※この作品はR-18です。

七海建人「私の黒閃記録は53万です」   作:天間緑茶

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乙骨2

 七海建人の元で暮らしてから随分と時間が経った。禪院にいたときより遥かにストレスがない暮らしをしている。

 妹の真衣も精神的に安定しているが建人への依存が著しい。それは得られなかった父性であり愛という麻薬故に抗いようがない。それが悪い事かと言われれば世間一般では不健全であっても非公認ではあるが曲がりなりにも呪術師といわれる人種であるので気にもならない。

 美々子と菜々子との生活にも慣れた。美々子は一見普通だが、何も考えていない馬鹿で後先考えずに行動する。それは菜々子も同様でギャルの様に髪を纏めていて派手な見た目通りの頭の悪さを発揮する。それはこいつらの育った環境が原因なのか不明だが、現状同じ環境で暮らしている禪院姉妹の私らと比べて馬鹿なのは頭の出来が根本的に悪いのは否めない。

 そんな私らは現在女子校しかもいわゆるお嬢様学校と呼ばれる一般の学校に通っている。

 

「菜々子さん!髪の色少し明るすぎませんか!もう少し落としてくる様に先週言いましたよね!」

 

「地毛でーす」

 

 双子なのにそれは無いだろ!と思うかもしれないが、呪術師というのは割と髪の色が変質しやすいらしい。

 

「先生、菜々子の言う言う事は本当です。地毛を染めろって言うのは外国人には言わないですよね?古臭い校則にもない風習を誇示するのはどうかと思います。継続するなら差別と訴えますがよろしいですか?」

 

 優等生の真衣がフォローをする。真衣は欧米思考で禪院家を思い出す日本の古臭い慣習が大嫌いだ。

 

「あと、菜々子の没収したコスメとコンドーム返して下さーい」

 

 まじで頭が痛え……真衣も知らないと呆れた顔して医学書読み始めやがった。学校にコンドームを持ってくんな!ドンキで安いからってカバンに大量に詰めたスクールバックから出さずにそのまま学校に持ってくるからそうなるんだ。

 

「ぇえ、流石にあの量は学校でも処分に困るので後で反省文をしっかりと提出して手続きを踏んで下さい」

 

「はーい」

 

 先生を呆れている。だが、菜々子の馬鹿な行動は頭お話畑な女子連中には受けがいい様で何故か一定の地位を築いている。やれ、ネイルがどうだ、化粧品がどうだと勉強はできないがそこら辺の知識は豊富だ。

 私もメガネをしなくなってから菜々子にこっちこ方が髪型似合うよとアドバイスを受けた事もある。

 

 放課後、皆で帰宅するため席に集まる。

 

「だっる。学校だるい。皆吊そうかな」

 

「ナチュラルボーン呪詛師やめろ」

 

「だって私の紐パクられたんだよ!意味わかんない!コンドーム持って来た菜々子とおんなじ扱いだよ!不服!」

 

「だってそれ呪具じゃなくてプレイ用だろ」

 

「共用だよ!」

 

「そこじゃねえ!女子校でそんな奴いねえよ!」

 

「私真希みたいにゴリラじゃないし、建人様には自衛手段は常に持っておけ言われてるし」

 

「後で真衣に作ってもらえ」

 

「真衣ちゃん、何でもできる様になったねえ」

 

「おい待て、何で私は呼び捨てゴリラで真衣はちゃん付け何だ?」

 

「だって真衣ちゃんはなんだかんだで末っ子感ない?それに真希って姉御肌だし、どちらかと言えば兄貴だし、私ら竿姉妹の長女って言ったら真希だよね」

 

「誰が兄貴だ」

 

 こいつらさらっと爆弾発言連発するから迂闊に触らねえ……共学じゃなくて助かる事が多すぎる。女の園だからこそ下限を知らない部分もある。

 

「馬鹿話終わった?帰るわよ」

 

「待ってええええ、反省文終わってないいいい」

 

 学校ではダブル双子として有名だ。よって周囲の目はまたやっているよと寛容な眼差しを送ってくれる。悪く言えば関わりたく無いのだろう。

 

「今日は用事があるから東京行くって言ってたろ、私と真衣は確定呼び出しだ」

 

「東京行っていいって?美々子もいく!」

 

 話聞いてねえ……何で頭悪い奴らって話聞いてない前提なんだよ!

