血と悪魔(大人悪魔ほむら×大人さやかR18短編集) 作:さんかく@
いきなりの魔獣の襲来というのは、もう何度も経験していたが、一般人が巻き込まれながらの戦いというものは、暁美ほむらも美樹さやかもあまり経験がなかった。
「貴方の選択通りにするから、早く行きなさい」
悪魔の言葉にさやかは頷き、抱きかかえている3歳くらいの子供と共に全力でビルの隙間を走り出した。他には誰もいない異空間だ、何故この子がここにいるのか謎だが、解明するどころか考える時間すらない。
***********
襲来はいきなりだった、24時間営業のファーストフード店から帰路についた途端、周囲が異空間で包まれた。同じ街並みだが、違うのは人がいないことと、空がやけに明るいこと。だが、ありえない事に二人以外の存在があった。二人の前に3歳くらいの子供が立っている。どこか無表情で顔が能面のようだ。
『・・・嘘、なんで子供が?』
『ありえないわ』
動揺しているさやかに対し、冷静なほむら。上空へ視線を移し、ほむらは身構える。上から複数の光の矢が降り注いできた。「さやか」と叫ぶと同時にほむらは飛んだ。背中に現れた大きな黒い翼で更に上昇し、ほむらはシールドを張る。複数の光の矢が弾き飛ばされ消滅する。地上に視線を移し、ほむらは舌打ちした。
――さやか、何をしているの?馬鹿にもほどがあるわよ
子どもを抱きかかえているさやかにほむらは念話で悪態をつく。
――どうしてよ?子供を助けるのは当たり前でしょ
――子供とは限らないわ、罠かもしれない、それより駆逐が先よ
――子供だったらどうするのよ?
沈黙が訪れる、互いに譲る気配はなく、ただ険しい表情で見つめ合う。だが、譲歩したのは悪魔の方だった。
――わかったわ
――ありがとう
――礼はいいから、子供を安全なところへ避難させて、すぐに戻ってきなさい。
それから、さやかは子供を抱えて全速力で走りだした――。
***************
「大丈夫よ、すぐに元の世界に連れて行ってあげるから」
子供を隠す場所を探しながら、さやかは走る。だが、急に何か思いついたのか、立ち止まった。
――おかしいわ
魔獣が追ってこない。
ほむらがカバーしているにせよ、一体か二体はこちらを追ってくるはずだ。ほむらに何かあったのだろうか、と思うともう走れなくなった。自らの選択に悩みが生じた、一番まずい状態だ。たれ気味な目を曇らせ、ほむらが戦っているであろう所へ視線を送り、そうして子供へと視線を移す。さやかの目が見開かれた。子供がこちらを見ているのだが、その目が白く発光しているのだ。「何・・」とさやかが呟くのと同時に子供が爆発した。一気に10メートルほど吹き飛ばされ、くるくると身体を旋回させながらさやかは落下した。鈍い音が地面に叩きつけられた時に起きたが、瞬間的に回復魔法を増大させて身体に張り巡らしていたため、どうにか死なずに済んでいる。左手と右足があらぬ方向を向いているが、バキ、ボキ、と無造作に元に戻しながら、何事もなかったようにさやかは立ち上がった。
「なんなの?」
どうやら子供(だったもの)は爆発したのではなく、元の姿に戻ったらしい。人間に憑依したのではなく、人間に擬態していたのだ。
「・・・・これはすごいわね」
さやかが呆れたように見上げる。そこには10メートルはあろうかという、人型のシルエットをした発光体があった。最初に出現した頃の魔獣の姿に近いが、でかすぎる。
「巨大ロボットかっつーの」
