「……ふぅ」
夕食を済ませ、床に着く。
しかし、寝つけずに右を向いたり、左を向いたりを繰り返す。
「…………」
(……眠れないな……)
今夜は雨が降っているわけではない。
桔梗の様子が気になってのことだった。
昼間、一二三に聞いた話が脳内で何度も再生される。
(桔梗さん……友達がいないのか……。だから……あんなに僕らによくしてくれるんだな……)
昼間父親も言っていたが、自分自身も改めて、桔梗のことを不憫だと、そう思った。
自分には母親がいない。
しかし、仲間がいっぱいいてくれるので、寂しいと感じたことは特にない。
だが桔梗は、ずっと孤独を抱えて生きてきたのではないかと、そんな風に思えてしまうのだ。
(その上、鬼宮家のことも考えていかなきゃならなくて……本当に……本当に桔梗さんは……)
可哀相と、そう思った。
(僕に何か出来ることがあるといいんだけど……)
眠れずに鬼太郎は、なんとはなしに廊下に出る。
すると、夜空に大きな月が浮かんでいて、それがとても綺麗に見えて、庭へと誘われていった……。
* * *
(雲一つない……。これは、明日もいい天気になりそうだな……)
顔をあげてボンヤリと、月を眺めていると――
「あ……ぅ、ああ……!」
どこからか、女の苦しげな声が聞こえてきた。
「…………!?」
声がしたほうを振り向くと、そこには土蔵があり、戸がきっちり閉まっていないのか、中から薄っすらと明かりが漏れている。
「…………」
鬼太郎はじゅうぶん警戒した上で、土蔵へと近づいていった。
そして、そっと中を覗き込む。
そこには――
「あ……っ、あぁ……はぁ……う……っ!」
と、切なげな呻き声をあげる、桔梗の姿があった。
(き、桔梗さん……!)
すぐに駆け寄ろうとした。
だが、出来ない。
彼女の格好を見て、身体が凍りついてしまったのだ。
「うあぁ……はぁ……ああっ……」
全裸に縄化粧を施された桔梗が、台の上で磔にされている。
しかも、こちらに向かって大きく股を開いた状態で……。
(ど、どうしてあんな格好を……っ)
赤くなり、慌てて桔梗から目を逸らす。
しかし、いくら顔を背けたところで、荒縄に縛られてグイと大きく迫り出した乳房や、割れ目の奥に位置する赤い秘肉といった卑猥な光景は、瞬時にして脳裏に焼き付いてしまったみたいで離れない。
しかもその直後、ビシッと鞭が肉を打つ音と、桔梗の悲鳴とが聞こえてきたため、鬼太郎は再びそちらに目を向けた。
(桔梗さん……!)
「あ……ぐッ! うぁっ、はっ……ああーーーッ!!」
続け様に鞭打たれ、背を大きく仰け反らせて喘ぐ桔梗。
彼女を鞭打っているのは多恵という、一二三の秘書と思しき女のようだった。
(あの人、なぜ桔梗さんを……? ……と、そんなこと考えてる場合じゃない! とにかく助けないと……!)
土蔵の中に足を踏み入れようとした、その瞬間――
「もっと……もっと私を……ぶってちょうだいっ。もっとぉぉぉ……!」
桔梗の口から、そんな悲痛な声が発せられた。
(……え?)
鞭を欲するような桔梗の言葉に驚く鬼太郎の目に、蜜にまみれてツヤツヤとした光沢を放つ、黒い茂みが飛び込んできた。
(…………ッ!)
色事にうとい鬼太郎でも、さすがに分かる。
鞭打たれることに、桔梗が悦びを感じているのだということが。
(き……桔梗さんは自ら望んであんなことを……)
などと考えている間にも、桔梗の白い肌を何度も鞭先が舐め、艶を含んだ喘ぎが響く。
「あぁ……はぁっ……うあぁ……はぁっ、あーーーーーッ!!」
鞭は腰や手足を打つだけにとどまらず、乳首や秘部といった過敏な部分をも打っていき、桔梗の悲鳴がどんどん甲高くなっていく。
しかし、それでも桔梗は「やめて」と許しを請うどころか、まるで鞭に追い縋るかのように、腰を上へと突き出し、その身に鞭を受けていた。
「あっ……ひぃぃぃぃぃぃぃーーーーーッ!!」
一際強く鞭打たれ、発せられる叫び声。
それと同時に割れ目の奥からブシュッと透明の蜜が噴き出して、鬼太郎は「これ以上見てはいけない」とそう思い、足早にその場を後にした。
* * *
「おい、鬼太郎。朝じゃぞ~!」
目玉おやじが勢い込んで部屋に入ると、鬼太郎は布団から身を起こし、正座していた。
「……ん? なんじゃ、もう起きておったのか」
「…………」
「鬼太郎?」
「……え?」
「どうしたんじゃ。ボーッとして。熱でもあるのかの?」
「……いえ。大丈夫です?」
「本当に大丈夫か?」
「はい……」
「ふむ。じゃあ、さっさと飯を食って桔梗さんと川遊びじゃあ!」
「……えッ!?」
桔梗という言葉を聞いた途端、ドクドクドクと心臓が早鐘を打つ。
「え、とはなんじゃ! 昨日言ったじゃろう? 桔梗さんが元気になったら、遊んでやりなさいと」
「それはそう……ですが……」
「ですが、なんじゃ?」
「…………」
「んん? なんだか様子が変じゃのぅ。やっぱり熱があるんじゃ……」
「い、いえ……。本当に……平気ですから。ハハ……」
作り笑いでその場をやり過ごそうとする息子の態度を訝しく思いながらも、目玉おやじはそれ以上何も言いはしなかった。