【R-18】男女比率がおかしい貞操観念逆転アカデミアだけど強く生きよう 作:hige2902
「め、目止めって……事は」
戸惑いをこぼして、彼は芦戸を見やる。いつものさっぱりとした明るさは無く、その顔は羞恥で上気している。
目止めとは隠語で女子が処女を失う事を意味し、古くは茶葉を保管する茶壷を初めて使う際の手入れに由来する。
こじんまりとした茶壷が何を暗喩しているかは言うに及ばずだが、ねっっっとりとした粘土を焼いて作られた陶器には無数の小さな凹凸がある。そのままでも使えなくはないが、やがては水漏れの原因になりうる。
そこで行うのが目止めだ。
やり方は簡単で、米のとぎ汁、もしくは水に小麦粉または片栗粉を溶いたものを用意する。その白濁液が何を暗喩しているかはやはり言うに及ばずなので省略するが、それで茶壷を煮ると凹凸をでんぷん質が塞ぎ、コーティングしてくれるというわけだ。
ゴムの無い大昔では、煮た後に取り出した茶壷から滴る白い水溶液が、射精直前に膣から男性器を抜けなかった初々しい女性の性交のように見えたらしい。
もちろん現代でも処女食い目止めもののAVは数多く存在している。
言葉を失う彼に、ここは女を見せなければと芦戸が震える声を振り絞る。もう後には引けないところまで来てしまったのだ。
「あのさ! ……いろいろ聞いたっていうかまあ全部聞いた。甲矢先輩から。けっこう我慢してるんでしょ? だからわたしも、その手伝うっていうか協力っていうか」
「い、いいの?」
と彼が慎重に確認する。
「けど、引かない? 同級生が女好きって……」
不安そうに言う彼に、芦戸は答える。
「最初聞いたときはちょっとショックだったけど、でも……それはただの性癖じゃん!? そんなんで嫌いにならないよ! だってほら、わたしら、友達だし!」
それを聞いて、なんだか無性に嬉しくなった彼は思わず芦戸に抱きついた。
「て、ていうか逆にわたしでいいのかっていうか、あ~」
芦戸は小さく身震いして、彼の首筋からこっそりと汗を嗅ぐ。
(おあ~なんで男ってこんないい匂いするんだー)
完全にスイッチが入り、不安や恐れは性欲と好奇心で塗りつぶされた。下着が湿り気を帯びる。
頃合いを見た甲矢が、「じゃあ外に出てるから」 とだけ残して扉を閉める。木々のざわめきと、普通科などが打ち込む部活の声、楽器の音色が遠く聞こえる放課後だった。
ややあって、彼が芦戸を放す。
「じゃあ……しよっか」
「あ、うん」
(こんなあっさり進んでいいのか?)
うんと言ったはいいが、彼が制服のボタンを上から外していくのをぼーっと眺める。その視線に気づいた彼が少し笑って言った。
「下、脱がせてみる?」
「え、あ、ありがとう」
(いやなんでありがとうなんだよ。もっと気の利いたこと言えないのか)
緊張のせいか微妙な受け答えをしてしまい、どことなく処女臭さを露呈してしまった事にバツが悪くなる。しかしありがたいことには違いなかったのだからしょうがない。
しゃがんで、チャックに手をかけようとして止まる。
(ていうか、あれ、どうすればいいんだっけ? チャックだけ開けてポロンはマズいんだったか。脱がせる? って尋ねたんだし。てことはやっぱベルト、チャック、下着ごとずり降ろす? それだと男性が恥ずかしがるから、いったんパンツだけ残した方がいいって聞いたこともあるけど)
芦戸の好みで言えば本当はチャックだけポロン派だが、あれは創作の中だけで、実際にやると金属のファスナーが当たって痛いので嫌がられる。というのが頭の片隅にあるにはあった。
こんなことなら前もってしっかり予習すればよかったと後悔するが、まさか今日いきなりとは思わなかったので仕方がない。出来る限りの見栄を張るしか。
とにかく答えはわからないが、いつまでも手間取っていては男性を不安にさせるだけだってネットで見た。思い切ってベルト、チャック、下着ごと方式を取る。
そしてついにモザイクの向こうに隠された真実と対面した。
(あっ、へえ~こんな感じなんだ。思ったより……っていうかやっぱ創作のチンコはやり過ぎだな)
というのが芦戸の素直な感想だった。
彼のそれは重力に逆らうほどの力を感じられる程度に膨張しているが、マンガなどのブツよりはやはり頼りない。
それでも感動を覚えるには十分だ。さっそくというか女性のサガというか、ついサイズを確かめたくなる。
「さ、触っていい?」
「いいよ」
ふんわりと根元に小指の付け根を当てて握る。温かく、柔らかすぎない弾力があった。長さはちょうど人差し指の付け根から頭がのぞくくらいで、一般的。
(うわ~触っちゃってる。なんかちょっとカワイイかも♡ これ、今から挿入れていいんだ)
芦戸は思わずニヤケ顔でムニムニと揉む。ずっとそうしていたいくらい、触り心地が良かった。しかしそのカワイイ男性器に異変が起こる。
温かかったはずが熱くなり、柔らかすぎなかったはずが明確に硬くなっていく。亀頭は膨らみを帯びて上を向き、陰茎にはビキビキと血潮が巡って血管が走る。
魔法のように別の生命へと形を変えたようだった。
「え?」
と芦戸はニヤケ顔を凍らせて呆ける。男根を握る手が震えた。思わず手放す。
(なに、これ。太さが、サイズも、手から完全に突き出して……え? だいたい握った時の手の甲の幅くらいって話じゃなかったっけ? ん~、なんか計測方法間違えてる?)
