※この作品はR-18です。

新解釈!!真・女神転生!?〜世知辛えサマナー〜   作:グリーヴ

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世知辛名言

有給なんて都市伝説。


プロローグ

 

世の中が暗いと思うのはその人物の心境が宜しくないからとは聞く。

現に今、少々憂鬱な気持ちでいっぱいなのである。

 

〔???〕

「……はぁぁ…」

 

今、現在進行系で憂鬱なのは多分自分だと思う。

何故なのか?

仕事上のトラブルにより、クソ野郎の鼻骨ごと一発殴り入れてしまったからだ。

しかもそのクソ野郎は依頼主であり、側にいた仲介者(カットアウト)も頭を抱えて目を閉じたのだから始末が悪い。

 

確かに、やってしまった事については俺の責任である。

しかし、相手の言動や依頼を完遂してもやれ「これでは話にならない!」とか「このクソ女が!!」とか「そこらに棄てろ」とか言いやがったら誰でも一発は拳を叩き込むだろう。

 

〔???〕

「……金振り込まれるかなぁ…」

 

入っていることを願いたい。

いや、流石に"連合"の取り決めを守らなければ今後も仕事が出来なくなるから普通に考えれば依頼完遂後の入金は確実に行われ、桁も数字も減少等はされることはない。

 

〔???〕

「とりあえず…おウチへ帰ろう」

 

昔から続く童話番組のエンディングテーマを頭の中で反芻させながら我が家へと足を運ぶ。

 

然程新しくないアパートメントの二階へ上がる階段を一つ一つ昇り、角部屋である一番奥へ進む。

 

夕暮れ時に換気扇から薫る食材が煮られ、焼かれ、揚げられされる匂いを嗅ぎつつ、部屋の前へと辿り着き、ドアノブに鍵を差し込み、ガチャリと開けた。

 

〔三ノ輪銀〕

「おかえりーニノにぃ!」

 

家に帰れば制服にエプロン姿のJCが待っている。

普通考えれば可笑しくないかなぁ?と言う者達が居るだろうけど残念なことを居るんだわこれが。

 

〔二宮燐之助(リンノスケ)〕

「ああ、ただいま」

 

コロコロと笑う妹分に返すと彼女の方から左手を上げる。

 

〔銀〕

「ハイタッチ!」

〔二宮〕

「オウタッチ!」

 

互いに手の平を合わせて軽く叩く。

出かける時と帰宅の時には必ず行うちょっとしたハウスルールだ。

まぁ何時からやり始めたのかは忘れたけれど、銀を預かってからはそうしている。

 

〔銀〕

「今日は肉じゃがだよ」

〔二宮〕

「いいね、肉じゃが」

〔銀〕

「さやいんげんはちゃんと食べるんだぞ?」

〔二宮〕

「へいへい…」

 

あまり得意ではない物を食べるというのは中々苦行であるが、一回りも違う少女から言われてしまえば致し方無し。

靴を脱ぎ、六畳二間の我が家へと上がるのであった。

 

 

 

 


 

 

 

 

〔銀〕

「ねぇ、まだニノにぃの仕事手伝っちゃ駄目なの?」

〔二宮〕

「駄目だ。まだ小6にさせることじゃない」

〔銀〕

「えぇ〜!いいじゃんいいじゃん!!お務めは家に居た頃でもやってたんだぜ!」

〔二宮〕

「駄目なものは駄目だ。親父さんとの約束だからな?」

〔銀〕

「ちぇ…」

 

そんな顔をしても駄目である。

彼女の父親からは一般社会での生き方を肌で感じて貰うためにも"クズノハ"の里から出ることが習わしである。

一応クズノハ出身の自分やその他"ヤタガラス"の構成員達の共同宿舎に寝泊まりし、外の世界について学び、行動することが次へのステップでもある。

 

現在のヤタガラスの長は千年以上継いできた名家揃いの中を一喝出来る存在であり、恐らく見聞拓けた改革派であろう。

 

ジプスの『峰津院』の存在を考えたら流石に目の敵にはせずとも色々と考えることはありそうだが…。

 

〔二宮〕

「そういえば、来週から中学が始まるんだろう?」

〔銀〕

「うん、『園子』と『須美』が一緒のクラスでさ。二人が居れば大丈夫だよ!」

〔二宮〕

「それなら良かった」

 