そう一人呟くと、右手を横に振り、ソードを出現させた。変身はもちろんしない。もう何年も変身することは辞めていたが、特に力が落ちるということもなさそうだった。だが、さやかが構えた瞬間、待ち構えたように、背後にも大きな爆発音がし、同じく「巨大ロボット」が現れた。さやかが後ろを振り向いた途端、縦一線光がはしり、さやかの右腕がすぽん、とボールの様に遠くに飛んだ。声はあげなかったが、あまりの苦痛でさやかの表情がゆがむ。数メートル先に落ちた自分の腕を見ながら、さやかは脳から命令をおくる。微かに指が動く、くっついているときと変わらないな、と思ったが、それ以上動くことなく、さやかも念動力を保有していないため、どうしようもない。左手でソードを出そうとするが、力がなかなか出てこない。大量出血の所為だ。血の気が引いて膝をつく。
「嘘・・・・笑えないわ・・・・・・」
――油断した。
さやかは激しく後悔する。まさかこんな情けない失敗で死を迎えるとは、と。右手からは血が噴き出ているが、力が湧きあがらず、回復魔法は使えない。使えたとしても、その間に魔獣に殺される。
――ごめん、ほむら
ありえない失敗に後悔の念が沸き起こる。だが、もうそれも遅い。
――さやか
ほむらの声が聞こえた。念話と思ったが、実際耳にも聞こえてきている。おそらく念話と声を同時に発しているのだ。羽を広げ猛スピードでこちらに向かってくる。その目はアメジストから血の色へと変化していて。
――死んだら許さないわよ
ほむらの口から発達した犬歯が生えてくる。更なる悪魔化だ。長い黒髪が生き物のように蠢いている。そのまま体ごと魔獣にぶつかり、いとも簡単に突き破るとそのままもう一体も突き破る。光の破片が地上に降り注ぐ。瞬殺だ、さやかは心の中で感嘆の声をあげた。いつもの事なのだが、圧倒的な力の差を痛感する。異空間が解除された。
――すごいわ
だが、妬みなどの気持ちは全くない、どちらかといえば、羨望に近い。意識が薄れる中、さやかは目の前に黒い翼が広がるのを捉えた。次の瞬間、浮遊感を覚える。
「・・・・?」
視界に空が広がっている。
「さやか・・・さやか、」
「ほむら」
気づけば、さやかはほむらに抱きかかえられていた。そのまま宙を飛んでいるのだ。ほむらの顔は元に戻っていた。さやかの胸元には切断された右腕。悪魔が回収してくれたのだ。礼を言おうとさやかが口を開くが、遮られるようにほむらの言葉が重なった。
「眠ったら、貴方を殺すわよ」
「・・・わかったわ」
さやかは意識を切断された腕に集中する。せめて血を止めないといけない。そして血の再生も・・・。
「ほむら、あんたの力を少し分けて、回復魔法があまり効かないの」
「・・・いいわ」
険しい表情をしながら、さやかの心臓あたりにほむらは手を置いた。力が注ぎ込まれるのを感じる。ほむらの力をエネルギー源として回復魔法をさやかは発動させた。血液がすごい勢いで再生され、傷口が塞がっていく。さやかは苦しそうに口元を緩めた。
「ありがとう・・・助かったわ・・・あとは手を繋げば・・・」
「・・・・・」
だが険しい表情のまま悪魔は返事をしなかった。
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結界で守られたマンションに到着した頃には、美樹さやかの体は切断された腕を除いてほぼ回復していた。台所のシンク台の前にもたれるようにして、さやかが立っている。ちょうど腕の切断面を合わせて魔法をかけたところだった。その様子を冷蔵庫にもたれながら険しい表情で見つめているほむら。
「よし、これで・・・よいしょ」
さやかがレバーを乱暴に叩くと、蛇口から温水が勢いよく飛び出し、血だらけのさやかの右腕を洗い流した。
「・・・痛っ」
さやかは顔をしかめながら、シンクの排水口に水と共に流れていく血を眺める。排水口の流れが水だけになったのを確認すると、右腕をあげ、手のひらをこちらに向ける。前腕にはまだ切断された後が残っているが、血は収まっていた。
