誘惑禁止条例 ※性犯罪被害は条例違反にあたらない 作:大中小太郎
信じがたいことだが――
目が覚めたら、クラスメイトの美少女が二人、朝
「っ!?」
「ちゅっ♡ あ、隼樹くんおはよー」
「んむっ♡ はぁ……おはようございます♡」
ミースとイサミだった。
いつの間にアパートの部屋へ忍び込んだのか、眠っていた隼樹のタオルケットを外して、寝巻きのジャージから取り出した
「え? ふ、二人とも、なんで……うっ」
二人の手の柔らかさが快感となって入り込み、寝ぼけた頭の覚醒を遅らせた。
「れるっ♡ ごめんねー、勝手に上がりこんじゃって」
「れろっ♡ 一度、してみたかったんです。その、朝勃ちの処理、みたいなののを……」
ミースとイサミはベッドの左右から身を乗り上げ、隼樹の股間で顔をつき合わせている。
制服の上半身は脱ぎ捨てられており、白いシャツと綺麗なブラが、ベッドの上に放られていた。
露出した乳房が逸物を包むように合わせられ、潜望鏡のように顔を出した亀頭に、可憐な唇がキスをし、舌が
「う、わ……すごい……」
隼樹は目にした光景が信じられない。
ロリ巨乳で黒髪ロングのミースと、ボブカットで眼鏡美少女なイサミ。
違ったタイプの妖女たちがいま、自分のペニスを中心に、Wパイズリフェラで奉仕の姿を描き上げている。
「あは♡ 隼樹くん嬉しそう♡ やっぱりしたかったんだぁ、3P」
「ふふっ♡ それとも、二人がかりのパイズリフェラの方ですか? 男のロマンだって言いますものね♡」
ミースとイサミは自分の乳房を両手で持ち上げ、息を合わせて陰茎を
一人につき双丘、二人で四つの柔肉が、自分の剛直を囲んでくれていた。
「ふ、二人とも……こんなこと、しなくても……」
「いいの♡ 私たちが好きでしてるんだから♡ あむっ♡」
ミースが亀頭を口に含むと、カリをくすぐるように舌先が
逸物に対して横からフェラされるのは初めてで、過去に体験したものとは違う快感が新鮮だった。
「むしろ、隼樹くんこそ、朝から襲われちゃってるんですよ? もう♡ 人間の男性ときたら、そういうところが妖女を狂わせるんですから♡ んんっ♡ ぢゅぶぶっ♡♡♡」
今度はイサミが、ミースの息継ぎに合わせて交代、逆側から陰茎を口にする。
ミースが舌を使ったのに対し、イサミは自分の胸に顔を埋めるように深く
(嘘、みたいだ……こんな、綺麗で、可愛い子たちが、僕に……っ)
いまだ自己評価は高くない。
隼樹の目には、二人の献身的な奉仕が、自分には不当な恩恵だと感じてしまう。
そんな隼樹の胸中を読んだように、ミースが流し目を向けてきて、
「もう♡ 隼樹くん、まだ私たちに遠慮してる? ブタさんなんだから、ご主人様に奉仕するなんて当たり前なのに。ぢゅぶっ♡ んむぅぅっ♡」
「ええ、まだ
嬉々として服従の態度を示し、美味しそうに男根をしゃぶる二人の妖女。
唇から喉奥まで性感が豊富な妖女にとっては、熱心な口淫も自らの快感に
パイズリのために乳房を掴む指も、自慰を兼ねているように深く食い込み、互いの額をぶつけながら競うようにペニスを舐めている。
「あっ♡ お汁出てきたぁ♡♡♡ ちゅうっ♡ 美味しっ♡」
「隼樹くん♡ 私のおっぱい、気持ちいい? 物足りなかったら、言ってくださいね♡ 頑張って気持ち良くしますから♡」
ミースが先走り汁に吸い付けば、イサミが胸で剛直を包み込み、しごくように上下へ揺らした。
「気持ちいい、気持ちいいよっ、二人とも」
そう言って、二人の頭に手を伸ばす。
感謝の気持ちを伝えるための、髪に触れる程度の
「んんっ♡」
「あふっ♡」
するとミースとイサミは、隼樹の手首を掴んで頭の上に乗せる。
そして自分の手を重ねて、下へ押し込むように力を加えた。
「っ」
隼樹の手が、自分の逸物へ、彼女らの頭を押し付けるベクトルが生じる。
そのようにしてほしい――という、無言のおねだり。
横目にこちらを見る二人の表情は、軽い寒気がするほど艶美な笑みだった。
「も、もっとだ! もっと深く!」
