服飾文化研究会にようこそ!~僕が女装させられて先輩方にオモチャにされる日々~ 作:桃ノ木ネネコ
主人公白石圭太は美人保険医が顧問の『服飾文化研究会』に
強引に入れられる。
しかしそこは服飾研究とは名ばかりのコスプレHを楽しむ場所であった。
そこで圭太は言われるがままに女装して、顧問の沙由美と先輩部員たちに
オモチャにされる日々を送っている中、
同級生・園田瑠璃への初恋と失恋をダブルで喰らうが
異常ながらも賑やかな毎日を過ごす。
「う~ん・・・困りましたねぇ・・・」
部室で藍川真由里がスマホを見てため息を吐く。
「あら、真由里ちゃん何かお悩み?」と沙由美が聞く。
「あぁいえ別に大したことじゃないんですけどね。ただちょっと」
「何?もったいぶってないで教えなさいよぉ!」
沙由美が身を乗り出して聞いてくる。
「えぇっとですね。実は今度一緒に即売会に行く予定だった
売り子に急用ができてしまって・・・」真由里が申し訳なさそうに言う。
「売り子?」「ああ、即売会で本を売ってくれる人の事です。」
沙由美の言葉に真由里が答える。
「へーそんな人がいるのね」
「うちのサークルみたいにメンバー全員がレイヤーの場合は、誰かしら
撮影ブースに行ったりするんで、ずっとスペースにいて本を売ってくれる人が必要なんですよ」
「へえー・・・そうなんだ」
専門用語を解説なしに織り交ぜてくる真由里に、沙由美はちょっと面食らう。
「それでその人が来れなくなったっていうわけなのね」
「はい・・・。せっかく久々の即売会だったんだけどなぁ」
真由里が残念そうに呟いた。
「まあまあ、そういうこともあるわよね」
沙由美が慰めるように言った。
「今からでもだれか捕まえられればいいですがねぇ・・・」
真由里が困ったように言う。
「再来週1日暇な人がいてくれればいいのよね?」と葵が聞く。
「はい・・・できれば女の子がいいかなと。」
「男だと駄目なんですか?」
「ダメというわけではないんですが・・・うちの読者さんて大体女の子なんで・・・
あと売り子に用意したコスプレ衣装も女性のものですし・・・」
「ふむぅ・・・」
沙由美が顎に手を当て考える仕草をする。
「あっそうだ!それならちょうどぴったりの子がいるわ!!」
沙由美はポンッと手を叩くと真由里に向かって嬉々として言い放った。
「えっ!?誰です!?」真由里が驚いて聞き返す。
沙由美はにっこり笑いながらある人物を指さす。
「あなたよ!!圭ちゃん!!!」
沙由美が満面の笑みを浮かべた。
「な、なんで僕なんですか?!」圭太が驚きの声を上げる。
「だってどーせ暇なんでしょ?」
「そ、それは確かにそうかもしれませんけど・・・。で、でも僕は男ですよ。
それにコミケの売り子なんてしたことないし・・・」
圭太は俯困惑して反論する。
「いえ、あんな歴戦の猛者が集うような場所じゃなくて、
知り合いのサークルが主宰する小規模なものですので・・・」
と真由里が反論する。「歴戦の猛者って・・・」
「会場も広めの市民会館ですから、コスプレも売る本の内容も
過激なものは禁止なおとなしめのイベントですよ。」
と真由里がさらに続ける。
「お客さんの層はどんな感じなのかしら?」
沙由美が興味深げに尋ねる。
「どちらかと言うとお姉さま系が多いですね。
男性向けより女性向けの作品の方が多いので。
男性のお客さんもいるにはいますがそこまで多くはないですね。」
「なるほど・・・」
「・・・まぁ即売会の規模としては、圭太様が売り子でも
おそらく問題はないでしょうね。」
真由里は少し考え込むと、圭太を見つめながら言った。
「どうしようかしら~圭ちゃん♪」
沙由美は楽しげに圭太に問いかける。
「そんなこと言われても・・・」圭太はちょっと言葉を濁す。
「もちろん、圭太様に無理強いするつもりは全くありませんので、
嫌であれば断っていただいて構いませんけど・・・」
真由里は申し訳なさそうな表情で言う。
「僕なんかが行ってもいいんでしょうか・・・」
圭太は不安そうに真由里に尋ねた。
「大丈夫だと思います。サークルの子たちも会いたがってたし、
むしろ圭太様なら大歓迎されると思います。」
「あはは・・・」圭太は苦笑いした。
