血と悪魔(大人悪魔ほむら×大人さやかR18短編集) 作:さんかく@
彼女の携帯を当たり前のように見るようになったのはいつからだっただろう?
ふと、ほむらはそう思いながら青色の携帯をサイドテーブルから取った。まだ夜が明けたばかりだというのに、着信音が鳴り続けている。発信元は彼女の職場の直属の上司からではない。もし、そうであれば今ベッドで眠りこけている携帯の主を叩き起こすところであるが…ほむらは目を細めながらシーツの膨らみを見つめる。ほんの少しだけ蒼い髪の頭が見えた。白い手を伸ばし、その柔らかい髪へ指を絡めると感触を楽しむかのように優しく撫でた。そしてもう一方の手に持っている携帯を見つめる。鳴り続ける着信音。ふう、と息を吐くとほむらは携帯をいじり、耳にあてた。目を瞑り、しばし携帯の向こうから発せられる声を聞く。そうして、おもむろに口を開いた。
「……まだ続ける気なのかしら」
ほむらの目がゆっくりと開かれる、アメジストの瞳。微かに聞える女性の声。
「生憎、あのひとは寝ているわ、私の傍でね…それじゃあ切るわ」
そうしてやや乱暴に携帯を切ると、しばらくの間なにやら操作して、放り投げるようにしてテーブルへ置いた。そのまま体を反転させ、シーツの中へと潜り込む。
「…どうしたの?」
シーツの中で蒼い髪の女性が身じろぎしながら囁く、どうやら目を覚ましたらしい。
「なんでもないわ…」
ほむらはそっと、彼女の肩に触れる、そうして吐息をつきながらその肩に頭を乗せた。気持ちよさそうに目を瞑る。
「まだ早いわ…眠りましょう」
「ん…」
二人は何も纏わない姿のまま、申し合せたように身じろぎし寄り添い合うと再び眠りについた。
* * *
『寝たわ』
『…何』
『寝たのよ…意味わかるわよね?』
そう言った時の、動揺する相手の顔をほむらは鮮明に思い出すことができる。
『私はあの人を抱いたわ』
その直後、頬を強く殴られた痛みも。
息を吹きかけて、少しぬるくなったコーヒーをほむらは口に含む。
――まだ、あの女はあきらめていないのだろうか?
昼下がり、窓からビルの街並みを見下ろしながら、ほむらは思考の波へと心を委ねていた。蒼い髪の「相方」は今仕事に出かけている。まるで専業主婦にでもなったみたいだとこんな時、いつもほむらは自嘲気味に思う。高校生の頃、彼女が家に転がり込んでからもう8年、その間常に行動を共にし、戦ってきた。そして日常の現実世界では大学を卒業し、就職して、これからも共に暮らしていくことを彼女は誓った(契約した)。彼女を手放す気はほむらには無い。
『あいつの事「愛」してないし、「好き」でもないって言ったじゃないか、なのになんで』
『言ったわ、その通りよ』
驚く相手の顔、そう、私は特に彼女を愛している訳でもないし、好きでもない。私が愛しているのはまどかだけ。
ただ…
あの人はもう私の所有物なのだ、みすみす他人に渡す訳にはいかない。そう、それだけ…。
本当に?
……………ええ
誰とも知れぬ問いへの答えをほむらは心で呟く。何故その時、疼くように胸が痛むのかは悪魔は気付いていなかった。否、自ら押し隠していた。
『あの人にはもう近寄らないで』
『あの人は私のものなのよ』
――だって私はあなたよりもずっとあの人のことが――
彼女へのこの未だ名前のつかない「想い」は誰にも気づかれてはいけない。
これは最後の「切り札」なのだから。
携帯が鳴った。
* * *
『じゃあ、続けるのね、いいわ…でも私はあの人を手放さないわよ』
『ああ、じゃあ今晩19時に』
黒髪の女性に勝てないゲームだと宣言されても、「女」はあきらめなかった。否、未練がましかった。盲目的だと言われようが、それでも蒼い髪の友人を取り戻したいと思っていたのだ、黒髪の美貌の女性が本気で彼女を「愛していない」と感じて。「女」は携帯を切った。
* * *
乱暴に携帯を切るとほむらは思わずため息をついた。特にこの逢瀬に興味は無い、だがそのままにしておいては彼女がまたあの女と会ってしまうことになる。それだけは避けたかった。そう、もう二度とあの女に会わないと彼女はほむらに誓ってくれたのだ、それをみすみす駄目にする気はない。時計を見やるともう少しで彼女は帰ってくる。あの女との対峙については後で考えよう…そう思い、ほむらは冷蔵庫からワインを取り出し飲み始めた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