彼女らに導かれるまま、隼樹は女の頭を掴み、肉棒を根元まで
「んむぅぅぅっ♡♡♡」
先ずはミースから、喉奥まで届く巨根に
それでも奉仕を中断しようとせず、むしろ隼樹が頭を下げる力よりも強く、自ら根元まで吞み込んでいた。
「んんむっ♡ あぶっ♡ おごぉっ♡♡♡」
自発的なイラマチオで、ミースは己の口内を隼樹のペニスで苛めている。
絵面としては、ミースの頭を掴んだ隼樹が強制しているようであるが、実際はミースの頭に乗せた手が上下しているだけだった。
「あぁ……すごい♡ そんな、根元まで、吞み込めるんですね♡」
イサミが、目の前で激しい口淫を繰り広げる親友に、軽い驚きと深い興奮を示す。
「隼樹くん、こういうの、お好きなんですね♡ ずるい、ずるいですよぉ♡ 妖女のお口は、性感帯がいっぱいなんですよ? 男性の逞しいものを頬張らせられたら、どんなに苦しくても、拒めないんですよ?」
こちらを見上げて説くイサミは、口から出た熱い吐息で、眼鏡が曇りそうだった。
表情が語っている――私にも、させて欲しいと。
「なら、次はイサミだっ」
隼樹はミースの頭を引き上げて、イラマチオを中断させる。
「んんんっ♡ ちゅっぱぁ♡♡♡」
ミースの口はそれに抵抗するように肉棒を吸い上げ、鈴口まで舌と唇を残してから、名残惜しそうに口を離した。
「あむぅっ♡♡♡」
入れ替わりで、イサミの口が隼樹の分身にしゃぶりつく。
すると隼樹が頭を押すまでもなく、激しい口淫を繰り広げ始めた。
「んぶっ♡ おぼっ♡ あぶぅっ♡♡♡」
イサミの口は、ミースよりもさらに深くまで逸物を迎え入れる。
「あは♡ イサミちゃんすごぉい♡ でもダメだよ? そんな隼樹くんのお手々を置き去りにして咥え込んだら。ちゃんと無理矢理されてる感じにしないと。ね、聞いてる?」
ミースは唇を舌で湿らせながら、親友が貪欲に肉棒を咥える様を見ていた。
「ほら、隼樹くんも♡ 好き勝手ばっかりさせちゃダメなんだよ? こうやって――」
続いてミースは、隼樹の手に自分の手を重ねるように、両手でイサミの頭部を掴むと。
「頭を掴んで、オナホ扱いしてあげなきゃ♡」
「んんっ♡ おぐぅっ♡」
強引な力で頭を引き落とし、イサミが目を見開くほど深く咥え込ませた。
まるで喉を潰しかねないような行動だったが、やはり妖女の口は性感帯の
「み、ミースさん……っ」
「ふふっ、大丈夫♡ イサミちゃんいますごく感じてるから」
「おごっ!♡♡♡ おぼぉっ♡♡♡」
しゃぶらせている隼樹が心配になるような激しさだったが、ミースはそう保証して、イサミの顔も証明していた。
「自分のタイミングでするよりも、男の人の好きなように、予想できないペースで突かれた方が、ずーっと気持ちいいんだよねぇ♡」
「んむぁっ♡ あぶぅっ♡」
ミースは親友の頭を気まぐれなタイミングで上下させ、イサミもそれに逆らわない。
まるで、隼樹がイサミにしゃぶらせているというより、ミースが隼樹の肉棒を使って親友を辱めているかのよう。
そんなミースの姿に、隼樹はぞっとするほどのエロさを感じた。
隼樹が最初に『ブタ』にしたのはミースだが、まだ自分の知らない
「いいんだよ? もうイサミちゃんも、隼樹くんのブタさんなんだもん♡ ちゃーんと、どっちが飼い主か、体に思い知らせておかないとダメなんだよ? 自分の体が、いまこの人を気持ち良くするのに役立ってるんだーって思うとね? すっごく幸せになっちゃうの♡ 妖女って」
ミースはイサミの頭へ置いた手で体を支えるように身を起こし、隼樹の耳へ
「隼樹くんもぉ、人間の女を扱うときのルールとかマナーなんて、ぜーんぶ忘れちゃって♡ 私たちだけしか居ないときは、世間の目なんて気にしないで♡」
道を踏み外させるような魔性の言葉が、隼樹の目を揺らす。
「漫画に出てくる悪徳貴族みたいに、ヒロインをモノみたいに扱う奴隷商人みたいに、自分の快楽のために――私たちの『豚肉』、
「っっっ!」
隼樹はミースの背を抱くと、強引に体を引っ張って、胸を顔の前まで突き出させる。
「んああんっ♡」
