【R-18】男女比率がおかしい貞操観念逆転アカデミアだけど強く生きよう 作:hige2902
最近、彼の机の周りが賑やかだ。
芦戸、取蔭、耳郎が集まって他愛のない談笑をよく耳にする。もともとこの三人は、クラスでただ一人の男性という割と話しかけにくい彼に入学初期からちょいちょい絡んでいたので不自然ではない。
もちろん今では学校生活や打ち上げ、合宿などを経て男女の垣根のような物は感じなくなっており、全員がフラットにコミュニケーションを取っている。
(それを加味したとしても)
蛙吹は一抹の疑念を胸に、きょろりと視線を向ける。
(あの三人の接し方は少し気になるけど……)
「そう言えば……ちょっと手、いい?」
言って、耳郎が彼の手を取る。女のそれとは違い、大きく、無骨さがあった。しかしその内には、女を悦ばせる優雅さもある事を知っている。
まだ異性の手に触れるのは慣れず、緊張しつつも手のひらを眺める。
「なにやってんの」
と芦戸。
「手相でさ、エロ線ってのがあるらしいんだけど。んーこれは……」
「なんだよそれ、しょーもねー」
取蔭が呆れた。
あははは、と女子高生らしい元気の良い笑い声をあげている。
そして蛙吹の目には、その距離感だけでなく態度にも違和感があるように思えてならなかった。
以前よりも三人のスカートの丈が短くなっている。
女子高の生徒は、男子がいないので夏場などは脚が露出しがちなスカート丈になるとSNSで見聞きした事がある。男子教師が困るそうだ。
今の三人は、そこまでとはいかないまでも結構きわどい。
接し方も無遠慮というか、友達とはいえ相手は男性である事が希薄になっているようだった。
取蔭などは椅子の背もたれの方を向き、胸を乗せて大股を開いて座っている。背もたれで物理的に見えないが、女性の下着を好んで見る男性はいないし嫌悪感を覚える人だっている。
いくら隠されているとはいえ大股を開くのはマナーとしてよくない。
一言、それとなく注意しておくべきだろうか。
「どしたん? 考え込んで」
麗日に話しかけられ、ハッとする。
塩崎が続いて声をかけた。
「そろそろ移動しないと、次の授業は救護訓練ですし」
「そう、ね」
それで蛙吹は機会を先送りにした。元よりどう口を挟めばいいのかわからない。あからさまに彼が嫌がっているなら話は別だが、女性の性欲に関してなぜか無制限に寛容なので問題とする必要は無いのかも。
打ち解けたクラスメート、仲のいい友達。それがたまたま男女だっただけ。ちょっとした下ネタを振ったくらいで気にする事でもない。のかもしれない。
ミッドナイトは蛙吹が見抜けなかった異変の正体をすぐに理解して、救護訓練を指導しながら頭を悩ませる。
セックスを知ったばかりのメス猿。彼の肉体を這うように注がれるデリカシーの欠片も無い視線。処女を捨てた事に得意になっている優越感。
それは彼女自身、若い頃に覚えが無いわけではなかった。三人ほど露骨ではないにしろ。
それに加えて彼が無類の女好きである事を知っているからこそ、芦戸たちは水面下で競うように自らの身体をアピールしている。ちらりと目が止まれば、彼が興味を持ってくれている事に興奮するのだろう。
また芦戸一人だった時とは違い、今では三人という集団で共有しているのもそれを増長させていた。群れという強さは属する者の気を大きくさせる。
内心で溜息をついた。
彼の性癖がクラスメートに伝わるのは時間の問題だろうとは考えていたが、こうも早く関係を持つとは。この短期間でもう二人。残りの十一人がどれだけ持つか。
しかし無理も無い話ではある。女子高生、十代の有り余る性欲の向く先に都合の良い男がいれば。