同じ里の園子ちゃんと須美ちゃんが居るならばとりあえずは大丈夫そうだな。

茶を一啜りし、テレビに映る番組の合間に放送されるニュースを見る。

 

内容は、まだ幼稚園児の女の子が行方不明になって3日経ったという物。

警察犬やボランティアの捜索も意味をなさない状況をキャスターが淡々と語り、何か発見したや見かけたなどの情報を集めていると締めてから天気予報に変わった。

 

〔銀〕

「……"悪魔"の仕業かな…?」

〔二宮〕

「どうだろうな…。世間話がてら知り合いと話をしてみたが絡んでなさそうだ」

〔銀〕

「じゃあどうして見つからないんだ?警察犬ってこういうのに訓練されてるんだろ?」

〔二宮〕

「……ここ2日続けて雨が降ってたからな。手掛かりの匂いが嗅ぎ取れない程に消えたって事かも知れない」

〔銀〕

「…そう…」

 

銀には言っていないが、別の考察もある。

 

両(・)親(・)が(・)娘(・)を(・)何(・)ら(・)か(・)の(・)目(・)的(・)で(・)失(・)踪(・)さ(・)せ(・)た(・)事(・)。

 

金銭目的や失踪したことで得られるメリット等、多々あるがどちらにせよ、見つからないことを願っているのは間違いない。

 

ケースバイケースではあるけど、母親が《代理性ミュンヒハウゼン症候群》を持っていた場合、メディアに流れている自分の必死な顔や嗚咽に満ちた顔はこの上ない幸せだろう。

次に考えられるのは、日常的なDVか何らかのトラブルで娘が死亡した場合。

未だに見つからないのは、そもそも捜索範囲内に娘は居なかったし、死んでいるならば家の何処かに秘匿されているか、既に何処かに隠滅を図った可能性もある。

 

どれにせよ、銀に伝えるには良くない話だ。

 

せめて無事で見つかってくれるのが一番マシである。

 

〔銀〕

「お風呂沸いたけど入る?」

〔二宮〕

「お先どうぞ」

〔銀〕

「ふっふふ…精々JCの残り湯でも楽しんでてね?」

〔二宮〕

「えっ?何で?」

〔銀〕

「………なんでもない///」

 

なんのことやら。

そさくさと浴室へと入る銀を一瞥し、テレビに映るコント番組を静かに眺めるのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

悪魔退治。

古来より妖物や魔性の存在を滅し、討ち斃してきた超國家機関《ヤタガラス》がある。

陰陽師や巫蟲師といった存在を表向きに立たせ、歴史の裏では様々な出来事を解決してきた闇の機関というものだろう。

 

しかし、戦後GHQの支配下に入った日本で解体され、今となっては小規模かつ細々と続けている家が大半であり、代々管使い*1で通っていた家も便利なCOMPを使うことが多いとか。

 

自分も使うのがGUMPという拳銃のグリップが付いている悪魔召喚プログラムであるけど。

 

これとて、才ある人間じゃないと只の特撮ヒーローの玩具なのだから始末に負えない。

 

〔二宮〕

「………ここかぁ」

 

やってきたのは、東京の大手商社が集まる日本橋。

日銀もあるし、国道の始まりもある。

周りのビジネスマンに負けないようにと贈られたゼニアのスーツが妙に着慣れる辺り、採寸の凄さが肌に伝わる。

 

とりあえず、指定されたビルへと入り、受付で依頼主の名前を出すと来客用の入館証に名前を書いて首に掛ける。

そして、目的階まで案内されるのであった。

 

目的の階の会議室。

一言案内から「失礼します、お客様をお連れしました」と伝え、ドアを開けてもらうとドラマで見るようなどデカイ長方形テーブルの対面席に座る男性が笑顔で立ち上がる。

 

〔部長〕

「どうも、遠路はるばるお越し頂き有難う御座います」

〔二宮〕

「いえいえ。此方こそ御依頼頂き感謝します」

 

互いに挨拶とシェイクハンド。

挨拶をしつつ、視てみるが(アナライズ)、只の普通の人だ。

若干若い年齢で、大手商社の部長になっている辺り、遣り手でかつ出世頭だと勝手に考える。

 

〔部長〕

「さて…。早速ですが本題に入りましょう」

 

部長は手を椅子へと差し、座るように促す。

相手から言われたので椅子を引き、ゆっくりと回転する椅子へと座って肩を伸ばす。

 

