※この作品はR-18です。

七海建人「私の黒閃記録は53万です」   作:天間緑茶

14 / 21
虎杖悠仁

 虎杖悠仁には宿儺が潜んでいる。虎杖に手札を見せる事は宿儺に対策される事になる。一度見せた手は無効にして来るであろうから実質魔虚羅と変わらない。

 虎杖が死ぬ事件から数日間でどこかのファミレスで呪霊による火災が起こり羂索が表に姿を現す。呪霊の仕業……そう明記された事件はどこにもなく、一般のニュース記事から羂索の動向を追った。1000年生きる怪物は文化、文明にも適応し痕跡を残さない。窓に調査依頼を伊地知を介して行ったが、記録映像は何一つ無かった。

 唯一の手掛かりは当日偶然にも逃げ出す事が出来た元従業員である。その従業員から聞いた当時の1人客の相貌は『夏油傑』であった。肉体を消滅させて対策をしたが羂索の計画に大きな影響は無かった様だ。

 出来る事はしたしこれからも出来る事をする。

 ここ数日で虎杖悠仁は基礎的な呪力操作を物にしていたのでそろそろ声が掛かるだろう。

 

「少し前のファミレス発火事件、何者かの手によって秘匿されている様ですが呪霊の仕業です。それも特級の残穢がありました」

 

「それ、前に僕を襲撃してきた火山の呪霊だね」

 

「もちろん、仕留めましたよね?」

 

「え゛!?組織立って動いてそうだったから尋問してたら……てへっ」

 

 舐めプ野郎……。お前が1人でも呪霊殺せば救われる命が幾つあると思ってるんだ。刺激欲しさに呪霊とバトルしてるのが想像できる。

 

「無下限解いてください」

 

 ノーモーションで平手を撃つと黒閃光が奔る。

 

「っへぶ!解く前に殴らないでよ!」

 

「先生その人ーー「話の途中ですので黙ってて下さい。その火山の呪霊が居たとされるファミレスに同席していた人物がいます」

 

「呪詛師か……まさか呪霊が人間と手を組むなんてね」

 

「ええ、それも厄介な貴方が知る呪詛師ですよ」

 

「まさか!」

 

「この写真です」

 

 袴に長い毛、胡散臭さ漂う坊主。

 

「楽巌寺学長!」

 

「間違いましたこっちです」

 

 そこには昨年末に乙骨憂太の手によって跡形も無く殺された筈の夏油傑の写真だった。

 

「証拠映像はありません。唯一現場から逃げられた生存者からの証言が夏油傑と一致しました」

 

「憂太が嘘をついて逃した線はないだろう。高専の結界が傑の残穢とその消滅を認識している。コスプレの意味は無いだろうね。もし仮にこれが傑だとしたらあのレベルの特級呪霊を従えていると言う話になるが……」

 

「死んだ夏油傑に権力者をコントロールできる土台が残っている筈がありません。彼の資金母体は私が破壊と押収済みです」

 

「厄介だね。こいつらは何かを企んでる」

 

「ええ、それも何処かの無能が取り逃した所為で何も得られていないと」

 

「それは言い過ぎ。なるほどね、死んだ人間が生き返るって可能性もあるのかぁ」

 

「死んだ宿儺が受肉して生き返るんです。何を今更……その宿儺本人なら死者蘇生の仕組みを知っているかもしれませんね」

 

 とは言っても絶対に宿儺は教えたりはしないだろう。予想の一つとしては拝み婆の降霊術と羂索の何かしらの技術の融合だろう。

 

「断片的な情報では何とも言えんが、降霊術や肉体の一部の復元、復元のみだと魂がらないため憑依など幾らでもある」

「っお、喋った」

 

「っくっくっく、何、面白い物が見れたからな興が乗っただけの事よ」

 

「虎杖君、宿儺を信用してはなりません。取引きもしてはなりません。まぁ既に結んでいる場合どうしようもないですが」

 

「?こいつとは何も取引してないけど」

 

「縛りの中に縛った記憶を忘れると言う手段もあります。我々数十年の経験値と同じに考えない方が良いです。抜け道やルール無視など現代では考えられない手段を持っている危険な敵です。分霊して何処でも復活できる周到さが無ければ君ごと殺しています。改めて、自己紹介をはじめまして、七海建人です」