「……じゃあ次は心肺蘇生ね。救急が居合わせたら任せていいんだけど、不意の事故と出くわす事もあるし──」
簡単な説明が終わると人数分の自律ロボがやってきた。微妙に人間に見えないラインの造りで、移動も足元の車輪で行っている。
「反応の確認からやってくから各自でそのロボ相手にやってみて」
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それは嫉妬なのだろうか。だとしたら子供相手になんとも情けない。
小さなイラつきを覚えたまま、ミッドナイトは個人職員室のデスクにどすりと腰を落とす。
六畳ほどの大きさの一室には、ありきたりなオフィスデスクに伴う一式と書棚。それに来客用の小さなテーブルと椅子という簡素な物だった。
売店で買ってきた缶コーヒーを一口やる。
意図的に頭を切り替えてPCで生徒の評価を確認した。途中から編入された渡我は授業についてこれているようだ。
異能解放軍では重要な任務を任されていたエージェントだっただけあって、勉学についても問題無い。
無意識に彼の項目で目が止まる。具体的にはミルコが受け持っている格闘戦の科目だ。結構いい線いってる。ヤバい現場をくぐり抜けて地力が上がったか。
それは結構な事なのだが、評価に反して補習の名目で格技場の利用申請が多い。
ミッドナイトはモニタに視線をやったまま、フンとつまらなそうに頭の後ろで手を組んで背もたれに体重を預けた。
(露骨ねー。もう若くないのに、恥ずかしくないのかしら)
きっと補習の後の、汗だくの火照った身体でヤりまくっているのだろう。その予想は簡単につく。
とはいえ個性の成長と拡張性が頭打ちな彼を少しでも鍛える事については賛成だ。
呪われているのかと思うほど死地に縁がある。ヴィラン連合も異能解放軍も弱体化したとはいえ、残党からはそれなりの逆恨みも買っていることだろうから。
(……そう言えば期末試験からどれくらい強くなってるんだろ、あの子)
仮免取得試験の時に、複数の指名手配級のヴィランを相手にミルコを奪還したことから相当な体術レベルである事は報告書を読んでわかってはいたが、実際に相対したわけではない。
(まあ、どんなもんか知っといた方がいいわよね。担任として)
そう思い立つと速かった。ミルコに連絡して、大義名分で彼の補習の受け持ちを変わるよう持ち掛ける。
『いいけど素手だとおまえじゃ勝てねえよ、体術って事は個性も無しだろ?』
「そんなに? まあどれくらい遣うのか確認しときたいだけだから。悪いわね、急に」
『ああ。けど、あいつは残念がるだろーな。がっつりヤるつもりでいるんだから。可哀想だし、わたしの代わりにちゃんとスッキリさせてやれよ』
面白がるような口調に、ミッドナイトの口元がきゅっと一文字に結ばれる。
反射的にじぶんと彼が繋がっている姿が湧きたつように浮かんだ。全裸で、互いに激しく求めあっている姿が。
ため息交じりに唇を綻ばせた。
「はいはい、わかったわかった。一通り確認したらアイテムあり個性ありの実戦形式でしっかり発散させるわよ」
通話を切って前腕で目を覆う。
「オバサンが期待してんじゃないわよ、バカらし」
それは性欲なのだろう。だとしたら子供相手になんとも情けない。
中年の、それもオバサンの地位は低い。本人が思っている以上に低い。
それに中年が若い集団の中で上手くやるには、処世術として自己評価を下げておいた方がなにかと都合が良い。それを表に出すかどうかは別として。
(今年で三十一よ、わたし。彼は十五でしょ? 干支が一周以上してる年上に
妙な希望を摘むように、関係を持てない理由を意識する。
それでも小さなムラつきを覚えたまま、ミッドナイトは個人職員室のデスクで恥ずかしさから小さく呻いた。