まるでハンバーガーにでも食らい付くように、小柄に見合わぬ巨乳の先端へと吸い付いた。
「あはぁんっ♡ そうっ♡ それぇ♡ 素敵っ♡ おっきな腕でっ、女の体っ、軽々と扱ってるのっ♡ かっこいいっ♡ おっぱい欲しいときはっ、これでいいのっ♡ 私たちのエッチな豚肉っ、いつでも好きに食べていいんだからぁっ♡♡♡」
ミースは隼樹の頭を
「おぶぅっ♡ んぐっ♡ んおっ♡ おおっ♡ おっ、お゙っ、お゙お゙っ♡♡♡」
その間にも、片方の手でイサミのイラマチオを補助し、たまに彼女の意に反して押し込んだり引き上げたりもする。
「んむぅぅっ♡♡♡ おぼぉっ♡ あぐっ♡♡ はあ゙あ゙ぁっ♡♡♡」
男性の
彼女がそれに
「あっ♡ あっあっあっ♡ 隼樹くんっ♡ もっと♡ それもっとぉ♡ ちゅーちゅーしてっ♡ かたっぽ
片腕ではミースを抱き、脇の下を潜った手で片乳の乳首を抓り、手前にある片乳を吸い上げる。
男の指と口で斜め逆方向に引っ張られた双丘を見下ろして、ミースは被捕食者の気分と恍惚感に酔い痴れていた。
(う、わ……出るっ!)
ミースの乳首を口に含んでいたため、伝えることができない。
しかし、何度も肌を重ねてきたミースが気付いた。
「あは♡ もう出ちゃう? いいよっ♡ 朝勃ちおちんぽの熱いミルクっ、イサミちゃんに飲ませてあげてっ♡ 私もっ、おっぱいっ♡ もぉ、イクからぁぁぁっ♡」
イサミへの口内射精と、ミーサの乳イキが、同時に起きた。
「んぶぅっ♡♡♡ おぼぉっ♡♡♡ お゙っ♡ あぶっ♡ はあっ♡」
「あああぁぁぁっ♡ イクのぉぉぉ♡ 長いっ♡ おっぱいイキ長くなって、るぅ……っ♡」
口内と乳で達した妖女の声が、朝から部屋に響いていた。
○
その後、遅刻しそうな時間だと気付いた三人は、時間ギリギリでの登校となった。
「ごめん、昨日の下着の件だけど、家にあったよ」
忘れないように、隼樹は教室でしっかりと明言する。
「なんだよもう、人騒がせなやつめ」
「危うく対策本部が設置されるとこだったじゃねぇか」
「いやぁ、本当にごめん。てっきり鞄に入れたものだとばかり」
男子更衣室下着盗難事件が始まりかけていたクラスメイトたちから呆れられる。
別の席で、イサミが
ミースはくすくすと笑い、メルヴィは何やら頬を染めてこちらを見ている。
真相は異なるが、それはイサミへの『脅迫材料』として、大事に
「そういや、今日の市議会選のニュース見たか?」
「いや、見てねぇけど。年齢的にあんま関係ないし」
「俺もだけど、いまちょっとネットで注目されてるんだよ」
「なんで?」
「酔って騒ぎ起こした市議会議員のおばさんいただろ? そいつが落選するか否かが話題でさ」
「あー、なんか居たな。お前そういうの気にする方だっけ?」
「いや、その市議がさ――」
かくして、教室にはいつもの雑談が戻ってくる。
「ねぇ、ミースちゃん。この動物のこと分かる? すっごく可愛いって話題なのっ」
「んー? あ、知ってる。妖魔界のリスだよ。可愛いよねー」
「リスなんだっ! 魔法少女のマスコットみたいだって、いま日本で熱いんだって」
「あ、分かる。なんで日本の女児向けアニメにうちの小動物がいるんだろーって、みんな首を傾げてたよ」
「あっはは、偶然だよねー。あと、近々日本のお店でも買えるようになるんだって」
「そっかー。美味しいもんね」
「……え?」
「え?」
ミースが近くの人間女子とカルチャーギャップを鮮明にしている。
「じゃあイサミさん、家計簿までちゃんと付けてるんだ?」
「ええ、留学で一人暮らしですし、親にお金の管理を怪しまれないよう記帳して報告も」
「うわ厳しぃー。そういえばいつもお弁当だけど、それもお手製?」
「もちろん。せっかく日本人の血を引いているので、目指せ大和撫子です」
「り、立派すぎて
「年収は?」
「リアリストだっ!」
「冗談です。むしろ今日び年収を問われるのは女性の方です」
「アップデートされた価値感だっ!」
別の席では、イサミがまた別の人間女子と雑談していた。
