬に赤みが差しており、驚きと興奮が同時に見えていた。

 

「なにもたもたしてんだよ。人を待たせてんだぞ? 飯くらいとっとと持ってこいよ」

「はっ、はいっ。ごめんなさいっ! すぐ、準備します……♡」

 

低い声音で淡々とプレッシャーを掛ける隼樹に、ミースが呼吸を荒くし始めた。

 

「……こんな感じ、かな?」

「プロかと思ったよ!?」

 

どんなプロだというのか。SMクラブの人か。

いわゆる『パシリ』をさせられていた経験が、思わぬところで役に立ってしまった。

 

「……やっぱり、これは止めよう」

「ええっ!? 理想的だったのにっ!」

 

ミースは残念がるが、隼樹は気が進まない。

自分が最も忌み嫌う人間の態度を、ミースに向けることが、どうにも躊躇われた。

 

「えっと、ね? 望月くんのそういう、優しいところ……素敵だと、思うよ?

 でも、でもね? 私には……ダメ」

 

キッチンからこちらを振り返ってもじもじするミースは、蟲惑的だった。

教室より短くされている制服のスカートが身じろぎで揺れて、肉付きのいい太股が強調される。

自分が、隼樹の視界にどう写り、男が自分の何処を見ているのかを把握している女の動きだ。

 

「忘れたの? 私……望月くんを辱めた『ブタ』なんだよ?

 刑務所に入れられるようなことをした、正真正銘の悪人なんだよ?

 だから……望月くんだけには、優しくなんかされちゃいけないの。

 いまだけは……それが、正しいんだよ?」

 

隼樹の視線をヒップに感じながら、ミースは軽く息を乱しながら、己の罪を強調する。

囚人と看守――再現性は無いが、その立場にすると看守役は囚人役を虐待し始めるという。

自分が『ブタ』という囚人であることを、隼樹の意識に刷り込んでいく。

 

「私を助けると思って……ね?」

 

尻がしゃべっているわけでもあるまいに、隼樹の視線はミースのスカートに突き刺さる。

その奥にある下着、更に奥にある女性器こそが、彼女の本体であるかのように。

下半身と脳が直結している妖女であれば、それは妥当な扱いなのではないかとすら思えた。

 

「……っ……っ……っ!」

 

気がつけば、ミースの背後に立っていた。

妙な音が聞こえると思ったら、興奮した自分の荒い鼻息だった。

なんだこれは……まるでエロ漫画に出てくる発情したキモデブ男そのものじゃないか。

 

「ふふ♡ そう……ちゃんと、私に……圧を、かけて……」

 

ミースも、背後から浴びせられる男の獣欲を感じているのだろう。

少し怯えたような、されど明確に興奮した声で、ビニール袋から食材を取り出していく。

 

「ほ、本当に……いいん、だよね?」

 

隼樹は恐る恐る、ミースの両肩に指先を置いた。

それだけで、ミースの体がびくんっと震える。

やっぱり自分なんかに触れられるのは嫌なんだ――と、手を離そうとする。

 

「うん……♡」

 

ミースの手が、そんな隼樹の手に重ねられ、自分の体に引き止めた。

目隠しされた顔が振り返り、首輪の金具を鳴らしながら、彼女は言う。

ボタンを開けられたシャツの胸元からブラを覗かせ、白くなりそうなほど熱い吐息を零しながら、

 

「私にだけは……弱気なこと、言わないで?」

 

ようやく――隼樹は限界を迎えた。

長年に渡って培われてきた倫理観と、積年の劣等感が、ミースという妖女に壊された。

解き放たれるのは、その奥に隠されていた男性的な獣欲。

旧時代の性倫理に抑圧され、女に見下されてきて歪んでしまったそれが、檻と鎖を砕かれた。

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「ひゃぁんっ♡」

 

背後から無造作に胸を鷲づかみにされて、ミースは嬌声を上げる。

 

「望月くんっ♡ んっ♡ さ、触ってもいいけど♡ ふあんっ♡ 落ち、着い、てぇ……っ♡」

 

隼樹の手つきは荒々しい。

女性に対する気遣いもへったくれもない、ただ触りたいから触る、貪欲な男の手付きだ。

 

「やぁっ♡ ああぁっ♡ お、お胸っ♡ す、好きなの、分かるけどっ♡ あひゅうっ♡ ボタン、千切れちゃうからぁ……♡」

 

エプロンとシャツ越しに胸をもみくちゃにされたミースは、隼樹の腕の中で身もだえする。

小柄巨乳を強引に詰め込んだシャツの特注ボタンが、いまにも飛びそうだ。

 

「あぁ?」

「ひうっ」

 