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放課後になり、女子更衣室でヒーローコスチュームに着替えたミッドナイトは格技場に足を踏み入れる。
室内は広々としており、個性やアイテムを気兼ねなく振るえる強度を満たす設計だ。整然と並んだ高窓から射す夕陽が、艶のある床材をぬらめかせていた。
照明を点けるほどではない薄暗さの中、先に来ていた彼は入念にストレッチしている。
立位前屈するとゆったりとした黒いトレーナーがずり落ちて背中が剥き出しになる。むっちりと隆起した実戦的な筋肉は、いかにも女受けがいいだろう。
ウォーミングアップで薄っすらと汗を纏ったなめらかな素肌がいちいちなまめかしい。
ミッドナイトの目元がピクリと反応する。
(この子はホント……)
「あ、先生。今日はよろしくお願いします」
上体を起こしてミッドナイトに気付き、屈託のない顔で言った。その様子からするに、まったくそんな気はないのだろう。
(無自覚でやってるんだからタチが悪いわ。クラスメートにオナネタにされても気にしないんだろうけど)
ほんの少し、大人げない苛立ちを冷ややかに当て付ける。
「……急にごめんね。ミルコ相手が良かったでしょうけど、担任としては把握しておきたかったから」
「いえ、おれもちょっとは強くなった所をミッドナイト先生に見せたかったんで」
その裏表のなさに、自己嫌悪を覚えた。
(あーダメだ。なんか最近この子の事になるとナーバスになる)
その理由はおおよそ見当がついている。
おそらくクラスメートの大半は、そう時を置かずして彼と肉体関係を結ぶだろう。後腐れも面倒もなく無軌道な性欲を吐き出せるドスケベ男子を相手に、いつまで指を咥えていられるだろう。
ひょっとしたらインターン先でもその肢体を貪られるかも。
だというのに、じぶんだけが誰に命じられたわけでもなく禁欲にある不平が燻ぶり続けているからだ。
その肉欲を、パチンと両頬を軽く叩いて気持ちを切り替えた。
(大丈夫大丈夫、わたし相手に興奮するわけない。しっかりしろ)
「とりあえず個性アイテム無しでやろっか」
「お願いします」
彼と相対する。二人が構えると言葉も無く補習は開始された。
探り合いの数打でミッドナイトは不利を察す。
そもそも彼女の基本戦術は【眠り香】による問答無用の面制圧にある。仮に肉薄されてもアイテムのリボンで打ち据えながら近距離戦闘を拒否して、有利な状況を維持しながら相手が【眠り香】を吸引をするまで耐久する。
ミルコのようにガチガチの肉弾戦は専門外。とはいえ、元プロの現教員でも純粋な体術レベルは学生に遅れは取らないつもりだったが……
(ミルコが言うほどだから相当だと思ってたけど、これほどとはね)
技量だけで言えばクラスでも頭一つ抜けており、合宿ではマンダレイなどの後方支援相手ならプロでも勝てた。
疑いよう無くトップクラスの実力ではあるが、裏を返せばそこから研鑽を積んでも伸びしろは少ない。
それでもなお拳を交えて進境を覚えるのはやはり精神的な振り切りがあるからだろう。ミッドナイトはそう推察した。
【体力】という直接的な戦闘力にならない個性。それでも誰かを助けることが出来ると心身で理解できた実経験による確信。
言ってしまえば自信と覚悟を深く刻んだに過ぎないが、案外それがバカにできないことをヒーローは知っている。
絶対に助ける、絶対に止める、絶対に諦めない。絶対に勝つ。
絶体絶命の窮地をその心意で切り開く事例は少なくないのだ。
(ミルコの評価どおり、大手事務所ならサイドキックに欲しいタイプ)
個性とのシナジー無しの体術オンリーはプロとして難しいが、ここまで練り上げられているのなら限定的状況のカウンターとして囲っておきたい。
