「春雨なんか今日元気いいっぽーい。」
「そうだね。なにかいいことでもあったのかい?」
哨戒中、夕立姉さんと時雨姉さんがにこにこしながら聞いてきた。
「えーと…その…なにも無かったです…」
「そんなに顔を赤くしてなにも無かったと。ふ〜ん…」
「怪しいっぽ〜い!」
「はぅ…」
私が恥ずかしそうに俯いていると前の方から声がした。
「こらー!哨戒中よ!気を引き締めなさい!」
「ごめんよ白露」
「ふん!分かればいいのよ!」
「白露姉さん今日機嫌悪い…?」
「確かに…いつもよりなんかつんつんしてるっぽ〜い」
私と夕立姉さんの会話に時雨が入ってくる。
「それはね。白露っていつも一番に起きるんだけど…今日は誰かさんが先に起きた上に提督とイチャイチャしてたからさ」
その言葉に私はドキッとした。
「ま…まさか…姉さんたちは知ってて…」
「可愛い妹が朝起きてこっそり何処かへ行くんだよ?着いていくに決まってるじゃないか。まぁ夕立はぐっすりだったけど…」
「え…夕立だけ仲間はずれっぽい?」
まさか見られていたとは…
うぅ…恥ずかしい…
複雑な気持ちになりながら下を向き航行していると、突如として視界に映った白露に衝突しそうになった。
「ひゃ!」
慌てて止まる私
続いて止まる夕立姉さんと時雨姉さん。
「あの…白露姉さん?もかして…怒ってます?あの…ごめんなさい…!」
謝ってもこちらを向かず何も言わない白露姉さん
心配そうにこちらを伺っている夕立姉さんと時雨姉さん。
泣きそうになったとき白露が声を震わせながら指を指していった。
「ねぇ…あ…あれ…」
指の指す先には…
右半分のない艦娘が浮かんでいた。
「な…」
「嘘…」
「急いで回収して提督に報告するっぽい!」
「あ、あぁ…そうしましょう。」
流れ着いた遺体。
回収されていないということは、それほど重大な何かが起こったのか…それとも…
…………
朝の朝礼が終わったあと、俺はまた執務室に戻り書類を片付けていた。
「司令官さん、これはサインがいるやつなのです。ここにおいと置くのです。」
「あ…あぁ、電すまないな。」
机に叩きつけるように置かれた書類。
「い…電さん?もしかして…なんか怒ってます…?」
「別に何も怒ってないのです。仕事を放って朝から他の娘と遊んでることに起こってなんてないのです。」
絶対怒ってるだろなんて言えないような雰囲気を醸し出す電に気圧され、俺は、咄嗟に謝っていた。
「す…すまない…」
「ふん!分かればいいのです!」
ひとまずこれで仲直り?は出来たようだ…ほっとしてため息をつく。
好き人に嫌われるほど、嫌なことはないからな…と、内心考えていると、ふと電が口を開く。
「そういえば…どうして春雨さんがここに?」
「ん…あぁ。お腹が空いてここに来たって言ってたが…よく考えれば確かにおかしいな。それに…すこし元気もなさそうだった。」
「そうだったんですか…それは…少し心配なのです。また今度会ったら私が聞いておくのです。」
「すまないな電。」
「いえ!これも秘書艦の役目なのです!」
その後も他愛のない会話をしながら執務をしていた。
時刻が1030を指したあたりだろうか。
少し埠頭のほうが騒がしいようだ。
哨戒に出ていた春雨たちが帰ってきたのか?と思ったが少し早い。
嫌な予感がした。
執務室を慌てたようにノックする音が聞こえた。
「どうぞなのです。」
電が答え、ドアを開けると…そこには哨戒に出ていたはずの白露がいた。
「白露、只今帰投しました。提督…その…」
「どうした?まさか春雨たちに何かあったのか!?」
「いえ…妹たちには何もありませんでしたが…その…艦娘の遺体を回収しました。」
「は?」
急いで工廠に向かうと明石が既に遺体を調べていた。
「明石、どうだ?何かわかったか?」
「これは…最近の海戦で亡くなったようですね…。しかし…」
「どうした?」
明石は少し躊躇ったように答えた。
「これは…この傷は…我々艦娘が使用する艤装によってつけられた傷です…」
「なに!?つまりこの艦娘は艦娘に殺されたというのか?」
「大規模な海戦になれば、味方からの誤射もあります。しかし…遺体が回収されていないのを見ると…そういうことでしょうね…」
「どこの所属か分かりそうか?」
「えぇ…まぁ…艤装がまるまる残ってますし…ただ…ここには…この娘の妹が数隻所属してますので…」
「あぁ…そうだな…このことは内密にしておこう。まだ、あまり知られてないんだよな?」
「はい。知っているのは発見した白露さん達と…あとは埠頭で出会った運搬を手伝ってくださった空母の方達くらいですかね…。」
「わかった。白露たちには俺から伝えておこう。空母の奴らは頼めるか?」
「了解です!」
……………
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
呼吸が苦しくなる。
あいつが近づいて来る。
「良くやったな…約束通りお前の妹たちには手を出さないでやろう」
失礼しましたと言ってドアを開けて部屋を出る。
一つ一つの動作がままならない。
出た途端、私は膝から崩れ落ちた。
私は…私はなんてことをしたんだ…
誰か…助けて…
誤字脱字等はコメントにて。