不機嫌そうな声を発した隼樹に、ミースは震え上がる。

 

「ブタがなに言ってんの?」

「ふ、ぁぁぁ♡」

 

先ほどは中断した、高圧的で理不尽な物言い。

隼樹がそれを再開すると、ミースの背筋がぞくぞくと甘い震えを走らせる。

 

「服が大事なら自分で脱げよ。ほら、脱げ。脱げよっ!」

「はうっ♡ はふっ♡ ごめん、なさいっ♡ ブタの、くせに♡ 生意気、言って♡ 脱ぐ、からぁ♡ 怒ら、ない、でぇ♡」

 

体ごと持ち上げるように胸を揉みあげられ、ミースは爪先立ちになりながら、隼樹に謝る。

目隠しで半ば隠された顔には、明らかに被虐的な喜悦が表れていた。

 

「……こういう感じでいい?」

「っ♡ うん♡ ブタには、それで、いいの……♡」

 

隼樹に耳元で問われたミースは、隼樹の物言いを肯定するように体重を預け、エプロンを外す。

紐が緩んだ瞬間、隼樹は邪魔だとばかりにエプロンを引き抜いて捨てる。

まるでクリスマスプレゼントの包装を破く子供のように、待ちきれない様子で女の衣服を剥ぐ。

 

「すご、い……♡ 男らしい♡」

 

ミースはそんな隼樹に肯定の言葉を投げかけ、更に煽った。

隼樹の指が、シャツのボタンをぶちぶちと乱暴に外していく様を、恍惚の表情で見下ろしている。

やがて露になった白いブラと谷間を、再び隼樹の両手が掴み取った。

 

「ひぃんっ♡ あふ、んっ♡ あぅんっ♡」

 

上下に円を描くように揉みしだかれ、ミースから淫らなメス声がひっきりなしに溢れていく。

 

「ああ、柔らけぇ。なんだよこれ、ブラ越しなのに生乳みたいだっ」

「あぅぅ♡ いいのっ♡ 思ったこと、エッチなこと♡ 言って、いいからぁ♡」

 

相手の興奮を言葉でも感じたいのか、ミースは隼樹の言葉遣いにさえ理性を外しに掛かる。

まるで、隼樹のことを、自分好みの男に成長させようとしているかのようだ。

 

「乳首勃ってるよね? これ。気持ちいいの? ねえほら、ここだよここっ」

「あぁぁぁっ♡ そこ、ですっ♡ 乳首、ですっ♡ 指っ♡ 男の子のっ、強い指ぃ♡」

 

ブラ越しにコリコリと乳首をこねくり回され、ミースは喉を逸らして快感に震えた。

 

「ああもう、なんだよこのブラ邪魔だよっ! 外せよ、ホック外せよっ!」

「はふっ♡ 待って、て♡ すぐ、に……ひぁうっ♡」

 

ミースは胸の腕で暴れる隼樹の手を宥めるように撫でながら、片手を背に回してホックを外した。

しゅるり――と繊細な音を立てて、肩紐を外されたブラが、シャツと一緒に腹まで降りていく。

 

「見せろっ、こっち向け!」

「あっ♡」

 

ミースの華奢な肩を掴んで、強引に振り向かせる。

目隠しをして乳房を露出した少女が、台所を背にして振り返り、その動きだけで小柄に見合わぬ豊乳がぷるんと揺れた。

 

(エロい……エロい、エロいエロいエロい!)

 

童貞――ではないが、経験不足な男の少年をバカにするには十分な光景だった。

ミースの小柄に合わせて屈みながら、背中を抱き寄せて乳房を掴み、もう片方に吸い付く。

 

「はぁあぁんっ♡ くぅんっ♡♡♡」

 

体ごと掴み取られて乳房を貪られるような行為に、ミースは悲鳴と嬌声を混ぜ合わせる。

しかし隼樹を拒むことはなく、後頭部をぎゅっと抱き寄せた。

 

「すごい♡ 望月くん、えっちな顔、してるぅ♡」

 

夢中で乳首に吸い付く隼樹を、ミースは愛しげに、かつ興奮の目で見下ろす。

到底――いい絵面ではないはずだ。

お世辞にも美形とは言えない隼樹が、ミースのような美少女の乳房を貪る。

蛙のような面立ちの、分厚い唇が、ミースの芸術的な乳房を食む姿は、女性美を汚すかのようだ。

隼樹にも、自分で分かる。本当は彼女だって、いい気分では――

 

「これ、これだよぉ♡ 男の子は、こういう顔してるときが、一番エッチで可愛いの♡」

 

しかし、ミースの口から零れる声が、隼樹を驚かせた。

 