(あんな可愛い子たちが、僕と……)
改めて教室で見ると信じられない。
ミースは今日も女子グループの中心で楽しそうにお喋りしている。
イサミやメルヴィが次点での中心を作り、他の妖女や人女が輪を形成する。
そんな女子太陽系の中心人物たちのうち二人と、それに比べれば小惑星にも劣るスペースデブリに過ぎない自分が――肉体的な交際をしているなんて。
男なら誰とでもヤるビッチでも倦厭するだろうデブサイクな自分の『ブタ』だなんて。
あの子たちが二人揃って、朝から自分の逸物をしゃぶっていただなんて!
(僕って、実は妖女にはモテる方だったりする?)
などという優越感めいたものを、こっそり抱いたりもしたが――
「で、彼女が最近、自分の親族をお勧めしてくるんだよ」
「あー、姉妹丼とか親子丼とかアリな文化圏なんだな」
「一親等はためらうよなー。せめて従姉妹とか」
「そういや、彼女の家で若い母親に会った男がこっそり関係持ったら、母親じゃなくてお婆ちゃんだったって話を聞いたことあるな」
クラスの男子たちの話を聞くに、世の男性たちも刺激的な人生のようだ。
そう考えれば、クラスメイトの美少女を二人ほど『ブタ』にしてる自分なんて、そんなに大したことないのかもしれない――いやそうか?
(なんにせよ……僕もしっかりしないと! いつか、胸を張って、あの子たちの恋人だって言えるように!)
『誘惑されたからブタとして償ってもらっている』――とは言えないので、隠すべきではある。
しかし隠しながらでも「付き合ってる」と宣言はできる。
それをしないのは、まだ隼樹に劣等感があるからだ。
内緒の関係であることを言い訳に、「お前なんかが彼女たちと?」という目で見られることを恐れ、逃げ隠れしているのだ。
(体重も減って、筋肉も付いたし。魔力も増えて、勉強も
自分を一人前の男だと認められるようにするには、何が必要かと考える。
文武両道のイケメン貴公子とまでは言わないが、
一人の女性に向かって、僕の恋人になってくれと言えるくらいには。
欲しているのは自己承認、自分で自分を一人前だと認められる成果だ。
(そうえば、選挙に協力してくれって言われてたな)
あるいはそれが、自分を成長させるきっかけになるかもしれない。
しかし、人脈が広いわけでもない自分が、票固めに協力できるとも思えない。
何か別の角度から、今回の生徒会選挙に一枚噛むことはできないだろうか?
(……ネットで調べてみよう)
ちょうど『フェイ』も購入したことだし、よい参考材料が見つかるかもしれない。
隼樹は授業中、板書しているふりをしながら、それを探してみるのだった。
○
例えば、誰かを見下すことで自尊心を保つ人間がいるという。
自分にはその気持ちが分からない――という人間が多数派であれば幸いだ。
しかし、中には「見下していたことを自覚していなかった」という人間もいる。
そういう手合いは――見下していた相手が自分より『上』に行った瞬間、初めて気付く。
下原恵理――またの名を『☆上海えりりん☆@聴覚過敏』に、その日が訪れた。
「隼樹くん、『フェイ』のメモリーキャプチャって試してみた?」
「ああ、自分の記憶を画像や映像にできるっていう機能だよね。まだ触れてないけど」
「えー、もったいなーい」
下原がそんな会話を聞いたのは、移動教室のときだった。
廊下で聞き覚えのある声を耳にして顔を向けると、そこには去年のクラスメイトたち。
「記憶を抽出するって、なんか二の足を踏んじゃって」
「別に害があるものではないですよ? というか、『フェイ』の操作にもイメージ操作が使われていますし。原理はそれと同じです」
「うちも使うよ? 自分でも忘れてたようなものを細かいとこまで再現してくれるんだよねー」
ドワーフ系妖女のミースと、半妖女のイサミ、オーク系妖女のメルヴィ。
そして、彼女らに囲まれる男子――望月隼樹の姿があった。
「っ!?」
下原は目を見開き、衝撃を受ける。
もちろん、実は下原が隼樹に
(――なんで、あんな不細工に?)
