※この作品はR-18です。

血と悪魔(大人悪魔ほむら×大人さやかR18短編集)   作:さんかく@

14 / 22
ふたなりもので、甘々。


月の下で

「神様っているのかしら」

 

黒髪の美女が艶のある声でそう呟くものだから、隣でグラスを傾けていた蒼い髪の女性が手を止め、垂れ気味の目を見開いた。

 

「あんた何やぶからぼうに…」

 

元々寡黙な部類に入る黒髪の女性は、必要最小限の言葉しか発さない。それは家の中で蒼い髪の女性――美樹さやかと二人きりの時もそうだった。それがいきなり哲学的で抽象的な質問を発するものだから、さやかが驚いたのも無理は無い。

 

「……なんとなくよ」

 

横目でさやかを見つめながら、口元をほんの少しだけ黒髪の女性は緩めた。変わったな、とこんな時さやかはいつも思う。

 

10年――黒髪の美しい女性が世界を改変してから、もう10年が経過している。夜空に浮かぶ月は相変わらず半分の月だし、魔獣も相変わらず減ることもなく街を跋扈している。世界は不均衡のまま、それでも時を進めていく。もしかしたら、もはやこの目の前の美しい黒髪の女性の手も離れて世界は一人立ちしているのではないか、と美樹さやかは思う時がある。地球外生命体の思惑も、円環の理も全ては更に高次な存在の一部に過ぎないのでは、と。いや、それは自分が大人になったためだ、世俗にまみれてしまい、過去の出来事が薄れてしまっているのだ――とさやかは考え、頭を振って答えの見つからない堂々巡りの思考を停止する。そうして一気にグラスの中のバーボンを飲みほした。はあ、と息を漏らしやや乱暴にグラスをテーブルに置くさやかを見つめながら、黒髪の女性が目を細めた。

 

「あら…なあに、今夜はとことん飲む気?」

 

頬杖をついていた手を解き、その白い手を琥珀色のボトルに伸ばすと、黒髪の女性はさやかのグラスにトクトクとバーボンを注いだ。キャミソールに身を包んだ肢体は月に照らされ蒼白く輝いている。その肢体にエロチシズムを感じてしまい、さやかは思わず目を逸らした。気を逸らすように窓から月を見上げる。こちらもタンクトップ一枚だというのに、身体が熱くなって仕方が無い。クスクスと囁くような笑い声が聞えてきて、さやかは顔が赤くなるのが自分でも分かった。睨むように笑い声の主に目を向けると、案の定、頬杖をついてさやかの方を面白そうに見つめていた。

 

「……悪かったわね」

「あら?私は何も言ってないけど?」

 

そう囁いて、黒髪の女性は少し前屈みになり、さやかのグラスを指で弾く。チン、と鈴の様な音がして。

 

「悪魔に発情する鞄持ちなんて前代未聞ね?」

「ほむら」

 

黒髪の女性は、むっとした相方に名前を呼ばれ破顔した。

 

いつから彼女達がこの様な関係になっていったのか、それは誰にも分からない。本人達にも。長い間、気の遠くなるほど同じ時間を繰り返した黒髪の女性は、使命を全うしようとする度に弊害となり、数限りない軋轢を繰り返した蒼い髪の女性をいつの間にかパートナーに迎えていた。それは運命の悪戯か、あるいは予定調和だったのか――。

 

「ねえ、神様ってさ…」

「なあに?」

 

吐息を漏らしながら、ほむらは蒼い髪の女性を見上げる。さやかは不思議そうにほむらを見下ろしていて。その空の様な邪気の無い瞳に、ほむらはほんの少しだけ苛立ちを感じて、彼女の腕に爪を立てた。

 

「あいた…何よ」

「なんでもないわ」

 

