カントーリーグ最年少王者レッドと、ヤマブキジムリーダー黒き長髪の美女、ナツメ。
かつて挑戦者の少年とジムリーダーという出会いを果たした二人は、ポケモントレーナーとして通じるところがあったのか、時を重ねて仲睦まじくなり自然と結ばれた。
ナツメが女優業を志してイッシュ地方のポケウッドへと海を渡った際も、レッドも同地方のPWT(ポケモンワールドトーナメント)出場と機会を合わせた。
そのまま二人同棲することになり幾年が立っている。
今日はそんな二人の記念日だった。初めて二人で海を渡った時、船から降りて足を踏み入れたのはイッシュ地方の海の玄関口、港にして高層ビルが立ち並ぶホドモエシティ。
新しい挑戦を始めたこの最初の一歩の日を、二人は記録していた。
「もうすぐ帰るよ」
「ええ、待ってるわ」
ライブキャスターのテレビ電話機能を切り、レッドは夜の街の中帰路につく。初めてナツメと出会った日から背丈は伸び体つきもたくましくなったが、ポジティブな挑戦意欲と優しさを兼ね備えた顔つき、トレードマークの赤い帽子は変わらない。
レッドはポケモントレーナーとしてトップレベル、ナツメもトップ女優ということもあって、レッドは今日の記念日をナツメと高級ホテルで過ごそうかとも思ったのだが、ナツメは「いつもの家で、一緒がいいわ」と断られた。
レッドは特に気を悪くすることもなく了承した。むしろ、ちょっと覚悟した。以前、ホテルでナツメと色々とハッスルしすぎてベッドを大変なことにしてしまい、二人で対応に苦慮したことがあった。自宅ならその心配はない。
「ただいまー」
「おかえり、レッド」
自宅のドアを開けると、目の前にナツメが待っていた。
レッドに驚きはない、ナツメならばエスパーでレッドがドアを開けるタイミングも容易にわかるからだ。
「今日は、その恰好なんだね」
レッドの声に反応して、ナツメは軽く首を振って自身の黒いストレートの長髪をなびかせた。服装もかつてレッドがヤマブキジムを訪れた時に着用していた、紫色を基調とした体のラインが出るぴっちりとした服装。胸と尻の丸みがはっきりと浮き出ており、少し動けば股間が見えてしまいそうなタイトスカートからは、黒いストッキングに包まれた太ももが煽情的にのぞいている。
「ええ。レッドも好きでしょう?」
「ナツメならどんな姿でも好きだよ」
グリーンなどのレッドをよく知る人物がいたら卒倒しそうなほどに驚いただろう。元来、口数が少なく無表情と言われるレッドは、ナツメと二人きりでいる時は感情の全てをさらけだしていた。
「……もう……」
ナツメは不満そうに口を膨らませつつも頬を赤らめ、レッドは微笑みながらナツメの腰を抱き寄せる。
「初めてナツメと会った時を思い出すよ。すごく綺麗だ……」
「……あ……あなたも……んちゅ……」
(レッド……好き……)
口づけを交わし、体を余すことなく密着させる。ナツメはすっかりメロメロになって幸福に包まれながら、レッドの首に腕を回してもっともっととキスをせがむ。
が、ナツメは自身の性欲が暴走し始めるのをかろうじてストップさせる。
(……あっ! だめよ、今日は特別な日。レッドにたくさん、特別な体験をプレゼントするんだから……!)
ナツメは一握りの理性でキスを中断すると、
「ん……ねえレッド……今日は特別なプレゼントがあるの。先に寝室で待っててくれるかしら?」
「うん、わかった。軽くシャワー浴びてくるけどいい?」
「ええ」
レッドは寝室でナツメを待つ。先に帰ってきていたナツメが、レッドをもてなすために色々準備していてくれたのだろう。レッドはそんなナツメがますます愛おしくなると共に、彼女のプレゼントを受け取ったら相応のものを返さねばと硬く決意していた。
寝室に特に装飾はなくいつも通り、レッドはシャツと半ズボンだけの軽装。
ナツメはどんなプレゼントを用意してくれているんだろう……と純粋なレッドの期待に対し、ナツメはかなりアブノーマルな準備をしていた。
ナツメは寝室の前で、念入りに台本をチェックしている。ナツメの役者経験の粋を詰め込んだ、脚本ナツメ、主演ナツメの恋舞台。
(まずは悪の女幹部。それから深窓のお嬢様風に……よし)
ナツメの真剣な表情はポケウッドでプロとして仕事をこなす女優のそれ。今回、その技術と熱意は一人の男だけに向けられていた。
しかも、
(少し危ないかもだけど……レッドのためだもの。本気でいかないと)
ナツメは軽くだが、自身のエスパー能力をもって自分にたいして催眠術をかけた。強烈な自己暗示より一段上のものと言っていい。
すべては役に入りきり、レッドをもてなすため。
ナツメのパッチリとしていながら切れ長の釣り目が、さらに細く、冷たさを感じさせるものに変わる。
「ふふ……待たせたわね、レッド」
ナツメは寝室のドアを開けた。