「あはは、グロいよね。期待してた感じと違ってたらゴメンね」
引かせてしまったかと申し訳なさそうに言う彼に、芦戸はいきり勃つ男根を凝視しながらかろうじて言葉をこぼす。
「い、いや、全然、そんな事無い。っていうか……めちゃくちゃカッコよくて、すっごいエロい。マジで」
全体に走る力強くぼこぼこと浮き出た血管、かと思えば亀頭はツルリと艶やかで美しいとさえ思えた。太く隆起した尿道が、これから精子を出す量を示唆しているようで頼もしく、矢じりの返しのようなカリは凶悪な武器とさえ感じる。
(これが勃起したチンコ。こんなの……こんなの女のマンコを気持ちよくさせる為だけにある形じゃん!?)
それはエッチなマンガやアニメで壺役のオバサンやチャラ女が凌辱するときによく言うセリフだったが、少なくとも芦戸には真実に思えた。
(ってか創作チンポってホントにあるんだ。うわーこんなの、うわあ。さっきのは半勃ちってやつか)
芦戸の心臓が強く脈打った。乱雑にネクタイを放り、胸元のボタン外す。スカートと下着を脱ぎ捨てる。しっかりと染みが付いていた。
挿入れたい。という欲望があるが、ここからどうもっていけばいいのかわからない。
察した彼が芦戸の両手を取って、ゆっくりと体操マットに仰向けに寝転がる。自然と騎乗位になった。目が合う。
先ほどまでの鬱屈した感情はもう無い。目の前の雄のチンポを、じぶんの体内に入れたくてたまらない。
ギラついた瞳で芦戸が言った。
「い、いい?」
糸を引く愛液が、ぽたりと男根に滴り落ちた。
「……ちょっと待ってね」
彼は近くに置いてあった鞄に片手を伸ばし、がさごそと漁ってゴムを取り出す。それに気づいて、慌てて芦戸がポケットから同じものを引っ張り出して見せる。さすがに男が予備で持っていたであろう物を使わせるわけにはいかない。女の沽券にかかわる。
(てゆーかまずは避妊だろ、なにやってんだわたし!)
「あ、ある。あるからそれ」
「ありがと、用意してくれてたんだ」
微笑んでひょいと受け取り、手早く装着する。
ちょっと付けてみたかったけどな、と芦戸は思ったが、初めて使うという事と緊張も相まって手間取るだろうというのは、彼にはわかっている。女性として、それがちょっぴり恥ずかしいと思ってしまう事も。だからあえてじぶんで被せたのだ。
「はい。いいよ」
「じゃあ、挿入れるね。嫌だったら、やめるから。言って」
意図せず何かのエロマンガで見たセリフをそのまんま言って片手でスカートを捲り、ゆっくり腰を下ろす。もう片方の手でくぱりと陰唇を広げ、期待でヒクつく膣口を、亀頭にあてがった。
彼はそっと左手をムスコに沿えて正確に入るよう調整した。なかなかうまく挿入できずに焦ってしまうと女性はちょっぴり恥ずかしい思いをする、というのも彼は理解していた。
せっかくの芦戸の初体験なのだから、出来るだけいい思い出にしてあげたい。
「んっ! おっおぉ、すっ……すご、あっ入って」
蒸し暑い学校の倉庫で、男女の性器が触れ合う。
にゅぷりと亀頭を咥え込むと、後はにゅぐにゅぐと入っていく。その膣の動きには覚えがあった。
(あっ! やばっ♡ マンコがローターと勘違いしていつも遊んでる位置まで先っぽを飲んで……こっちの方が全然大きいのにっ、んっ、苦しいけどこれ、はあっ、イイ……てかいっつもオナってるってバレたりとかしないのかな)
