「では、行ってきます。」
「うん。気を付けてね。」
「また、絶対に一緒にご飯食べるっぽい!」
「また一緒に話せることを願ってるさ」
「姉さんたち...有難うございます。」
.........
「夕張、陽炎。貴様ら必ずあいつの艦娘を仕留めろ。これは命令だ。」
「はっ...!」
「....」
..........
「この作戦成功しますかね...」
「奴等の主力は空母三隻を含む春雨たち遊撃部隊が北上させる。その隙に敵中枢へありったけの戦力を叩き込む。我々は後方及び撤退支援だ。任せるしかない。」
「支援艦隊はどうなりましたか?」
「一応、数年前の二の舞にならないように後続に呉の主力艦隊が待機している。だが、突破されたときはここが防衛線だろうな。」
...........
敵艦隊発見
空母三隻を含む機動部隊
航空戦開始
制空権確保
追撃
駆逐一隻
空母二隻の轟沈を確認
相手速力低下
水上主力部隊出撃
砲雷撃戦開始
駆逐一隻の轟沈を確認
追撃の為北上を開始
守備は泊地棲姫、中枢棲姫に委託
...........
「飛龍さん!敵機直上です!」
「くっ!取舵一杯!」
微妙に間に合わず爆弾が飛龍さんに直撃する。
大破。
次はない。
私は砲を敵機に向ける。
秋月型の名にかけてこれ以上一機も味近づけるけるわけにはいかない。
..........
「しまった!抜けられた!」
「蒼龍さん!」
煙が晴れると沈みゆく蒼龍が見えた。
「数が...多い!」
飛龍さんの護衛をしている秋月さんの方へ魚雷が進んでいく。
「秋月さん!左舷魚雷!」
「えっ!」
そのまま吸い込まれるように直撃する。
爆発の閃光と血しぶきが舞い上がる。
...........
「旗艦を瑞鶴に!各院北上開始!」
「な!飛龍さんは!?」
「私は無理よ。行きなさい!」
偵察機からの入電
敵水上部隊発見
やがて水平線上に黒い影が見え始めた。
一瞬光った。
どんどん水飛沫が近づいてくる
それが私の最後の記憶だった。
...........
味方を殺せ。
何を言っているんだ。
私は味方なんて殺したくないし殺せるわけがない。
しかし、陽炎ちゃんがある駆逐艦のことを機会を伺っては狙っているのを見て私は戦慄した。
あの一瞬で味方が散った。
ここで死ぬかもしれない。
いや、死ぬ。
なのに...どうしてあの子はあんなに死に抗っているように見えるのか。
必死に生きようとしているのか。
あぁ。
あの子は強いな。
私はなんて弱いんだろう。
満潮ちゃんも止められなかった。
ある人に手紙を送った。
けど、何も変わらない、どうしようもないことは明白だった。
ただの自己満なのかもしれない。
何をやっても無駄だった。
なら...私にできることは...
.............
まさかここまでとは...
私は驚きを隠せなかった。
あの一瞬で飛龍さん蒼龍さん。そして秋月さんが沈んだ。
時刻的にはそろそろ本隊が突入しててもおかしくない時間だ。
しかし...最後に飛龍さんから報告のあった敵水上部隊がいつになっても現れないのに瑞鶴さんも違和感を感じているようだ。
「瑞鶴さんどうですか...?」
「う~ん偵察機からは報告がないのよね...」
「まさか...引き返したりはしてないですよね...?」
「恐らくそれは大丈夫よ。でも...やっぱり変よね...」
..............
まだ生きている。
私も生きてしまうなんて...この世界は残酷ね。
任務、遂行
瑞鶴さんと話している駆逐艦に連装砲を向ける。
ごめんね。なんの恨みも無いけれど。
引き金を引き魚雷を発射する。
ただそれだけ。
「何のつもり?」
突然瑞鶴さんに睨みつけられた。
「何がですか?」
そう返すと瑞鶴さんは怪訝な顔をした。
「それ本気で言ってるの?」
頷く。
「こうするしかないんですよ。」
「悪いけど、許可できないわ。何があったか知らないけど。」
「この命令に指図は出来ませんよ。ね?夕張さん」
「..........」
瑞鶴さんがあの駆逐艦の前に立ち塞がる。
「どういうつもりですか?」
「だからそれはこっちのセリフよ。ちゃんと説明しなさい。」
「だから言ってるじゃないですか。命令されたって。こうするしか...ないんですよ。そこ、どいてください。」
「あの...!どうして私を狙うんですか。」
「知らないわよ。提督にあんたのとこの提督が不都合だから殺せって言われただけだもの。」
私の言葉に駆逐艦は驚いたようだった。
「提督が!?」
「だからって仲間に砲を向けて言い訳ないでしょ。今すぐ下ろしなさい。」
瑞鶴さんの口調が激しくなる。
「私には...こうするしかないの...」
涙が頬を伝う。
私だって本当はちゃんと普通に暮らしたかった。
けど…
アイツのせいで全てが変わった。
瑞鶴さんの陰から出てきてあの駆逐艦がこっちに近づいてくる。
「辛かったですね。」
そういわれた。
一瞬意味が分からなかった。
「なに...が...」
抱きしめられた。
久しぶりの感覚だった。
だが...
私はこいつを殺さなきゃならない。
さもなければ...
妹たちが...
それが私にとって死より恐ろしいことだった。
これ以上傷つけるわけにはいかない....
ごめんさないね
春雨ちゃん。
............
私に砲を向ける陽炎さんは寂しく、小さく見えた。
行き場を失い、感情を抑え込み、ただ操られる。
辛かっただろう...
私は陽炎さんを抱きしめる。
しかし、陽炎さんは私にまた砲を向けた。
引き金に指がかかる。
「ごめんさないね、私のためにここで沈んで頂戴。」
瑞鶴さんの「やめて!」という悲痛な声が聞こえる。
私は思わず目をつぶりその瞬間を待った。
生きて帰ると約束した。
守ると決めた。
なのに...ここで終わるの?
味方に殺されて終わるなんて...ね...
司令官さんごめんなさい...
約束守れませんでした...
砲撃の音が鳴る。
海面が揺れる。
振動が伝わってくる。
しかし、いつまでたっても私に衝撃は襲ってこなかった。
ゆっくりと目を開ける。
そこには沈みゆく陽炎さん姿があった。
急いで手を伸ばす。
届かない。
最後に見えた顔は苦しみにあふれていた。
しかし...
何かから解放されたようにどこか安心しているようにも見えた。
............
私には訳が分からなかった。
どうして陽炎ちゃんは春雨ちゃんに砲を向けてるの?
命令ってどういうこと?
夕張さんは...どうして何も言わないの?
春雨ちゃんが陽炎ちゃんを抱きしめる。
何がしたいんだろう。
私は困惑していた。
しかし、陽炎ちゃんが春雨ちゃんに砲を再び向け指をかけた瞬間焦りに変わった。
「やめて!」
と叫ぶも意味があるはずがない。
砲撃音が聞こえた。
しかし、発砲したのは陽炎ちゃんではなかった。
沈みゆくのは春雨ちゃんではなかった。
最初は深海棲艦かと思った。
しかし、周囲には見当たらない。
上空にも見当たらない。
もう一度辺りを見回した時、夕張さんの主砲から煙が上がっていることに気が付いた。
そんな....
誤字脱字等はコメントにて