泣き濡れて輝く、黒瑪瑙の瞳。
ビスクドールを思わせる、陶器のように白く滑らかな肌。
天使の羽と見紛うような、ふんわりとした、柔らかな栗色の髪。
そして世界に生まれ落ちて、まだ間もないその身体を穢す、白く濁った液体。
……少女は泣いている。
『お姉ちゃん』と呼んでいる。
その声は、確かに耳に届いているのに手も足も、動かないままで──……。
* * *
水面に揺れる、小さな波紋。
蒼く静かで、昏い水の底へと沈む身体。
呼吸が止まり、何も見えなくなって、水と一体化する。
(いつまでも、こうしていたい。でも……)
水中から身を浮かせ、プールサイドへと泳いでいく少女。
前の世では千葉雪と、今世では水月桜という名を与えられた彼女はシャワールームへと足を向けた。
* * *
(里花を、迎えに行かないと……)
少し急くような気持ちで桜がシャワーを浴びていると、ノックもなしに不意にドアが開いた。そして誰かが中へと入り込んでくる。
「あなたは……」
「……先輩」
全裸にバスタオルを巻き付けただけという無防備な状態で、水泳部の後輩である橘紬という少女が後ろ手にドアを閉めた。
「橘さん……何?」
「橘だなんて先輩、冷たい。あんなに私のことたくさん抱いてくれたのに……。紬って、名前で呼んで下さいよ」
「……ああいう関係になる前に私、ちゃんと言ったよ? 里花にバレたらお終いって」
「そうだけど……でもどうしても先輩のこと、忘れられないから……」
「ダメだよ。もう無理……」
「いや……お願いだから、もう一度だけ……ね?」
縋るようにそう言って、紬は桜の豊満な乳房へと手を伸ばした。だが桜はその腕を掴んで止める。
「……分かった」
──時間がない。ここで押し問答していては、里花を待たせてしまうとそう判断し、桜は紬の顎を捉えて口付けた。
「んぁっ……んん、先輩……」
うっとりとした吐息が漏れる。そうして薄く開いた唇の隙間へと舌を捩じ込み、桜はねろりと、相手の歯の裏側を舐め擽っていった。
「はふっ、ん……はぁン……!」
「……ん」
鼻先で息を整えつつ、舌同士を絡め合わせ、甘く吸い立て、そのまま指先を紬の首筋、鎖骨、乳房へと、ゆっくりと滑らせていく。
「やぅ……っ! はっ……あぁぁっ!」
「……静かに。人に聞かれちゃうよ?」
叱り付けるようにそう言って、乳首を捻り上げる桜。強い刺激に紬の口から甲高い声がせり上がるが、慌てて彼女は唇を噛み締めてやり過ごす。
「っ、はぁ……ぁ、先輩ってば意地悪……」
「紬がいい子にしてないから」
『お仕置き』とばかりに少女の首筋へと噛み付いていく。そのせいで紬はまた声をあげそうになってしまうが、懸命に今度は耐えた。
「……いい子」
囁いて桜は、紬の膨らみかけた乳房を優しく揉んでいく。そうして中央の過敏な箇所へと、触れるか触れないかの微妙なタッチで撫で上げた。
「うはっ、あ……っ、んん……ッ!」
焦れを募らせ、ぷっくりと乳輪ごと乳首を勃起させる紬。それに気付いた桜は指の腹で胸先をこね回してやり、そしてゆっくりとその場に膝をつきながら、少女の腹部を濡れた舌で撫で下ろしていく。
「あう……! はっ、ぁんん……!」
「紬……自分で開いて」
「っ、そ……そんなの、恥ずかしい……っ」
「その恥ずかしいのがいいんでしょ。知ってるんだよ?」
桜はぐずる紬に『早く』と、クリトリスをピンッと指で弾いて促した。
「ひぁっ!? はっ、ああン……!」
「……ほら、気持ち良くなりたくないの?」
鞭の次は飴とばかりに、桜はびくんと腰を跳ね上げる紬の割れ目へと、舌を這わせていった。
「やっ、あぅ……! はぁン……そこっ! せんぱ、んぅぅ……ッ……」
鼻に掛かった甘い声で桜を呼び、ぬらついてツルりと滑る肉びらを、掴んで広げていく紬。ぽってりとした肉厚のある花弁による保護を失い、生々しく中身を露出させたソコは桜の愛撫を欲しがって、ひくひくと小刻みに揺れていた。
「あぁ……すごい、この子……私のこと、とっても求めてる……」
『ちゅっ』と軽く肉芽に口付けた後、桜は尖らせた舌先で包皮を剥き上げ、白い筋の浮いたピンク色した肉豆に直接吸い付いていく。
「あひっ!? あっ、はぁぁぁン……!」
「声だめって言ってるのに……」
ダイレクトな快感に、膝が崩れ落ちそうになった紬を支えるかのようにして、ぐっしょりと濡れた膣内へと指の束を埋め込む桜。