今はどうでもいい余計な考えも、すぐに吹き飛ぶ。
男根が恥肉を掻き分けて気に入りのスポットを通り過ぎ、一気に一時封鎖されている行き止まりまで突き進んだ。
「ん“!? んあっ? これちょっと待っあっ!」
体験した事の無い感覚がヒリつく。
「ふぁあ、あっ。ふぅ。ぜ、全部……挿入った?」
入ってないが、彼は気持ちいい事を伝える。真実を語るだけが優しさではない。彼は気遣いの出来るヤツだった。よくよく考えれば、じぶんの尻が彼の腹につかない事からわかりそうなものだが、案外テンパってると気が付かないものだ。
それに満足すると、芦戸はゆっくりとたどたどしく腰を上下させる。いつもイジメている所へ、先っぽを擦り付ける。にゅっこにゅっこと浅く出し入れした。
カリがいつもの場所を通り過ぎるたびに引っ掻いて声が出る。もちろん破瓜の痛みはとうの昔にじぶんで済ませたので、気持ちよさだけを味わう。
(やった! もう処女捨てちゃった! しかもクラスメイトと学校で! やばっエロマンガかよ)
一般的に処女の喪失とは膜を破る事では無く、男性器で貫通するという経験そのものを指す。
そもそも物理的な処女膜を後生大事に残すメリットは少ない。だってオナニーの快楽追及の邪魔だし、処女の物証だし。
「んんっ、っああ。ごめん、声出ちゃうね、これ。ふふっ……んっんっんっ!」
彼が芦戸のマンコを狭いだとか小さいだとか言って喘ぐ。基本的に性器を褒められると嬉しいらしいので、よく口にする。主にサイズが小さい事とか、後は柔らかさとか、濡れている具合とか。実際にその通り気持ちいいので嘘では無いし、露骨に喜ぶのでこっちまで嬉しくなってくる。
「そ、そお? あっあっ。へへっ、わたしのマンコそんなにいいんだ? ふ、ふぅん……言っとくけど、奥まで入ったのは最初の時だけだからね。んふっ、こ、これからもっと気持ちよくしてあげるから」
なんか調子に乗り始めたが、若さとは増長だ。仕方がない。というか、これに関しては彼にも非がある。
心の性欲ヴィランを鎮める為、パチモンヒーローもののAVを目に焼き付けて内にアッセンブルした結果、女性の喜ぶリアクションを学習してしまい、実際にやってみるとじぶんも結構燃えたのでその振舞いに躊躇が無い。
多少勘違いしてしまうのも止む無しだ。
「んじゃそろそろ本気で食べるから……ねっ!」
彼を見下ろしたまま舌なめずりして、思い切って腰を落とす。ゴツリと子宮が突き上げられた。その衝撃でピュッと短く潮が漏れる。
「ふぎゅん!? ちょっこれ、んっぅく!! これ、は、違くて。っはっはっはぁ♡ イってないから、まだぁ。これただの軽イキでぇ」
早漏と思われたくないのか、軽イキとマジイキの説明をしようとしたが今はそれどころではなかった。
(もっと、もっとさっきの欲しい。もっと気持ちよくなりたい)
恐る恐る、震える脚腰でチンポをある程度まで引き抜き、再び奥まで咥え込む。何度か繰り返すうちに、ヘコヘコと頼りないが形にはなってきた。
十代の思春期の体温と蒸し暑い室内、それに腰振り身体を動かした発熱でどろどろに溶けきった滾るような肉壺でチンポを貪る。
「あっこれイイ! 凄い気持ちいいこれっ! あっあっああ~!」
(おおぉ、チンポ全部食べる腰振りッ! 最っっ高!)