「よおし・・・」
たれ気味の目を曇らせながら、さやかは恐々と右の手のひらを動かし始めた。親指、人差し指・・・と一本ずつ確認するように動かすと、今度は全部の指をグー、パーと動かした。
「・・・よかった」
はあ、とため息をついてようやくさやかは明るい顔をする。そうして冷蔵庫に持たれてこちらを見ている黒髪の美女に顔を向けると、笑顔で礼を言った。
「ありがとうほむら、あんたのおかげで助かったわ、一時は腕が繋がらないんじゃないかと・・・」
さやかは途中で口をつぐんだ。ほむらが腕を組んでこちらを睨んだまま何も喋らないからだ。不穏な空気にさやかの表情が曇る。
「ほむら?」
ほむらのいつものワンピースの私服は血だらけになっていた。さやかをここまで運んできた時についた血だ。
「ごめん、あんなミスして、あんたに迷惑かけたわね、服もちゃんとクリーニン・・・」
「服ですって?」
ほむらの声色にさやかはびくっと身体を強張らせる。パタ・・パタ・・とほむらの履いているスリッパが音を立てて、さやかの元で止まった。2人の顔が至近距離まで近づく。
「貴方、私がいなかったら死んでいたのよ」
低い艶のある声でほむらは吐き捨てるように言った。その陰鬱な双眸は暗い怒りに燃えてて、まるで戦闘の続きのようで。
「・・・・・」
ほむらの剣幕に気圧されたさやかはつい後ずさる。シンク台にぶつかり後がなくなった。
「ごめん、確かにあんたの言う・・・」
パアン、と乾いた音が大きく響き、さやかの視界がいきなり右に動いた。口の中に広がる錆のような味。痛みがさやかの左頬を襲う。口の中に錆のような味が広がった。左頬を抑えながら驚いた表情でさやかが視線を戻すと、右腕をあげたままのほむらがいた。
「殺しておけばよかったわ」
尋常じゃない怒りに身を震わせて、ほむらがさやかを睨む。一緒に暮らし始めた頃のほむらをさやかは思い出した。
「ほむら、どうしてそんなこというの?確かに私は・・・」
「腕じゃなくて、首だったら?」
「え?」
ほむらの右手が伸びて、さやかの首を掴む、そのまま体を反転されてさやかは冷蔵庫に押し付けられた。苦しそうにさやかの顔が歪む。冷蔵庫のデッドスペースに置いてあった観葉植物の鉢が転がった。
「痛っ」
「もし最初の一撃を貴方がよけきれなくて、首が切断されてたら?あるいは今日みたいに避けきれたとして、私の助けが間に合わなかったら?」
「ほむ・・・」
「私がどんなに努力しても、貴方がこんな馬鹿なままだったら、いつか貴方は野垂れ死ぬわ・・・その時」
ほむらの目は怒りに燃えたままだが、その声が微かに震えてきた。ほむらの本心がさやかに伝わる。必死にさやかはほむらに話しかけた。
「ほむら、私死なない、本当よ」
「嘘よ」
「本当よ、約束する、あんた以外の奴に私は殺されない」
「・・・・」
「私は、約束を守るから・・・」
さやかの首を絞めているほむらの手が緩んだ。苦しそうに咳き込むさやか。ほむらはさやかを忌々しそうに睨みながら囁く。
「貴方って本当、口だけの大馬鹿だわ」
「ひどい、あんただって、凶・・・」
だがさやかの言葉はそこで遮られる。ほむらの口がさやかの口を塞いだのだ。しばらくその状態が続き、ほむらの方からゆっくりと口を離すと、どろり、と二人の口から血が出てきた。さやかの口内の血だ。ほむらは己の唇についたさやかの血を舌で嘗めとると、ぶっきらぼうに呟いた。
「・・・血を吸ってあげただけよ、キスなんかじゃないから」
ほむらの双眸の暗い怒りの炎はまだ消えていない。だが、さやかはその目を覗き込みながら顔を近づけた。拒まれることなく唇が重なった。数時間前のファーストフード店でのキスとは違う、長くて深いキスで。ようやく二人が唇を離した頃には、互いに息も荒くなっていて。