「私に、夢中になってくれてる♡ 私のことしか考えてなくて、襲っちゃうくらい求めてるっ♡

 女の子が、一番見たい顔っ♡ してくれてるぅ♡ いいよ? もっと、おっぱい愉しんでっ♡」

 

夢中になっているのは、ミースの方だった。

目隠し越しでも、彼女の瞳が恍惚感に輝いているのが分かる。

 

「あ、でも……」

 

ぴたりと、隼樹は手を止めた。

童貞同然の自分は、何か冷めることをしてしまったのかと不安になるが――

 

「お台所じゃ……危ない、から……」

 

ミースは視線を動かして、気恥ずかしそうにベッドを見ていた。

 

「っ!」

「きゃっ♡」

 

隼樹はミースを抱え上げる。

お姫様抱っこではなく、子供を抱えるような縦の抱っこだ。

小柄なミースはあまりにも軽くて、運動部でもない隼樹でも用意に持ち上げられた。

 

「はぅぅ♡ すごい、力、強い♡」

 

そんな隼樹に、また『男』を感じたミースは、隼樹の頭を抱いて撫でる。

ベッドに到達した隼樹は、放り投げるようなことをせず、背中を支えてベッドに寝かせた。

 

「あぅ♡ 優しい……これ、ずるい♡ 私、子供になっちゃったみたい♡

 あんなに荒々しかったのに、急に優しくなるの、ずるいよぉ♡」

 

女心の何かを刺激されたのか、ミースの声音にはトキメキすら聞き取れた。

 

「でも……だめ♡」

 

紳士的な態度を褒めるように、されど別の方向に煽るように、目隠しをしたミースの両手が隼樹の頬に触れる。

 

「私が『ブタ』だってこと、忘れないで♡」

「っ!」

 

思い出したように、隼樹はミースに覆いかぶさる。

首筋や鎖骨にキスを繰り返し、今度は胸ではなくスカートの中へ手を伸ばしていく。

 

「あぅん♡」

 

ミースは、スカートの中に忍び込む隼樹の掌を拒まない。

それどころか、自分から足を開くように太ももを動かし、隼樹の手を迎え入れる。

隼樹の指が触れたショーツは、びっしょりと濡れていた。

 

「ひぅっ♡ あっ、あぅん♡ ま、待って♡ そこ、はっ♡ ゆっくり――んあああんっ♡」

 

初めて触れる秘所、その形を確かめるように愛撫していると、クリトリスに触れられたミースの体が跳ねる。

過敏な反応に気をよくした隼樹は、乏しい知識を総動員して、割れ目を中指の腹で擦り始めた。

 

「あぁっ♡ うそっ、すごい♡ だめだめぇっ♡ 本当に、待ってっ♡ そこっ、いまっ♡」

 

ミースは隼樹の愛撫に、面白いように反応する。

 

「だめだよ? ブタが逆らっちゃ」

「っっっ♡」

 

優しく囁きながら、手付きは激しく。

ミースは目隠しをされたまま、首を左右に振って快感に悶えた。

 

「んひぃぃっ♡ あぅんっ♡ あっ、あぅっ♡ くひぃぃっ♡ ひぅっ、いひぃぃっ♡♡♡」

 

クリトリスを探り当て、下着の上で指先をくりくりと回すと、隼樹の下でミースの体が痙攣する。

 

「あぁぁっ♡ お願いっ♡ ちょっとだけっ、待っ――ああ来ちゃうっ♡ 来ちゃうぅぅぅっ♡」

 

彼女が絶頂を迎えようとしていることに、隼樹でも気付いた。

女性が、自分の手で、達しようとしている――そう理解した隼樹は、どこかそれを勲章のように感じて、追い求める。

 

「だめお願いっ♡ イクっ♡ もうっ、イ――あああああぁぁぁぁぁっっっっっ♡♡♡」

 

ミースが、絶頂した。

大きく仰け反るように体を反らし、びくびくと痙攣する。

目隠しをされた顔からは、普段の清楚な彼女とは思えない淫靡な恍惚感が滲み出ている。

 

「あっ♡ あああぁぁぁっ♡ んああっあっあっあっ♡」

 

だらしなく開いた口から漏れるのは、大げさなくらいの嬌声。

演技なのだろうかと思ったが、経験不足な隼樹でも分かるくらい、本気の絶頂だ。

 

(長く、ないか……?)

 

ちょっと心配になるくらいガクガクと痙攣し続けたミースが、絶頂から五秒以上も経ってやっと止まった。

 

「はぁっ♡ はぁっ♡ はぁぁぁっ♡」

 

大きく口を開いて喘いでいたミースは、意識すら失いかけていたように見えた。

いくら妖女が感じやすいといっても、ちょっとした絶頂でここまでなるだろうか?