 

「美々子ぉお!置いていかないでえ〜、原宿行きたい〜!クレープ食べたい〜」

 

 クレープなんてどこで食っても同じだろ!女子か!

 あっいや、私も女子だけど、あれか!?こう言うのが女子力の低さか!?だから霊長類最強女子なのか!?

 

「私品川のアクアパーク行きたいって建人と約束してるからあんたらは好きにしな〜」

 

 真衣は真衣でちゃっかりパパ活の段取りをしていた。それはあれか?私が乙骨?とか言う奴と試合する間遊んでくるって事か?

 

「ッチ」

 

「はぶられてるって思った?大丈夫よ、営業時間遅くまであるから。真希ってばほんと素直じゃ無いわよね」

 

「魚なんて興味ねえよ!」

 

 でも皆で行動するのは、そう、そんなに嫌いじゃない。

 久しぶりに東京に向かった。相手方を少し待たせてしまうが問題ないと返信が来ていたので菜々子も連れて行った。

 

 建人と共に待っていたのはパッとしない上になよなよとした痩躯の少年であった。

 

「っとあの女の子達は……」

 

「乙骨君には縛りがあるので紹介できますが、私の個人的な関係者です」

 

「関係者ってもしかして……」

 

「勘がいいのは良いですがそう言う目で初対面の方々を見るのは宜しくないかと、女性は視線には敏感ですので」

 

「建人様、そいつ何なん」「ちょっとキモい」「てか目がやばい」

 

 酷い言いようだが、概ね同意だ。コイツは建人と同類の変態の匂いがすると研ぎ澄まされた五感が回答する。

 

「彼は乙骨憂太。未来のこの国を背負っていく最強の一角を担う呪術師です。今日は彼のレベルアップのため真希に試合をしてもらいます」

 

「っえ?真希さんって呪力ないじゃないですか?それに女の子と戦うなんて聞いてないですよぉ」

 

「ッア゛ア゛?殺すぞ変態呪術師」

 

 才能に恵まれてるからって舐められる筋合いはねえぞ。呪力、術式、そんなもん飾りなんだよ!本当の強さってのは生き残る生存力だ。

 

「ッヒ」

 

「真希は呪術師然とした考えが一番嫌いです」

 

「七海さん!さっきから全部遅いです!先に教えて下さいよ!」

 

「アイツ建人様に対してなんなん?吊るす?」「美々子やっちゃえ」

 

 真衣が構築術式で荒縄を創造する。

 

「!?構築術式」

 

「真衣!」

 

「はいはい」

 

 さらに構築術式により3級ほどの呪具の抜き身の刀が生成される。

 

「早い、それに呪力消耗が多く無い!?なんでだ、僕がコピーしてもあんなに連続で生成できない」

 

「教えてあげるわ、普通の構築術式と違って私の呪力は反転術式の分解→再構築→附与の工程訳をしてるの。だからある程度の怪我なら肉体を再構築してあげるから思う存分呪い合いなさい」

 

 乙骨はあっさりと美々子の攻撃を躱し、私の袈裟斬りを自前の刀で受け止める。美々子は無理を悟ったのか真衣にソファを作らせて建人を座ら肩に頭を傾れ見学に入った。

 

「がんばー」「建人様あいつ強くね?」

 

 あいつらやる気ねえ!呪術師、それも特級相当と聞いて戦闘意欲が湧いていだがあの光景を横目に戦うの腹が立つ!