顔をしかめながら、ほむらの肩に顔を埋めてくる蒼い髪の女性の頭を抱いて、ほむらは目を瞑る。体内で蒼い髪の女性が激しく「出入り」を始めた。口を閉ざし、ほむらは声をあげるのを堪える。快楽に流されて喘ぎ声をあげる姿を相方に見つめられるのにまだ慣れていなかった。二人はベッドの上で生まれたままの姿で固く抱き合っていた。成長した大人の女性二人は互いの柔らかな肢体の感触を楽しみながら、お互いの「中」に入りこむことを時折行っていた。それはほむらの力の産物であり、今夜の美樹さやかには女性には本来備わっていない男性器が生まれていた。それが今現在、ほむらの体内に潜り込んでいるのだ。きつく抱き合いながら、ベッドで二人は揺れる。躍動するようにさやかの

固いモノがほむらの体内で抽送を繰り返し、とうとうほむらは首を振った。「大きく改良しすぎた」と後悔してももう遅い。こじ入る様にして何度も身体の中を往復されて頭の中が真っ白になる。自分が何を言っているのか、叫んでいるのか分からないが、ただ必死で声をあげていた。甲高い、自分のものとは思えない声。相方に顔を見られるのが嫌でほむらは顔を背けるが、横目で蒼い髪の相方をちらりと見ると、そちらもまた、固く目を瞑り、今にも喘ぎ声をあげそうなほど蕩け切った顔をしていて。思わずほむらは口元を緩めた。震えながらも手を伸ばし、蒼い髪の女性の頬に触れると愛しそうに撫でる。

 

「気持…いい…の?」

 

震えながらも勝ち誇った様な声。自分の中で好き勝手に暴れながらも、相方の顔は今にも泣きそうな気を失いそうな惚け顔で。なんだかそれが黒髪の女性には愉快だった。

 

「…ヤバイ…わ、あんたの…中」

 

もう出そう…と声を絞り出しながら、さやかは腰を震わせる。とんでもなく、黒髪の女性の体内は温かかく、そして柔らかい。普段のクールな態度、そのひんやりとした体温からは想像のつかない内部の心地よさに、さやかはもう限界だった。ほむらの手がさやかの頬から離れ、さやかの腕を掴むと、そこからゆっくりと下がり手を重ねた。自然と手を握り合い、指を絡めあう。

 

「だめよ、まだ…」

 

続けなさい…と命令口調で囁くと、ほむらはもう片方の腕でさやかの肩を抱く。

イキそうになるのを抑えるためか、互いの腰の動きが収まった。互いに深呼吸して、そうして、中断した会話を再開する。

 

「ねえ…さっき、貴方何を言おうとしたの?」

「ああ…あれはね」

 

大きく息を吐いて、さやかが言葉を紡いだ。

 

「神様ってさ…まどか以外にもたくさんいるんじゃないかなって」

「まどか…以外にもたくさん?」

 

体内の圧迫を感じながら、ほむらが囁いた。顔を紅潮させながら、さやかは頷く。

 

「うん……私達の知らない世界…というか高次の世界があって、そこに私達が「神」と呼んでいる存在があるのだと思う」

 

随分哲学的な答えだ、と思いながらも、ほむらは微笑んだ。そういえば美樹さやかは大学で哲学を専攻していたのだ。ほむらを「知る」ために。

 

「それじゃあ…もし神様がたくさんいると仮定して…」

「うん?」

 

ほんの少しだけ間を置いて、黒髪の女性はせつなそうに囁いた。

 

「私も救われるかしら?」

 

救われたい――そんなことなど思ったことなんてない、だがこの10年で――

 

相方の不思議そうな表情を見て、ほむらは「冗談よ」と自嘲気味に笑って、顔を背けた。蒼い髪の女性は何も言わず、ただ黒髪の女性を見つめている。

 

「わからないわ…」

 

蒼い髪の女性はそう囁くと、下にいる黒髪の女性を強く抱きしめた。

 

「でも…」

「でも?」

 

蒼い瞳とアメジストの瞳が絡み合う。

 

「私はあんたを救いたい」

一瞬ぴくり、とほむらの身体が反応して。そうして沈黙が続いた。絡めた手と手が次第に強くなり。

 

「……続けて」

 

悪魔はただ、そう囁いた。

まだ体内に在る鞄持ちは再び抽送を開始して――

 

END

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。