ほむらはワイングラスを口にしながら、蒼い髪の女性を迎えた。いつものようにへらへらと笑っているが、少しだけ様子が違っていた相方に不審を感じ、ほむらは眉を顰めた。
「どうしたの?」
「…魔獣を倒してきたの」
よく見ると、ワイシャツのところどころに染みがある。血だ。ほむらは舌うちした。ああ、いらいらする。こんな時、無理にでも笑う相方がほむらは無性に嫌なのだ。そう、まるで体の奥から熱が発生するように、激しく――彼女を殺したくなる。この気持ちがなんなのか、ほむら本人にもよくわかっていない。だが、分析をしようと思う訳もなく、ただ、ほむらはワイングラスをテーブルに置くと、立ちあがり、相方に近づいた。
「貴方って…救いようのない馬鹿だわ」
そう言って、激しく相方を掻き抱くと、ほむらは相方の唇に自分の唇を重ねた。
* * *
「はあ…はあ…ああっ…」
「んっ…あ、ほむら…っ」
荒い息を吐きながら、相方の肢体に跨ってほむらは腰を動かしていた。その美しい肢体に一糸纏わずに。組み敷かれた蒼い髪の女性も何も纏ってはいない。
「…今日は…私の番だから…ね?」
こくり、と相方が蕩けた表情で頷くのを見て、ほむらは満足気に笑みを浮かべた。そう、昨晩はほむらが彼女の「体内」に入ったのだ。それならば今晩は――
「ぅん…っ」
絞り出すような声を出して、ほむらはやや腰を浮かせた。擦りつけあった陰毛と陰毛の間から一本の肉棒が出現する。蒼い髪の相方に植え付けられた生殖器官だ。
「…あ」
そうしてまた、ほむらが腰を落としこむと、相方の「器官」が全てほむらの体内に「収納」されて消える。びく、びくと数回下腹部を痙攣させた後、ほむらは腰の動きを早くした。垂直に動き、相方の生殖器官を自らの体内へ出し入れする。
結合部分がぶつかる淫猥な破裂音、激しく軋むベッド。
「…どう?」
はあはあと荒い息をあげ、腰を妖しく蠢かせながら、ほむらは妖艶に微笑んだ。苦しげな表情を浮かべている相方を見おろす。ほむらは相方のこのような表情を見るのが好きだった。
「……狭…んんっ…!」
下から必死にほむらの腰を掴み、蒼い髪の女性は喘ぐ。絡みつく襞が擦れていくのがたまらないらしく、ただ、もう必死に目を瞑り快楽に耐えている状態だ。白い歯を見せて笑う悪魔。ほむら自身も相方の器官で体内を突き上げられかなりの快楽を得ているが、今夜はサディスティックな気分になっているのであろう、激しく相方を責め立て続ける。そうして前屈みになり、朦朧としている蒼い髪の女性に囁いた。
「ねえ…」
「…っ…な…に?」
「私は貴方のこと「好き」でも「愛」してもいないわ」
「……」
そう言いながら、蕩けた表情の相方にほむらはキスをする。
「それでも…貴方は一緒にいてくれるの?」
止まらない互いの腰、そして荒い息の中、悪魔は言葉を紡ぐ。
「ずっと…」
「………」
ゆっくりと、蒼い髪の女性の両手が伸びて、ほむらの肩を下から抱いた。こちらも荒い息のまま、苦しそうに言葉を吐く。
「……いるわ、だって…私はあんたが…」
サイドテーブルに置かれた携帯が鳴った。
激しい行為の中、通常なら取るはずもない電話をほむらは取った。時刻は19時30分。
* * *
約束の時刻になっても黒髪の女性は来ない。腹正しさを覚えながら「女」は電話を掛ける。
すぐに相手は電話に出た。――荒い息で喘ぎながら。
『…っ、悪いわね…今、取り込み中なのよ…杏子』
ひと際甲高い喘ぎ声の後、電話は切れた。ぶらり、と女の携帯を持った手が下がった。
* * *
「あ…ほむら、もう…だめっ…」
「おいで…」
ほむらは嬉しそうに笑う、快楽で恍惚としながらも。間もなくイキそうな相方の手を握り、その上で激しく動いた。びくん、と蒼い髪の女性が下から大きく動き、跨がっているほむらの体内をひと際大きく抉った。ほむらが悲鳴をあげた。
ほむらの内部で相方の生殖器が何度も脈動し、精を放つ。体を震わせながら、それを受け止めるほむら。そしてその下で固く目を瞑り、腰を痙攣させている蒼い髪の女性。
「はあ…っ」
すべて出しきって、枯れた声を出す相方に、ほむらはキスの雨を降らす。そうして覆いかぶさると相方の名前を呼んだ。
「…さやか」
果てた相方を抱きしめながら、満足気に吐息を吐いて、そうしてほむらは目を瞑った。
END