人手の多い所なら彼のピーキーさをカバーできる。
打ち合いの合間、教え子の成長に鋭い笑みがこぼれた。
教師冥利に尽きる時であると同時に、久しい劣勢という状況が、闘争という興奮が、ヒーローとしての獰猛な部分を発露させる。
顎を狙ったフックを、すとんと前後開脚し体位を下げて躱す。後ろ脚を軸に立ち上がろうとするが食らいつかれ、追撃のコンパクトな蹴りを頭部を逸らして凌ぐ。
詰んだ、と理解したのは一手前からだった。
体勢を立て直す前に組み付かれ、馬乗りにされる。
ミッドナイトは呼吸を整えながら、パッと手のひらを開いて終わりを示して彼を見上げた。
「蹴り技とはね、足捌き重視の体術だから無いと思って油断してたわ」
おそらくミルコの補習の成果だろう。
攻防を個性に頼れない【体力】からすればフットワークが命綱。であれば脚を敵に向けるのはベターではないが、ミルコ直伝の技のキレがあるなら詰めの選択肢として抱えておくのもいい。
案外と言っては失礼だが、ちゃんと真面目にやっていたようだ。
「強くなったわね。うん、しっかり良くなってる」
「ありがとうございます、先生にそう言ってもらえると嬉しいです!」
ミッドナイトの腹が呼吸でゆっくりと上下する。機能性に優れたヒーローコスチュームは透湿性や防刃防弾防炎その他諸々が揃っているが、何と言っても薄くて軽い。なのでそこに如実に彼の臀部を感じた。
両脚の間にぶら下がっている柔らかな男の陰部の重みも。
ずくり、と熟れた女の部分が熱を持つ。
彼が腰を上げるとミッドナイトの本能は惜しがる。差し出された手を数瞬置いて掴み、立ち上がった。
(オナニーしたいオナニーしたいオナニーしたい)
これまで生徒をオカズにした事は無かったが、揺れる。
すでに緊張の糸は途切れ、欲望の首がもたげた。
もっともそれを表に出すほど若くは無い。いつもの教師の顔で接す。
「結構対策してた?」
「期末試験で先生と戦った時の映像で復習してました、その後のミルコ先生の講評とかも聞いたりして」
「ん、感心感心」
教え子の成長は自分の事のように嬉しい。自然と柔らかい笑みがこぼれる。
それを見て、おずおずと彼が切り出す。
「それであの……おれ、ミッドナイト先生が少しは安心できるくらいになれましたか?」
「え?」
思いもしなかった気遣いに、ぽかんとする。
「いや、職場体験の後で車に乗せてもらった時とか……他にもいろいろ気にかけてもらって、っていうか心配かけてばっかりだったんで。あっ、もちろんおれだけじゃなくてみんなの事も考えてるのはわかってるんですけど」
彼は言いながら、なんだか自意識過剰な気がして、じぶんだけ特別扱いされてると思われてそうでワタワタしだす。
「もちろんまだまだの実力ってのは理解してます! 仮免も持ってないですし……なんですけど、どう、ですか」
不安そうにこちらを見る彼に、そっか、とミッドナイトは母性を覚える。
こどもはいつだって大人に認められたいもの。それに、結果を出した生徒を褒めるのは教師の役割。
彼がビルボード級やそれに比肩するヒーローになることは、【体力】では不可能だ。
それでもきっと、いいヒーローになるとミッドナイトは自信を持って言える。彼の真っ直ぐなこころなら可能だ。
じぶんがそこまで押し上げる。ここ雄英でその手助けをする。
腕を組み、少し悪戯に口角を上げる。
「ま、ちょっとは頼もしくなったかな。まだまだ不安だけど」
「そう、ですか。ですよね」
喜ぶには不十分な評価に、彼は少し気落ちする。
「けどわたしが生徒を心配している内は、もっともっと成長できるって事よ? だから楽しみにしてるわ、わたしが安心してきみを雄英から送り出せるのを!」
