【R-18】男女比率がおかしい貞操観念逆転アカデミアだけど強く生きよう 作:hige2902
ほんの数日で校舎の隣に、地上五階、地下一階の大きな寮が竣工した。
眩しいほどの夏の日差しを浴びているハイツアライアンスと命名されたその建物は、正面にでかでかと1-Aの文字が掲げられている。
つまりはクラスの数だけ他にも同じような寮が雄英敷地内に建てられており、それを可能とする物量にはただただ驚くほかない。
パンツスーツ姿のミッドナイトが、疲れた顔でハイツアライアンスを見上げていた。
パルテノン神殿のようなギリシャ様式の円柱が設えられた外装も相まって、荘厳な雰囲気を纏っている。
設計はホテルとワンルームマンションのいいとこ取りと言った具合で、談話室やエントランスもある。過不足ないどころか十分すぎるほどだ。
今は各生徒が荷物の持ち込みでドタバタしており、教師としての役目はようやく一段落付いたところ。本格的な寮生活にはもう少しかかる。
全寮制に移行した原因は供儀聖典で彼が、また合宿でミルコが誘拐された事にある。なので教師陣の寮も別棟に建てられ、そちらは生徒よりも部屋面積が広かったりする。
教師陣はともかくとして、今のミッドナイトの疲弊の原因は生徒の部屋割りだった。
保護者に説明した時、彼の両親から息子をよろしくお願いします、と言われた時の事を思い出す。
少しだけ不安さが滲んでいた。男女比が偏っている上、同じ棟なのだから危惧するところも理解できる。同時に、ヒーロー科の人間がまさかそんなといった認知バイアスが生まれるのも仕方がない。
(ダメだっ! どう割り振ってもエロい方向に発展する気しかしない!)
ミッドナイトはタブレットに表示されている部屋割り表を再びリセットした。ワンフロアに八部屋の間取りに記載されていた名前が空白になる。
居住スペースである二~五階の組み合わせの熟考がまた始まった。
二階より上は左右で区切られており、男女のスペースが分けられているので同フロアでも行き来は出来ない。そうするには一階を経由する必要がある。だがそれだけだとどうも怪しい気がする。
寮は上から見た時に中庭を中心とするロの字型の構造なので、窓を開けていれば個性によっては簡単に行き来できる構造上の問題もあった。
最上階のワンフロアに彼一人ならと考えたが、それはそれで連れ込みやすいだけ。かといって他の女生徒の感覚で割り振っても、同じフロアの人間と関係を持つだけな気がする。すごい失礼な考えだが。
八百万とは階を出来るだけ離した方が良い事くらいしか判断できずにいた。
(芦戸とはもうヤってるから……いや、それがバレたらわたしもわたしもで大変な事になるんじゃ……)
このままでは彼がエロマンガでよくある、みんなの性処理委員長になってしまう!
しかしいつまでも悩んでいる暇はなかった。雄英のバカげた建設能力によりたったの数日で工期は終わり、すぐに入寮するのだから。
(頼んだわよ、小森、拳藤、蛙吹、塩崎!)