全部は食べてない。
「ひゃうっ、わかる? これ、いまチュッってしたところ♡ この奥の子宮口で先っぽイジメるのっ! おぉっ、ふぁああ、これクセになるっ!」
とんっ、とんっ、と小さな子宮口を打ちつけた。響くような快楽が脳に直撃する。
陰茎は引き締まった狭い膣内でプリプリのヒダにシゴかれ、亀頭にはクニクニとした弾力のある感触で何度も口づけされる。
彼が見上げる芦戸は、異性を気持ちよくさせているという満足感に酔いながら、息を荒くしてゆっさゆっさと胸を揺らし貪欲に快楽を貪っている。
芦戸の額や頬を流れた汗が、すでに何滴も彼の腹に落ちている。彼女の汗ばんだ半袖の白い夏服は、薄いエメラルドグリーンのブラを薄っすらと透けて見せ、むわりと発情するメスの甘い色香が彼の鼻腔をくすぐる。
「え? イキそう? ふぅーふぅ~……ちょっと待ってね♡ んっ、いいよぉ、一緒にイカせてあげるからね。んしょ……ンッ!」
芦戸が下腹部に力を込めると、更にキュっと膣肉が締まる。カポエイラを体術として使用しているだけあって、下半身の体幹や筋力には自信があった。それに、本人の自覚もないままに、甲矢への対抗心がそうさせた。
(んおおっ! これヤバい、ちょっと感じて気を抜くと戻るけど、同時にイキたいし……)
彼にカッコいいところを見せたくて、なんとか膣に意識を集中させて状態を維持する。
「どう? これ、更に狭くなったんじゃない? ふぅっ、すぅー、はぁ。動くよ? んっんっ、っくぅ、んああっ! あっ! あっ! あっ! あーイクイク、またイクッ! 良すぎるよぉ、このチンポッ!」
ぐちゅぐちゅと腰を振り、連続軽イキの弁解など忘れてチンポの事だけを考える。
「んあぁんっ、ダメ! ダメダメダメッ! もう無理、イク、ほんとのやつでイク! マジイキしゃちゃう! 吹くぅううッ!!」
最後のピストンで、腰を打ちつけた。盛大に潮吹きし、その瞬間、子宮口がほんの少し、僅かに亀頭を飲んだ。
(んおっ! おぉ♡ これっ──!?!? 開いてる!? 子宮口が?)
その状態で彼も達した。どぴゅどぴゅ、びゅくびゅくと粘質な白濁液を何度も何度も男根を跳ねさせながら、芦戸の狭い子宮へ流し込む。すぐにパンパンに満たされた。
「あっっつ、すごい、内側から、はぁ、はぁ、はあ~♡ 膨らんで、圧迫されて……ひゅぅ、また、あっあっ♡ あぁ~気持ちい~~」
いつまでもそうしていたい気分だったが、どれだけ射精させたのか気になったので抜くことにした。精液の塊が子宮口をなんとか通る。
「っあは、最後抜くときイイなこれ」
腰を浮かせると、甘い淫液の香りが濃厚になる。
そうして引き釣り出した戦果に目を輝かせた。心の中でガッツポーズする。
(やたっ! すごい搾った! え、わたしマジカルマンコ持ち?)
そっと、宝物を手にするようにゴムを外してなんとなくの知識で口を縛り、まじまじとホカホカの勲章を確認する。
(ん~~なんかAVよりめっちゃ多い気がするんだけど、気のせい? ってかこれ飲んでみたらさすがに引かれるかなー、引くよなーたぶん。ま、気になるけどもうちょっと探り入れてからでもいっか)
「……いっぱい吹いたね」
彼が少しからかうように言って、上体を起こして腹部を見せつける。快楽を貪った女の汗と、さまざまな淫液でビシャビシャだった。それで芦戸はハッとして慌てる。
「あっ! あータオルってある? ごめん、急だったからそういうの用意してなくて」
「そこの箱に入ってる」
向けられた視線の先には、明らかに個人が持ち込んだ倉庫には似つかわしくないプラ箱があった。開けると清潔なタオルが何枚か整理されており、端には未開封のコンドームが一箱ある。
とりあえずタオルを手に取り、いそいそと彼の身体を拭いた。
「ありがと」
「いやいや、わたしがやって当然だから」
(あ、危なかったー。男に後始末させるところだった。ギリギリで先に気付けて良かった)
女は吹いても男に拭かすな。
とは誰が言ったか行為後のマナーとして昔から広く知られている。理由としては深く語る事もないだろう。
甲斐甲斐しくキレイにしてくれるが、なぜか片手には使用済みゴムを握ったまま手放そうとしないので、彼はクスリと笑う。
「あのさあ」
とタオルを裏返して太ももを拭い、顔を伏せたまま芦戸が尋ねる。
「その、どうだった? 気持ちよかった?」
なぜかエッチが終わると必ずと言っていいほど聞いてくる質問だ。それに対する回答も、彼は当然持ち合わせている。
「うーん。百点満点で言うと」
ゴクリと固唾を飲む音が聞こえ気さえした。
「五千兆点くらい! すっごい良かったよ、精子もいっぱい出されちゃったし」
「え、あそう。ならよかった」
聞いてきたくせに興味無さそうな口ぶりだが、にまぁ~~~~と口元は笑っている。その顔を見るのが、彼は訳もなく大好きだった。
「でも、今更だけどホントにおれが初めての相手でよかったの?」
「いやもう全然、そんな気にしないで。ていうかこっちこそわたしでよかったのかなーって感じ?」
探るように彼を盗み見る。
落日の中にあって穏やかな微笑みはこの上なく淫靡で、暖かく濡れた影があり、雫のようだった。
「そっか、じゃあ大切にするね。芦戸さんの処女を貰った想い出」
兎のように心臓が跳ねた。反射的に目を逸らす。言葉が見つからなくて、生返事で誤魔化すした。
(うおっ! なんだ!? エッチっていうか、なんていうか湿度みたいな……なんだ!?)