 

 自己紹介で殺意を丁寧に伝えられた虎杖はなんとも言えない顔をしていた。

 

「見てわかる通り私はこの人を信用はしていますが、信頼も尊敬もしていません」

 

「昔より一つ減った気がする!悠仁、君はこうならないように!七海は一般出身で普通に擬態する性能が高いだけで変だからね!」

 

「虎杖君には期待しています。宿儺の器ではなくあらゆる呪物を内包できるその可能性に」

 

 虎杖悠仁の可能性は五条を上回り乙骨並だ。六眼が無いだけで膨大な呪力でなぐりあらゆる術式を宿す可能性。現状の使い勝手は明らかに乙骨に軍牌が上がる。宿儺を常に携帯している関係上は呪術界上層部では無いが警戒対象から外れない。

 

 この一カ月、呪霊が水面下で暴れ回っておりその余波が表沙汰になっている。行方不明事件の多発が人為的な事件と報道されておりテロ国家などによる拉致被害と推察されている。神隠しとも噂されているが相違ない。人の怖れから生まれた人型の特級呪霊真人が現れたのである。

 ネオシネマに高校生の変死体が発見された。警察の包囲線の合間を縫って現場に直行する。

 

「ここで何がわかるの?七海先生」

 

「呪いの仕業、それも術式を使う物であれば残穢が残ります。結界術も同様で一種の指紋やDNAみたいに個人の特定や痕跡を追跡する事ができます。あと私は先生ではありません」

 

「じゃあナナミン!」

 

「それでもいいです。よく見て下さい」

 

「うーん、見づらいけど……なんか見えた!」

 

 残穢を残さない手段はあるが真人は敢えて残穢を残して罠を仕掛けている。改造人間の処理に慣れておくのは精神的な成長に必要だ。

 

「行きますよ」

 

 残穢の後を追って行くとバッティングセンターの中に誘われる。雨天で屋外のため人もおらず人払いの手間が省けた。人が居ないのは改造人間にされたからだろう。

 まだお気楽モードの虎杖悠仁に少し腹が立つが、どうせすぐ現実を叩きつけられる。

 

「ナナミン!」

 

「私の心配は不要です。お手なみ拝見させて頂きますよ」

 

 虎杖悠仁は歯が横向きの改造人間を格闘戦で対応する。呪力の遅れ、これが虎杖悠仁の特異性質。これがある限り絶対に黒閃は発動しないが、その性質は一撃で相手を屠らない場合のターン継続性能として見れば最強クラスだ。反転術式や部位の欠損を諸共しない存在に対して致命の一撃を与えるまで拘束できる。

 実際に見るとこれ程厄介な攻撃は無い。遅らせる時間を調整できれば時止めラッシュの様な技も可能だ。一撃を与えたらそれだけで勝負を決め切れるがフィニッシャーがない虎杖ではしこり屋しかできない。

 

「まだ終わりませんか?」

 

 今も時間が掛かっている。

 

「これで終わり!」

 

 虎杖のトドメの一撃により改造人間は死んだ。呪霊と違い死骸が残るのでそれを写真に収め、虎杖に人間であると伝える。

 

「というわけで、これも殺して下さい」

 

 もう一体の改造人間は殺さずに取っておいた。虎杖の甘さという迷いを断ち切らせる。優しさを捨てる必要は無いが迷いは捨てなければ何も守れない。

 

「っえ、でもこいつらは人間……」

 

「ええ、でも救えません。今殺さなければ彼らはさらに人を殺します。私は同情はしますがね」

 

 その憐れみはどう足掻いても他人事で、それが虎杖にはわかってしまった。

 人を殺してしまったらそれが当たり前として生活の一部となってしまう。それは嫌だと思っていても避けては通れない道。苦悩と葛藤は最後にしなければならない。

 

「時間切れ」

 

 躊躇いなく改造人間の脳みそを潰すと虎杖の顔は苦悶を浮かべていた。

 

「次はちゃんとやるよ」

 