〔二宮〕

「……それで、一応聞いていますが…」

〔部長〕

「ええ。我が社の者が奇妙な連中と関わり合いがあると総務から通達がありまして」

〔二宮〕

「奇妙な連中?」

〔部長〕

「……明らかに日本人ではない人種とのことです」

 

そう言い切る辺り、本気で日本人ではないみたいだ。

 

〔二宮〕

「韓国系?其れ共チャイニーズとか?」

〔部長〕

「いいえ。背格好や他の特徴も合わせますと、どうにもヒスパニック系と言っていました…」

〔二宮〕

「ヒスパニック?中南米諸国の浅黒い感じの?」

〔部長〕

「ええ、少なくともハングルや広東語の類ではなかったですね」

 

何だか想像しにくい。

大抵、日本在住の在日外国人は中国や韓国等の近隣諸国か、東南アジアが主だ。

遠い国、それにアメリカではなく、日本へと来るのも少々事情が掴み取れない。

 

〔二宮〕

「他に情報は?」

〔部長〕

「盗聴した音声データを翻訳してみたところ…どうにも"メキシカンギャング"ではないか?とのことです」

〔二宮〕

「メキシカンギャングかぁ…」

 

奇妙を通り越して、厄介極まりない。

 

メキシカンギャングはその名の通り、メキシコカルテルを母体にする二次三次団体組織だ。

アメリカに拠点を構え、メキシコを含めた中南米諸国で密造されたマリファナやコカインを売り捌き、銃武装するクソッタレ。

世の中で最も可燃ゴミに封じ込めて延々とプルガトリオの炎海に燃してやりたい気持ちになる。

 

〔部長〕

「場合によっては警察にも相談しますが…」

〔二宮〕

「それは後回しで。アメリカのシェリフが一番死ぬケースの銃撃戦を日本国内でやらかすわけにも行かないですし」

〔部長〕

「……そうですね……っというより、銃撃戦?」

〔二宮〕

「メキシカンギャングですよ?アメリカの麻薬戦争なんて、強制捜査入ったところで一人は必ず死ぬって言われますから」

〔部長〕

「……寝ることも出来なさそうな国ですね」

〔二宮〕

「直ぐに慣れちゃいますよ?ヤバいのは機関銃のフルオートですけど?」

〔部長〕

(何で知ってるんだろう?)

 

過去にちょっとした組織の壊滅を手伝わされた時をしみじみと思い出し、思わずげんなりとした。

あの時本当に死ななかったことを良かったとどうやって生き延びたっけ?という相反する疑念が時々出てくるのが不思議だけどね。

 

〔二宮〕

「では、御依頼はその社員の救出ということで?」

〔部長〕

「はい。今後も活躍していただきたい人材ですので、出来得る限り怪我や死亡等は無いようにして欲しいですが…?」

〔二宮〕

「ハイ!ご心配無く!(多少の欠損は)無傷(判定)で(反魂香があれば)生存させることが出来ますから!」

〔部長〕

(不安だなぁ…)

 

本当に部下思いの上司で良い。

早く心配事を解決し、無事に保護対象を家へと送ることだな。

 

 

 

 


 

 

 

 

会社を出た後、先ず向かうのは六本木。

此処は訪日外国人が多く、特殊なコミュニティも存在するので外国人絡みの情報集めによく使う。

 

〔マスター〕

「メキシカンギャングって何を信奉してるか分かるかい?」

〔二宮〕

「何って……カトリック?」

〔マスター〕

「そう。もう少し正確に言うならば……メ(・)シ(・)ア(・)教(・)だ(・)よ(・)」

〔二宮〕

「うわぁ…」

 

BAR《蜘蛛の巣》の店主が勿体ぶるように答える。

某大学客員教授を務めつつ、一種の社会実験と称して開いたモダンかつクラシックなBARにはジャズのレコードが店内に流れ、非日常の雰囲気を醸し出す。

店内はカウンターと三箇所団体用のソファと長机が座れ、ブルーを基調に落ち着きのある空間を作られている。

 

〔マスター〕

「かのクリストファー・コロンブスがアメリカ大陸へ到達し、北米大陸と南米大陸の拠点として使われてた頃からあの国でメシア系が中心に活動してたのだよ」

〔二宮〕

「つまり、イギリスプロテスタント運動と連動して植民地に移動せざる得ないカトリックと同じ様に根を下ろしたタイプなのか…」

〔マスター〕

「但し、唯一神信仰がどう歪曲したのか。最近妙な融合を果たしていると聞いている」

〔二宮〕

「融合?」

〔マスター〕

「……テスカポリトカ。中南米の悪神を組織的に信奉する集団が現れた」

 

