血と悪魔(大人悪魔ほむら×大人さやかR18短編集) 作:さんかく@
ある日、長い黒髪の女性がほんの少しだけ首をかしげて、そうしてついでに眉も少し顰めて美樹さやかに囁いた。
「貴方は私の一部しか知らない」
そうして、なんだか嬉しそうな、それでいてものすごく後悔しているようなよく分からない顔をして笑うものだから、美樹さやかはどうしていいのかわからなくなった。
「ねえ、どうしてそんなこと言うの?」
哲学を専攻したのに、蒼い髪の彼女がわかったことといえば「自分が何も知らない」っていうことだけで。ゼミの先輩から言わせればそれこそが「悟り」だというのだけれど。
「さあ?」
目を細め、今度こそ嬉しそうに口元を緩めると、黒髪の美女はさやかに背を向けて歩き出す。大学の図書館から正門までの道は桜が満開で、さやかは思わず黒髪の美女とそして自分がまだ14歳だった頃のことをふと思い出した。が、勢いよく首を振ってすぐに駆けだす、華奢な後ろ姿に向かって。
「ほむら、待ってよ」
さやかの声と同時に風がさあ、と二人の間に流れた。桃色の花弁が周囲に舞いあがる。白のワンピースに身を包んだ黒髪の女性は振り向かない。さやかはじれったそうにその右手を乱暴に掴んで引き寄せた。柔らかい彼女の腕はほっとさやかを安心させる。そう、昨日の夜、さやかは黒髪の女性の全てに触れた。ほんの少しだけお間抜け(と、黒髪の美女は言う)な垂れ気味な目を細めてさやかは笑いかけた。無愛想な「彼女」はただ口をむすっと固く結んだままで。
「一緒に帰ろう」
「………当たり前でしょ」
一緒に住んでいるんだから…と小さく、とても小さく囁いて、それから家に着くまでさやかの顔を見ようともしなかった。
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「貴方は私の一部しか知らない」
喘ぎ声をあげた後、荒い呼吸を整えながらほむらは蒼い髪の女性に囁いた。
「ほむら?」
不思議そうに、蒼い髪の女性はこちらを振り返っている黒髪の女性の顔を見つめた。この世のものとは思えない美貌、その白磁の様な白い肌は今は、ほんの少し赤みが差し、数粒ほど汗が滲んでいた。長い黒髪が数筋艶のある唇に絡んでいる。その唇はほんの少し笑みを浮かべていて、アメジストの瞳にはどこか挑発的な光りが宿っていた。煽情的な悪魔。
「……」
息を飲んで、蒼い髪の女性はその美貌に見惚れる。もう10年もその顔を見ているというのに、慣れるということがないのは、何故だろう――衝動にかられるようにして、その腰を強くほむらに押し付けながら、蒼い髪の女性は華奢な背中に覆いかぶさった。ほむらが顔を背けると同時に少女の様な声をあげた。うつ伏せになっているほむらの上で、蒼い髪の女性は激しく身体を動かしはじめる。少女の様な悲鳴とベッドの軋む音。二人は何も身に纏っていなかった。
「さ、や…か――」
枕に顔を押しつけながら、黒髪の女性は絞り出すように蒼い髪の女性の名前を呼ぶ。
「ほむら」
呼応するように、蒼い髪の女性――さやかはほむらの首筋に顔を寄せ、息を吐きながら名前を呼んだ。ほむらの「中」が心地よくてうっとりとした表情を浮かべながら。
枕を握っているほむらの手がぴくり、と動いた。
身体を改変して結合するようになったのは、もう数年前からの事だ。こうして特に順番を決めることなく、どちらかが身体を「改変」し、相手の内部に侵入し結合を繰り返していた。今日はさやかの番らしい。ほむらの上に覆いかぶさっているさやかの股間には、男性器の様なものが生えており、それがうつ伏せになっているほむらの臀部の中央へ全て吸いこまれては、また現われる。
「…っ、っ、」
ほむらの身体がびくん、びくんと痙攣した。さやかは息を出しながら、動きを止める。しばらくして、痙攣が止むと、さやかはほむらの細い腰を強く掻き抱きながら抽送を再開した。ねっとりとして温かく包みこんでくる黒髪の女性の内部の心地よさに、さやかの口から喘ぎ声が漏れる。
「…ほむら…」
我慢できずに下にいる女性の名前を呼び、その項あたりにさやかは顔を押し付けた。黒髪の女性は枕に顔を押し付けたまま深呼吸する。震える手を必死で後ろに伸ばして、さやかの腕に触れると、促すようにさすりながらほむらは囁いた。
――ツヅケテ…
その言葉を合図に、猛々しい剛直したものが、ほむらの体内を押し広げ、奥まで突き始めた。普段お間抜けと称される女性からは想像もつかない、容赦のない攻めで、思わずほむらは大きく喘ぐ。
「…っ、――っ!」
「ほむら…ほむら」
