血と悪魔(大人悪魔ほむら×大人さやかR18短編集) 作:さんかく@
ほむらが悪魔の力でさやかの下半身を改変して生やします。
嫌な方は回避・ばっちこいな方はよろしくお願いします。
「また怪我したの?」
「うん…ごめん」
えへへ、とへらへらして笑う蒼い髪の女性を、ほむらは腹ただしげに睨んだ。
腕を組んで、開いた玄関のドアに背中をもたれさせて相方を見上げる姿は恐ろしいほど美しかった。帰りが遅いと心配したというのに、そんなこと気にも止めないお気楽な相方にため息をつく。そうして、その美貌からは似つかわしくない凶暴な台詞が発せられる。
動く艶めかしい唇。
「…笑わないで…殺すわよ」
びく、と身体を強張らせる相方の腕を掴むと、ほむらは乱暴に引き寄せる。ツンとした横顔が蒼い髪の女性の口元へ接近する。そうして上目遣いで、蒼い瞳を覗き込む。まるでその中に何か答えでもあり探しだすかのように。先に目を逸らしたのは蒼い髪の女性の方だった。幾ら長年共に過ごし、見慣れたとはいえ、美しい容貌が間近にあったためか、彼女の顔は紅潮していた。フ、とほむらの口元が一瞬緩む。そうして視線を彼女の顔から、首、胸、腹と徐々に下げて行く。アメジストの瞳が次第に怒りの焔を帯びた。
「最低ね、貴方はどこまで愚かなの…!美樹さやかっ…!」
悪魔は怒った時には必ず彼女の名前をフルネームで呼ぶ。しかも今回は半ば悲鳴に近い叫びだ。
ヤバイ、相当怒ってるわ…
美樹さやかはまた身体を強張らせた。射殺さんばかりに睨む悪魔。仕事明けのさやかは白のブラウスに黒のズボンの服装だったはずだ。しかしブラウスは元々そうだったように濃い赤に変色し、ズボンに至っては闇よりも深い黒々とした色になっている。血と混じった黒の色。そうして革靴の周囲には水たまりが…血の水たまりができていた。玄関に至るまでの路には引きずったような赤い筋、まるでホラー映画でとどめを刺される前の被害者のようだ。常人ならばとっくに死に至っている。ほむらの細い白い手が、さやかの襟を捉える。怒りでその手は小刻みに震えていた。
「…貴方って人は本当に…どうしてよ?」
「え?」
「貴方ごときでも魔獣数体なら簡単に倒せるでしょう?」
「……うん、そうだけど…」
煮え切らない相方。
ああ、もう…と黒髪の美女は呻いた後、ヒステリックに首を振り、怒りの形相でさやかを睨む。白磁のような美しい顔に名残で残った黒髪が煽情的だ。見惚れているさやかの眼前に、人さし指が現われた。ほむらの指だ。
「そんなに死にたいのね…いいわ、貴方みたいな馬鹿犬、こっちこそごめんよ!」
「ほむら…」
「死になさい」
そうして、ほむらは人さし指を横に勢いよく向けた。
* * *
高校時代に、美樹さやかは人と魔獣が融合することを知った。従来の魔獣と比べ、人と融合したそれは人間と同様の意思表示を行い、知能も高い。だが、問題はそこではなかった。
『泣き止みなさい』
冷たい黒髪の相方の声。高校時代から20歳になる頃まで、人と融合した魔獣を手に掛ける度、さやかはよく泣いた。とどめを差した時の人の身体の感触、断末魔をあげる人間の表情それを思いだす度に身の毛もよだつほどの悪寒が走り、苛むように鳩尾のあたりが痛んだ。苦しさに気が狂いそうで、どうにか泣くことで理性を繋いでいた。無理もない、戦争という非常事態にならない限り人間に手を掛けることは一般人でも皆無に近いというのに、彼女は思春期でそれを経験したのだ。時には、とどめをためらって、身体を傷だらけにして、部屋の隅にうずくまり嗚咽した。そんな時は、いつも横にゴスロリの黒の服を着た少女が寄り添ってくれた。無表情な美少女はただ黙ってさやかが泣きやむまで傍にいてくれた。白い壁にもたれて二人。