テスカポリトカ。

アステカ文明にて神話に残されている夜空の神で、その神性は、夜の空、夜の風、北の方角、大地、黒耀石、敵意、不和、支配、予言、誘惑、魔術、美、戦争や争いといった様々な概念を持つケツァルコアトルとは対をなす神様だ。

 

但し、悪神と言われるのも大概メシア教による布教*2のせいであるが…。

 

〔二宮〕

「それが件のメキシカンギャング?」

〔マスター〕

「そう。彼等はTitlacauan(我等は彼の奴隷)と呼ぶ」

〔二宮〕

「目的は?まさか日本国内でテスカポリトカを召喚しよって魂胆じゃないよな?」

〔マスター〕

「かも……いや、可能性大かな?」

〔二宮〕

「………"泣けるぜ"」

 

先祖返りは珍しくないが、其れを厄介な方向に向けられるのは勘弁願いたいな。

テスカポリトカとか召喚された暁には、東京のド真ん中にアマゾンの熱帯雨林が出現し、アステカのピラミッドとか変なトーテムポールっぽいのが建ち上がるなんて御免被る。

兎も角、メキシカンギャングの動向が何となく理解出来たが問題なのは、何(・)故(・)社(・)員(・)の(・)男(・)が(・)居(・)る(・)の(・)か(・)?

 

〔マスター〕

「もしかすると、美人局じゃないかい?」

〔二宮〕

「……マジか」

 

そういえばコイツ、去年メキシコに出張してたな。

つまり、現地で現地妻を作ったらソイツがギャングのボスの物とかそういった話でいいように使われてると見た。

 

〔マスター〕

「言い方キツイけど自業自得だよね…」

〔二宮〕

「とはいえ、依頼は完遂させないと。死ななきゃ易い」

〔マスター〕

「それは覚醒者とかだから出来るのであって、普通の人(愚者)にやるのは酷だよ?」

 

でも今回ばかりはある程度痛い目を見なければ教訓にはならないし、多少の怪我(心的外傷ストレス含め)については目を瞑ることになる。

 

此処まで手に入れた情報を元に、作戦を練ることにした。

 

 

 


 

 

 

千葉県の某埠頭。

かつては漁業が盛んであり、漁師の街として全国的にも有名であったが、近年の乱獲による漁獲量低下や燃料費等の高騰により、上手く回らない状況に陥っている。

そのため、漁港の卸売市場等も経営破綻によって空きスペースとなり、一帯の家々も殆どが空き家となっている。

 

そんな地域に入り込むとするならば、ヤクザや大陸系マフィア等の反社会的勢力であろう。

 

借金の手形代わりに家を別の施設として使い、様々な裏事業を展開していくのは常套手段であった。

 

今回もまた其れであり、メキシカンギャング《ティトラカワン》が密入国する手段でもある。

 

〔ギャング所属ダークサマナー〕

「……此処か」

 

密入国仕様の船に乗ってやって来たのは、ティトラカワンに属するダークサマナー。

己の利のみを考え、時には犯罪に無縁の人間にも手を出して叶えようとする反社会的人物。

この男はアステカ文明やマヤ文明等から綴られてきた魔術等を解析し、自身を魔術師として成り立たせた。

 

ダークサマナーの目的は唯一つ。

 

自(・)身(・)も(・)信(・)仰(・)す(・)る(・)悪(・)神(・)、(・)テ(・)ス(・)カ(・)ポ(・)リ(・)ト(・)カ(・)を(・)召(・)喚(・)す(・)る(・)た(・)め(・)で(・)あ(・)る(・)。

 

〔アレハンドロ〕

「待っていたぞ兄弟」

〔ダークサマナー〕

「別に兄弟と呼ばれる理由はない」

〔アレハンドロ〕

「そういうなって…血よりも濃い仲で繋がってると言っても過言じゃない」

〔ダークサマナー〕

「………」

 

アレハンドロ。

ティトラカワンのボスであり、テスカポリトカの化身であるジャガーの入れ墨を顔から身体全体にかけて描いている。

これは、アステカ文明に伝わるジャガーマンから構想を得たそうだ。

 