 

「あ……ごめん、ね? 驚いた、よね……?」

 

そんな隼樹に気付いてか、ミースが顔を覆う。

目隠しをしていてなお、顔を見られることを恥じるように。

 

「その……私……体質で……イクの、すごく、長いの……」

「――――」

 

心から恥ずかしそうに吐露された言葉を聴いて、隼樹の中で何かが変わった。

 

「長い、って?」

「一度、イっちゃうと……何秒か、イキ続けちゃって……その、オナニーとかするときも……声とか、すごくなっちゃって……顔も、涙とか鼻水とか出ちゃうの……知ってる、でしょ?」

 

言わせた隼樹を恨むように問われる。

ああ、そうだ――最初に『誘惑』されて、彼女を犯した日だ。

あのときの彼女の乱れようは凄まじく、顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。

てっきり犯されたからだと思っていたが、あれは絶頂がもたらした不随意のものだったのか。

 

「だ、だから……きっと、引いちゃうから……後ろ、後ろ向かせてぇ……」

 

ミースは顔を覆って赤面しながら懇願する。

本気で、セックス時に起きる自分の『癖』を、恥じている様子だ。

 

「いいよ。どんなことになっても」

「……え?」

 

隼樹の口から、自然と言葉が出た。

 

「顔のことは、僕が言えたことじゃないし。それに……」

 

抱きしめる。

性欲ではなく、ただそうしたいから、彼女を肯定したいから抱きしめた。

 

「ちょっと、安心した……ミースさんにも、そういうの、あるんだ」

 

――彼女が、()()()()()()()()()()()()()()、ほっとしたのだ。

隼樹とは別の形で、自分を嫌って、恥じていたのだ。

同じ人間なのだ、コンプレックスがあるのだ、嫌われるという不安があるのだ。

 

「なんか、急に……好きになっちゃった……」

「――っっっ♡♡♡」

 

その言葉だけで、ミースの体がまた痙攣した。

 

「あ、嫌だった?」

「ちがっ、ちがうのっ♡ 望月くんがいきなり、そんなこと言うからぁ♡」

 

耳まで真っ赤になったミースは、顔を隠すように隼樹に抱きつく。

さっきまで年上のような包容力だったのに、いまは逆だった。

 

「あ、あの……本当に、いいなら……これ、防音魔法の」

 

ミースがポケットから取り出したのは、窓などに貼り付けて使う防音の魔法具だ。

 

「ああ、そっか。ちょっと待ってて」

 

最近のセックスは、コンドームなどよりこっちの方がマナーだったりする。

ご近所迷惑にならないように、そして妖女が遠慮なく声を上げられるように。

一緒に渡された説明書に従い、窓の鍵をしっかり閉じて、左右の一枚ずつに吸盤で貼り付ける。

 

「できた、よ……?」

 

魔石が光っているのを確認して振り返ると――ミースが裸になっていた。

 

「……『脱げ』って、言ったよね?」

 

言った。これからすることを考えれば妥当なことだ。

放心したのは、一糸まとわぬ姿になっていた彼女が、綺麗だったから。

真っ白な肌、小柄なのに豊満で肉付きがいい肢体、映える黒髪に、目隠しと首輪。

清廉な少女を捕らえてしまったような、これから彼女を蹂躙するのだと実感させられる光景だ。

 

「あの、望月くん……ブタなのに、生意気だけど……いくつか、お願いがあるの」

「あ、ああ、なに?」

 

見蕩れていた隼樹は、今更のように胸を隠しているミースをこれまた色っぽく感じつつ、お願いを促す。

 

「隼樹くんって、呼んでいい?」

 

胸を打ちぬかれる気分だった。

しかし体は後ろではなく前へ、ミースの方へと吸い込まれるように進んでいく。

 

「いいよ」

「っ、うん♡ 隼樹、くん」

 

欲情した男がゆっくり近付いてくる様に、ミースも興奮しているのが見て取れた。

 

「他には?」

「その……電気、消して?」

「ああ、そうだよね」

 

外はもう日が落ちて宵の口、明かりを消せば適度な薄暗がりになる。

絶頂の長さで品が無くなるらしい彼女には、ちょうどいい暗さだ。

 

「消したよ? 他には、ある?」

 

確認する隼樹の口調は、「まだ待たせるのか」と催促するようでもあった。

ミースに倣って上着を脱ぎ捨てると、彼女は興奮の表情で見蕩れながら、

 

「うん、ありがと……最後に、これ……一番の、お願い……♡」

 

乱雑に服を脱いでいく隼樹から目を離さず、荒い呼吸と共に、彼女は最後の願いを口にする。

 