紬はダブルの刺激に、激しく身を震わせている。
「うはっ……ああッ! だって、こんなの……我慢できない……! んあああッ!!」
今日は本来、部活がある日ではないので人がくる心配は正直あまりないが、それでもこれだけ大きな声で喘いでいれば、万一誰か通り掛かればきっと聞かれてしまうだろう。
それぐらいのことは、すっかり理性が蕩けてしまった紬であっても分かりそうなものであるが、どうにも声が抑え切れないらしく、彼女は身体をビクビクと痙攣させるたび『あっ、あっ!』と大きな嬌声をあげている。
(誰かくる前に、イかせてしまったほうがいいかもしれない。里花のこともあるし……)
焦燥感に駆られた桜は、ぷりぷりとして歯応えのある肉芽を舌で舐め転がし、ヴァギナの中で指をくの字に折り曲げて、Gスポットを掻くように刺激した。
瞬間、絶叫と共に、紬の尿道口から勢いよく銀の飛沫が噴射する。
「っあ……! は、あぁあぁぁぁーーーッ!!」
「あン……っ」
プシャッと顔面に潮が噴きかかるが、流しっ放しのシャワーがすぐにそれを洗い流してくれる。そうして『これで終わった』と、立ち上がった直後、バタバタと忙しない足音が聞こえてきた。
「水月先輩、いらっしゃいますか!? 里花が、里花が……!」
「里花がどうしたの!?」
"里花"という名前を聞き、慌てて尋ね返す桜。里花のことを知らせにきてくれた後輩は、『彼女は保健室にいる』と教えてくれた。
「分かった、すぐに行くわ。ありがとう」
そう後輩に答えて桜は、手近にあったTシャツを被り──
「終わったばかりでごめんね。もう行く」
紬の頬にキスした後、その場を駆けだした。
* * *
「里花……!」
ガラリと勢いよく扉を開き、保健室へと足を踏み入れる桜。彼女の探し人である"里花"という少女はベッドに腰掛けており、すぐに見付かった。
「……お姉ちゃん」
「あぁ……里花、大丈夫? しんどくなっちゃった……?」
「……うん。だってお姉ちゃん、待ち合わせの時間になっても来てくれないんだもの……」
「……そうだね。一緒に帰ろうって言ってたのに、ごめんね……遅れちゃって。ちょっとゆっくり、泳ぎ過ぎたみたい」
「んー……。キスしてくれたら許す」
「……キスってここ、保健室だよ?」
「そうだけど……だめ?」
上目遣いで、そう尋ねてくる里花。血の繋がりはないが、大切な妹の求めを拒めるはずがなく──
「いいよ」
桜は里花のチェリーピンクの唇に、軽く口付けた。
「……これで機嫌は直った? お姫様」
「ふふ……。うん、直った」
ふんわりとウェーブがかった、栗色の髪の少女。満足げに笑うその姿に、桜はホッと胸を撫で下ろす。
「じゃ、荷物取ってくるから待ってて。一緒に帰ろう」
里花の頬を撫でた後、くるりと踵を返したところで『水月さん!』と怒声が降ってくる。
「まぁ~! 何です、その格好は! うちが女子高だからって、ちょっと気が緩みすぎなんじゃありません!?」
養護教諭──いわゆる保健室の先生が、全裸にTシャツを纏っただけというあられもない格好をしている桜に、『はしたない』と声を荒げた。
「すみません……妹のことが心配になり、急いできたもので……」
「事情はあるかもしれませんがね、でも……ほら。透けて見えているわよ。恥ずかしい」
養護教諭に、シャツの上からむんずと乳房を掴まれる桜。幸い、自分の身体が死角になっていて里花には見えていないようだった。
「ごめんなさい、先生。すぐに着替えてきます。……里花、校門で待ってて」
笑顔で謝罪し、その場を取り繕った桜は、来た道を戻っていった。
* * *
「里花、お待たせ」
制服に着替えた桜は校門の前で妹と合流し、彼女を家まで送り届ける。だが家には上がらない。
「お姉ちゃん、今日もジムとバイト?」
「そうだよ。寂しい思いをさせてしまって悪いけど……里花を悪い人から守るためだから我慢して。ね?」
『つまんない』と唇を尖らせる里花の額に口付けを落とし、桜は駅の方へと駆けて行った。そしてコインロッカーから荷物を取り出し、駅近くにあるデパートのトイレで制服から私服に着替える。それから──
「……ん、よし」
軽く化粧した後、彼女は愛しい人との待ち合わせ場所へと急いだ。
(里花、ごめんね……)
里花に嘘を吐いてしまったこと。少なからず胸が痛むが、こうでもしなければ桜は彼に会うことが出来ない。知れば彼女は、自分を傷付けてしまうから……。