『泣き止みなさい』
いつも同じ台詞。涙で目をはらしながら、さやかはふと、顔をあげて横にいる相方を見つめた。
艶のある黒髪に美しい横顔、疲れ切ったような目、長い睫毛の下に隠されたアメジストの瞳はゆらゆらとためらうように揺れていた。彼女は可愛らしい服を着ているのに体育座りをして素足を曝している。まるで子供のような仕草にさやかは微笑ましく思うと同時にはっとした。
――この子も辛いんだ
そうだ、悪魔とはいえ、彼女も共闘する時に人に手を掛けている。辛くないわけがない。なのに、感情を表現できないからか、それとも生来の気質がそうなのか彼女はいつも無表情だ。さやかは彼女の華奢な肩に手をそっと置いた。ぴくりと反応する少女。
『ありがとう、ほむら…あんたも辛いのにごめん』
『別に…なんでもないわ、私は悪魔だもの』
『そんなことないわ…あんただって…人間よ本当は』
『世迷言よ、そんなこと』
フンとほむらはそっぽを向くが、その頬が少しだけ赤みを増していたことをさやかは見逃さなかった。
『ねえほむら』
『何…?』
『もたれていい?』
ほんの少しだけ間が生まれた。
はあ、と黒髪の少女からため息が漏れる。
『勝手になさい…』
そう言った後、悪魔は俯く。蒼い髪の少女がもたれやすいようにするためか、それとも照れくさいのかそれはわからない。さやかは微笑んで、ほむらにもたれた。華奢な肩に頭を預ける。
『重たいわ…貴方』
『ごめんね』
『でもたまにはいいわ…』
そうして初めて…二人は同時に笑った。
それから二人は次第に手を繋ぐようになり、寄り添う様になり、夜を共にした。
『ねえ、ほむら』
『何?』
『また…くっついていい?』
『馬鹿ね…もう聞かないでいいわ』
笑って、ほむらは両手を広げた。嬉しそうにもたれるさやか。
彼女達は互いに心を癒すため、よく接触するようになった。そうしてそれも当たり前になった頃には、会話で互いの機微を表現するくらいには成長していた。そして二人が20歳になった頃、「ある行為」が始まりをみせる。
蒼白い月の光の下、ベッドのシーツの中、ほむらとさやかは喘いでいた。
時折、彼女達は孤独を埋めるように、寂しさを紛らわせるように互いに身体を重ねる。それははじめてさやかがほむらの家に泊った時に始まっていた。(さやか自身は覚えていない)その行為はじゃれ合いから徐々に発展していき、とうとう「結合」という擬似的生殖行為まで及んで行った。人外であるほむらの力をもってして可能な行為であった。
20歳になり、まず最初にソレを受け入れたのはほむらだった。
互いの手を白く変色するほど強く握りあい、狭隘な体内を抉じ開けられ、奥まで侵入される痛みに必死に耐えた。体内を明け渡した解放感、そして喪失感、奥まで到達された時の言いようのない快感を覚えたのは、始めてから数時間後、朝を迎えてようやくのことだった。固く握りしめ合った手は強張り容易には外せなくなっており、二人は苦笑した。
――その時約束したのだ
『ほむら…私はあんたにずっとついていくよ』