二階にその四人と彼を配置し、後はまあ適当に決めた。
小森は彼に対して尊敬の念を抱いているし、拳藤は八百万のストッパーになるほど性に対して保守的だ。蛙吹と塩崎は分別が付いているように見え、彼の性癖を知っても自らを律する事が期待できる。
「……疲れた」
思わずぽつりとこぼした。
ここのところ肉体的にも精神的にもハードだったが、それもようやく終わりを迎えたのだ。
やれる事はやった。
身体の疲労を吐き出すように、深い溜息をついて寮を後にする。
じんわりとセミが鳴きだしていた。
暑い。早く冷えたコーヒーを飲もう。ランチラッシュで何か……そう言えば季節限定のデザートがどうのこうのと耳にしたの思い出す。
歩きながら、不意に気持ちが前向きになる。とにかく厄介事を一つ片づけたのだ。
それに考え過ぎなのかもしれない。
芦戸が甲矢と接点があったからたまたまそうなっただけ。
常識的に考えれば、高校一年生が友達といきなりヤれる訳が無い。
ミッドナイトは強くなる陽ざしからも、半ば現実逃避気味にランチラッシュへと急いだ。
xxxxxx
「そーいやさ、結局あいつの性癖ってなんだったんだろ」
頭の後ろで手を組んだまま、取蔭が零す。
渡我が編入する際に性癖暴露大会になった時の事を思い起こした。
一口いい? と耳郎のカフェオレをくぴりとやる。
「あー、ちょうどいいとこでミッドナイト先生が来ちゃったからなあ」
耳郎が頬杖をついたままボヤく。
芦戸は食べさしたアイスキャンディーをいったん口から離し、再び咥えるように舐める。
1-Aのエロ女爵位三銃士こと芦戸、取蔭、耳郎の三人は引っ越し作業を終えて雄英敷地内の飲食スペースで駄弁っていた。屋外にはこういった休憩所が多々あり、屋根とベンチ、テーブル、場所によってはアイスや飲料の自販機も併設されている。
白樺の雑木林がぬるい風にざわめく。枝が落ちた後の「へ」の字型の黒ぶちが刻まれた白い樹皮は、夕焼けで赤いベールを纏っているかのように色を変えていた。
熱容量の低い自然豊かな場所では、この時間ならそれなりに涼しい。
奇妙な沈黙が一瞬だけ降りる。
「ていういか芦戸さーちょっと前から気になってたんだけどさ」
取蔭が色の無い瞳で芦戸を覗き込む。
「あいつとなんかあった?」
「え? なんで? 何も無いけど」
きょとんとした顔で返す。
先ほどからまったく姿勢を変えないまま、耳郎が無感動に言う。
「わたしに嘘つくなら心拍変動と調音の変化に気を付けた方が良いよ」
「そういう生理反応って、必ずしも相手が嘘をついている事を示す訳じゃないんだけど」
場を緩めるべく少しおどけてみせる。
「んー? 芦戸にはわたしや耳郎が警察官や裁判官に見えるわけ? 法的信用度とかはどーでもよくて。わたしが、なぁんか最近ふたりの距離が意図的に遠い気がしたのと、たった今【イヤホンジャック】が掴んだ振動で十分」
追い詰められた被告の油汗のように、ぼたりと溶けたアイスの雫がテーブルに落ちる。
バレてしまっては仕方がない。もとより時間の問題だとは考えていた。何かの偶然や気まぐれが重なり、彼との情事が耳郎の個性で拾われる可能性は十分にあった。
おどけたままの表情で固まった芦戸に、取蔭は短く溜息をついて頭を掻く。
この反応を見るに、耳郎と話し合った通り確実なのだろう。
二人が付き合っているのは。
「……いや別にわたしらは怒ってるわけじゃなくて、ちょっとは怒ってるけど、言ってくれも良かったんじゃない? って話」
「ウチは怒ってる。嫉妬だけど。いや、ん~でもやっぱ信頼してほしかった、言いふらすわけないんだからさ!」
「ごめん!」
芦戸は勢いよく頭を下げる。
「けどなかなか言い出せなくて、あいつとしても大っぴらにしたい雰囲気じゃなかったというか、現状維持で十分満足してたから」
少なくとも嘘の兆候は無い。
「そういう、事ならまあウチは……でも羨まし──ー! けどマジィ!?」
「っだよねぇー! 芦戸がイケたんならわたしらでも可能性あったし!」
「あーまあ正直わたしは運が良かったって言うか、たぶん全然ふたりもオッケーだと思うよ」
もうちょっとアタックすればよかったという後悔が二人を苛み、それを無理やり若い学生の高いテンションで乗り切ろうと必死だった。
別に彼の事が本気で好きだったわけでは無いし、同時に友人がやり遂げたという喜びも確かにある。複雑だが、ここは祝うのがエロ女爵三銃士としての立ち振る舞いだろう。
「いやでもウチらでもアリって言ってくれるのは嬉しいけどさ、芦戸を選んだんでしょ。あ゙あぁーなんか一足先を越された気分、気分じゃなくて実際そうなんだけど」
「だったら尚更押していけばよかったわー! ちょくちょく良さげな雰囲気になりそうな瞬間はあったんだけどなー、なんかエロい目で見られてるような気もしてんだけど自意識過剰かと思うじゃん?」