動揺を落ち着かせるように無心で身体を拭いてると、ふと床に置きっぱなしにしていた二個目のゴムに目が留まる。
全然隠しきれてない欲を可能な限り遠大にして口にした。
「あ、もう一個ある……ね」
あるからなんだ。という話だが、タイミングよく扉が開けられた。甲矢は突き出された桃色の尻に目をやり、その丸出しの割れ目を一瞥する。どうやら最高の目止めになったらしい。
「終わった? よね」
「あーはい」
と芦戸は少し残念そう。
「でも貰ったゴムはあと一個あって」
「おバカ」
と角の間に軽くチョップする。
「それは万一途中で外れた時の予備だって言ったろ」
そうだった、と大人しく引き下がる。ラスイチは使うなの教えだ。最後の一個が途中でダメになり、予備すら無ければ当然行為は打ち切られる。その際は大いに男性の不興を買うハメになるのだ。
もちろん彼のゴムに手を付けるわけにはいかないし、そもそも男は一度イクと連続で勃たないと聞く。なら、尚のことの諦めがつく。
「ひょっとして、タオルが入ってた箱にあったのって?」
「緊急用だからどうしてもって時は使ってもいいけど、個数管理が面倒だから後日同じものを箱ごと交換って決まり」
「へえ~」
(ん? なんか変……っていうか。一気に何個も使う事が前提の気がするんだけど? 一回出したら勃たなくなるんだから、そんなに気にする必要はない気がするけど。過剰っていうか……)
けど、避妊に気を使える女性って男性から好印象らしいし、と違和感は適当に放り捨てた。
そんな芦戸の試算を知ってか知らずか、彼はそっと上目遣いで甲矢を見上げる。抗いがたい誘惑を断ち切るように視線を泳がせていたので、今日は別用と察し、着崩した制服を直してズボンを履く。
咳払いで甲矢が言った。
「あー、あと芦戸、隅に洗面器と手洗い用の洗剤あるから、じぶんのマンコも拭いたらタオルは外の水道で洗ってきて」
「……先輩、なんか手際がめっちゃ確立されてますけど、いったいいつから……」
「言うて最近の話なんだけどね。近くにちょうどいい感じの木があるからそこに干して、使った人が翌日プラ箱に収めるルールだから。天気が悪い日や冬場でどうしても乾きそうにない時は持って帰って洗濯ね。だからビニールは持参な。親になんか言われそうなら雄英の施設でなんとかしてもいいけど」
「そんなとこあるんですか?」
少し足を開いて立ち上がり、さするように濡れたマンコの水気を取りながら尋ねる。
「シャワールームのドライヤーとか、知り合いがいるならアイテム科の試射場とか──は、遠いけど学校の貸し出し電チャ漕げばなんとかなるよ。紛失は自腹で」
本当に最近かな~? と芦戸は疑わし気な顔で下着を履く。
「あのー甲矢先輩、やっぱりおれも少しは何か……」
「いや! これはわたしらがやるべき事だから。逆にきみがタオル代とか後始末を手伝われると女としてのプライドが傷つく」
安いプライドと笑うヤツもいるかもしれないがしかし、学生が出来る精一杯の背伸びと見栄を、彼は大切にする事にした。
「で、実は二人には頼みがあって」
こいついつまで使用済みゴム持ってるつもりなんだろ? と甲矢は芦戸をチラと見て思った。
「急に目止めを頼んだのも合宿が近くて時間が足りなかったからなんだけど」
なんで合宿に関係が? と二人は顔を見合わせ、甲矢に向き直る。無言で続きを促した。
「芦戸、おまえには今日からコイツを読んで勉強してもらうからな!」
言って、スマホを操作する。
着信を認めた芦戸の画面には、デジタルコンテンツの個人間貸し出し機能──オーナーは貸出期間中は読めない。最大で三日。配信アプリ依存──を利用したURLが表示されていた。
タップすると、守備範囲外のブツが出てくる。
芦戸が眉をひそめて尋ねた。
「これ、甲矢先輩の趣味ですかあ?」