ようやく外せた手を振って、さやかは囁く
『そう…勝手になさいな、その代わり私の知らないうちにのたれ死なないでね』
俯いたまま顔を見せない悪魔
『……え』
振り向いた時、その美しい顔は優しく微笑んでいて。
『困るのよ、貴方が勝手に死ぬと、誰が私にコーヒーを淹れてくれるの?』
『そうね…』
二人は笑った。
そうして、誰からともなく、また二人は身体を寄せ合いベッドへ倒れ込んだ。
2回目はかなりスムーズに行えた…。
* * * * * *
台所に轟音が鳴り響く。
「痛っ……!」
ほむらの力で、玄関から、台所の奥まで弾き飛ばされたさやかは、冷蔵庫にぶつかり倒れる。声をあげ、身体を犬のようにまるめ痛みに耐えるが、回復魔法を使っていたため痛覚遮断ができない。倒れたさやかの床下に服に染み込んだ赤い血が広がる。傷はすでにほぼ塞がっているので、これ以上の失血の恐れは無い。
痛みで朦朧とするさやかの視界に、歩み寄ってくるほむらの白い素足が映る。
「あの時約束したわ…」
「え、ほむ…うっ!」
お腹を踏まれた。痛みよりも驚きでさやかは顔をあげた。
悪魔はさやかを見下ろしていた。泣きそうな顔で。
「勝手にのたれ死なないって…なのに、どう?貴方がしていることは契約違反よ」
「ほむら…」
「嘘つき…貴方みたいな馬鹿な犬、死んでしまえばいいんだわ!」
ボールを蹴るようなモーションでほむらはその美しい脚を躍動させて、さやかの下腹部を蹴った。乾いた音が鳴る。容赦ない攻撃に、身体を「く」の字に曲げるさやか。しばらくのたうちまわるさやかの姿を見下ろし、ほむらは「どうして?」と囁いた。
「ここまでひどい怪我は珍しいわ…まるで無抵抗…何があったの?」
はあ、はあ、とさやかは息を吐きだして、そうして深呼吸した。
「…老人…だったの…」
「……」
ほむらの表情が一変する。
「とても人のよいおじいちゃんでね…横断歩道を渡る小学生のために…毎朝通い続けてたの」
「……そう」
「署で表彰もしたことあるの…とてもいい人よ」
寂しそうにさやかは微笑んだ。
「……馬鹿ね」
ほむらはゆっくりと身を屈めてさやかの顔を覗く。アメジストの瞳にはもう怒りの焔は消えていて。
「…だから無抵抗だったの?」
「うん…ごめんね、ほむら、他の人だって殺しちゃいけない人達だったのに…知り合いってだけでこんなザマ…」
さやかは二の句を告げられなかった。
ほむらがその口を塞いでいたから。
ゆっくりとほむらがさやかに覆いかぶさってくると、彼女の白い薄手のワンピースが赤く染まった。白いほむらの腕にも血がこびりつく。
「汚れちゃう…」
「構わないわ…」
そうしてさやかのブラウスのボタンを外しはじめた。形のいい胸を覆っている下着も血に染まっていた。健康的な肌が露わになる、引き締まった下腹部には深い切り傷がまだ残っていた。傷の周りに蒼白い光がぼんやりと浮かび上がっている。アメジストの瞳が妖しく光る。
「まだ残っているわ…傷」
「深く切られ…ちょっ」
たまらずさやかは声をあげた。傷口をほむらが舐めたからだ。ちろちろと赤い舌を蠢かせ音を立てて舐める。痛みと得も言われぬ快感で、たまらず歯をくいしばった。
「ちょ…やだって、ほむら痛い」
「だめよ、我慢なさい」
そう言って、さも美味しそうにさやかの傷を舐め続ける。その姿はまるで猫のようだ。
痛みが辛いのか、さやかはほむらの肩を掴んでいた。ほむらの黒髪は広がり、さやかの下腹部を覆い隠している。