確信に満ちた口調で、まだヒーローの卵から孵った雛に安心させるように言った。
「きみはちゃんとじぶんの強さと弱さを理解してて、出来る事を探し続けてる。上出来よ」
その言葉で彼はなんだか報われた気がして、頑張れる気がして、ちょっと泣きそうな気がして、感謝の言葉を口にすると震え声になる気がして、しばらく黙って俯いた。
ミッドナイトは、純粋に慈愛に満ちた瞳で落ち着くのを見守っていた。
そうしていたかった。
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不慣れな咳払いで彼が口を開く。
「すみません、待ってもらって」
「んーん、いいのいいの。まだ時間あるけど、続ける? 気になる事があるなら相談乗るわよ」
「えっと、じゃあそうですね……授業でやる一対多で苦戦してて」
「うちのクラスはなぜかチームワークが出来てるからね。相手取ると一層キツいってのはわかる」
彼の実力であれば、雑に徒党を組んでるヴィランなら個性次第でなんとかなる。しかし雄英の教育を受けており、かつ謎のちょっとエッチなイベントで絆の深まっている1-Aが相手では歯が立たない。それは彼が多の方に回った時、一として相対する1-Aの誰かにも言える。
ミッドナイトは顎に手をやり、思案を巡らせる。
「まず前提として一対多数がしんどいのはきみだけじゃない。個性にもよるし、基本的には誰だってそう。八百万や小森みたいな範囲攻撃が可能な個性使いは例外だけど。足掛かりとしては、そうねえ……ヴィランの立場で考えてみるとか」
「え!? それってどういう」
「いったんヒーローとしての思考の枷を外してやってみるってのは重要よ? そこから見えてくる選択肢もあるし。それにヴィランの思考に沿えるという事は、実戦で対処しやすくなるから」
この教育論は別段珍しいものではない。
入学してすぐの戦闘訓練で、ヒーロー側とヴィラン側で分かれて模擬の爆弾をやり取りしたのは記憶に新しい。
これで解決するほど単純な話ではないが、試行錯誤の一つとして有効だ。
「なるほど」
「今はわたし一人しかいないけど、ヴィラン側で対多数を想定してやってみる?」
少しだけ、彼がミッドナイトを遠慮の混ざった視線で眺める。
「えっと……先生が大丈夫なら、やりたいですけど。いいんですか?」
妙に口どもる彼に疑問が湧きもしたが、ヴィランを演じる事に抵抗がある生徒は珍しくない。
「んじゃわたしは、まあ、アイテム頼りの格下を無力化したって設定で。背後にはその場に居合わせた駆け出しのプロヒーローが二人、連携は取れてない。難度としては初級の問題かな。どう対応する?」
教師の立場である彼女の脳内には三通りの回答があった。
が、彼はそのどれとも違う行動に移る。
何の迷いも無くミッドナイトの背に腕を回す。
声が出なかった。
ゼロ距離でほどよく汗をかいた若いオスの香りが鼻腔に広がる。
彼は強張った女の身体を抱く腕に力を入れた。大きく柔らかな双丘が潰れ、お互いの鼓動の音が聞こえるほどに強く。そしてそっと、唇を耳に寄せる。
「動くな」
耳元にかかる吐息に、ひゅっ、と息をのむ。
ミッドナイトの心臓は、信じられない程脈打っていた。思考は追いつかず、まったく機能していない。とにかく身体が燃えるように熱い。
彼はそのまま、ミッドナイトの肩から首筋にかけて頬擦りするとともに、大げさに体と汗の香りを肺に入れる。頬に流れる一筋の玉のような汗を舐めとった。
それだけで、知らず知らずのうちにミッドナイトの乳首とクリトリスはビンビンに張りを見せ、呼吸が短く乱れる。
顔はとっくに紅潮し、目の端は潤む。
(これ、絶対濡れて……これ以上は……されたら)