「途中で、止めないで……?」

 

意味が分からなかった隼樹は、トランクスを脱ぐ手を止めた。

 

「私……絶対、すごい声で喘いで、たくさんイっちゃって……心配になると、思うけど……」

 

自分がこれからどんな醜態を晒すのか分かっているのだろう、ミースはそんなことを言い出す。

 

「大丈夫、だから♡ 妖女の体、頑丈だから……♡ 最後まで、止めないで……」

 

胸を隠していた腕を外し、華奢に見合わぬ豊乳を見せるミース。

目隠しをされた両目は、トランクスに作られたテントに見入っていた。

 

「最初のとき、みたいに……私が、どんなことになっても……ちゃんと、犯してね♡」

「っ!」

 

――頭の中から、言語が消えた。

目の前にいる、犯してもいいメス。

犯されることを望んでいる美少女。

ノーリスクで味わえる女体、手加減しなくていい肉欲の行き先。

 

「ひゃうっ♡」

 

飢えた狼が肉に食いつくように、隼樹はミースを押し倒した。

 

「はっ、はっ、はぁ……っ!」

 

思うまま体にキスを降らせながら、両足を開かせる。

一切の抵抗をしないミースの秘所は、先ほどの絶頂で愛液に濡れており、湯気が立つのではないかというほど妖女のフェロモンを撒き散らしていた。

 

「はぅ♡ そのお顔♡ あのとき、私を襲ってくれたときのお顔♡」

 

興奮を隠さないミースの声。

『誘惑』したときのことを言っているのだろう。

いまは『誘惑』を受けていないのに、隼樹の精神状態はあのときと大差ない。

ただ、いま取り出したこの怒張を、目の前の穴にぶち込みたい――

 

「あぁ♡ おっきい♡ やっぱりすごい♡ 覚えてる♡ 私を女にしてくれた、それ♡」

 

隼樹の剛直を見たミースは、脈打つ肉の棍棒に息を荒くする。

口だけでなく膣口も呼吸しているかのように、ひくひくと動いていた。

 

「ディルドでも、いっぱいイキすぎて困るくらいだったのに……あんなに気持ちいいの、初めてだったの♡ 怖いくらいイかされまくったときのことぉ♡ 忘れられないの♡ 体が、いまでもっ、隼樹くんに犯されたときの快感♡ 覚えちゃってるのぉ♡」

 

先端で割れ目を擦られたミースは、その度にぴくっと震えながら、最初の体験を振り返る。

自分がいかに淫らであるかを教えることで、隼樹の躊躇を消そうとしているように見えた。

 

「無理なの♡ あの体験、もう出来ないなんて無理だったの♡ ブタになってもいい♡ 隼樹くんにまた犯してもらえるなら♡ 人権なんて要らないっ♡ オナホでも、肉奴隷でも、性処理係でもなんでもいいっ♡ もう一度、そのすっごいおちんぽで、私のこと――ぶち犯して♡ びゅーって射精してくださいっ♡」

 

誘惑なんかよりも、よっぽど強力な、おねだり。

呪文を唱えられたかのように、隼樹の中のオスが荒れ狂う。

 

「こ、のぉ!」

 

じゅぷんっ! と、驚くほど簡単に、隼樹の肉棒はミースに受け入れられた。

 

「んぉぉぉぉぉっ♡」

 

それだけで達したミースが背筋を逸らし、ガクガクと痙攣する。

 

(ああ、イった! 本当にイキやがった! 入れただけでっ!)

 

まるでエロ漫画の世界から抜け出してきたような、セックスに都合のいい妖女の肉体。

肉棒に絡みついてくる襞の群は、まるで餌の塊に食らいつく魚群のよう。

 

「おひゅっ♡ おくぅっ♡ とどい、てっ♡ あああぁぁぁ♡」

 

ぐぐっと、挿入した後にもう一押しすると、最初から降りていた子宮が持ち上げられて、ミースが再び痙攣する。

 

(またイってる。最初のが終わってないのに、追加でイってる!)

 

肉棒に感じる膣の痙攣から、ミースの絶頂は手に取るように分かる。

挿入されて、根元まで飲み込むまでの過程で、二度もイった。二重に達している。

 

「あぁぁまだくるぅぅっ♡ 覆いかぶさってくるのぉ♡ 深くなってるのぉぉぉっ♡」

 

挿入した後、ミースの体に覆いかぶさると、微妙な角度と深さの変化によってまた膣が痙攣する。

 

(まだ、イってるんだ。イってる間に追加で刺激すると、イクの長くなるんだ……)

 

男でも分かる。こんな淫らな体に、力任せにピストンしたら、恥も外聞も正気も無くなる。

下手をすると、最初から最後までずっとイキ続けるんじゃないだろうか?