「貴方の血…甘いわ」
「そんなことないわ…痛っ!あ…」
さやかはたまらず声をあげる。あろうことか、ほむらが傷を噛んだのだ。甘噛みと言えば聞こえはいいが、その痛みは半端ない。強く掴まれるほむらの肩。
「これくらいで、情けない犬ね…」
フフフと笑いながら、ようやくほむらは顔をあげる。妖艶な笑みを浮かべる美貌にこびりついたさやかの血が、悪魔である彼女の色香を更に増幅させていた。凄絶美とでもいうのだろうか。
「ねえ…」
甘く囁くと、ほむらは這うようにさやかの身体の上を滑り、首元に顔を埋めた。吸いつくような肌と、首元に吹きかけられる彼女の吐息で、思わずさやかの顔は紅潮する。ほむらの白い華奢な肩を抱きながら、さやかは彼女は白蛇の化身のようだと思った。奇しくも蛇は悪魔の化身とされているが…。
「あの時の私達の血も甘かったのかしら?」
「え…?」
気持良さそうにさやかの首元に顔をもたれさせながら、ほむらは意味ありげな視線をさやかにおくる。
――固く握り合った手がさやかの脳裏に浮かぶ。
苦しそうなほむらの表情と、汗。そして乱れた黒髪。
しばらく考えこんでいたさやかはようやく、ああ、と呟き、そして今度は大きく「ええ?」と声をあげた。
その単純さにあきれたのか、思わず失笑するほむら。
「ほんと…貴方って馬鹿ねえ」
「いや、てかあの時のって…」
ほむら足元のシーツに染みた赤い血。
「貴方のおかげで私は死ぬほど痛かったわ、全然優しくないし、がっつくし」
「ちょ…ちょっと、人聞きの悪い!私だって、その後、あんたのですんごい痛かったわよ!」
そう、あの時互いに身体の奥を譲り合い、快感に酔いしれたのだ。そのためにはかなりの時間と痛みを要したが。面白そうにほむらは目を細め、そうして艶のある唇を開くと、そのままさやかの首を噛む。
「あいたっ!…ちょ」
「しましょう?さやか」
「え」
気付けば、至近距離にほむらの顔があった。アメジストの瞳が輝いて、さやかを捉えている。しばらく惚けたように見惚れていたが、はっ、とさやかは目を見開きそうして抵抗した。
「ちょ、ちょっと、だめよ!ほむら、私身体が痛くて…んあっ!もう…」
ほむらが手を伸ばし、また傷口をさすった。顔はくっつけたまま。面白そうに口元を緩ませ、ほむらが囁いた。
「…大丈夫よ、今日は貴方に「付けて」あげるわ」
「でも私、傷で動けないわ…」
涙目のさやかの頬に唇を寄せるとほむらはまた優しく囁いた。
「私が動くわ…それでもご不満?」
「ううん…でも、あんたはいいの?」
あら、と意外そうな顔をして、ほむらは妖艶に笑った。
「私は悪魔よ、悪魔って、両性具有なの知ってる?」
「聞いたことあるわ」
そうして、ほむらは軽くさやかの頬にキスをした。
「天使は?」
「え?」
今度は瞼へキス。
「えっと…中性?」
「あたりよ」
そして額へ
「…だから貴方は合わせられるのよ、私に…」
「合わせられる…」
「そうよ」
つう、と赤い舌がさやかの顔の上を流れる、唇に到達すると捉えたように数回ぺちゃ、ぺちゃと音を立てて舐めまわす。透明な唾液がさやかの唇を濡らす。
「私が火照りを沈めて欲しい時は貴方が」
ほむらの白い指がさやかの下腹部をなぞり、そして更に下へと這う。
ズボンの中に手が入れられた。
「そして」
ビクン、とさやかの肢体が跳ねる。ほむらの指がいきなり彼女の体内に侵入してきたのだ。
