「ええい!何をやっておるのだ!さっさと仕留めんか!」
はぁ…この人は何もわかってないんだな…
俺は立ち上がった。
「お言葉ですが大将殿。この戦いはもとより前線に出ている艦娘は殆ど全滅覚悟の総力戦なのですよ?無茶言わないでください。」
「貴様…大佐の分際で上官に口答えする気か!?」
「戦っているのは私の部下達です。あなたの部下ではありません。何を焦ってらっしゃるのか分かりませんが急ぎたいのなら大将ご自慢の第一艦隊を投入されたらどうですか?」
「おのれ…」
「では。自分はやることがあるのでこれで。」
失礼しました。そう言って俺は作戦参謀室を後にした。
まったく...あの大将殿は頭が固い。
俺は自分の鎮守府に戻る準備を始めた。
彼女らの為にも俺は一刻も早く戻り艦隊を運営しなければならない。
しかし、この選択が最悪の展開になることを俺は予想すらしていなかった。
まさか艦娘が負けるなどとは。
………………………
「え...なんで...撃ったの?」
「陽炎ちゃんを殺す。そう決めたからよ...あんなの間違ってる。私は...もう...これ以上提督の指示に従って艦娘が死ぬのはごめんよ...止めるためなら、例え仲間でも撃つ。」
私と瑞鶴さんは唖然としていた。
夕張さんはこの艦隊に配属された当初からあまり喋らなかった。
それに,,,
陽炎さんは同じ鎮守府の仲間だと言っていた。
一体,,,何が起こっているの...?
提督が何をしたの?
それに...これ以上艦娘が死ぬのはごめんって...?
私の脳裏に一つの記憶が蘇る。
唖然とする私達。
そして...目の前には半身のない艦娘。
時雨姉さんや提督が言うにはこの傷をつけたのは深海棲艦ではない...
そこで私は気が付いた。
提督は艦娘の正体を知ったのだろう。
そして、これは相手の提督にとって知られてはまずいことだった。
だから提督が艦娘思いなのを知っていて逆らえないように見せしめに陽炎さんと夕張さんに私を殺すように命令したのだろう。
そして...夕張さんはそれを良く思わなかった。
しかし...陽炎さんはどうして...あんなに辛そうだったの...
「考えてるとこ悪いんだけど...少し不味いわよ。」
瑞鶴さんの視線の先には深海棲艦の水上部隊が姿を現した
「夕張さん。取敢えず一旦和解ってことにしない?私は空母だけど艦載機は残り少ないわ。」
夕張さんは無言でうなずく。
「Ok。ならいいわ。瑞鶴航空隊!発艦!もうすぐ夜よ!それまでに出来るだけ叩く!春雨ちゃんと夕張さんは夜戦で戦艦を落として!」
「「了解!」」
数は私たちが圧倒的に不利だった。
だが...それは今までの話だった。
「すごい...」
私たちの目に映るのは炎上しながら沈んでいく深海棲艦だった。
まさかここまで圧倒的だとは...
どうして囮部隊に選ばれたのか...主力部隊といっても過言ではない実力の持ち主だ...
やがて日が沈む。
残っているのは重巡リ級と戦艦タ級だけだった。
「タ級は私がやるわ。春雨ちゃんはリ級を仕留めて。」
「....っ分かりました。」
目の前にリ級が姿を現す。
冷たく、黒い...そんな目をしていた。
潮風が少し冷える。
私はここで生きて...みんなの所に帰る!
春雨!夜戦、突入させていただきます!
...........
「ん?山本からか...何だ?」
そう言って俺はメッセージを開く。
次の瞬間俺は立ち上がって走ってある場所に向かっていた。
...........
私は書類を秘書艦の響に手伝ってもらいながら進めていた。
「響、すまないがその書類を取ってくれ。」
「お安い御用さ。ところで司令官。今回の作戦、どう考えているんだい?」
私の手が止まる。
「山本君には悪いことをしたと思っているさ。確かあそこの初期艦は君の妹だったね。だが...今の海軍を正すには...あの大将達を潰すしかないのさ...」
「そうかい。もし作戦が失敗したらどうなるんだい?」
「ああ...もし失敗したら...我々が直々に出向くことになるだろうな。」
「その時は私も行かせてくれ。妹が心配だ。」
「良いだろう。」
一旦会話は終了し二人とも書類に目を落としているとノック音が聞こえた。
誰だと考えつつも返事を返す。
「入れ。」
ドアを開けて入ってきたのは衛兵だった。
「どうした?誰か来たのか?」
「はい。杉山少将が。」
「杉山が?通せ。」
「了解しました。」
数分して一人の男が入ってきた。
「これはこれは。杉山君。何か用かね?」
「有田元帥殿。お久しぶりです。今回は少しお耳に入れたいことがございまして...」
「ほう?それはどういった内容だ?」
「ショートランド泊地についてです。」
「その情報は信頼できるのか?」
「はい。元帥もご存じの山本からの情報です。」
「なるほどな...ショートランド泊地といえば艦娘思いで有名な中村中将が指揮を執っていたはずだが...」
「はい。最初自分もその認識でした...しかし...」
..................
「了解した。すぐに対処する。今すぐ憲兵隊に連絡しろ。そして第二艦隊を出撃させる。この今回の作戦...失敗するぞ。」
「自分の方からも各方面に連絡を飛ばしておきます。」
「すまない。頼んだぞ。」
「はい!」
そういって杉山少将は足早に退室していった。
「司令官。嫌なことになったね。」
「あぁ...まったくだ。響。出られるか?」
「勿論さ。不死鳥の名は伊達じゃない。」
....................
鎮守府に戻ってきた俺は驚いた。
俺が鎮守府に戻った時、出迎えが霞一人だけだった。
「他のやつはどうした?電は?」
「皆は他の鎮守府の穴を埋めるために出撃しているわ。今いるのは加賀さんと榛名さんそれに入渠中の第3艦隊と明石さんだけよ。」
「他の鎮守府の損害はそこまでひどいのか?」
「ええ。思ったより泊地棲姫、中枢棲姫の装甲が厚く手間取っている間に深海棲艦の増援との戦闘になっちゃったそうよ。幸い、我が鎮守府ではまだ轟沈者は出ていないけど...今回初参加である新参鎮守府の方は壊滅との情報も入ってきているわ。」
「そうか...そうだ!春雨たちは!?大丈夫なのか?」
「通信が不安定で現在の状況は不明だけど。水上部隊が北上してまだ帰ってきていないこと、最後の通信から春雨を入れると3隻だけどまだ生存しているって。」
「そうか...無事だったか...しかし...気は抜けないな。」
俺は執務室へ向かった。
誤字脱字等はコメントにて。