〔ダークサマナー〕

「…例の準備は?」

〔アレハンドロ〕

「ああ、言うとおりに作っておいた。鶏やら豚の搾りたて生き血に年頃の娘を複数人…後は馬鹿な男一人で良いんだよな?」

〔ダークサマナー〕

「上々だ。後の工程は任せてもらう」

〔アレハンドロ〕

「………これで出てくるのか?」

〔ダークサマナー〕

「少なくとも、龍脈の途絶えたフアレスより遥かに安定した脈動を感じる」

 

不安を感じるアレハンドロにニヤリとダークサマナーは口端を釣り上げる。

勝算の見込みを感じ取るダークサマナーは用意されている市場跡の倉庫内へと入った。

 

 

 

近年、メキシカンギャングの構成員達でも暗視装置とAK−47*3の減音器装備を持ちうることは珍しくない。

最も、軍人の再雇用先にカルテルというのも珍しくないので下っ端であるギャングの武装化に伴って訓練等も行うケースがある為、ド素人とは全く異なる。

 

〔二宮〕

「とはいえ、流石にヘンテコ民兵組織と比べようが無い程練度高いなこれ…」

 

暗視装置付きの双眼鏡で遠くから建物を見る。

周りには二十から三十

ものギャング構成員達が見張りを務めており、如何に強い部類の自分でもこりゃキツイ。

 

〔二宮〕

「ということで、此方も用意しときましたよ…人員を」

 

振り向けば其処には同業者が2人。

鉄のフルフェイスヘルムとレザージャケットという出で立ちの巨漢『ジャギ』と対象的に細身で眼鏡を掛ける青年『金木研』だ。

 

〔ジャギ〕

「中々多いな」

〔金木〕

「ですが、基本的に銃器とマチェットくらいですね。注意点は?」

〔二宮〕

「囲まれれば矢衾にされる。物反鏡を使う手もあるが、中の人質やら生贄の安全面を考慮して静かにソロソロとコロコロしましょう」

〔金木〕

「人質に取られたら厄介ですからね。その方針で」

〔ジャギ〕

「だな。一丁北斗神拳の真髄を見せつけてやるさ」

 

此方の考えに同意し、2人は外の歩哨を片付け、俺は建物内へと侵入する。

 

金木はデビルシフターである。

腰部分から硬化と液化を自由自在に変化できる触腕を生やし、まるでサソリの尾針の如く使う。

まぁ其れだけでなく、腕や脚の筋力も相当であり、細身の身体であっても高層ビルの支柱を叩き割るし、蹴り飛ばせる。

魔法やスキルの類は回復系に拘っているらしく、前線ヒーラー的なポジションだ。

 

ジャギに至っては、グラップラーだが実際は北斗神拳という暗殺拳の使い手だ。

秘孔と呼ばれる気の流れやマグネタイトの流れに左右される部分に一突きされるとその部分が遮断され、大動脈瘤破裂と同じ様に体の部位が吹き飛ぶ。

暗殺拳なのか?と問われると、そもそも暗殺とは気づかれずに殺すだけでなく、有力者を民衆の目の前で死に至らしめ、そのまま逃げ遂せれば暗殺になるから、むしろ原点回帰であろう。

 

二人共にギャングの悲鳴を上げさせずに一人、また一人と仕留めていく。

頸がへし折れ、脳内で爆発して倒れ、頭が胴体に埋まり、内臓が全て捏ねくり回されては血袋となっていくのは面白い。

 

其れを尻目に建物の壁にある出っ張りを伝い、クライミングの要領で登っていく。

直ぐに天井上に到達したら、天窓からグラスファイバーカメラで中を覗く。

 

上から市場全体を覗くキャットウォークには四〜五人の構成員がおり、外の歩哨と同じくAK−47を所有。

此方はむしろ撃って敵襲を報せるべく減音器は装着されていない。

 

〔二宮〕

「百太郎使ってないことを祈りつつ…」

 

可能性を否定しないが、あのダークサマナーがどれほど顧問として活動しているのかがカギを握る。

近くの構成員が後ろに振り向くと同時に天窓をゆっくりと開け、キャットウォークから入る。

口から欠伸が漏れているのを確認し、うなじ部分を殴って仕留め、音を立てないように地に伏せさせた。

 

〔二宮〕

「よし、これでいい」

 