目を瞑り、歯をくいしばるさやか。
「私が欲しい時は、貴方が私を埋めるのよ」
指が蠢く
「あっ…あああっ!」
たまらず声が出る。それを面白そうに黒髪の美女は見下ろし、アーモンド型の目を細めた。
そのいつもより優しげな表情は、彼女の下で苦しそうに身悶えしている相方が、珍しく可愛く思えているからか。
「我慢しなさい…もう少しで「出す」わ」
「…っ、て、もう…無…理っ、無理よ!」
「早いわね、貴方、お預け忘れたの?」
フフフ、と笑いほむらはさやかの首元に顔を埋めた。その肩は休むことなく上下して、その先の手はさやかの陰部を弄ぶ。ほむらの手がうっすらと紫色に光っているのは彼女が力を使っているからだ。彼女はさやかの身体の一部を変えようとしていた。
アメジストの瞳が妖しく輝いていた。
「ふうっ、あっ、あっ、あっ…」
死んでしまう、とさやかは思った。いつもそうなのだ、彼女に身体を弄られると身体全体が電気が走ったように痺れ、すぐに意識が飛んでいってしまう。自分の身体の中で彼女の指が蠢いて、あらゆる部位を刺激されると、脳髄まで一気に快楽が走って身体が言うことを聞かない。容赦なく動くほむらの指のおかげで、さやかは自分の膣内の形まで意識してしまう。卑猥な女性の喘ぎ声がどこか遠くから聞えるが、それが自分だと知り愕然とする。
下腹部が一気に熱くなり、さやかは自分の内部が変化していくのを感じた。
* * * * * *
女性器と男性器は発生学上元々同じものである。胎児の頃の発生の過程においては同じ部分からできているのだ。成人女性のそれを時空を歪め、原初に戻し、悪魔の都合のいいように再生してしまえばどうなるか?
――貴方は合わせられるのよ
激しく動く指。のけぞるさやか。必死に本能と戦っているが、どうやらそろそろ陥落する頃らしい。蒼い髪を乱し、涙を滲ませた目でほむらを見つめる。その蒼い瞳はいつもの淡白なそれではなく、情欲にまみれたそれで。普段の彼女を知っている者が見たら驚くだろう。
――そんな彼女を私だけが見ることができるのだ。
ほむらは上目遣いで悶え喘ぐさやかを見つめる。誰も見ることのできない「飼い犬」のその特別な表情を、主人はさも満足気に。
「さあ、出しなさいさやか」
「ふあっ、あっ、ほむ…らぁっ!」
ひと際大きくさやかの肢体は反り返った。同時にほむらが手をさやかの陰部から引き抜く、と、そこに棒状の突起物が顕れた。…男性器だ。
「はあ、はあ…けほっ、」
「あら、まあまあね」
妖艶な笑みを浮かべながら、ほむらはソレを見つめる。白い指を今度はそこへ這わし乱暴にしごくと膨張した。張り詰めるほど固まると、満足気にほむらは目を細める。
成功したのだ。
ほむらは白いワンピースを脱いだ。
さやかの眼前に、白磁のような肌を隠すところなく、全て露わにした友人の姿が映る。
「繋がりましょう、さやか?」
苦しそうに、だがうっとりとした表情でさやかはこくりと頷いた。
ほむらは四つん這いになり、さやかに覆いかぶさると、ゆっくりと腰を沈めた。
はじめて結合にいたったあの時も、最初にこの方法を考案したのはほむらだった。
悪魔は両性具有とされる。彼女は力により己の身体を変化させ、同時に二つの性器を持つことが可能だ。いわゆるふたなりと呼ばれるものだ。だが、美樹さやかにはその力は無い。
