大本営の友人から秘密裏に送られてきた連絡を見ながらそう呟く、
「やはり…深海棲艦の攻撃が死因ではないようだな…轟沈報告書が出されている…しかし…ショートランド泊地か…」
「あ…!次の大規模作戦で私達の前衛を務める鎮守府なのです。」
「あぁ。あそこは…確か艦娘思いで正義感の強い中将殿が式を取っていてしっかりと戦果も上げていたはずだか…一体何が起こっているんだ…」
暖炉に手紙を放り投げる。
「あの…司令官さん。」
「ん?どうした電」
「あの子達は大丈夫なんでしょうか…」
「あぁ。白露たちか…。仕方のないことだろうな…だが、俺たちがやっているのは戦争だ。これからもっと死を見ることになる。辛いが、慣れてもらうしかないな…」
…………
「ぽーい。」
「どうしたんだい?夕立。」
「夕立は死にたくないっぽーい…」
「夕立…」
哨戒中、夕立が放った言葉は僕に深く刺さった。
「うん。そうだね。皆で。絶対生き延びよう。」
…………
私は昼から哨戒の時雨姉さんと、夕立姉さんの二人と入れ違いになった時少し話した後、食堂へ向かった。
食堂で間宮さんは忙しそうに食器を洗っていた。
「間宮さ〜ん」
「あら。春雨ちゃんじゃない。最近見なかったけど大丈夫?」
「はい!姉さんたちのおかけでもう元気になりました!」
「そう。なら良かったわ。今からお昼?」
「はい!さっき哨戒から帰ってきたので!」
「ふふ。哨戒ご苦労さま。すぐ用意するわね。」
死は恐ろしい。
しかし。
私達が今やっているのは戦争だ。
正直逃げ出したかった。
誰かが周りで死ぬのは嫌だった。
でも。私達は戦わなければならない。
だから。
私は絶対に守る。
みんなを。姉さんたちを。
「今日は金曜日だからカレーよ。」
「有難うございます!」
カウンターでカレーの乗った皿を貰い、席を探す。
本来の昼食の時間とズレているため、艦娘は少なかったが、一人で食べている駆逐艦の子を見つけ私はそこへ向かった。
「隣いいですか?」
「いいわよ。」
そう返事したのは、朝潮型駆逐艦9番艦 霞さんだ。
確か今日は非番だったはず…
「霞さんは今日非番だったのでは?」
「ええそうよ。けど…艤装の点検とかしてたらこんな時間になってね…間宮さんに申し訳ないわ…」
「非番の日もちゃんと点検するの偉いですね…」
「当然よ。艤装の不調で轟沈とか御免よね。」
その言葉に少しぐさっと来た。
最近ずっと明石さんに任せて自分では点検をしてなかった…
「はいぃ…私も点検してみます。」
「ふふ。頑張ってね。じゃ。お先に。」
そう言って霞さんは立ち去っていった。
食べ終わったあと、工廠へと向かう。
「明石さーん居ますか?」
「はーい」
そう言って出てきた明石さんはとても疲れているようだった。
「あら?春雨ちゃんじゃない。どうかしたの?」
「あのーえーと…艤装の点検に…それより…明石さん何がありました?大丈夫ですか?」
「ちょっとね。今度また大規模作戦があるらしくてみんなの艤装をちょうど整備してたのよ。」
大規模作戦…
また…
前回は轟沈者は出なかったが…
今回は…
「なにか手伝えることはありますか?」
「う〜ん…そうね…あ、なら妖精さんたちと姉妹艦の分をお願いしていいかしら?」
「はい!分かりました!」
「なにか問題があったらすぐ報告してね!」
「はーい!」
そういって私は艤装点検を始めた。
細かいところなどには妖精さんが入って見てくれる。
白露姉さん、私の艤装、問題はない。
あとは…今日哨戒に行っていた夕立姉さんと時雨姉さんの分。