流石に此処まで打たれ弱いとは思わなったので少々拍子抜けだと思いつつ、他の構成員も同じ様にインフェルノへと叩き落としていった。

 

覚醒者の殴りは恐らくショットガンに相当するのかも知れない。

悪人が地獄へと墜として命を燃やし、燃料になるならば幾らだってやってしまいそうだ。

特にカルテルやらギャングの考え方の違いを想像するならば決して間違いでもないだろう。

 

〔二宮〕

「いたな。ダークサマナーだ」

 

儀式を行うであろう円の内には生贄として連れてこられた裸の少女が等間隔に並べられ、真ん中に例の社員が居る。

目は虚ろ、ポカンと口を開けたままで端から涎が垂れていた。

 

さて、具体的に儀式を邪魔するというのもどうするのか。

 

答えは一つ。

 

〔二宮〕

「スモークとフラッシュバンだな」

 

中の人質を死なせず、敵勢力にダメージを与えることが主な使い方の音と目くらましのフラッシュバンと此方の姿を覆い隠す煙を発生させるスモークを使えば生贄に当たることを考えて躊躇するだろう。

一応、GUMPから一体仲魔を召喚しておく。

 

    \カカカッ!!/

〔龍王:メリジェーヌ Lv40〕

「やぁサマナー。今日も良い月が出てるね」

〔二宮〕

「ああ、悪くない満月だ。フラッシュバンが鳴った瞬間に突撃、人質と一般人を確保してくれ」

〔メリジェーヌ〕

「キミはせっかちだな…。あっ!もしかして早く終わらせてイチャイチャするのだね!其れならそうと早く言ってほしかったよ!!」

〔二宮〕

「後でな後で」

 

銀髪の幼女がウキウキと笑顔で擦り寄ってくる。

悪魔合体をしてから数日程で此処まで好かれる様になっているのはよく分からないが、彼女視点では何かあるそうだ。

 

金属製の筒には安全ピンと同時にレバーが外れ、其処から強烈な光源と音響を辺り一帯に撒き散らす。

マグネシウムと硝酸アンモニウムの化学反応は視覚と聴覚を潰し、感覚を大いに狂わせるだろう。

 

そんなものを一つ、効果を高められる位置にへと投げ込んだ。

 

〔構成員〕

「んっ?何だ?」

 

上から何かが落ちてきた。

そんな思考をしたと同時に、落ちたものの正体をすぐに知る。

 

目(・)と(・)耳(・)を(・)喪(・)失(・)し(・)た(・)状(・)態(・)で(・)。

 

火薬がマグネシウムと硝酸アンモニウムに引火。

約170デシベルの音*4と600万カンデラの光*5が内部を覆い、中にいた構成員やボス、ダークサマナーはモロに受けた。

 

〔二宮〕

「突撃」

〔メリジェーヌ〕

「了解」

 

彼女の両手から二振りの両刃剣が現れ、跳躍と着地の同時に薙ぎ払い(ヒートウェーブ)が放たれた。

 

〔構成員A〕

「何っだっ、グギャァ!?」

〔構成員B〕

「一体!ゴォベッ!?」

 

其々胴体を膾切りに永遠の泣き別れを余儀なくされる。

 

〔アレハンドロ〕

「クソッ!襲撃だ!!」

 

ボスが拳銃を手にメリジェーヌへと撃つ。

広く使われている9mm弾を容赦なく正確な射撃で当てていくが、メリジェーヌの鎧のような外皮では少し擦った跡程度しか残らない。

 

〔アレハンドロ〕

「何なんだよ一体!?クソッ!兄弟!!」

〔ダークサマナー〕

「思ったより早い…!!クッ…!」

 

此方の予想に反してダークサマナーとボスの立ち直りが早い。

4〜5m程度の高さだが、覚醒者であれば容易に着地できる。

直ぐに跳んでから腰に差した薄緑を抜き、一刀を持ってダークサマナーの胴体を狙う。

 

〔二宮〕

「斬り捨て御免!!」

 

着地と同時に薄緑による斬撃。

3回の連続攻撃がダークサマナーの腕や胴を切り裂き、会心を与える。

 

〔ダークサマナー〕

「ふぐぁっ!?」

 

先制攻撃を取られ、右上腕を切り落とされた事で多大なダメージを負う。

最早この場を支配下に入れたのは此方であった。

 

〔二宮〕

「メリジェーヌ!人質の確保を!!」

〔メリジェーヌ〕

「もう大丈夫」

 