その時、交わりながら、ほむらは力を彼女に与えてみた。自分が欲する時、その身体を埋めてもらうために。美樹さやかは悪魔の求めに応じ身体を変化させた。中性とされる天使の所以なのか、それとも相性、性質か。
「ふうあっ…」
さやかが泣きそうな声をあげるのと、ほむらがため息を漏らすのは同時だった。
ゆっくりとほむらの腰が沈んでいき、二人の間にあった男性器が消えていく。
全てほむらの中に「収納」されたのだ。
満足気なため息がまたほむらの口から洩れた。うっとりと目を瞑り、少しだけ身体を前後に揺する。内部に侵入したさやかの感触を確認しているのだ。長い垂れた黒髪が、同じ表情を浮かべている蒼い髪の相方の顔をくすぐった。
「……どう?」
「……」
ほむらは眼下で悶えている自分の犬に囁く。いつもより荒い息。
うっすらと目を開ける蒼い犬。
「飼い主の中は…いかがかしら?」
潤んだ目、揺らめくアメジストの瞳。白磁のような肌にまとわりつく黒髪の残骸。半開きの艶のある唇から見える白い歯と荒い息。ほむらの恐ろしいほどの美貌は、結合により卑猥な色香を滲ませていた。
「…っ、あ…ついわ」
そう、ほむらの体内は熱い。その白い透明なひんやりとした肌からは想像がつかないほど。
彼女の狭く固い通路を分け入り、奥まで到達した途端、柔らかく包みこまれるのだ。さやかは蕩けて惚けそうになる。
「聞えないわ…何?」
ほむらの中の居心地のよさで、さやかはもはやうまく喋れない。惚けたように必死に言葉を紡ごうとする。そんな相方をほむらはからかうように見つめて、答えを催促する。
「さやか?」
「あ…つ…いわ」
必死に口を開けて、しゃがれた声をさやかは出した。口元からは涎がでる。まるで犬だ。
フフフ、とほむらはさも可笑しそうに笑って、そうしてさやかの顔にキスの雨を降らした。
「言葉もうまくしゃべれないなんて馬鹿犬ねぇ…でもいいわ」
艶のある声で話しかけながら、ほむらの腰はさやかの下腹部の上で動き始めた。
収納しながら、中でさやかのモノを吸い上げているのだ。泣きそうな声をあげる犬。
「はじめましょう?」
ニイ、とほむらの艶のある唇が歪み、白い歯を見せた。
* * *
台所に二人の嬌声が響き渡る。
重なりまぐわう女性二人。床に倒れ込んだ蒼い髪の女性はブラウスとズボンを乱暴に引きはがされた状態で仰向けだ。ところどころに血がついている。その身体に馬乗りになって淫らに動いている女性は、恐ろしいほど美しかった。何も纏わない白い肌に艶のある黒い髪が汗ではりついて。
「…っ、あ、さや…か…っ」
うっとりとした表情で固く目を瞑り、たゆたうように、さやかの身体の上で揺れるほ
むら。結合した部分を味わうように擦りつけてくる。しっかりと二人の右手は固く握り合っていて。二人ともあと少しで昇りつめる。さやかもまた吸い取られる快感で、うまく言葉を発することができない。とろんとした蒼い瞳がほむらの淫らな姿を捉えている。
さやか、さやかと何度も相方の名を連呼し、ほむらは腰を捻る。美しい肌は汗で光り、躍動する度に美しい乳房も揺れた。まるでトランス状態に陥った巫女のようだ。途切れ途切れの意識の中、さやかは自分の上で痴態を曝す相方に見惚れ、そうして、気付けば、その相方の名前を連呼していた。
「ほむらっ…ほむら、私っもう」
だめだ、もう吸い込まれる、迸りを感じ、腰から全体へビリビリとした快感が走った。
「だめよ…だめ、待ち…なさ…い」