まったくもって酷い感想だが、そういう意味での衝撃だった。
下原にとって隼樹は親しくもなんともない相手だが、断言できることがある。
――あれは、男子の中でも底辺中の底辺だ。
デブで、不細工で、気弱でコミュ障でオタク臭い。
ひとつかふたつなら気にならない短所を役満のように兼ね備えてしまった、哀れな男子。
学校があれば学年に一人はいる、最もロースペックな生徒。
下原の知る限り、望月隼樹とはそういう男子だった。
――それが、なぜ、女連れ?
隼樹にくっつくミースとイサミからは、彼への明確な好意が感じられる。
二人に比べれば少し間隔があるメルヴィも、彼のことしか見ていない。
注目すべきは、隼樹が、ミースやイサミにくっつかれて平気な顔であること。
母親以外とは手も繋いだことが無さそうな最弱男子が、女に対して落ち着いていること。
――まるで、女を抱いたことがあるかのようだ。
「……っ!」
透けて見えた彼らの関係に、下原は不快感を覚えた。
たぶん、エッチしたのだろう。男子と妖女だから。
(なに、それ……)
隼樹たちとすれ違った後も、下原の胸中には様々な感情が渦巻いていた。
なんでミースやイサミやメルヴィのような勝ち組女子が、あんなのに
女として高い価値を持っているはずの彼女らが、あんな負債レベルの男に。
人それぞれ、あくまで他人、自分が口出しすることではない。分かっているのだが――
(だって、あんな……私が男だったとしても、アレよりはましってくらいの奴っ)
下原にとって隼樹は『下』だった。
もちろん下原も、自分の外面と内面が常人より不出来なことは知っている。
デブで、美人とは言い難く、気弱でコミュ障でオタク。
なんなら人に見せられない裏アカで炎上を起こして赤っ恥を掻いており、自室ではBLやネットの痛快話で
それでもきっと、アイツよりは『上』だと思っていた。
望月隼樹のことを詳しく知っているわけではないけどそうに違いなかった。
(おかしい、おかしい、おかしい……っ!)
そんな隼樹が、彼女持ち。
スクールカースト概念において、持たざる者より上となる切り札。
カーストを抜きにしても、恋人がいるという『幸せ』があるという。
どこにでもいる自分を特別にしてくれて、好きだと言ってくれて、自分もまた人を愛する感情を抱けて、幸福感に脳を痺れさせる日々を送れるという。
(なんで、あんな奴がっ、私より幸せな青春してるのっ!?)
おかしい、間違っている、不公平だ。
改めて思い出すと、なんでちょっと男前になってるんだ。
なんでシュッとしてるんだ、なんで短髪がいい感じなんだ、なんで背筋が伸びて声が少しハキハキしてるんだ、なんで隣を歩けるくらいには雰囲気が良くなってるんだ。
自分は今日も女子カーストをおっかなびっくり低空飛行しているのに、なんでアイツは、知らぬ間に成長して追い越しているんだ!
(キモい! キモい! キモい!)
意味の無い雑言を呪詛のように脳内で叫ぶ。
ああそうだ、あれは『キモいもの』だ、やっと気付いた。
危うく自分の激情をルサンチマンと誤解するところだった、これは真っ当な嫌悪感だ!
だって相手は妖女子じゃないか。セックスできれば犬でもいいような色情狂じゃないか。男なら誰でもよかったんだ。あんな豚野郎にも
きっと放課後になったら、あの男に首輪とか付けて、醜いブタ扱いして足を舐めさせていたりするんだろう。あの男もオタクだからそういうの喜ぶに違いない。そうまでしてようやく
だいたいああいう妖女が軽々しくエッチさせるからオスどもが調子に乗るんだ。おかげで罪の無い人間女子が性被害に
(なにか、できないかな……?)