 これが宿儺の器で無ければその教育で良いが力に選ばれた者は次に伸ばすだけ過酷な運命が待ち受ける。正しさの確認は後でやるしかない。

 家入が検死した結果、虎杖に改造人間は改造された時に死んでいると言っていたが虎杖の心は別段軽くもならなかった。

 連日被害が絶えない。被害者が改造人間にのまま放置されてる事件が発生している。死骸状態であることから改造されてしばらく立った物の廃棄処理に近い行為だろう。伊地知が捜査情報を警察から入手して犯行の痕跡をまとめる。

 犯行現場の監視カメラ映像に付近の高校に通う吉野順平は状況的に容疑者となるので虎杖にはそちらを対応してもらう。

 

「ですので、虎杖君は伊地知と彼の観察を頼みます。術師ではないでしょうが、行動の不自然さと犯人との関与の可能性があるので」

 

「俺もナナミンと一緒に行くよ!足手纏いには絶対ならない!」

 

「君には荷が重いですので、今回は助っ人を呼びましたのでご心配無く」

 

 虎杖が吉野順平の対応をしている間に確実に厄介な真人を仕留める。真人がいなければ夏油はメカ丸を殺さないし、その後の計画にも致命打を与えられる。何よりも野薔薇の離脱は避けられる。

 用水路。不潔で不気味なこの場所は数多の犯罪作品の舞台となるので簡単に特定できる。

 

「あれぇ?1人できたの?呪術師も大変だね」

 

「人型呪霊、それも能力の練習をしているところから最近発生した呪いですね。生まれたての割に思考は成熟しているようですが」

 

「それは僕が人から生まれた呪霊だからだよぉ〜、君頭良いね!」

 

 真人は自分の影の努力を褒められた子供の様にこれまでの行為を自慢した。一種の術式開示の様に己の能力の蘊蓄を垂れながら掌サイズに圧縮した改造人間を復元し操っていく。

 

「気色の悪い。私はこう言うゲテモノは趣味じゃ無いんです」

 

「君はさぁ、魂と肉体どっちが先にあると思う?」

 

「肉体に魂が依る場合もあれば……魂に肉体が依る場合もある……どっちもあるでしょうし、どうでも良い。両方壊せば殺せるんですから」

 

「あっはっは!面白いね君ィ!いいよ、その在り方は呪詛師?いや、僕達呪霊に違違い気がするね。僕、君好きだなぁ」

 

「奇遇ですね。私もあなたが無闇に人を殺さないなら友達になれましたね」

 

「それは無理だよ、呪いだもん」

 

 真人の思考は自由だ。しかしその本質は人を呪う事しかできない思考が根底にある。面白い人間性を持っているが、人を芸術性もなく殺すセンスの無さは所詮呪い。本能に抗えない憐れな生き物だ。

 

「人を殺さないと生きられない訳でも無いのに、生まれた時の決められた快楽で人を殺すシステム。自由に振る舞う矛盾が憐れな呪いの在り方か……」

 

「何?馬鹿にしてるの?人間の癖に」

 

「好き勝手生きる事に関しては人間の方が君達呪いよりも遥かに自由ですよ。良い人間も悪い人間もいますが、良い呪霊は存在しません。あなた達の世界はつまらないって思ったまでです」

 

 真人の機嫌を損ねたのか腕を変形させ、ピッチャーのリリースポイントが見えない様に死角を作りつつ腕を振りかぶる。

 形状は蛇腹の鎌。

 それを呪力を纏った素手の黒閃で砕く。

 

「うわ、君強いねえ、何級?」

 

「一級です」

 

 無為転変。

 何度目になるかわからない実験体による波状攻撃。真人自信無駄とはわかっているが死角を使った中距離攻撃で様子見をするのには丁度いい。

 

「良い加減覚えましたか?」

 

「攻撃が無駄だって言いたいの?今のが僕の限界だと思ってるの?」

 

 真人はそんな希望的観測を抱いていると勘違いをし警戒に愉悦する。

 

「一応覚えましたよ七海さん。まだ実用してないんでなんとも言えませんが」

 

「練習はいくらでもできますよ。改造人間は頼みます」

 

 真人は声がするまで気配を感じなかった。今でも視界に入れてなければ呪力を抑えているのか存在は気薄だ。本来の乙骨の呪力を諸に受けていたら真っ先に逃げていた筈だ。

 