「服を脱いで・・・」
息を荒げながら、最初にそう囁いたのは悪魔の方だった。
******************
ゆっくりと悪魔の瞼が開く。焦点の定まらない瞳はしばらくゆらゆらと蒼い光を反射してゆらめいていた。光源は視線の先の窓一面の蒼い半月。長い睫を一瞬震わせて、目を大きく見開く。アメジスト色の瞳が妖しく輝いた。
「・・・・・」
小さいため息が艶のある唇から漏れた。白い頬にかかる髪を指でのけると、横向きになっていた体を起こそうと右手をベッドに添え力を入れる。皺が入る白いシーツ。何も見に纏っていない肢体が月に照らされる。だがそこで美しい悪魔は体を起こすのを辞めた。中途半端に上体を浮かせた状態で、視線を己の下腹部あたりに向ける。背後から伸びた腕が縋るように悪魔の腰に絡んでいて。
「まったく・・・いい気なものね」
あれから、二人とも疲れ切って眠ってしまったのだ――視線をベッド横のテーブルに向けると、ほむらの血だらけのワンピースと、さやかのシャツが脱ぎ捨てられていて。綺麗な形の眉を少しだけ曲げて、それからほむらは腰に絡みついている腕を軽く払うように叩いた。
「こら、いい気になってないで起きなさい」
だが腕は動く気配がない。はあ、とため息をついて、ほむらはぽすん、と頭を枕に預けて再び横になった。背後にかすかな寝息を感じると、ほむらはあきらめた様な表情を浮かべ目を瞑った。しばらくして、ほむらは目を瞑りながら手を伸ばし、絡んでいる腕に触れた。何かを確認するかのように数回さする。
「腕は・・・まだちゃんと繋がってるわね」
「うん・・・」
呟きに背後の人物が反応したため、ほむらは目を開ける。そうして腕の主の名前を呼んだ。
「さやか?」
だが返事はなく、聞こえてくるのは寝息だけ、寝言だ。ふ、とほむらは失笑した。もう自分と同じ様に何も身に纏わずに眠っている背後の女性を起こす気はなくなっていた。視線を月に移し、ほむらは目を瞑った。右手を下腹部にあてる。
「まったく」
ほむらはやれやれという風に息を吐く。下腹部の奥が微かに痛みを伴って熱いのは、
後ろでのんきに眠っている女性がさっきまでそこに「のさばっていた」からなのだ。
***********
あれから服を脱いだ二人は何も喋らずにベッドに倒れこんだ。まるで怪我の状態を確かめるように、ほむらがさやかの身体をまさぐるように抱きしめる。さやかも抱きしめようとするが、ほむらがさやかを抑えつけ圧し掛かると馬乗りになった。悪魔の美しい裸体が蒼い月に照らされて妖しく光る。さやかは畏れているような、魅了されているようなどちらともつかない表情でそれを見上げる。ほむらはただそれをじっと見下ろしている、その目はまだ戦いの最中の様に怒りに燃えていた。ゆっくりとほむらは右手をさやかの下腹部にあてる、そして何やら唱えると手が光に包まれた。さやかの視界が光に包まれると同時に下腹部の中にまるで手品のようにほむらの手が沈み込んでいく。
『ん・・っ!』
得も言われぬ快感と痛みでさやかが声をあげる。身体を「改造」しているのだ。悪魔化したほむらは両性具有者だが、さやかはそうではない。こうして重なる時はさやかの身体を改造して、生殖器を変換するのだ。そうして互いの中に入ることができる、繋がることができる。
『ほむら・・・っ』
さやかがほむらを呼ぶのと、ほむらの手がさやかの下腹部から出てくるのは同時だった。そうしてさやかの両足の間から出現する、悪魔が与えた肉茎。ほむらはそれを隠すように、さやかの身体に自分の身体をぴったりと密着させた。ただ黙って見つめ合う二人。互いの瞳の中に相手が映っていた。どれくらいそうしていたか、長い沈黙を最初に破ったのは険しい表情の悪魔だった。
『約束しなさい』
『え?』