既に人質達は外へと連れ出され、ジャギと金木がその応急処置を行っている。

ボスはメリジェーヌの一撃を喰らったことで腹部から大量に出血し、荒い息をする。

ダークサマナーも失った腕の切断面を抑え、止血を試みるものの、手の中から湧き水のように漏れて流れていく。

 

〔ダークサマナー〕

「クソッ…!何故バレたっ!」

〔二宮〕

「蛇の道は蛇って言うだろ?それなりに調べたもんだぜ?」

 

変わりに今回の依頼料はカッツカツだけどなこんちくしょう。

 

〔アレハンドロ〕

「…兄弟…!!?」

〔二宮〕

「もうちょい、部下やらボスにも対サマナーの戦術を考えるべきだったな。まぁ…己の利益に殉ずるテメェ等(ダークサマナー)がやたら教えるとは思わないけどな?」

〔ダークサマナー〕

「……ではっ。これはどうかな?」

〔二宮〕

「ん?」

 

パチィンとダークサマナーの左手が指を鳴らす。

その苦しそうに不敵な笑みを溢す男が何かをやったと気が付いた。

 

〔二宮〕

「…!!?」

 

後ろから殺気を感じ、半歩下がって回避する。

前髪数本を切られ、振るわれたのが鋭利なナイフの如き爪と強固に鍛え上げられた上腕であった。

但し、その腕は黄色と黒のぶち柄に染まる体毛を持っており、それが何を意味するのか理解出来た。

 

〔二宮〕

「…ウェアジャガー!?」

 

ウェアジャガー。

アステカ文明等ではジャガーの革を被った神が存在し、その配下達のことを指す。

そんなウェアジャガーがここに現れるということは。

 

〔二宮〕

「道理で、変なアナライズが出るわけだ…!!」

 

魔術による操作。

人間が悪魔へと変わることは珍しくなく、ダークサマナーが事前に仕込んでいたと考えられる。

蘇ったかの様にキャットウォークの遺体からもウェアジャガーへと変わり、身に付ける衣類をはち切れさせて脱ぎ散らす。

 

〔メリジェーヌ〕

「サマナー!!」

〔二宮〕

「弱点は氷結か!出てこい【ジャアクフロスト】!!」

 

瞬時にアナライズ。

懐から取り出した金属製の管を引き、封じ込められている悪魔を喚び出した。

 

〔邪鬼:ジャアクフロスト Lv43〕

「ヒッホーー!!【アイスブレス】だホーー!!」

 

黒のジャックフロストが両手を前へと突き出し、身を凍らせる息が吐かれる。

ウェアジャガーの身体はどんどん氷に覆われ、走りながら氷像と化して砕け散った。

 

〔二宮〕

「続けろジャアク」

〔ジャアクフロスト〕

「了解だホーー!」

 

如何に危険な相手でも弱点が通じるのであれば其れを入念に行うまで。

ウェアジャガーの攻撃を防御し、斬り捨て、凍らせて砕く。

 

ものの数ターンにて、外法の化物に成り果てた構成員を今度こそ地獄へと叩き落とした。

 

〔ダークサマナー〕

「…ふっふふふ…」

〔二宮〕

「何がおかしい」

〔ダークサマナー〕

「いえいえ。彼等の尽力で私の計画は最終段階に入りました!!」

〔二宮〕

「何っ?」

 

不気味に笑うダークサマナー。

しかもいつの間にか虫の息であるボスが隣に寝かされており、何かを仕出かそうとしていた。

 

〔ダークサマナー〕

「儀式は既に行われる!貴方方は恐怖に慄き、泣き叫ぶのだ!!」

 

声を荒げ、叫ぶ。

儀式の印として描かれた陣に強烈なマグネタイトの流れを感じた。

 

〔ダークサマナー〕

「いでよ我が主よ!【テスカポリトカ】!!」

 

陣から放たれる強烈な光と共にこの現世へと喚び出されるのは夜の神。

アステカ文明における悪神たる【テスカポリトカ】。

 

        \カカカッ!!/

邪神テスカポリトカLv84氷結無効、呪殺反射、破魔(神聖)弱点

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!」

 

怨念めいた叫びが建物内の窓ガラスを全て砕け散る。

見ているだけでもヒシヒシと伝わるプレッシャーは其れこそ高位の悪魔を象徴し、この一帯のGP(ゲートパワー)を上げる要因となるだろう。

 