――思い知らせてやりたい。
あの世間をダメにする猿どもに、報いを受けさせてやりたい。
特に何かされたわけではないけど、男と妖女によって苦しめられてきた人女子の自分にはその資格がある!
「そういえば、また男子更衣室で下着泥棒が出たらしいよ?」
「え? またー?」
「盗んでどーすんだか」
ふと、教室で雑談する男女の声が耳に入った。
「誰のが盗まれたんだ?」
「望月って分かる? 隣クラスの」
「ああそれ、盗まれたんじゃなくて忘れ物だったらしいぞ」
「マジで?」
「ああ、さっき『フェイ』の学内ローカルに訂正情報が出てた」
ふと――下原の脳裏に閃きが生まれる。
その一件、上手く転べば、自分の溜飲を下げてくれるかもしれない。
「そういえば右馬先生、聞いてます? なんか下着泥棒があったって。ええ、更衣室で。私も詳しくはないですけど、C組の望月くんが関わってるとかなんとか――」
生活指導の右馬教諭に、あえて、断片的な情報を雑談として伝えた。
……嘘は、
○
最近の高校は、大学と同じような時間割が多い。
つまり、基本的に受ける授業は自分で決めて、単位を取得する。
学年ごとの必修科目で大抵は一緒になるが、それ以外の科目では別クラスの生徒と一緒になったりする。
むしろ海外の高校ではこちらが主流で、日本ではそれが大学から始まるのだそうだ。
「望月、『フェイ』買ったんだ?」
「ああ、うん。そろそろ時代に追いついてみようかなって」
そんな選択科目で、隼樹は去年のクラスメイトたちと席を同じくしていた。
「ブレス型か。望月は左手の魔力神経が太いんだな」
隼樹が『フェイ』を使い始めたのに気付いたのが花房哲、デバイスのタイプに注目したのが雪代龍斗、『魔力実技』でも一緒になる友人たちだ。
「お店の人にも言われたよ。聞き手と逆の手に魔力が行きやすい人は珍しいって」
「魔力サウスポーだな。魔力競技だと珍しいタイプで強かったりする」
龍斗が曰く、スポーツでサウスポーがひとつの特技なのは、魔力競技でも同じらしい。
「ところで望月、メルヴィさんとは一緒に座らなくてよかったの?」
「え?」
哲がからかうように指摘したのは、同じ授業を受けてはいるが、女子グループの方に席を取ったメルヴィだった。
「ああ、なんだか名残惜しそうな目で望月を見てたな」
「そ、そう? そりゃ同じクラスだけど、この授業では座るとこ別々だし……」
龍斗にも揶揄するような目を向けられる。
正直に言えば、最近は付き合いもあるし、別々に座ることはないんじゃないかと思った。
しかし、この選択科目では別の席という習慣ができており、その変化は起こせなかった。
「まあ、いつも別々に座ってる男女が、それぞれのグループを抜けて隣に座ったらねぇ」
「全員が察すること間違い無しだな」
「そ、そういう仲じゃないってっ」
まだ、とは付け足さなかった。
(でも、ミースさんともイサミさんともシたし……三人組のうちメルヴィさんとだけそうじゃないっていうのも……気まずかったりするのかな?)
妖女は数人で男を囲う。
男を共有する『義姉妹』だったり、漠然とそれに近い関係だったりと、恋愛観は人それぞれ。
ミースは隼樹にイサミとの関係を持たせた。それは、いつも一緒のイサミやメルヴィを、親友から『義姉妹』という関係にステップアップさせたいのかもしれない。
「そういう繊細な話は『フェイ』のチャットでするのが現代マナーだよ?」
「ああ、声高な猥談は立派なセクハラだ」
「だから、
哲と龍斗にはそう言いつつ……今度、彼らが自分の彼女とどんな関係を構築しているのかこっそり聞こうと決めた。参考までに。
できれば腰使いとか指テクとかリズム感とか、魔力を使った性感帯刺激とか……
「はい、おはようございます」
と言っている間に、授業の担当教師が入ってきて、生徒たちの雑談が静まる。
科目は『妖魔界史・Ⅴ』――新手の戦略SLGではなく授業である。
版書で覚えればいいタイプの授業なので、『フェイ』による視覚キャプチャーと、教師の不意打ち質問に備えたAIチャットを待機させていれば大丈夫な、緩い空気の授業だ。
(ん? メルヴィさんから?)