『何かあったら私が貴方を殺す』
『・・・わかってるわ』
『私以外の誰にも殺させない、約束よ・・・だから』
頷くさやか。その顔は既に紅潮していた。申し合わせたように二人は体を反転させる。今回は、ほむらがさやかを受け入れるらしい、身体を開くと、ほむらはさやかの頭を引き寄せた。
『・・・あんた以外の何者にも・・・』
ほむらの耳元でさやかが囁く。荒い息。
『私は殺されない』
『・・・』
『約束するわ』
『・・・・・うん』
ほむらが甘えたように頷いた、それを聞いて、さやかは微かに口元を緩めて。そうして、二人の下腹部の間に挟まれている、悪魔がさやかに与えたモノを更に下へとスライドさせ、ほむらの体内の入り口に先端を押し当てた。そのまま何も言わずに深く挿入する。
『・・・っ』
ほむらは大きく息を吸い込んだ。刀が鞘に収まるように、肉茎がゆっくりとほむらの中に収まっていく。
『・・・っ、・・・っ!』
びく、びく、とほむらの身体が震える。さやかの先端が、隘路をこじ開けて奥まで至る迄がひどく長く感じられた。先端が奥に触れた途端、二人の間に電気が痺れたように快感が走り、がくん、と身体がはねた。体内を開け放したほむらが、視線を天井に向けた。暗い怒りの炎はもうその双眸からは消えていた。
******************
――だいぶ乱暴に扱われたものだ。
ほむらが心で呟く。もう何度か体を重ねているが、このように、激しく中で出し入れされたのは初めてだった。
――いや、そうではない?
お互いに慣れてきたのだ、繋がることに。そう考えついて、ほむらは納得する、中で犬に好き勝手されたというのに、終わった時の離れる時の寂寥感を。
「・・・・・」
ほむらの頬が紅潮する。認めたくないものを認めてしまって自分を恥じているようだ。滅多に見ることのできない悪魔の表情。あの数時間前の凄まじい怒りは嘘のように収まっていた、今悪魔にあるのは体全体の倦怠感とほてりだけで。
――本当にこの犬は好き勝手してくれて・・・・
もし、またこの犬が死にそうならば、私がとどめを差せばいい、とほむらは晴れ晴れとした表情で考えた。焦りや不安は消えたらしい。
――?!
だが、しばらくしてほむらは珍しく何かを急に思い出したように顔を曇らせた。その原因は先ほどの最中起きたことで――。
****************
互いの手をきつく握りあって、二人は高みへと昇っていく。さやかは顔を紅潮させ、ほむらの体内で抽送を繰り返す。
『気持ちい・・・』
さやかは絞り出すように声を出した。ほむらの体内は燃えるように熱い。さやかの下で、ほむらは突き上げに耐えるように身をよじらせていたが、何度も何度も突き上げられて、とうとう声をあげていた。そうして互いに限界が近づくと、さやかの動きが早くなり、二人の体が激しく揺れた。
『ほむら・・・私もう』
『さやか・・・』
朦朧としていく意識の中、二人は体を密着させる、と、ほむらが何か気づいたのか目を開け、己の大きく開かれた両足の間に密着しているさやかの下腹部に手を触れる。そこは、まだ結合している部分と連動して、びくん、びくんと脈動していた。ほむらの体内がじょじょに液体で満たされていく。
『・・・・』
息を吐いて、ほむらはあきらめたように目を瞑った。
*****************
――しまった
ほむらは顔を強張らせて、己の下腹部を再び撫でた。さやかが果てる時、成り行きとはいえ、体内に精液を注入された事を思いだしたのだ。
――大丈夫だろうか?
沸々と新たな怒りが沸いてくる。
ほむらは自分の背後でのんきに寝ている女性に顔を向け、じろりとにらんだ。最近ご無沙汰だったとはいえ、今まで気をつけながら行為をしてきたはずだ。
――この犬はちゃんと保健体育を学んだの?