 

(ああ、そういえば聞いたことがある――哺乳類の中で最も長い絶頂を味わうのは――)

 

隼樹はゆっくりと腰を引き、これから突きこむことをミースに予感させながら、

 

「本当に、ブタなんだね?」

 

思うが侭に腰を打ちつけ始めた。

 

「ひぎゅぅぅぅっ♡」

 

本当にブタみたいな声を上げながら、ミースは隼樹の下でまた痙攣する。

 

「イってるよねっ? これイってるんだよねっ!? このまま続けていいんだよねっ!?」

「いいっ♡ いいのぉ♡ 隼樹くんのぉっ♡ おっきいっ♡ 気持ちいいっ♡」

 

隼樹が突けば膣が締められて奥に誘い、ピストンのために引けば名残惜しそうに絡んでくる。

 

「もっとして♡ 優しいっ、まだ優しいよぉ♡ ブタなのっ♡ ちゃんとブタに相応しいやりかたっ、していいのぉ♡」

 

ミースは隼樹の背を抱き、足をがっちりと腰に絡めて、言葉と体で求めてきた。

 

「こうかっ? こうかっ!?」

 

隼樹の腰つきは荒々しさを増し、ベッドが軋む音を立て始める。

ミースの膣は伸縮性が強く、どれだけ激しく動いても肉棒に柔軟に追従し、粘膜全体で快感を伝えてくる。

 

「はぎゅぅぅっ♡ また、イってりゅっ♡ 最初からっ♡ 何度もっ♡ あああぁぁぁ来るっまたおっきいの来るぅぅぅっ♡♡♡」

 

ガクガクガクッと痙攣するミース。

細かい絶頂の一つ一つが長く続き、それが重なって和音となり、大きな絶頂をもたらしている。

 

(すごい、ミースさん、突けば突くほど感じてイってくれる!)

 

打てば響くというか、すればするほど快感として受け取ってくれる、難易度の低い女体だった。

 

「もっとだろ!? 止めずに犯して欲しいんだろっ!?」

「んおっ♡ おおおぉぉぉっ♡ ひぎゅうっ♡ ひぃぁぁぁあああっ♡」

 

小柄を引き絞るように抱きしめて、やや上から腰を打ちつけると、ミースは蛇のように体をくねらせて喘ぎ続けた。

 

「止めないよっ!? 俺がイくまでずっと、好きにするからねっ!? ほらっ、ブタさん返事できないの!?」

「ひぎゅぅぅぅっ♡ イっでる、イっでるのぉぉぉ♡」

「まだイってるのっ!? こんなっ、滅茶苦茶にっ、かき回されてるだけなのに!」

 

どこかで聞きかじった知識で腰を「の」の字に動かすと、ミースが喉を逸らしてまた痙攣。

 

「んぎぃぃっ♡ イっでるっ♡ ずっと、イっでるぅ♡ イぐの終わる前にすぐイっちゃう♡ 増えてるっ♡ どんどんイクの増えてるのぉ♡ んおっ♡ おほっ♡ ほぉぉおおお゛っ♡」

 

隼樹の体の下で、陸に打ち上げられた魚のようビクビクと跳ねるミース。

 

(信じられない……俺、セックスで虜にしてる。ミースさんみたいな子を、俺が……っ)

 

慣れない運動で息を切らせた隼樹は、呼吸を整えながら感動する。

いや、感動なんていう綺麗な感情じゃない。

満たされる征服欲、オスの優越感、女を快感で打ちのめしている昏い悦び。

 

知らぬ間に、隼樹の口角が、邪悪なくらいの笑みを刻んでいた。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

(体位、変えたら、どうなるんだ?)

 

興味を覚えた隼樹は、抱きしめていたミースの体を持ち上げながら、対面座位の姿勢となる。

 

「はぎゅわうぅっ♡ 下ぁっ♡ 下からぁっ♡ 突き上げっ♡ んああぉぉぉ♡ 知らな、いっ♡ これまだ知らな、ぁぁぁあああっ♡」

「気持ちいい? 僕も、すごくいいよっ!」

「んあああっ♡ 変わって、るっ♡ イキかたぁ♡ 変わってりゅっ♡ ああぁぁ来るぅ♡ 大きいのがくるぅぅ♡」

 

ミースは隼樹の体にしがみつきながら、新たな毛色の快感に喘ぎ乱れた。

 

「あああぁぁぁっっっ♡ んあぁぁああぁぁぁっ♡」

 

やがて言葉を紡ぐ余裕も無くなり、まるで赤子のように、抱きかかえられながら喘ぎ続ける。

 