 それに乙骨とか言う奴、聞けば呪術師になって数ヶ月も経ってないそうだ。なのに私と切り結んでいる……才能かそれも術式準拠の。

 

「だがこいつはどうかな、真衣薙刀!」

 

「疲れるわね」

 

 刀と間合いが違う薙刀、練度としてそこまで高くは無い。しかし、フィジカルギフテッドの影響でこのサイズの得物を使う際の取り回しの最適化が容易にできる。

 相手は刀、間合いの外から攻める。

 

「早い。呪力がないから動きも読みづらい」

 

 防戦一方だが、呪力の強化で著しくあがる力で薙刀を強引に弾いてペースを乱される。回転力での勢いを溜める隙もない。

 

「棍!」

 

 その間合いは薙刀に近い。動作も基本は突き、払いでこれまでと同じに感じるだろう。

 

「もうその間合いには慣れたよ!」

 

 慣れてからが致命的だ。こいつは普通の棍ではない変形三節棍だ。つまり受けたと思った場所から軌道が変わり乙骨の後頭部を直撃する。

 

「ッカ」

 

「はい、ワンキル」

 

 ダウンが入るだろうが止めない。相手を仕留めるまでラッシュをする。建人が止まるまでは試合続行だ。

 

「ユゥタ!!」

 

「美々子どきなさい」

 

 化け物が出たかと思ったら黒い呪力が奔る。一撃で呪霊は吹き飛んで乙骨の中に押し込められていた。早くて見えなかった……その足元が黒く光ったと思ったら、拳が真横を通り過ぎていた。

 

「真衣、乙骨君の治療を」

 

「あれが出たら怖いから建人も来て」

 

 真衣が建人の手を引いて乙骨の治療をする。

 特級、何が特級か今ならわかる。内包する呪力量でも呪力の流れを真似る術式でもない。真に恐ろしいのはこの呪霊だった。

 

「今から訓練内容を伝えます。真希には2v1で連携してくる相手への俯瞰した対処。これには弾いたり導線管理して擬似的な速度上昇を意識して貰います。乙骨君には呪力のない相手での動きの読めなさ、単純な速さへやあらゆる武器への対応力を強化です」

 

 つまりガチガチの殴り合い。お互いに現代で近距離最強の呪術師を作る。それはどちらであっても構わないと言う事だ。

 建人は何かにビビっている。あれだけ強いのにただの後任育成でこんな場を用意するバズもない。物にしてやるさ、こんなナヨナヨの変態に負けてられるか。私は戦える。

 

「変態が!その化け物!口が精液臭いんだよおおおお!!」

 

「精液の匂い知ってる君に言われたくないいいい!!」

 

 お互いにお互いを削りあった。その削り合いは刀で刀を研ぐようで鋭く磨かれていく。お互いに呪力を感じなくても、相手の動きを見切る。避ける、躱す、切る、穿つ、蹴る。それぞれの所作は鮮麗され動作が技になる。

 対応すれば対応しかえすと、見切りは極致に達し一瞬で決着がつくまでになっていた。

 

「やるなお前」

 

「真希さんこそ強過ぎます……」

 

 最後は体力差。呪力のロス、肉体のロス。乙骨はまだまだ未熟だった。

 正面から制した達成感は初めてかな肉体を誇らしく思えた。しかしいずれ正面からは勝てなくなる。今日だって呪力が無いことを利用して虚が要であった。私は七海建人の虚札だ。

 

「終わった?」

 

 真衣が回復にやってくる。

 私らは強い。

 

「けど、力を誇示する必要なんか無いわ」

 

 真衣が私の考えを読んでか言葉を紡ぐ。当たり前になっているが呪力は危険だ。それは核兵器の様に手に持つ者よって守護にもなれば暴力にもなる。

 

「やばいなんかがそのうち来る。それを建人は確信してる」

 

「じゃなきゃ指持って特級呪霊作って特訓とかしないでしょうね。美々子と菜々子は気が付いて無いでしょうけど」

 

「だよな……基本的にバカな建人がこの件に関してだけはガチだ。言ってくれればいいのによ。そんなに頼りねえかな?」

 

「あの犬みたいな双子よりは少なくとも頼りにされてるわよ」

 

「みんな〜スタバ何飲む?菜々子のはダークモカフラペチーノだからだめ〜」

 

 今日は皆寝れないな。

 翌朝、乙骨は何故かラブホで1人目覚めていた。

 

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