ほむらが心で呟く。
――いや、そもそも今まで私は気をつけてきた。あれからもう、何度も行為しているのだから、この犬も少しは気をつけるはずだ。それなのに。
だが怒りは止まらない。
――何故こうも、お預けがきかない犬なのだろうか・・・・・・この馬鹿犬!
ほむらが心の中で悪態をついた。やけに賑やかになってきた悪魔の脳内。
――――落ち着こう
ほむらが深呼吸する。
・・・そう落ち着こう、この一回で子供が出来るとは限らない。魔が差してこうなったのだ、犬ごときに八つ当たりするのは馬鹿げている。そう、これから気を付ければいいのだ、この堪え性の無い馬鹿な犬を飼い主がきちんと躾・・・・
――?
ほむらは何か違和感を覚え身じろぎする。先ほどまでなかった感触。ちょうどさやかの下腹部とほむらの臀部の間に先ほどまではなかった、非常に熱を帯びた弾力感のあるモノがあって。
「・・・・この・・・馬鹿犬」
こめかみに手をあてて、はああ、とほむらは長い長いため息をついた。
****************
「さやか――」
気が付けば、さやかは名前を呼ばれていて。そうして視界に長い黒髪と華奢な悪魔の背中が映り、ようやく自分が眠っていたことに気づいた。
「あ、ごめん、眠ってたわ」
「まったく・・・・」
ほむらはさやかに顔を向けないまま、肩をすくめる。どこかその声には怒気がはらんでいて。さやかは不思議そうに首をかしげる。
「え、なに・・・私また何かした?」
「・・・随分いやらしい夢を見てたみたいね」
「へ?」
不思議そうな声をあげるが、ようやくさやかも違和感に気づく。ほむらと密着しながら、視線を下へとスライドする。
「きゃあ!」
さやかが悲鳴をあげる。そこにあるのは、悪魔が与えた突起物で、さやかの両足の間から直立不動に生えていた。始める気満々でさやかの方を見上げている(様に見える)。口に手をあて、目をまんまるくしてさやかはしばらくそれを凝視する。
「なんでこれ、まだついてんの!ほ、ほむら、これは不可抗力よ、ねえ、だって夢がとってもエロくて仕方なかったのよ、だから・・・」
支離滅裂な事をわめきながら、さやかがほむらの腰を抱いたまま、揺さぶった。今度はほむらが変な悲鳴をあげた。
「揺さぶらないで!やめなさい!」
「だって・・・」
「ったく・・・もう、どんな夢を見たらこうなるの?」
「・・・さっき・・・あんたとしたことを夢に見ちゃって」
「変態・・・」
ぼそり、とほむらが呟いた。実際はほむらも先ほどまで思い出していたのでそうひどく責めることもできず。それから黙り込む。
「・・・・」
しょげたさやかが、そうっと、ほむらの顔を覗き込むと、頬が赤くなっていて。やはり気恥ずかしいのだろうとさやかは思った。つい数時間前のことを思い出すと、さやかもさすがに気恥ずかしい。視線を窓に移すと、外は白み始めていて、朝焼けの清々しい空が窓一面に広がっていた。仕事が休みでよかったとさやかは安堵する。
「でもこのままにしておけないし・・・」
実は二人とも、自分で処理をした経験が無く、さやかは困ったように眉を下げる。
「仕方ないわね」
はあ、ととうとう観念したように、ほむらが息を吐いた。そうしてゆっくりとさやかの方へ振り向いた。その美しい顔は赤くなっていて。
「もう一回しましょう」
そうしてさやかの顔の前に人差し指をかざす。
「ただし、これからは私がきちんと躾るわ」
「へ、躾?躾って何を?!」
「・・・・ねえ、さやか」
「はい」
何故だか忌々しくて仕方がないという表情で、ほむらはさやかを睨む。さやかはもちろん理由はわからない。
「貴方さっき、私に許可無く出したわね」
「え?」
「だから・・・中によ」
