血と悪魔(大人悪魔ほむら×大人さやかR18短編集) 作:さんかく@
※この作品は18禁です。
特殊嗜好(ふたなりもどき)要素もありますので、嫌な方は回避願います。
悪魔になってからというもの、今まで見えなかったものが見えるようになった。
それは、例えば学校帰りの並木道に当たり前の様に立っている亡者だったり、魔女とも魔獣とも違う種類の「魔」なるものであったり。その度にああ、私が見ていた世界はまだとても「小さかった」のだと思い知らされるのだ――。
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『やっぱ、それって…辛かった?』
相方の蒼い瞳が心配そうにこちらを覗き込むので、ほむらはああ、今の話しはなかったことにすれば良かったと後悔した。内面を覗きこまれて心地好いと感じるほどまだ全てを「開いて」はいなかったから。そっと顔を背けて、窓の向こうの景色に思いを馳せながら唇を重々しく動かした。ベッドで仰向けに寝ながら見つめる景色はややいびつで。
『……いいえ…別に』
なるべく小さな声で囁いたつもりだが、どうしても息が荒くなってしまうのは、上に圧し掛かっている相方の所為だとほむらは思った。私はどうして行為の前にあんな話しをしたのだろう?
『でも』
案の定、上にいる相方はまだ何か言い足りなさそうで、こちらをじい、と見下ろしている。ああ、やっかいだ、とほむらは思った。お間抜けでお節介なこの蒼い髪の相方は私が相当辛い思いをしてきたと感情移入しているのだ。ほむらは苛立ちを隠せないまま、白い腕を伸ばしさやかを下から抱き寄せた。密着するしなやかな肢体と肢体。二人は裸だった。
『…それより、早く始めないと貴方の方が辛いんじゃないの?』
わざと耳元で囁いて、ほむらは両手を相方の腰のあたりまでおろし、優しく撫でる。わかりやすく、唸り声をあげる彼女を見て、ほむらは思わず肩を震わせ笑う。
『本当、犬みたいな人ね』
『ひど!』
まるで掛け合いのようにじゃれ合い、二人は更に強く抱きしめ合う。
互いに嫌なことを忘れるために、人と融合した魔獣を倒すという罪悪感から逃れるために始めたこの「行為」は、先月の――大学2回生の夏が初めてだった。相方の身体を改変して繋がる行為。最初は好奇心から始めた行為だが、もう数回ほど二人は交わっていた。
ほむらは目を細めながら相方を見上げる。すでに相方の身体は改変した。ぴったりと密着した二人の身体の間(正確には下腹部あたり)には通常相方には備わっていないはずの身体の一部が挟まっていて。
『貴方の…すっかり熱くなっているけど、どうしたいの?』
『…意地悪』
『だって悪魔だもの』
相方の下腹部から生えているものは通常女性には無い男性器で、ほむらが身体改変を行った結果だ。だが熱く屹立したソレは、まるで昔からそこにあったような錯覚をほむらに与えた。
『……はじめましょう?』
相方の耳元で囁くと、ほむらは挑発的に微笑んだ。まさか自分がこんな風に振る舞えるなんて夢にも思わなかったが、相方を受け入れた時点でそうなる定めだったのだろうと今では思う。そうして目を瞑ると、相方が身体をもぞもぞと動かしはじめたのでほむらは苦笑する。ゆっくりと足を開くと、ほむらの身体の中心に向かって固いものが分け入ってきた。
『んっ…』
熱いその先端はまだほんの少しだけ入って来たというのに、ほむらは思わず声をあげた。最初の頃に比べると慣れたとはいえ、まだ痛みと圧迫感で身体が強張るのだ。だがそんなほむらの中に容赦なく、蒼い髪の女性は入り込んでくる。
『ほむら…』
縋るような声と同時に、体内を一気におし拡げられて、ほむらは思わず相方の背中を掻き抱いた。体内を拡げられ、奥深くまで熱い棒を差し込まれるような感覚に身体を震わせながら、ほむらはその張本人の名前を呼んだ。
『さや…か…』
『……ほむら…あんたの中…気持ち、いい…』
『………』
本当に?と聞き返したかったが、ほむらはもう声が出なかった。ただ気持良さそうに自分の肩に顔を寄せて息を吐く相方の髪を撫でるだけで。それからしばらくして、蒼い髪の女性――美樹さやかは抽送を開始した。
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「…どうしたのさ、いきなり笑って」
「いいえ、なんでもないわ」
「嘘、絶対なんかあるわそれ」
子供の様な美樹さやかの言い分に、思わずほむらは苦笑した。鏡台に座りながら、鏡に映っている相方の姿を見て口元を緩めていたのは事実だが、こうも追及されるとかえって答えるのが面倒になる。はあ、と息を吐いて、どう答えようか考えながらほむらはブラシを置いた。右手で軽く髪を梳くと相方の方に身体を向ける。
「思い出してたのよ、昔の事を」
「え、昔?」
タンクトップの肩紐のずれを直しながら、さやかがほむらに聞き返す。朝方、まだ起きたばかりの二人はタンクトップとキャミソールといういつもの寝間着のままで。
「そうよ、大学生の確か2回生の頃…ほら」
こめかみに軽く人さし指をあてて、ほむらは目を瞑る。そうして何か思い出したのか、はっ、と目を開き、得意げに囁いた。