「あ、そうだ!圭太様は『SKY ARROW WARS』ご存じでしたっけ?」
「はい。今男性にも女性にも人気のソシャゲですよね。」と圭太が答える。
「良かった、今回はそのジャンルオンリーなので。」
「へぇー。」
「じゃんる・・・おんりー??」
「あ、そのゲーム関連のモノしか扱わないってことです。」
既についていけなくなってきている沙由美たちに真由里が説明する。
「ちなみに私の推しは主人公のコウガくんです。」真由里は目を輝かせて言う。
「ああ、あの主人公かっこいいですもんねぇ。わかります。」
「はい!もうほんっとにイケメンで強くて優しく・・・ととと、私の事はともかく、
当日圭太様に着ていただくのは、『時のプリシラ』になりますが・・・」
「あ、あの『命を持った人形』ですか?」
「そうそう。」
「でもいいんですか?あんな人気キャラを・・・」
「ええ、全然OKです。というより、圭太様なら絶対似合うと思うんですよ!」
「そ、そういうものなんでしょうか?」
「はい!きっとみんな喜びますよ。」
真由里は自信満々に言い切った。
盛り上がる圭太たちとは裏腹に、沙由美たちは完全について来れない。
「これが・・・ジェネレーションギャップってやつ?」
「私もあんまり知らないんだけど・・・」
「ふぅむ・・・」
3人は首を傾げるばかりだった。
「当日はよろしくお願いしますね。」
「は、はい。こちらこそ。」
こうして、圭太の即売会参加は決まってしまった。
****
当日。
「おはようごさいます。」
圭太たちは朝早く会場前に集合した。「おはよぉ~」「おはざまっす!!」
サークルメンバーたちが挨拶する。
「ほぉ~あなたが綺羅丸殿の・・・」
サークルメンバーの一人が興味深げに圭太を見つめる。
ちなみに「綺羅丸」は真由里の活動上のペンネームである。
「は、はじめまして・・・」
圭太は緊張気味に頭を下げる。
「これはまた随分可愛らしい・・・」
サークルメンバーはまじまじと見つめる。
「あ、あまり見ないでください・・・恥ずかしいので・・・」
圭太は顔を赤らめながら俯いた。
「うひょおお!!可愛いぃ!!!」
サークルメンバーが興奮して叫ぶ。
「ほら!餡丸殿もくぢら丸殿も落ち着いて。」
真由里がメンバーをなだめる。
「あ、すみませんつい・・・」
「い、いえ・・・」
圭太は引き攣った笑みを浮かべた。
(流石は真由里さんのお仲間・・・)
「それでは皆さん、準備を始めましょう。」
そんなこんなで会場内の自分たちののスペースへと向かう。
会場内は学校の体育館の2倍ほどの広さで、売り場となるスペースは、
長机を半分ずつ使うようだ。「さぁ、今日は頑張りますよー!」
気合を入れる真由里を先頭に、皆ぞろぞろと進んでいく。
圭太たちもそれに続いた。
売り物を並べてスペースの設営が終わると、
「じゃあ、開始前に着替えてきちゃいましょう。」
と言われて更衣室へと案内される。
「わ、わかりました。」
圭太は真由里に連れられ、男子更衣室の扉に来る。
「じゃあ着替え終わったらスペースまで戻って、餡丸殿たちとスペース番を交代してください。
メイクとかはスペースないでやりますので。」
真由里はてきぱきと指示を出す。
「は、はい・・・」
圭太は不安げに返事をした。
「大丈夫ですよ。圭太様ならきっとうまくいきますよ!」
「そうそう!俺らもフォローしますんで!」
餡丸は励ましの言葉をかけてくれる。
「ありがとうございます・・・」
真由里にお礼を言うと、圭太は男子更衣室に入る。中には既に参加者が何人かいる。
皆様々なキャラの衣装を着こんでいるが、その中には女装姿も見られた。
圭太は周りからの目線を感じながらも、手早く着替えていく。
「よし・・・これでいいかな?」
圭太は鏡の前で自分の姿をチェックする。
そこには青髪の美少女がいた。
基本的にミニスカにジャケットというスタイルだが、オリジナルデザインのためかなり個性が強い。
本日の会場内のルールとして露出度の激しいものはNGなので、ミニスカの下にはスパッツを履いている。
(しかしこの髪の色は、現実で見ると結構キッツイな・・・)
その上目は左右色の違うオッドアイだ。カラコンだがかなり目立つ。