恋愛におけるたらればを若干早口で続ける二人に対して、芦戸は少しばかりの心の余裕が出てきた。暗い雰囲気になるかと危惧しただけに、このバカっぽい女子高生のギャップは助かる。
「いやいや実際そうだと思うよ。さっきは現状維持で満足してるって言ったけど、ホントはもっともっとって感じだし」
「え、えぇ……それってアレ? アッチの方でって意味?」
なんだか聞いてはいけない内容だが無性に気になりもする。芦戸は得意げに、耳郎はにへぇっとして、取蔭は眉間にしわを寄せ、ん? と中空に視線をやる。
「ち、ちなみになんだけど、どこまで行ったの? ウチらに言える範囲でいいんだけど。も、もうヤった? なわけないよね、早過ぎるってか、き、キスとかもうした?」
にやりとして答える。
「ヤった! めっっっちゃくちゃ良いよ! いやもうね、なんだろ、身体の相性? わかんないけど」
ぱっと顔を輝かせて語る。
「最初はちゃんと射精させられるか不安で死にそうだったけど何とかなったし」
「もうそこまでいってんの!? いいなぁ……けどなんかちょっと落ち込んできながら興奮してきた、友達の二人がヤってるって事実に。オモチャでクチュるのとはやっぱ違う?」
「オナるのはオナるのでいいんだけど、うーん、やっぱディルドとチンポは違うっていうか。大きさもそうだけど肉感がいいというか、ほんと肉棒、アレは女を気持ちよくさせる為だけの形状。あと射精させた時の達成感? みたいな」
「いぃ──なぁ──」
耳郎は天を仰ぎ見る。口にはしないが、これから寮生活が始まる。きっと……と想像すると多少は腐りもした。
「くっそ、やっぱ羨ましいわ」
「んじゃあこんど話つけつくよ」
はあ? といった表情を向ける。
「あーわかるわかる、わたしも話を持ちかけられた時そんな感じだったんだけど、意外と」
なんだか過去のじぶんを見ているようで懐かしい、芦戸は子供を安心させるような心境だった。
取蔭が重い口を挟んだ。
「芦戸はあいつと付き合ってるだよな?」
「いや」
二人は強く目を閉じ、頭を抱えた。
話違ってきたな。
その反応を見て芦戸も強く目を閉じ、頭を抱えた。
話違ってたんだな。
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「つまりこういう事? わたしらに黙って都合よくヤりまくってたと。友達のわたしらに黙って独占してたわけだ」
「入学してすぐ、戦闘訓練の映像のあいつをオカズにクチュった事を白状し合ったウチらの仲だと思ってたけどな」
取蔭と耳郎が威圧的に腕を組み、正座する芦戸を見下ろす。
「い、いやそんなに機会って無くってシまくってた訳じゃ……それにさ、あいつもバックだって事は積極的に言ってるわけじゃないし、そーいうプライベートな事を勝手に第三者に喋るのもどうかと思いまして」
しどろもどろの芦戸の言い分にも一理ある。果たして本人の意に反して、女好きの淫乱ドスケベ男だと口外するのは正しいのか。褒められた行為ではないだろう。
「それもそうだが、有罪だな。耳郎は?」
「実刑。まあ情状酌量の余地はあるけど」
「えぇ~だって~わたしがバラしていいかわかんなかったしさあー」
「それとは別件、罪状は単純に羨ましいから」
なんとも理不尽な判決だが、役得だったのは事実なので言い返せない。
「……それでぇ、さっきの話の続きなんだけど」
耳郎が視線を彷徨わせながら歯切れ悪く言う。
「あの話付けるってやつ。それってあれ? ウチらも、そのー」
「全然イケると思う」
「え? あっそう……じゃあー、そっか、取蔭はどうする?」
振られて、思案する素振りで口元に手をやり、漏れ出るニヤつきを隠しながら視線を明後日の方向に逸らす。
「ん? え、だって困ってるんでしょ? その、あれがしたくて、エッ……セックスが。じゃあまあ、一肌脱ぐかな? 友達として」
「だよ、ねえ。友達なんだし」
「じゃあ……連絡しとくね。けど場所は、どうするかな。体育倉庫はさすがにもう使えないだろうし……寮のじぶんの部屋?」
すげえ、自室に男を連れ込むのか……
二人はなんだか一気に大人になった気分。いや、なるのだ。これから彼の身体で処女を捨てて。
感慨にふける二人を見上げて、芦戸はなんとなく合点をいかせる。
「あ~~、そんな緊張しなくても大丈夫だって。いやわたしも多少はね、プレッシャーあったけど。女側がそんなカチコチだと男も不安がらせちゃうからさあ。あ、ゴムの付け方わかる? 教えたげよっか。やっぱ最初は──」
へらへらしながら自語りしだす彼女を見下ろし、二人は思った。
なんかこいつ……ちょっとマウント取りだしてないか?