ひとまず比較的綺麗な時雨姉さんの艤装を見始めた。
時雨姉さんは動きが丁寧で艤装が汚れが少ない。
動きも惚れ惚れする。
私もあんなふうに戦えるようになりたい…
砲をチェックしていた時だった。
「あれ?これって…」
妖精さんと顔を見合わせる。
妖精さんも異変に気がついたようだ。
明石の方を見る。
忙しそうに整備をしていた。
なにも問題が無ければどうしよう…と思いつつもやはり心配だ。
悪いとは思いつつも呼ぶことにした。
「明石さーん!」
そう呼ぶと急いて明石がこっちに来た。
「どうしたの?」
「あの、時雨姉さんの艤装のここなんですけど…」
「あら…?う〜ん…」
「大丈夫そうですか?」
「しばらくは大丈夫だとは思うわ。けれど、近いうちにバラさないといけないわね。」
「やっぱりそうですか…」
「まぁ性能が落ちるわけでもないわけだからそこまで心配しななくていいわよ。けど、一応提督には報告しておくわね。」
「有難うございます!」
………………
「ねぇ…満潮さん。」
「……………な…に。」
「怪我の具合はどう…?」
「……大丈夫よ。」
「そう…なら良かったわ。」
「…………」
「…………」
「何も…用事がないなら帰ってほしいとだけれど。」
「いえ…あの…貴方のお姉さんのことで…」
「朝潮姉さんがどうかしたの…?まさか…!」
「………ごめんなさい…」
「え?なんであんたは生きてるの?戦ったんじゃないの?なんで無傷なの?ねぇ。朝潮は何処にいるの?」
「わ…私は…妹を守りたくて…」
「?意味がわからないわ。だから、朝潮姉さんはどうなって今どこに居るのよ!」
「私…が…私が…朝潮さんを…」
満潮の目が大きく見開かれる。
「か…」
「え…?」
満潮は涙を流し始めた。
「かえ…してよ…返してよ!」
「………ごめんなさい…でも命令で…」
「そんなの知らない!返してよ!朝潮姉さんを返して!私の…私の唯一の家族なの…よ…」
「…………ごめんなさい…」
「いくら謝ったって…朝潮姉さんは帰ってこないわ!」
「満潮…」
「出てって。」
「え?」
「出てって。もう二度と私の前に姿を表さないで。次あなたを見たとき…私は…貴方を見逃せる保証は…無い…わ…」
陽炎が出ていったあと、私は混乱していた。
陽炎が朝潮姉さんを殺した?訳がわからない。
なんで?どうして?
姉さんは悪いことなんてしていない。
使えない私みたいな中途半端な実力じゃない。
記憶が蘇る。
「満潮!今日は一緒の艦隊ですね!」
「えぇ。そうね。」
「満潮〜一緒に寝ませんか?」
「何でよ!別に一人で寝られるわよ!」
「たまには一緒寝ましょう!」
「分かったわよ…」
姉さんは真面目だった。
妹の私にも敬語だった。
けれど、私は知っていた。
姉さんが甘えるのが好きだったことを。
本当だったら色んな人にくっつく犬みたいな艦娘だったんだろうと思っていた。
でも、朝潮姉さんはいつも私を気にかけてくれていた。
朝潮姉さんが居なかったら私はこの鎮守府にいなかった。
それどころか海の下だったかもしれない。
私が大破したとき、朝潮姉さんは提督から私を庇ってくれた。
朝潮姉さんが私の分まで働く。だから、私を生かしておいてほしい。
そう言った。
朝潮姉さんの居ない部屋は何故かいつもより広く感じる。
久しぶりにベットから外に出た。
朝潮姉さんの居なくなった今、ここに私の居場所はない。
どうせ、放っておいたら私は死ぬんだ。
工廠へ向かう。
私も姉さんの跡を追いかけたら…怒るかな。
絶対に、満潮は生きなさい!って言いそう。
艤装を身につける。