(生きた人形って設定だけど、いざ見ると異質感すごいなー・・・)
と圭太は衣装に対する感想を出す。
・・・ここでチェックに気を取られ、圭太は気づいていないが
背後では少しどよめきが起こっていた。
「おいあれ・・・」
「まさかあの子もコスプレか・・・?クオリティ高すぎんだろ・・・」
「すげぇ・・・あれ男・・・なのか」
「あんな可愛い男がいるのか・・・」
「やべぇ・・・超タイプなんだけど・・・」
「でも・・男なんだぞ」
そんな周囲の意見に気付くことなく、圭太は真由里たちのもとに急ぐ。
「真由里さん、終わりました。」
圭太は真由里に声をかける。
「あ、圭太様。お疲れ様です。」
「あ、綺羅丸殿!よく似合っていますね! その衣装は『コウガ』ですね!」
スペースで留守番していた餡丸と呼ばれた女子が真由里を見て声をあげる。
真由里は学ラン姿のイケメンになっていた。
「ハハ、みんな僕について来ててくれるかな?」
と真由里も男装モードでノリノリである。
真由里は餡丸たちと交代する形で椅子に座り、
「あ、圭太様。こちらの席に座ってください。」
「あ、はい。」
圭太は指定された椅子に座った。
「では、メイクしていきますから目を瞑ってください」
そう言って真由里は圭太の顔にメイクを施していく。「んっ・・・くすぐったい・・・」
「我慢してください。」「は、はい・・・」
圭太は真由里のなすがままにメイクを施されていった。
いつもと場所が違うせいか、なんだかドキドキしてくる。圭太は緊張で固まっていた。
「さ、終わりましたよ」
「あ、ありがとうございました・・・」
メイクが終わると同時にスペースの餡丸たちが戻ってきた。
「あ、綺羅丸殿!スペース番交代しま・・・」
入ってきた餡丸という女子は圭太を見ると固まる。
「え、嘘、なんですかこれ・・・プリシラが・・・!?」
コスプレの完成度の高さに餡丸は驚きの声をあげた。
「す、すごい!あ、後ででいいんで写真お願いします!」
くぢら丸と呼ばれた子も興奮気味だ。
「うん。いいけど・・・ちょっと恥ずかしいなぁ・・・」
圭太は照れながら言う。
「いえいえご謙遜なさらずに!」「そうですよ!」二人は圭太を褒めちぎる。
そこまで言われて圭太がなんだが照れ臭くなっていると、
スペース前に3人の人物がやってきた。
筋骨隆々な男性2人と、スレンダーな女性の組み合わせだ。
「おはようございます!綺羅丸殿のところは相変わらず美丈夫がそろってますわね!」
「う、梅千代さん!おはようございます」
真由里はその人物を見るなり挨拶をする。
「あら?そちらの可愛い方はどなたですの?」
梅千代は真由里の隣にいる圭太を指差して言った。
真由里は「この方は本日急遽売り子を引き受けてくれた人で・・・」と紹介する。
「初めまして。圭太と言います」
圭太は自己紹介をした。すると
「まぁなんて可愛らしい方でしょう!私の名前は梅千代といいますの。よろしくね。」
と言って握手を求めてきた。
圭太は戸惑いながらも手を差し出す。
「本日のわたくしは闇の魔女サンドラ。プリシラを・・・つまりあなたを作り出した人物よ」
そう言って握られた手がものすごく力強い。「あ、あの・・・痛いです・・・」
「あ、ごめんなさいね。つい力が入っちゃって」
そう言いつつも、梅千代は手を離さない。
「あの・・・そろそろ放していただけると嬉しいのですが・・」「あら失礼」
と慌てて手を放してくれた。
そして何より目を引くのは、梅千代の後ろにいる2人だ。筋骨隆々な身体に
女装姿がなんともインパクトが強い。
「おぉ、綺羅丸殿おはようございます!今日の俺は筋肉の女戦士ミス・ミランダ。」
「同じく私は筋肉の巫女マミー。」
二人揃ってポーズを決める。
「・・・・は、はぁ」その迫力に圭太はちょっと圧倒される。
「本日我々は警備スタッフも担っておりますので、何かあれば遠慮なく声をおかけください!」
そう言うと3人は去っていった。
「真由里さん・・・今の人たちは?」
「あの方々は筋骨隆々な男性が募るコスプレサークル『筋骨仮装団』の方々です。」
「へぇ~そうなんですか」圭太は若干引き気味に答える
「あの迫力ある見た目に、皆さんとても気のいい人たちなので、人気なんですよ」