言いにくそうに中というほむらを不思議そうに見つめて、ようやく理解したのだろう、さやかはああ、うん?と頷いた。
「ちょっと、よくものんきに返事してくれたわね、なんで出したのよ」
「なんでって・・・」
へらへらした表情でさやかがほむらに回答した。
「つい気持ち良くて、あれ、だめだった?」
ばちん、と普段よりも強くほむらはさやかの額を叩く。ほむらの顔はまるでUFOでも見たかのように、驚いた顔で。
「信じられない・・・貴方本当に女性?」
「生まれた時からそうよ!てか痛いじゃない!あいた!」
再び叩かれる。
「貴方、あんなことして私が妊娠したらどうするの?マナーは?デリカシーは?相手を尊重する思いやりは無いの?」
「へ、まっさか、女同士でそんな・・・あいた!あいたいた、痛い!」
今度はさやかの頬をほむらが思い切りつねる。面白いように伸びる。
「だ、か、ら、あれは貴方の身体を本質から変えているのよ、今、生えている・・・その、ソレも生殖機能はきちんとある、繁殖が可能なのよ」
「う・・・嘘!」
ようやく事と次第を理解した人間の挙動は面白いものである。さやかの顔が一気にさあ、と青ざめたと思ったら、紙の様に今度は白くなり、最後は赤くなった。
「ど、どうしようほむら・・・じゃあさっきので、こ・・こど」
「ようやく理解した?大丈夫よ・・・」
そう呟いて、ほむらが指を折って何事か数をかぞえる。
「・・・たぶん」
「たぶんって!」
さやかの面白い表情を見て、溜飲が下ったのだろう、ほむらの表情から怒りが消える。そして指名するようにさやかの顔を指さすと、こう宣言した。
「だから、今からは、私に従ってもらうわよ、私が「待て」と言ったら「待て」、「よし」といったら「よし」。絶対に勝手に出さないで」
「わ、わかったわ」
女同士の会話とは到底想像もつかない内容を二人はサラリと交わすと、更に具体的な事を話し合う。どうやら、とりあえず、最中にほむらが待てといえば何があっても待つという絶対服従らしく。だが実際どのタイミングで命令するのか、とさやかが聞くと、ほむらが無言でその額を叩いた。
「・・・とにかく早く済ませましょう、そうしないと解除できないわ。」
「ええそうね」
ほむらの言葉にさやかが答える。そして何故か二人横向きに向かい合ったまま沈黙が訪れて。気まずそうに口を開くさやか。
「・・・ねえほむら、このままで・・・やる?それともさっきみたいに・・・」
「・・・・・・・」
顔を赤くしたほむらは何も答えず、いそいそとさやかに背を向けるように身体を動かした。
「これが・・・いい」
「そうよね・・・やっぱり」
初心というわけではないが、あんなに激しく行為をした後、互いの顔を見ながら繋がるのが、今はどうにも気恥ずかしい。二人は先ほど眠っていた時の体勢に戻る。横向きになり、ほむらの背後にさやかがぴったりと張り付くものだ。さやかの体温がうつったのか、ほむらの身体は少し熱を帯びていた。腕を回してさやかはほむらの腰を抱きしめる。その手の上にほむらの手が重ねられた。
「はじめて」
「ん・・・」
ほむらの合図で、さやかは腰をほむらに押し付けるように動かした。あらかじめほむらの陰部にあてがっていたさやかの先端が入口を押し拡げ中に入ってくる。ほむらは大きく息を吸い込んだ。ゆっくりとさやかから生えたモノがほむらの中へと収納され、隠されていく。
「・・・・んんっ・・」
異物を受け入れているほむらの身体はぷるぷると震え、全てが収まるとびくん、とその華奢な身体を痙攣させた。奥に当たったのだ。そのままさやかはすぐに動き始めた。結合したまま、ほむらの身体をゆっさゆっさと揺さぶる。