たっぷりとした尻を男の大きな手で鷲掴みにされ、股の間にたくましい太ももを入れられた。
そのまま押し上げられた瞬間、快楽の欠片が秘部から脳まで響く。
「んぅ」
噛み締めた口の端から嬌声の芽吹きが漏れ出る。
さすがに彼も動揺して柔らかい女体を抱く腕の力を緩めた。
「すみません! やりすぎました」
が、今度はミッドナイトが離れようとする彼の身体を強く抱きしめる。
意図したものではなく、反射的に手放したくないという本能だった。自制すべきと理性ではわかっていても、抗いがたい肉欲の赴くまま彼の首筋に顔を摺り寄せ、嗅ぐだけで女を発情させる身体の匂いに夢中になる。
「あの、先生」
「なんで」
「え?」
「講評、するから説明、して」
かろうじて言葉を紡ぐ、まだ教師としての立場を守ろうと必死だった。それでも股の間の彼の足を、太ももでがっちりと捕まえたまま。
「その、期末試験のときミルコ先生が、ちょっといい男がいたら、ああいう事もするって、だから……」
彼はいつだって実直だった。ミッドナイトが提示したシチュエーションはほぼ期末試験の内容と同じで、従ってその時にヴィランを演じた彼女の行動を手本とするくらいには。
実際にはあそこで【眠り香】を吸引して記憶は途切れているのだが、後からちゃんとミルコの講評も目を通しているので『ヴィランを演じてるんだから、ちょっといい男がいればあーいう事するもんじゃねーの?』といった言葉を律儀に参考している。
ヴィランを演じた彼から見てミッドナイトはいい女だったので、同じ事をしたまでだった。
女の熱い体温を感じながらしどろもどろで答える彼の言葉に、子宮はずっと切なく疼きっぱなしだった。
興奮による震え声で小さく尋ねる。
「それって、わたしの事を、そういう対象として見れるって事?」
ミッドナイトの胎は、むくりと熱を持った身体の膨らみを感じた。それは瞬く間に力強さを示して脈動しだす。
「すみません、想像したらつい」
彼はたまにチンコで返事する。それが言葉よりも雄弁なので愚息は実直だった。愚直だ。
ふーっ、ふーっ、とミッドナイトは発情した呼吸を隠そうとはしなかった。そんな余裕も無い。
(すご、勃起ちんぽがわたしのお腹を、子宮を上からぐりぐりって押し付けて♡)
どうしても。どうしても我慢できなくなって、彼のがっちりした太ももに陰部を擦り付ける。ヒーローコスチューム着用時は肌着を身に着けておらず、ほぼ直接と言っていいほどの甘美な快楽に痺れた。
いけないとわかっていても抑えきれない。
「ご、ごめん。すぐ、終わるから……」
(少しだけ、少しだけ……んっ、ダメだ、わたし、最悪。生徒相手にこんな、でも無理ッ我慢なんて)
ゆっくりと腰を振り、ぷにぷにのマン肉をずりずりと這わせる。一般には出回らないほどの高性能素材で作られているコスチュームの吸水性にも限界が訪れ、ぬちゅりとした温かな淫液が彼の太ももを濡らす。
「あっ、はぁっ、っく。ごめん、ごめんね……んあぁ、っは」
耳元でミッドナイトの耐えるような嬌声を聞きながら、彼はぶつけられた欲望を受け入れた。安心させるように頭と背に手を回す。
「大丈夫ですよ、全然イヤじゃないですから。おれが原因ですし」
あやすように耳元で囁かれると、それだけで小さく身震いした。
「っふー、ふぅっ、あんっ♡ ほんとに、っぃい、ごめんな……さい」
やがて、一回りも歳の離れた、それも教え子に密着し謝罪を口にしながら、ゆっくりと果てた。
荒い息が整えられると、どちらからというわけもなく離れた。
ずっと密着していた胸部からは二人分の汗と熱気が立ち昇りる。彼の太ももからミッドナイトの秘部まで、粘質な淫液がねちょりと糸を引いてやがて途切れる。
「すっきりしました?」
