「ねぇ。春雨。もしもの時、私の背中を守ってくれる?」
そういいながらこちらを向いたのは霞さんだった。
「どうして...そんなこと聞くんですか?」
霞さんは少し間を置いてから口を開く。
「あんたは...戦えるのかと思ってね。今回の大規模作戦、嫌な予感がするわ...覚悟を決めなきゃね...」
今度は私が黙る番だった。
やはり皆何かを感じているのかもしれない。
「私は...姉さんや...みんなを守りたい。その為に戦います。」
「もしあんたが死ぬことになっても...?」
「はい。」
「良いわ。あんたなら大丈夫そうね。」
しかし、私は少し気になっていたことがあった。
「あの...」
「何?」
「霞さんは何のために戦っているんですか...?」
霞さんは少し驚いたような顔をしていた。
しかし、一瞬、悲しそうな顔も見えたような気がした。
「人を...姉を探すのためよ。奴らに奪われた海域で。」
霞さんはそう静かに言った。
「え...」
「まぁ隠す必要もないわね...もう結構前ね。私は小さな泊地で建造されたの。そこは此処とは比べられないほど小規模で、艦娘の数も少なかったわ。でも、みんな仲良く楽しくやってたわ。毎日が幸せだった。でも...奴等に奪われた。」
「まさか...」
「そうよ。数年前の侵攻によって前線は崩壊。私達のいた場所は前線からすぐの場所で補給艦隊の途中基地みたいな感じだったんだれど...前線が落ちたその数日後に突如として戦艦棲姫を含む深海棲艦の水上部隊の奇襲を受けたの。戦える娘はみんな出て行ったわ。私もよ。今考えれば絶対に敵うはずもなかったのにね...最初は善戦してたんだけれど...一人、また一人と散っていったわ。最後は私と、姉の朝雲だけが残った。けれど...朝雲姉さんは私を逃がしたのよ。私も後から行くからって。艦娘が敵前逃亡だなんてね...当時朝雲姉さんは泊地の中で一番強かった。けれどたかが駆逐艦。奴らの掃討戦が終わった後痕跡は見つからなかったわ。諦めろって沢山の人に言われた。でも...轟沈確認はされていないから私は生きていると信じているわ。だって朝雲姉さんだもの。」
「生きていると...良いですね。」
「有難う。」
まさか霞さんが前線から来てたなんて...前の所属の話はみんなあまりしたがらなかった。
だが...
「霞さんは強いですね...」
「そうかしら?むしろ私は弱いわよ。だって...現実を受け入れず夢ばかり見ているんだから...」
...........
私は立ち上がって辺りを見回す。
ここは島のようだ。
自分の手を見る。
この手はあの時千切れて無くなったはず...
艤装もダメージなど受けなかったかのように綺麗だった。
そして...私の修復材を使わなければ治らないはずの体が綺麗にに治っていた...
「嘘...」
足元に気配を感じ、下を向くと見慣れない妖精さんが立っていた。
私の艤装の妖精ではない...
では...
誰の...?
いや...私は知っている。
以前提督が話していた...
一度だけ艦娘を轟沈から救ってくれるという...
「応急修理女神...?」
そういうと妖精さんは頷く。
「どうして...私を...」
そういうと妖精さんは身振り手振りで何かを伝えようとしていた。
私を指さし次に上を指す。
必死に背伸びをして身長を図るように伸ばす。
まさか...
「朝潮姉さん...」
そういうと妖精さんは元気いっぱいに頷いた。
涙があふれる。
また...助けられた...
でも..どうして姉さんが応急修理女神を...?
それに...どうして私なんかに...
私は膝を抱えてうずくまる。
涙が止まらない。
私が泣いていると妖精さんが撫でてくれた。
「慰めてくれるの...?有難う...」
そういって笑いかけると妖精さんも笑顔になった。
その時だった。
声がした。
「うわぁ艦娘じゃない。数年ぶり...に.........嘘...」
「誰!?」
声のほうを向くと...そこには...
「嘘...朝雲...?」
「満潮姉さん...?満潮姉さん!」
そう言って朝雲が抱き着いてきた。
「あっ!ちょ!朝雲あんた何でここにいるのよ。それに艦娘を数年ぶりにって...ここは一体どこなのよ...」
朝雲は私を暫くぎゅっと抱きしめてからやっと離れてくれた。
それからゆっくり話し始めた。
「ここは...深海棲艦の支配する、かつて私の基地があった島。」
私はショックを受けた。
それと同時に朝雲が一人だった理由も分かった。
朝雲は戻りたかったのだろうが戻れなかったのだ...
「ここには何年...?」
「ん~...数えるのは2年で辞めたわ!」
「そう...」
沈黙が続く。
「取敢えず、私の住んでいるところまで行きましょう!案内します!」
「えぇ...有難う...」
妖精さんが艤装に乗ったのを確認して朝雲の後をついていく。
茂みをかけ分けながら進むとだんだんと開けた場所が見えてきた。
そこは一面畑で、青々と野菜が茂っていた。
「すごい...これ...あんた一人で...?」
「うん。必ず、艦娘が勝つって信じてるから。」
「そう...」
「そういえば、霞には会ったりしてない?」
「霞?私、同型艦はあんたと朝潮姉さんしか会ってないわ。」
朝潮姉さん。というとまた涙が出そうになった。
そんな私を見る朝雲は優しい目をしていた。
「ちょっと!頭撫でるんじゃないわよ!」
「だって姉さん悲しそうにしてたから。」
「どっちが姉かわからないじゃない...」
私が声を絞り出すと朝雲は私を抱き寄せた。
「辛い時はお互い様。」
「朝雲...」
誤字脱字等はコメントにて。