〔ダークサマナー〕

「この一帯を闇にへと変えてやるぞフッハハハ!!」

〔二宮〕

「うーん。不味いね確かに」

 

とてつもなく不味い。

一応施餓鬼米は持ってきているが、苦労しそうだ。

そうなったらここ一帯が文字通り汚染地域にされるのも時間の問題である。

 

〔二宮〕

「だから、しゃあない」

 

スマホの通話ボタンを押し。

 

〔二宮〕

「プランBお願いします」

 

3人目の助っ人に頼んだ。

(2人だって言ったが…あ(・)れ(・)は(・)嘘(・)だ(・))

 

建物の上から覆うほどの巨大な魔法陣が展開、まだ喚ばれて間もないテスカポリトカが上を見上げる。

 

〔ダークサマナー〕

「……何だ?」

〔二宮〕

「……ヤバッ」

 

直ぐにジャアクとメリジェーヌを戻す。

割れた窓から神々しい光が漏れ、段々とその輝きが増して来るとそろそろヤバイ。

 

光の裁き※P2罰敵全体に大威力神聖(破魔)ダメージ、追加で50%の確率で瀕死
神の伝令※D2常時、電撃属性・破魔属性の与ダメージが10%増加。味方パーティに種族「天使」「大天使」の悪魔が3体以上生存時、自分のターン開始時に次の連動効果が発動。「敵全体に破魔貫通を得た破魔属性の魔法型ダメージを中威力で与える。攻撃成功時、1ターンの間、味方全体の回避と命中を20%増加させる。

 

およそお目にかかるには早々ない攻撃が建物ごと降り注ぎ、間一髪で吹き飛ばされることは回避できた。

光が段々と薄まり、粒子状になって散っていくとテスカポリトカの姿は消え失せ、あの淀んだプレッシャーは無くなったのであった。

 

       \カカカッ!!/

〔ヴィクトーリア・ダールグリュン Lv88〕

「…フッ、邪神討伐完了しましたわ」

〔二宮〕

「その代わりにヒヤヒヤ物だったのですけど!?」

〔ヴィクター〕

「良いではないですか?別に無効なのですから」

〔二宮〕

「近年は裸になると破魔が効く話もあるからね?施餓鬼米撒いたら全裸にも効いたからね!!」

〔ヴィクター〕

「えっ?嘘っ!?」

 

驚きの新事実と言わんばかりに驚く。

彼女はこの日本国内で最強クラスの転生者だ。

その転生元も何と【大天使:ガブリエル】という物。

敵でなくて本当に良かった。

 

〔天使:ドミニオン〕

「あの…ガブリエル様?」

〔天使:パワー〕

「そろそろご帰還しないと、ミカエル様に…」

〔ヴィクター〕

「あら?そうですね…。でもこの地に邪神が召喚されるのを未然に防いだので結果オーライだと思いますよ?」

〔ドミニオン&パワー〕

「「それムリっす」」

〔ヴィクター〕

「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」

 

付き人代わりに羽ばたく天使達が御通夜状態の顔で無理だと言うとヴィクターの顔は驚愕に満ちるのだった。

 

〔ヴィクター〕

「そ…それでは、リンタロウ。また後日」

〔二宮〕

「ハイ、また後日」

 

悲しみにくれる彼女が飛び去るのを眺め、ため息を吐く。

ふと、クレーター状に変わり果てた市場跡地を一瞥し、また大きなため息を吐くのだった。

 

 

 

                   続く…?

*1:
仲魔を納められる試験管大の金属管を使う。COMPよりも使い勝手が難しく、基本的に玄人向け

*2:
植民地支配に土着信仰されていた神を悪魔だと汚名を着せるケースは珍しくない

*3:
デビルサマナー仕様のステータス

*4:
ジェットエンジンの付近で約140デシベル

*5:
蝋燭一本で1カンデラ、つまり600万本分の光量





二宮燐之助

21歳 男性
属性 Light/Neutral
Lv41

スキル
剣技系多数 体技系多数
魔法
???

装備
薄緑※真4F2回〜4回剣攻撃

元葛葉ゲイリン候補の青年。
管使いでもあったものの、一体しか使いこなせなかった為、選ばれず、ヤタガラスの構成員として残留。
基本的に体技と剣技系を取得、魔法に至っては謎。

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