そのせいか、離れた席にいるメルヴィから、『フェイ』にメッセージが飛んできた。
一瞥すると、ちょっと照れくさそうにこっちを見ている。
【猥談してたの?】
教師も『授業中のフェイ使用』には目を配っているので、ポーカーフェイスが重要だ。
【してません】
【でも、人間界の男子ってそうなんでしょ?】
【そういうのは中学生くらいまでです】
個人差はあるだろうが、男子と妖女子と人女子の微妙な関係もあり、教室でのハレンチな話題には少し厳しい時代だ。
【ミースやイサミのこと自慢するのかと思った】
「っ!?」
ポーカーフェイスの難しさを思い知った。
【
【なんか、ごめん。気を遣わせて】
ブタのことまで話しているかどうか気になったが、文章に残してまでは聞けない。
再びメルヴィに目を向けると、赤らんだ顔でこちらを横目にチラチラ見ている。
【どうだった?】
【……
【芸能人の不倫じゃないんだから】
だからと言って、どう答えろと言うのだろう?
君といつもお喋りしてる親友たちは僕のベッドでこんな風に喘いでるんだよ? とでも、エロ同人のスケベオヤジみたいに語れと言うのか。エロアニメ声優のように。
【望月って、大きなおっぱい好きだよね?】
【生物学的には正当です。哺乳瓶も粉ミルクも無かった原始時代にはそういう女性を選ぶことに子供の命が掛かってたんです】
【うちのも見てるし】
【改善を試みますのでいましばらく
メルヴィが小さく噴き出していた。
隣席にいるハーフの女子が首を傾げている。
たしか、去年同じクラスの……クラスメイトをよく観察している子だ。きっと何か察されているだろう。
【別にいいよ。うちくらいあると女子にも見られるし。暑いから開けてるのも自分だし】
オーク系妖女は平熱が高いらしく、露出を大めにしないと春でも熱中症になるらしい。
(そうだ、話題をそっちに向ければ――)
【下着は黒が好きでしょ? その色のときだけ
遅かった。
なぜだ――
なぜ自分のような最弱男子学生が、授業中に人目を盗んでクラスのギャル女子とエッチなメッセージをやりとりしているんだ!?
【メルヴィさんなら何色でも似合うと思います】
【ちなみにいま99のKだけど】
頑張って紳士的なメッセージを送ったのに、ものすごいカウンターが返ってきた。
(Kっ! きゅうじゅうきゅうのけいっ!? 三十六計ではなく九十九計っ!?)
グラビア女優の数値を聞くより、身近な女性の数値を聞く方が、衝撃的だった。
【やっぱり、デブは嫌い?】
【僕にそれ聞く? ちっとも太って見えないよ】
体型コンプレックスなら日本でもトップクラスに分かる男を自負している。
どうやらメルヴィは、あまりに日本人離れした肉感的な体型から、自分を太っちょなどと勘違いしているのかもしれない。
【本当?】
【すごく魅力的だから、自信を持ってほしい】
許されない。
彼女のように魅力的な子が、自分を肥満体だと思って自己肯定感を下げるなんて、本物のデブとして断固阻止したい。決して、中学時代の自分と同じ思いはしてほしくない。
【本当に本当?】
【命懸けていいくらい本当です。メルヴィさんはエロいとか通り越して格好いいくらいにセクシーで、女優にだって負けてないです。世界中のどんな美男の隣にだって立てます。僕のためにも、自分を嫌いになるのは絶対に止めてください】
文面から本気度が伝わったのか、メルヴィは顔を赤くして
隣席のハーフ女子が、すごく興味深そうにその横顔を見ている。
やがて、メルヴィは意を決したような顔をすると――
【これ見ても、同じこと言える?】
画像が送信されてきた。
「っっっ!?」
見ての通りの、風呂上りに自撮りしたらしい、バスタオル姿のメルヴィだった。
(な、な、なんてものをっ!?)