あっけらかんとする彼に対して、ミッドナイトは顔を赤くしたまま汗を滴らせ、恥ずかしそうに視線を足元に落としたままだった。目を見て話せるわけがない。
消え入りそうな声で何度目かの謝罪を口にする。
「ご……ごめん、なさい。こんなことするつもりじゃ、なかったんだけど」
(うぅー、恥ず、こども相手に脚ズリでイくとか……ていうか罪悪感がいまさら)
「謝らないでください、おれも結構役得っていうか、その、先生のエッチな所を見れて嬉しいっていうか、ラッキーって感じなんで」
「そう言ってくれると助か」
視線を上げる途中でピタリと止まる。彼のショートパンツは見事に隆起しており、中の男根の力強い存在を主張していた。びくびくと脈打っている。
釘付けになった。
(わたしとエロい事をするのを想像して、勃起したチンポ……)
コスチュームに隠された肉棒の姿かたちを妄想して、ゴクリと生唾を飲む。
彼女が今まで、関係を踏みとどまれた理由は二つあった。
一つは生徒の目がある。いい歳したオバサンが手を出す事のみっともなさを露呈する恥ずかしさ。しかしそれはミルコという前例でハードルが下がった。
そして二つ目は、そもそも彼が三十路の女に
(ハメたい、挿れてみたい……わたしの膣で、食べたい。ハメたいハメたいハメたい! わたしだって思いっきりズコバコしたいのにッ!)
体育倉庫で見た、ミルコの太い腿に挟まれても頭を覗かせるほどのモノ。
「ねえ、それ、本当に、わたしで興奮してるの? よね?」
穴が開くほど見つめる視線の先を彼も見下ろし、今さら恥ずかしくなって前かがみになる。
「え? ああ、これはその、そうです。変ですよね、じぶんでもわかってるんですけど、気を抜くとすぐ反応しちゃって」
以前なら我慢できていたが、最近は性に奔放になりすぎてこの有様だった。パチモンAVアベンジャーズはたぶんとっくにデシメーションされ半壊した。
「そう……なんだ」
これまでとは違う心臓の高鳴りを、ミッドナイトは感じていた。股間をガン見しながら、乾いた作り笑いで言った。
「あ、あはは、ちょっと意外ね、わたしみたいなオ、三十路、いやまだ三十一だけど、興奮するんだ……若い子の方がいいのかと……ミルコだってまだ二十台だし。嬉しいんだけどね」
「ミッドナイト先生はすごい魅力的ですよ。生徒想いで、真剣になってくれるし、大人の色気っていうか」
「あ、そう、なんだ。はは……でもさすがに」
言葉尻がだんだん小さくなって、沈黙が降りる。
据え膳を前にして手を付ける勇気が無いのではない。様々なシガラミが彼女を引き留めさせていた。そもそも一回りも年下相手の誘い文句など考えた事も無く、いたって正常な反応。
これが同年代ならば、こんなに緊張と戸惑いの中に居る事も無かった。
彼がそっと助け舟を出す。
「実はもう一つ相談に乗ってほしい事があって……」
ミッドナイトは横髪を意味も無く後ろになでつける。
「ん? え? あ、なに?」
見るからに精神的に憔悴しているミッドナイトの手を取って言った。
「先生に助けてほしい事があって」
何を? とは言えなかった。そこまで臆病ではいられない。視線の先で、衣類の下で苦しそうに怒張している男根を前にしては。
「ここだとちょっと人目に付くかもなんで」
向かった先は、更衣室だった。統一規格のロッカーが整然と並び、無機質な背景となっていた。
火照った身体の熟れた女教師と瑞々しい男子生徒は、その中にあって一層のこと生々しい。
香山は見覚えのあるシチュエーションに、大きく固唾を飲んだ。フィクションだったとしても、その結末が鼻で笑うようなものだとわかっていても。
犯罪でも無ければしょせんは夢と切り捨てたはずの浅慮が、現実として衝突してきたのだから。