「はあ・・・ほむら・・・大丈夫?」
「・・・さっ・・きは…なにも聞かなかった・・くせ・・に」
揺さぶられながら、ほむらは弱々しく悪態をついた。二回目だからだいぶ敏感になっているのだろう、ほむらの隘路は生暖かく震えていた。
「・・・んっ!・・・んっ・・・!」
嗚咽を堪えるような喘ぎ声がほむらの唇から漏れる。おそらくすでにもう限界なのだろう。耐性があるとはいえ、続けて二回目なのだ。さやかもすでに顔が紅潮している。あまりにも悪魔の中が気持ち良すぎて。
「さや・・か・・・」
名前を呼ばれ、さやかは返事の代わりに更に強く抱きしめる。ゆらゆらと揺れるほむらの長い黒髪と形のいい胸。顔は見えない。
「ほむら・・・もうすぐに終わりそうだから・・もうちょっと・・・」
「ん・・・」
ほむらがこくり、と律儀に頷く、その姿がいじらしくて、さやかはその首元に顔を埋めキスをする。ほむらが「ああ」と喘いだ。
「ほむら、私もう」
さやかがそろそろ限界に達しようとしている。ほむらはとても横目でさやかをちらりと見ると、唇を震わせて声を発した。
「・・・待て」
「ええ?」
困ったような顔でさやかはほむらの背中を見つめるが、ぴたりと動きを止める。
「・・・律儀な犬ね」
くっ、くっ、とほむらが背中を揺らす。だがずいぶん体力を消耗したのだろう、力のない笑い声で。しばらく笑った後、はあ、と息を吐いて、さやかの方を振り向いた。紅潮した美しい悪魔の横顔。
「いいわ、よし」
「よしって・・・」
「・・・さっきと同じでいいわ」
その囁きと同時に、さやかはほむらを強く抱き寄せた。一層激しく揺さぶられ、揺れるほむらの肢体。そうして、さやかの身体が二三度びくん、と痙攣するとそれに合わせて、ほむらの身体がぶるぶる震えた――。
*******************
どれくらいそのままの状態だったか、しばらくして、二人の身体の震えが収まり静寂が訪れる。
「・・・終わった?」
ほむらが背後にぴったりと張り付いたままのさやかに尋ねる。
「ん・・・」
さやかの返事を聞いた後、ほむらは右手をさやかの腕に伸ばし、軽くさすりながら、「シャワー浴びるから」と囁いた。名残惜しそうにさやかの体がほむらから離れる。ほむらの口元がゆるむ。
「私の体が恋しい?」
「な・・!そんなこと・・・あるわよ」
ほむらは吹き出した。
「私だけじゃないのね」
「え?何」
「なんでもない」
ベッドの縁に腰掛け、ほむらはシーツで体を隠す。さやかはまだ眠ったままで、そのまま目をほむらに向けながら不思議そうに尋ねた。
「ねえ、あんたさっき、なんであんな指示したの?」
「何が?」
「そのままでいいって・・」
「ああ、あれは・・」
「え?」
ほむらがとても小さな声で囁く、顔を赤くするさやか。そうして、ほむらは立ち上がると、不敵に微笑んで宣言する。
「今度はちゃんと躾るから覚悟なさい」
「わかったわ」
嬉しそうに微笑むさやか。なにより悪魔が晴れ晴れとした表情を浮かべているのが嬉しくて。そうしてシャワー室に向かっていくほむらの後ろ姿を見ながら目瞑る。
――まったくさんざんな日だったわ、腕は切れるわ、ほむらには怒られるわ、躾られるわ、まあ、でもあいつが笑ってるなら・・・
そうしてさやかは眠りに落ちた。
――――だが二人とも重要なことを見落としていた。
悪魔はさやかの体の改造を解除することをすっかり失念しているのだ。
改造したものはお気楽にシャワーを浴びていて、改造されたものもまたお気楽に眠ってしまった。
30分後、シャワーを終え、部屋に戻ったほむらがさやかを見て悲鳴をあげるのと、それから数秒後、さやかが絶叫するのはまた別の話。
END(LESS?)