「貴方と寝るようになってから、5回目の夜よ」
「うわ!生々しいからやめ…あいたっ!」
いきなりさやかの傍にあった雑誌が、宙に浮いてその頭を叩く。
「やめてですって?求めたのは貴方の方よ」
「…う、わ、悪かったわよ」
鏡台の椅子に足を組んで座り、タクトを操るように左手を動かしている黒髪の美女を前にさやかは何も言えなくなる。悪魔に敵う訳がないのだから。しゅん、とした飼い犬を見て溜飲が下がったのだろう、ほむらは肩をすくめながら優雅に立ち上がると、さやかの傍に近寄った。そうして、ちょん、ちょんと人さし指でさやかの鳩尾あたりをつついた。
「あの時、貴方が言った言葉覚えてる?」
「言葉?」
「昨日の夜、貴方と同じ言葉を今度は私が使っていたわ…」
「昨日…」
そう、昨日の夜、公安に異動になるさやかを慰めるために二人は身体を重ねていた。その時に確か、さやかは仕事で受けた傷を黒髪の相方に吐露していた。白い透き通るような肌の悪魔はさやかを抱きしめてその耳元でこう囁いたのだ。
『辛かった…?』
ああ、とさやかは声をあげる。思い出したのだ。確かに大学生の頃、ほむらに対してそう尋ねたことがあった。その時は―-
「……見えないものが見えるようになったあんたに聞いてたわね」
「…お利口さんね」
嬉しそうに、ほむらはさやかの肩に頭をもたれさせた。長い黒髪がさやかのタンクトップにかかって。
「昨日の夜、貴方は素直に答えてたわ、「辛かった」って」
だから、自分も素直に答えようと思ったのだろうか、さやかは相方を見つめる、表情は見えない。だが、彼女がこのように少しずつ心を開いてくれることはさやかにとっては限りなく嬉しいことで。これから永い時を一緒に寄り添って生きていくのなら、最後の最後までにはほむらの全てを知りたいとさやかは秘かに願っていた。
「…それで、あんたは…辛かった?」
「ええ…」
しばらく言い淀んでから、ほむらはさやかにもたれたまま囁いた。
「辛かった…」
「……」
さやかの腕が伸びて、ほむらの華奢な背中に廻された、だがしばし躊躇する。
「……意気地なし」
「え?」
「こういう時は素直に抱きしめて、慰めてくれる人じゃなかったかしら、貴方は?」
「まあ、そうね…」
ほむらの表情は見えないが、きっと―-
さやかは目を細めてほむらの身体を強く抱きしめた。微かにクスクスとほむらがさやかの腕の中で嬉しそうに笑った。
「ねえ…あんたは一体何が見えるようになったの?」
野暮な質問だとは思うが、どうしてもさやかは気になったので尋ねた。
「そうね…「魔女」と「魔獣」、そして「使い魔」は貴方もまだ見ることができるでしょう?」
「ええ、ああでも「使い魔」はあんたのもので限界かも、後は見えないわ…」
「そう…」
ほむらは顔をあげてさやかを見上げる。アメジストの瞳が、少し戸惑ったように己の顔に手をあてている相方の姿を映した。ほむらはゆっくりと細い指をさやかの頬に這わせた。
「…貴方は一度記憶を失っているからかもしれないわ、戻ったといっても細部は覚えてないようだし」
「そうね…」
そう、記憶がある程度戻ったとはいえ、美樹さやかの「見えないものを見る」能力はだいぶ落ちていた。ほむらの使い魔も視認はできるが、その姿を明確に見ることはできなくなっている。黒い影が動く程度のものだ。
さやかが手を伸ばし、頬に触れているほむらの手に重ねた。
「でも…あんたが私に触れてくれれば全て見ることができる、だから…」
アメジストの瞳と蒼い瞳が互いを映した。さやかの唇がゆっくりと動く。
ずっと一緒にいて欲しい――
「…大げさね、それくらい当たり前のことでしょ?」
だがほむらの白い指は震えて、その瞳は揺れて。さやかは相方の珍しく赤くなった顔を優しく見つめていた。しばらくしてほむらは表情を険しくして囁いた。
「……さやか」
「何?」
「私は、それ以外の魔なる者も全て見える。この世には「魔獣」以外の魔なる者も数多くいるわ、そして……インキュベーターも」
「あいつも?そういえばあいつは…」
迂闊だった、とさやかは思う。そうだ、あいつがこの一連の――
「…インキュベーターだけでないわ」
「え?」
「一連の大元はインキュベーター、でも、それ以外の「存在」が確かに介入している」
「…インキュベーターと魔獣、それ以外にもってこと?」
「ええ…私もまだ感知しているだけにすぎない、だから、気をつけて」
「……わかったわ」
さやかは頷いた。そうして室内の壁掛け時計に目をやる。そろそろ仕事に出かけなければ、今日は公安初日なのだ。
「それじゃ、私はそろそろ行くわ」
「待って」
「え?」
ほむらがさやかを引きよせる。キイン、という耳触りなノイズが走ると、時が止まった。
「…ほむら?」
「私が素直に弱音を吐いたんだから…今度は貴方が慰める番よ?」
小悪魔の様に美貌の相方が囁くものだから、思わずさやかもときめいて。
そう?と戸惑いながら再びほむらを抱きしめた。それからしばらくどうしようかと思案していると、じれったそうにほむらが囁いた。
「ずっと一緒にいて欲しいんでしょう?」
そう言って、やや強引にさやかを押しこみ、二人は部屋の奥へと向かう。
陽光の下、時を止めた二人がどう過ごしたかは、また別の話――。
END