「ふぎゅっ♡ ぐしゅっ♡ うううぅぅぅっ♡ ぐすっ♡ んんんんんっ♡」

 

口からは涎がだらだらと零れ、ときおり鼻すら啜っている。

 

「ああ、泣かないで。そんな声されたら、僕っ、本当に、犯してるみたいじゃないかっ」

「ひぎゅううっ♡ 違うのぉ♡ 気持ちいいのイってりゅの好きなのぉぉぉっ♡ 止めないでっ♡ もっとすごくっ♡ していいからぁ♡」

 

途中で止めないでと前置きしたのはこのせいだろう。

長くイってしまう体質が作り出す、絶頂に重なる絶頂とまた絶頂。

その快楽地獄めいたものの先にある、更なる快楽の境地を、彼女は求めている。

それを得るためには、目の前の男にずっと腰を振ってもらうしかないのだろう。

 

「ああ、ならっ、犯してやるっ! 泣いてるブタさん犯してやるよっ!」

 

隼樹は腰を突き上げ、片手で尻肉を掴み、もう片方の手で乳房を掴み上げて先端をしゃぶる。

 

「んぁぉおおおおっっ♡」

 

ぷしゅ、ぶしゅう、と潮を吹きながら絶頂するミース。

膣内だけで絶頂続きなのに、尻と乳房からも追加されて、快感のハーモニーが生まれたようだ。

 

「ほらっ、ブタちゃんも腰を動かしてっ! もっと気持ちよくなるんだっ!」

「はいぃっ♡ いぎゅぅぅぅっ♡ ふぎゅぅぅぅぅぅっ♡ いぐぅぅぅっっっ♡」

 

激しく腰を振り出し、歯を食いしばりながらイキ狂うミース。

隼樹はそんな彼女を持ち上げ、ベッドの上で膝立ちになり、駅弁の体位に持ち込んでいく。

 

「ああぁぁまたイってるっ♡ また新しいイクのくりゅっ♡ ああぁぁしゅごいしゅごいっあなたしゅごいのぉぉぉ♡」

「またかっ? 本当にブタだなっ! イクことしか能のないエロブタじゃないかっ!」

 

自分の口が、勝手にひどいことを口走っていた。

 

「ひぎゅぅぅぅっ♡ それぇぇぇ♡ それなのっ♡ 言って♡ 言っていいのっ♡ なりゅっ♡ ブタさんになりゅのぉぉぉっ♡」

 

自分の暴言を、彼女は賞賛か何かのように受け取っている。

 

「ははっ、なれよっ。僕のセックスで、喘いでイキまくってっ、頭おバカのブタ女になっちゃえよっ!」

 

嗜虐的な感情で、頭がいっぱいだ。

彼女に煽られたから――理由はそれだけだろうか?

本当は、自分はこういう男だったのではないか。

心のどこかで、自分を見下してきた『女』というものに、思い知らせる瞬間を望んでいたのではないか。

 

「んぉぉぉぉぉっ♡ もっろぉ♡ あぁぁぁぁぁっ♡ 好きぃ♡ おっおっおっおっ♡

 見せ、てぇ♡ あなたのっ♡ すっごく、エッチなとこっ♡ 私だけにっ、見せてぇっ♡」

 

そんな自分の醜い劣情こそが、彼女の望みだった。

いま隼樹が、淫らなミースの姿に魅了されているように。

長イキ体質で下品な顔と声で乱れるている、言わば『醜い姿』を求めているように。

ミースもまた、隼樹の醜い欲望を求めていた。

 

――お互いの醜さを、愛し合っていた。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「こ、のぉ!」

 

隼樹は再びミースをベッドに押し倒し、本能のまま種付けプレスを叩き込む。

 

「んぎいぃぃっ♡ しゅごっ♡ おおおぉぉぉっ♡ おくぅっ♡ おくきてりゅぅぅぅっ♡」

 

ミースの両足を肩に担ぎ上げ、真上から突き刺すように腰を突き下ろす。

 

「お゛っ♡ ん゛お゛お゛っ♡ またいぎゅぅっ♡ イギしゅぎしんじゃうぅぅぅ♡♡♡」

 

その状態でピストンを加速させ、ミースの膣内を徹底的に責め立てる。

――目隠しがズレてしまっていることに、ミースは気付いていなかった。

露になったその顔は……白目と舌を出し、涙と鼻水に塗れた顔でよがり狂う、凄惨なまでのアヘ顔だった。

 

「ああ、イけ! イき狂えっ! 僕もっ、もうすぐっ、出る!」

 

ミースの絶頂に引っ張られるように、隼樹もまた限界を迎えつつあった。

 