真由里が楽しそうに答える。
「え・・・男性が募るってことは、あの梅千代さんも?」
「はい。男性ですね。あの人がリーダーです。」
「えっ!?男なんですか!?全然見えなかった!!」
「ふふ。びっくりしましたよね」
圭太の反応を見て真由里は微笑む。圭太は改めて梅千代の後ろ姿を見た。
確かに肩幅は広く、背も高い。
だが、顔立ちや仕草はとても女性的だった。
(ホント色んな人がいるなぁ・・・)
「『SKY ARROW WARS』は人気ジャンルですからね!個性的な人がとても多いです!」
「そうみたいですね・・・」
そんなことを話しているうちに開場時間になった。
「では早速設営に入りましょう!今日は忙しいですよー!」
「はい!頑張ります!」
こうして即売会が始まった。
即売会と一口に言っても規模はピンキリで、大勢の人が集まるものから、
同じ趣味を持つ人同士が細々とやるものまである。
今回はどちらかというと「中規模」といった感じで、
客足はそこまで多くなく、ゆったりとした雰囲気だった。
「はい!ありがとうございました!また来てくださいね!」
圭太は元気よく接客する。初めてだったが、意外にも楽しくできた。
真由里のサークルはメンバー全員がレイヤーのため、人の出入りが激しく、
しょっちゅう交代で撮影ブースや買い物に行っていた。
(だから僕みたいに常駐してる人間が必要だったのか・・・)
圭太はここでの自分の役目を理解する。
コスプレ売り子として待機しつつ、客が来たら笑顔を振りまく。
それだけでもかなり疲れた。
しばらくすると、休憩をもらった。
「はいこれ差し入れ」
そう言って真由里に差し出されたのは、ペットボトルに入ったお茶と紙コップだ。
「あ、どうも。いただきます」喉が渇いていたためありがたくいた。
午後に入ると客足もだいぶ落ち着いてきて、暇になり始めたところに、
「あの~撮影ブースでプリシラコスで集合写真撮るんで来ていただいてもいいですか?」
とお誘いを受ける。餡丸達も「今人少ないですから、綺羅丸殿と一緒に行ってきたらどうですか?」
と言ってくれたので、真由里と一緒に行ってみることにした。
撮影ブースに行くと、そこには梅千代がいた。
「おぉ、綺羅丸殿、圭太殿お待ちしておりましたわよ!」
「プリシラだけで集まるって聞いたんですけど」
圭太が尋ねる。
「はい、プリシラは人気キャラだからコス人数が多いので、
せっかくだし皆で撮りたいと思いまして」
「なるほど」圭太は納得した。
「じゃあさっそく始めようかのう」梅千代が促す。
「はい。よろしくお願いします」圭太は返事をする。
集合場所に行くと同じ衣装の子が数人いた。「こんにちは~」
挨拶をしてくる。圭太もそれに返す。
「はい皆さん集まりましたね。それではさっそく始めていこうと思います」
梅千代が仕切る。
「まずはポーズ決めからですね。何か希望あります?」
「私はこの子の手を繋いでる感じの構図が良いかなぁ」
「私もそれ良いと思う。」
「おっけー。圭太君は?なんかある?」
「えっと・・・僕は特にないです。」
「了解。じゃあそれでいきましょう」
そんなこんなで撮影が始まった。
「はいチーズ」パシャリとシャッター音が響く。
「うん、いい感じに撮れましたわよ」
「ありがとうございます」
「次は2人コウガとプリシラでくっついてもらっても良いかしらん?」
「は、はい」真由里は顔を赤らめながら圭太に近づく。
圭太も少し恥ずかしかったが、ここは仕事なので割り切って我慢することにした。
「ほらもっとこっち来て」「う、うん・・・」
ぎゅっと抱き合うような姿勢になる。
「はい、もう一枚行きますよ」
再びフラッシュが光る。
「はいオッケー。とても良かったですよ」
「ありがとうございました」圭太達は頭を下げる。
(真由里さんとツーショットかぁ・・・)
圭太は内心ドキドキしていた。
その後も何枚か撮影し、撮影会は終わった。
「さて、そろそろスペースに戻りましょうか」
「はい」
圭太は真由里と一緒に戻る。
しかしスペースでは何やらもめごとが起きているようだった。
餡丸達と客が何やら言い争っている。
つづく
人間が即売会に行ったのが年単位で前なので、
今と比べると描写が古いかもしれません。