「1on1なら勝てるとでも?」

 

「私の術式はどんなモノにも7:3の位置に弱点を作る事ができます」

 

「術式開示ィ、本気だね」

 

 真人に対して本気を出す。術式の開示、十劃呪法、黒閃この3つが合わさったとき特級すらも払える呪力出力になる。

 

「私が一つ言える事は、私の術式はクソと言う事です!」

 

 黒閃の歩法はまるで雷鳴のない瞬身。呪力の残像のみが遥か前に移動した痕跡だけ残る。

 

 黒閃。それも術式も術式開示のバフも無いただの一級呪術師の呪力での一撃。しかしその威力は桁違いであり、真人は魂に触れられた感覚もなく、形状を変形する間も無く脳みそが破壊された。

 

「私の術式は縛っているので術式開示の意味はありません。もう一つの縛りは黒閃を連続して発動する限り倍率が上昇し、発動しなければ倍率が下がる単純なものです」

 

「祓った相手に言っても意味ないですよ七海さん。それに連発できる人なんて七海さん以外いないですよ」

 

 縛りという誰にでも可能な現象。全てが承認される訳ではないので、縛りの効果は確認しなければならないが、通ってしまえば運営に修正もされないグリッヂだ。黒閃の希少性故に放置されているのだろうこの縛りがある限り攻撃が当たれば基本的に全てに勝てる可能性がある。その分加減をするときの呪力量を微細にしなければならない。

 

「一旦離れます。乙骨君も今日はこの圧縮改造人間セットを持ち帰って練習してください」

 

「助けるためですよね!一応人助けですよね!」

 

 その後黄昏ている虎杖悠仁と吉野純平に割り込み、虎杖を回収した。なんでも吉野純平が教師を呪い始めたところで虎杖が止めたらしい。

 乙骨には先に帰ってもらった。手早く救わなければ改造人間の寿命が尽きる。おそらく戻れたとしても寿命は短いので練習材料にしかならないだろうが。

 羂索は橋の上の人影から推察できた。五条悟をぶつけられたら良かったが何故か不在なので無視せざるを得なかった。無理に乙骨をぶつけるのはリスクしかない。

 しかし真人を早期に排除できたのは大きい。呪霊は降霊術の対象外であると願う。そんなドラゴンボールみたいに死人がポンポン復活しても困る。真人は虎杖が強くなるターニングポイントであるが、その為の犠牲が多すぎる上に七海建人の死を呪いしなければならない訳でもない。虎杖悠仁の呪いは祖父の死だけで、その言葉だけで充分だ。

 

「七海さん!これ見てください!」

 

「これは折本里香ですか」

 

 乙骨は折本里香の魂の形を変える事に成功していた。元々その在り方を歪めたのは乙骨であるが故に修復も可能であった。改造人間を捏ねくり回してコツを得たのか、肉体さえあれば受肉すら可能な状態であった。

 

「改造人間の肉体をベースにすれば受肉も可能じゃないか?いや、それでは内包する呪力量に肉体が耐えきれずに崩壊する……折本里香の器が必要ですか……」

 

「発想が呪詛師ですよ七海さん!?でも、僕もそれに近い事はしてしまってる」

 

「そんな事しちゃダメだよ憂太!」

 

 しゃ、しゃべったああー。折本里香が濁音無く言葉を自然に発していた。魂の歪め方を知った乙骨は正に現代の異能だ。折本里香のブレーキがある以上、乙骨は安易に呪詛師にはならない。

 

「里香には普段は影に居てもらって、戦闘の時は女王形態に戻れる様にします」

 

「これで性行為は可能と……後はどうすれば妊娠できるかですか……里香さんの年齢は?」

 

「没年齢は11歳です」

 

「七海さん!憂太も何で真面目に答えてるの!」

 

 11歳……初潮も迎えてない可能も高い。そもそも呪霊は妊娠できるのか?いや、呪霊が孕ませる事が可能なら逆も可能であるとして実験していくしかない。それにしても永遠のロリを抱けるとは……同士の成長は自分の事の様に嬉しいのもだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。