「ふぎゅぅぅぅぅぅっ♡ ひぎゅぅぅぅぅぅっ♡」

 

連続絶頂の最中にもそれが聞こえたのか、答える余裕のないミースは、隼樹にしがみついて射精を肯定する。

 

「っぐ、あ! 出るっ!」

 

人生で最も盛大な射精を、ミースの最奥部で解放した。

魂ごと出て行ってしまうのではないかというほどの射精が、隼樹の腰を震わせる。

その熱い白濁液を子宮に注ぎ込まれたミースは、過去一番の大絶頂に打ち震えた。

 

「お゛お゛お゛お゛お゛っ っ っ ♡ ♡ ♡ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ っ っ ♡ ♡ ♡」

 

とてつもなく淫らで悲痛な喘ぎ声だった。

体中をガクガクと震わせ、足をピンと突っ張り、白目と舌をむき出しにしたその顔には、美貌の欠片も残されていない。

それでもその顔は、隼樹を魅了する。

もっと見たくて、彼女の顔から目隠しを外す。

 

「あ゛っ♡ あ゛っ♡ あ゛っ♡ ああ゛っ♡ んお゛っ♡」

 

長続きする絶頂で断続的に声を上げるミースは、目隠しを外されたことにも気付いていない。

 

「まだ、イってるの?」

 

膣内射精を受けてから、もう十秒は経つというのに、まだ吹き飛んだ意識が戻ってこないようだ。

 

「はひゅっ♡ ん゛お゛っ♡ お゛っ♡ ん゛あ゛っ♡」

 

がくんっ! がくんっ! と、何かの発作のように、ときおりミースの体が跳ねる。

 

「可愛い……まだイってくれてる。そんなに喘いで、かわいそうに」

 

隼樹は、いまだ絶頂の海で溺れているミースを抱きしめる。

この、自分だけの可愛いメスブタを、これからずっと食べつくすことができるのだ。

そんな恍惚感を抱きながら、淫らに歪んだミースの顔を、愛しげに見つめ続けるのだった。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

それから――

 

隼樹の学校生活には、多少の変化が現れた。

 

「望月、最近なんか痩せた?」

「え? あ、うん。ちょっとね……」

 

クラスの男子からそう指摘される程度には、体が絞れてきた。

汗を掻く機会が多くなったので、髪も思い切って短髪にした。

最近のバリカンは自分でもやりやすく、長さも調節できて便利だった。

 

「彼女ができたか」

「えっ!? いや、別に……」

「いーや、その変化は確実に色恋だな。彼女じゃないなら片思いか」

「お、なんだ? 恋バナか?」

 

ちらほらと、これまで話さなかったクラスメイトとも話すようになってきた。

特に、隼樹が何かそう努力したわけではない。

ただ、少しだけ『自信』のようなものが付いてきた気はしている。

それは当人が思っている以上に態度に表れて、見る人の印象を変えるものだった。

 

「ミース、男ができたでしょ?」

「ええっ!? ないないっ、そんなんじゃないって!」

「いーや、最近つけてるそのチョーカーは支配欲の表れね、きっと」

「こ、これは……お洒落というか……なんというか……」

 

同じ教室で、ミースが女子から詰問されている。

彼女には彼女で、クラスメイトにそう感じさせる変化があったのだろう。

たしかに、隼樹の気のせいでなければ、少し色っぽくなったように見える。

 

――隼樹とミースの関係は、誰にも明かしていない。

なにせそのための『ブタ』なのだから。

 

ただ、ミースは最近、隼樹の部屋で首輪を装着するとき以外にも、なぜかチョーカーを身に着けるようになった。

時折、意味ありげな視線を送られたりする。

自分が誰のものであるのかという『忠誠心』を、暗に訴えるかのように。

 

(なるべく、怪しまれないようにしてるんだけどな……)

 

『ブタ』の件はともかく、交際していると思われるのは、時間の問題かもしれない。

そうなったときは、ブタではなく恋人にすべきなのかもしれない。

別に構わないか――と、隼樹は思い始めている。

以前の隼樹なら、もっと後ろ向きなことを考えただろう。

 

(ん? メッセージ?)

 

授業が始まる直前、隼樹のスマホにメッセージが届く。

送り主はミース、内容はたった一言――

 

『ぶぅ♡』

 

今日も――という意味なのか、さっきの級友との会話に関わりがあるのか。

 

いずれにせよ、もうしばらくの間は、恋人とは別の関係が続きそうだった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

また長くなってしまいましたが、後編となります。

挿絵を多めに用意したところ、ハーメルンの挿絵機能が落ちていたので、
復帰を待っておりました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。