「え?満潮ちゃん!?大丈夫なの!?何で艤装をつけてるの!?ちょっと待ってよ!」
夕張さんの声が遠く聞こえた。
彼女はまだ知らないのだろうか。
姉さんの死を。
海に立つ。
久しぶりの感覚だ。
少しよろけつつも、少し進むとすぐに感覚を取り戻してきた。
後ろから叫ぶ夕張さんの声がだんだんと離れていく。
最後は少し涙声だった気がする。
修理はされているが、大破状態の私。
速力もそこまででない。
だが、全てがどうだってよかった。
目の前にイ級が一隻現れた。
普段なら苦労せずに倒せる。
だが、今は違う。
イ級の砲がこちらを向く。
今だ。
取舵。
増速。
横を通り抜ける砲弾。
魚雷発射管をイ級へと向ける。
しかし、怪我のせいで少しもたついてしまった。
イ級の魚雷発射管もこちらを向く。
放ったのは同時だった。
あぁ。
ここで終われるのか…
最後は深海棲艦に轟沈させられる。
一人で飛び出したときからそう望んでいたのかもしれない…。
朝潮姉さん…今逝きます。
衝撃が私を襲う。
手足がちぎれるのがわかった。
痛い。
姉さんもこんな感じったのだろうか。
ゆっくりと海水が私を取り込んでいく。
だんだんと、深く、暗いなにかが押し寄せてきた。
そして…私は意識を手放した。
……………
突如として現れた満潮ちゃんに私は驚いた。
最初は元気になったのかと思った。
しかし、すぐに間違っていることに気がついた。
包帯はまだ取れていない。
目も虚ろで光がなかった。
彼女は艤装を背負って出撃をしようとしていた。
急いで止めた。
だが、彼女の目はさっきまでとはまるで違い、気迫がすごった。
「満潮ちゃん…」
出撃していった彼女を私は呆然と見守るしか出来なかった。
一応、彼女の艤装は以前から整備をしていた。
だが…
「あのままでは沈んでしまうわ!」
私も急いで艤装をつけた。
提督に出撃の許可を…と考えたが、それでは断られるのが落ちだし、追いつけなくなる。
急いで妖精さんたちに満潮ちゃんを追いかけることを伝え、私も出撃をする。
海に出て、自分の足の遅さを呪いながらも水平線の淵に見える満潮ちゃんを必死に追いかけた。
追いかけながら考える。
なんで満潮ちゃんは…
普通あんな状態で出撃はしない…
なにより朝潮ちゃんが絶対に止めるわよね。
そういえば、昨日から朝潮ちゃんの艤装を見ていない気がする。
私もずっと工廠にいるわけではない。
たが…もしそうだとすると…満潮ちゃんは死ぬつもり!?
急がなくちゃ!
轟音が聞こえた。
数秒後、もうすでに消えかかっている満潮から大きな水柱が上がった。
そんな!
数分後、先程爆発があったと思われる場所に私は立っていた。
足元には深海棲艦の破片と…艦娘の艤装の破片。
そして…満潮ちゃんと思わしき肉片…
彼女がいつも身につけていたリボンが足元に流れてくる。
私はそれを広い、鎮守府へと向かった。
ねぇ。満潮ちゃん。
あなたは最後まで誰かに心配をかけされる艦娘ね…。
貴方が初めて着任したときのこと、覚えてるわ。
最初は生意気な子が来たと思っていたけれど、徐々に優しい子だって分かってきたわ。
朝潮ちゃんと一緒によく居たわね。
貴方が怪我をしたとき、朝潮ちゃんはずっとあなたのことを心配してたのよ。
艤装も、提督から放っておけって言われてたけど、朝潮ちゃんのお願いでしっかりと修理をしてたんだから…
今なら思うわ。
修理して置かなければよかった…わ
満潮ちゃん。
酷いよ。
誤字脱字等はコメントにて。
止めるタイミング分からなくなってこうなりました。
ちょっと間が開くかもです。