エロ自撮りを送りつけられるのは、ミースに続いて二度目だ。
ミースにときは下着自撮りだったから、大事なところを隠したメルヴィのこれは、多少は恥じらいがあると言える。だからといって――
【ダメだよ、軽はずみにこんな画像送ったら】
【やっぱり、デブだった?】
【そうじゃない。すごく綺麗です】
『フェイ』の念話入力には、少し問題がある。
思ったことがすぐに文章化されて、つい本音が出てしまうことだ。
「~~~っ」
メルヴィを見ると、なんだか机の下で足をバタバタさせている。
隣のハーフ女子がすごくワクテカした顔で見ていた。後で問い詰められるだろう。
【これでも?】
口裂け女みたいなことを言って送られてきたのは――
「っ、っ、っ!!」
際どい水着の自撮り写真だった。
バスタオルのときも思ったが、いったいどこがデブだというのか。
これをデブに分類する人は、ラードのブロックと霜降り肉の区別も付かないに違いない。
【脱ぐとヤバいでしょ?】
【ものすごく魅力的です。別の意味でヤバいです】
どうにか応答する。
そして――目を
(これ……誘われてるんだよね?)
ここまでセックスアピールをされて、鈍感系主人公を気取っている場合じゃない。
ミースとイサミが隼樹と関係を持ったことを知り、メルヴィも動き出したのだ。
友人に先を越された焦燥感か、彼女らと同じくらい隼樹を意識していたのか。
どちらにせよ、ここまでされて気付かない振りを決め込むのは、誠意じゃない。
(いやまあ、確実に条例違反だけどね。これ)
性的な画像を送りつけるのは、誘惑禁止条例に抵触する行為だ。
主眼である『誘惑』の行使とは異なれど、相手の望まない形で性的感情を刺激する行為をわいせつと言う。エロ画像送付は立派なアウトである。
だがそれは、彼女の不慣れさ、初々しさとも取れた。
ミースがいきなり『誘惑』を使ったように、イサミが下着泥棒という暴挙に出てしまったように、妖女たちだって異性への申し込み方が分からなくて失敗するのだ。
童貞が人生で初めて好きな人をデートに誘うくらいには、赤っ恥で当たり前なのだ。
曲がりなりにも経験人数が二人いる自分が、
というか、早く彼女の暴走と止めないと、次は裸の画像を送りつけかねない!
(真面目に……そう、ちゃんと考えて、返事をするんだ……っ!)
隼樹は深呼吸して、然るべきメッセージを入力しようとすると――
「ひゅっ!?」
裸どころの騒ぎではないものが来て、しゃっくりみたいな声が出た。
全裸で、ベッドの上で――ディルドを使ったオナニーをしている画像だ。
三脚でも使って撮影したのか、片手で目を隠しながら、もう片方の手で太い張り型を膣に挿入し、恐らくは達している。
それも、指の隙間からアヘ顔が確認できるくらいに。
【すぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せ
すぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せ
すぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せ
すぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せすぐに消せ】
しかもなんか怖いメッセージが送られてきた。
【違うから、違うから! これ水着とかで反応が鈍かったときに備えた最終兵器っていうかお蔵入りっていうか! とにかく普段からこんな太いの使ってないし! 撮影してネットに出したりとかもしてないから! お願い通報しないでお願いします故郷に家族が】
見ればメルヴィは頭を抱えていた。
どうやら送る画像の選択を間違えたらしい。
誘惑禁止条例違反にも気付いたようで、性犯罪前科からの入管コースを恐れている。
「しゃっくりか?」
「あ、ごめん」
隣席の龍斗に謝って、どうにか無表情を取り繕う。
【落ち着いて。通報しないから】
男女を逆にして、彼女の立場になって考えてみよう。
これから交際を申し込みたい女子に、ドキドキしながらちょっと刺激的なメッセージのやりとりをしていたら、手違いで自分の自慰画像を送付してしまった――
……死だ。想像しただけでこっちが早まりたくなる。
メルヴィはいまそういう気分に違いない。
そんな彼女を救うには、自分ができるだけフォローするしかない!
【やっぱりすごく性的だと思う】
セクシーだと入力したら自動翻訳機能が誤発してしまい、条例違反を追及するような内容になってしまった。
「――おい、まさか『フェイ』で爆笑動画とか見てる生徒はいないよな?」
気配を察知した先生がそう釘を刺したことで、メッセージのやりとりも中断。
顔を赤くして机に突っ伏したメルヴィになんと声を掛ければいいのかは、妖魔界史よりもずっと難しい問題だった。
やがて、授業が終わった後――
「C組の望月くんっている? あなた? ちょっと指導室に来なさい」
隼樹は、生活指導の右馬教諭に連行されることになった。
ご一読いただきありがとうございます
豚編の続きになりますが、不意にエロコメやイベントを思い付いて
いまだにメルヴィとエッチできません
エロ自撮り画像で許してください