ほむらが前屈みになり、さやかを制止する。我慢の効かない犬をしつけるかのように、左手でその頬を乱暴に掴む。そうして身体を反転させた。二人の上下が逆になる。
「動き…なさい」
「そんな…もう…」
さやかは限界に来ていた。だが相方はサキュバスのように相手を貪欲に求めていた。右手は握り合ったまま、ほむらは左手をさやかの背中に回し、そうして両足を腰に絡める。
吸いつくようなほむらの肌でさやかはすでにイキそうになる。
泣きそうな声で、さやかは身体を動かした。ぎこちない動き。
「…下手…くそね」
甘い吐息と共に、ほむらが囁いた。台詞とは裏腹のうっとりとした表情。内部はそろそろ到達するであろう快楽のため蠢いており、さやかはただほむらの中にいるだけで気持ちいいのだ。ほんの数センチ抽出を行うだけでありえないほどの快楽がさやかに襲いかかってくる。
「ふあ、ほむ…ら、ほむら…っ」
もはや、やけくそだった、やみくもにさやかは動く。
さやかはほむら以外の「男」も「女」も知らない。だが、今この相方の身体の中ほど淫猥なものはこの世のどこにも無いだろうと思った。
柔らかく、そしてどこまでも吸いついてくる内部。その深淵部にさやかの先端が到達した。
びくん、とさやかの下でほむらが肢体をのけ反らせる。快楽で大声をあげた。
ほむらのアーモンド型の目が見開かれ、さやかをじっと捉える。互いの両手を固く握り、
二人は仕上げに入った。互いに腰を激しく動かし結合部を押し付ける。より繋がりを求めるかのように。乾いた音と激しい揺さぶりで乱れるほむらの顔。その顔は普段滅多に見ることができない顔で、さやかはじっくりと見たかったのだが、もはやそんな余裕はどこにもない。
「ほむら…ほむら…もう」
「いいわ…」
ガクン、と身体が一瞬沈んだようになって、さやかのモノが一気にほむらの内部に吸い上げられる。
「出しなさい」
ゾクゾクと再び快感の震えが腰に来る。そしてさやかは叫んだ。
「ほむらぁっ…」
世界が真っ白になる。身体の中にあった迸りがすべて黒髪の相方の体内へと放たれた。
ビクビク、と震えながらしばらく放出は続いていた。
ほむらの腕の中でさやかは意識を失った。
『ごめんなさい』
…?
相方の謝罪の声が聞えたような気がした。
* * * * * * *
気がつけば、さやかはベッドで朝を迎えていた。
「あれ…?」
不思議そうにきょときょとと周りを見渡すさやか。
そうして、記憶を取り戻す。
そうだ、あれから意識を取り戻した後、二人でシャワーを浴び、台所を掃除し、眠りについたのだ。だが、ほむらは終始無言で、返答はしてくれるものの、ほとんど口を利いてくれなかった。怒っているのだろうか?いつもこうなのだ、二人で激しい行為をした直後は。
「……」
傍でほむらは眠っていた。とても疲れたようにこちらに背を向けて。何も纏わない白い肌に長い黒髪の後ろ姿は煽情的だ、昨日の行為を思いだして、さやかは不覚にも興奮した。
振り切るように首を振るが、どうにも興奮醒めやらない。一体どうしたのだろう?そう思いながら起こさないように反対側からベッドを降りる。と、身体に不思議な違和感。
「嘘…」
股間に突起物。悪魔の力が解除されていない。
驚きで頭を抑えるさやか。そうか、それで興奮してたのか、とさやかは納得し、そうして困ったようにうねり声をあげた。
――仕事どうすんのよ!