縋るような情けない声をあげながら、さやかはほむらの中で動き続ける。苦悶に歪むほむらの美貌に一瞬、笑みが浮かんだ。それは「しょうがないな」と言わんばかりの許容の笑みで。そうして、腕を後ろに伸ばし、再びさやかの腕をさすると、合図するように体をねじる。申し合せた様に、二人は体勢を立て直し、向き合う様にして抱き合った。ゆっくりと吸いこまれるように、さやかの怒張したものが再びほむらの陰部に吸い込まれていく。
「……っ……っ」
ほむらが息を飲みながら身体を震わせ侵入を受け入れる、さやかがはああ、と息を吐く。もう何回も繋がっているのに、この瞬間の快楽にはどうしても耐性がつかないらしい。二人はしばらく動かずにうっとりと目を瞑る。目を開けると、二人の視線が絡み合う。二人の目は熱く潤んでいて。互いの劣情を確認したのを合図に二人は動き出す。ほむらはさやかの腰を抱き促すようにさすり、さやかはほむらの華奢な肩を抱いて、その首元に顔を埋めた。荒い息と喘ぎ声をあげながら、ベッドが軋み続ける。
「……ねえ、ほむら…」
掠れた声でさやかが下で苦悶の表情を浮かべている美女に囁く。さやかのモノは彼女の中で締め付けられるくらい強く包み込まれていて。
「………なあ…に?」
ほむらも喘ぎながら返事をし、上に圧し掛かかっている蒼い髪の女性を見上げた。いつもは情けなくお間抜けで「飼い犬」と称している彼女の固いモノが、今、熱く燃えながらほむらの体内を占領している。
「さっきの……言葉…大学でも…言っ…てた」
苦しそうに、言葉を続けるさやか。快楽で言葉がうまく紡げないのだろう。
「私…ほんとに…あんたの一部しか知らない…でも…あ…」
さやかが強く目を瞑った、腰が震え、次第に動きが早まる、どうやら射精が近づいてきたらしい。
「でも…何?」
挑発的に下からほむらが囁く、そのアメジストの瞳は妖しく輝いて。
「私…は…あ、…ヤバ…気持イ…」
快楽が全てを占め、全てが真っ白になりつつあるのだろう、さやかは必死に言葉を紡ぐが、
全神経が自身の怒張したモノと、ほむらの膣内へと注がれ理性はまもなく飛散しそうだ。
激しく身体を貫かれながらも悪魔はとても嬉しそうに微笑む。彼女は蒼い髪の女性が自分の「中」で理性を失っていく様を見るのがたまらなく好きだった。さやかは細身の健康的な身体を激しく動かしながら、下にいる女性の中へ何度も何度も抽送を繰り返す。軋む音と、乾いた破裂音が激しく続く。
「でも…っ、わた…しは」
必死にほむらの首元に顔を押し付け、囁いた。
「あんたの全部が好き――」
そしてほむらの身体を強く掻き抱くと、犬の様に吠えながら、さやかの身体が大きく痙攣した。
びゅう、びゅうとほむらの体内でさやかの液体が飛び散る。
さやかの気持良さそうな喘ぎ声と、はあ、はあと荒い息使いがほむらの耳元で聞え、体内ではまだ射精が続いていた。ほむらの長い睫毛が動き、アメジストの瞳が揺れる。
「ほんと、犬…みたい…」
だがその表情はとても――
* * * *
さやかの射精が終わった後、しばらく二人は体勢もそのままに、余韻を味わうように重なったまま目を瞑る。
「……ねえ」
まどろみの中、最初に声を発したのはほむらだった。
「ん…何?」
眠りかけてたのだろう、さやかは返事をした後、また気持良さそうにほむらの首元に顔を埋めた。その頭をほむらの手が軽く叩いた。
「あいた…何」
「10点よ」
「へ?」
いつもの様に不敵な笑みを浮かべる黒髪の美女を不思議そうにみおろして、さやかが首をかしげた。
「さっきの貴方の答え」
「ああ…」
――一部しか知らなくても、あんたの全部が好き
あれは黒髪の美女の「貴方は私の一部しか知らない」という言葉のさやかなりの回答だった。いや、回答というより本心そのものだ。ハッ、とさやかが何かに気付いた様に真顔になる。
「え、ちょっとまってよ、あれで10点って、あんたの言葉の真意ってどれだけ――」
深いのよ、と言おうとしたが、ほむらに口を塞がれて後は言えなかった。いつもより長いキスで苦しくなりかけたころ、ほむらが唇を離す。
「追試よ」
「え」
目を細め、珍しく少し照れたような顔をして黒髪の美女は囁いた。
「貴方が全部わかるまでずっと追試――」
そうして目を瞑る。キスを促しているのだ。珍しく乙女な黒髪の美女の仕草に、さやかは不覚にも興奮して。
「いいわ…わかるまでずっとするわ」
そう言って、乱暴に抱き締めて、もぞもぞと動き出す。「再開」する気なのだろう。さやかのまるで犬の様な本能的な行動にほむらは歯を見せて笑う。
「本当、しょうがない人…」
そうしてさやかの背中に手を回す。そうしてくすくすと笑いながら嬉しそうに目を閉じた。
その日、何回「追試」を行ったかはまた別の話――。
END
お察しのとおり、題名と冒頭のほむらの台詞は某曲からの影響です。
彼女は全てを知って欲しいのか、それとも今繋がっているこの瞬間だけが欲しいのか…