たまたま甲矢先輩と知り合いで彼と一足早く関係を持てただけなのに、なんかムカつく。
正統な怒りが二人に沸々と湧き上がってくる。
しかしこの闘志めいた感情は逆にプラスに働いた。
いきなり同級生と、今日もくだらない話で笑い合った友達と一線を越えるという非日常的なイベントを前にして慄くよりもまず、コイツに負けたくねーという気持ちが燃え上がる。
もし彼をイかせられず、事後に「どう? 射精させた~?」とか言われたらかなりムカつく!
処女の芦戸が射精させる事が出来たのなら、わたしらだってヤれる。むしろもっと気持ちよくさせてやる。
それは対抗心に近く、こうして初めてのエッチに対する緊張感や不安を無理やり塗りつぶし、二人は本番に備えて過去の戦闘訓練の映像をオカズにしながらイメトレに励む事になる。
やがて慌ただしく行われた全寮制への完全移行と並行して日程の調整が終わる。その間、彼と接するのに多大な精神的労力を支払った。
向こうは慣れたものなのかいたって平静だが、こっちは人生の一大イベントの一つ。どうもギクシャクする。
数日後、二人は彼に目止めしてもらって処女を捨てる。
恋人関係でもなく、同級生の男友達、おそらくほぼ全員が戦闘訓練の映像でオカズにしたであろうクラスの黒一点。そんな相手に、自分の持つ性欲を好きなだけぶつけてもいい時間が近づいてくる。
問題は取蔭と耳郎、どっちが先かだった。
はっきり言って一日でも待ちたくない。お互いどうしても譲れない一線があった。
二人は雄英敷地内の誰もいない夜の公園で睨み合っていた。外灯が半身だけを照らしている。
空は暗雲が満ち、星の一つすら見えなかった。
門限ギリギリまで話し合ったがどうにもならなかった。じゃんけんなどという運任せなどもってのほか。いっそ実力で決めた方がスッキリする。
だが同じエロ女爵三銃士として、力を向けたくはない。そもそも雄英で学んだ事で、どっちが先にエッチするかを決めるのってどうなんだという気持ちもある。
入学してすぐ、体力測定後の更衣室で、こいつらなら下ネタを振っても大丈夫そうだな、と視線で交わした日の事は昨日の事のように覚えている。
だがいったいこの難題をどう解決すれば……
二人の間に払い難い濃霧が立ち込めたが、耳郎の天啓にも似た一言で一条の日が射す。
それはこの後に行われる不道徳極まりない体験が土台となり、それに伴うちょっとした背伸び、平均的な初体験の年齢を下回っていそうな状況に、はっきり言ってちょっとイキっていた。
動悸が速まる。
天高くで厚い雲が引き裂かれ、月の明かりが二人を照らす。
獰猛な性を僅かな嗜虐に浸し、俯きがちに取蔭を見やる。
声を潜めた。
正常であれば口にしない言葉に、ふるふると口角が上がる。
「ふ、二人であいつ