男性の生理現象ならさやかも知っている。朝こういう風になることも。
しかし、どう処理していいかは、さやかにはわからない。自分でそういう自慰行為もしたことのない、意外と純粋な彼女はしばらくその場で立ちすくんでいた。
そうして意を決したようにベッドで眠っている家主を見つめた。
「ほむら…ほむら」
「………何」
とても不機嫌そうな顔をしてほむらは身体を揺らしたさやかを睨んだ。寝起きで機嫌が悪いのはいつものことだが、しかしそれにしては今日はひどい。だが、それどころじゃないさやかは気にもせず、へらへらと笑いだした。ほむらの目が怒りで燃える。
「あ、あのさ、ちょっと身体を貸して?」
「はあ?貴方…何…」
そうしてほむらも絶句する。解除し忘れた勃起したモノを見て、ため息をついた。
手で額を抑える。
「…忘れてたわ、にしてもほんと犬ね、貴方、朝から盛って」
「だ、だって、仕方ないでしょ!ね、お願い、時間無いのこのままだと遅刻しちゃう!」
「はあ?貴方、まさか…やめなさい!」
「ごめん、ほむら」
「ば…んあっ!」
寝起きで油断したためだろう、ほむらはすんなりとさやかの侵入を許してしまった。ほむらの背後に覆いかぶさった状態で、さやかが抽送を始める。
さやかを受け入れながら、ほむらは怒りの表情を向ける。喘ぎながら彼女は毒づいた。
「こ…この馬鹿犬…ほんと…最…低…だわ」
「だって、あんたが忘れるからよ!し、仕方ないでしょ」
「……」
はあ、とほむらはため息をついた。
「いいわ……早くすませなさいな」
「うん」
ほむらは枕に顔を押し付け、目を瞑った。抽送を繰り返される度くぐもった声をあげる。
ほむらの身体の中が熱くなった頃、さやかは到達し、ほむらに放出した。
はあ…とため息を漏らし、さやかが身体を離すと、ほむらはゆっくりと仰向けになった。そのアメジストの瞳には怒りは消えていた。疲れ切った表情でさやかを見つめると、囁いた。
「勝手に中で用を足された気分だわ…」
「…ご、ごめん」
「すっきりした顔で言わないで」
ちっ、と舌打ちしながら、ほむらは足でさやかを小突く。
ゆっくりと上体を起こし、手を伸ばす。さやかが思わず目を瞑るが、意外にもほむらはさやかを優しく抱きしめた。
「…ほむら?」
「もう、あんなのはごめんよ」
「?」
「魔獣は、ためらわずに殺しなさい」
「ほむら…」
「人と融合していようと、もう魔獣よ、考えないで」
彼女は、昨夜の事を言っているのだ。
「心配かけてごめんなさい」
「……別に心配なんかじゃないわ、困るのよ」
「コーヒー淹れる人がいなくて?」
驚いたように、ほむらはさやかを見つめる。
にっこりと笑うさやか。
「…覚えてたの?」
「あたりまえでしょ?忘れるわけないじゃない、あんたと初めてした日…あいたっ!」
ぱちんと額を叩かれた。
「余計な事はいいの…とりあえず覚えているなら、約束は守るのよ、いい?」
「うん」
はあ、とため息をついて、ようやく、ようやくほむらは口元を緩め、微笑んだ。
「仕方ないわね、またこの馬鹿犬の面倒を見るとしましょうか」
「はあ?何よそれ?私は犬じゃないって何度も…」
「犬よ」
そうして、ほむらはさやかの頬を抑え、額を合わせる。まるで飼い主が犬を見つめるような仕草でさやかの目を覗き込んで。
「見境なく朝から抱きついてきて、飼い主を後ろから襲うなんて、とんだ馬鹿犬」
軽くついばむようにキスをする。
「うう…それは、だって…」
「ちゃんと、しつけるために「罰」を与えなきゃ」
「え…」
にっこりとそれは優しくほむらは微笑んだ。思わず悪寒が走るさやか。
ほむらの白い指がさやかの股間に這う。
「…切っちゃおっか?」
「………!!」
さやかは慌ててほむらから背中を向け逃げようとする。
笑いながら、さやかを後ろから抱きしめるほむら。必死に股間を抑えるさやかを見て、苦しそうにほむらは笑い続ける。
「やめて、やめて元に戻れなくなっちゃう!てか戻してよ!」
「あら、それは今後の貴方次第よ」
「なんで!」
「なんでもよ」
「ひど!」
「おとなしくなさいな…」
あきらめたのか、大人しくなるさやか。そんなさやかをよし、と撫で、ほむらは身体を
こちらに向けさせる。そうしてほむらはさやかにキスをした。さやかに降りかかる優しいキスの雨。
「ねえ、ほむら?」
「なあに?」
「……もう一回していい?」
「馬鹿ね…もう聞かないでいいわ」
そう言って、ほむらはさやかを抱き寄せ、もたれるようにして目を瞑った。
END