一つ、自慢話をさせてよ
僕が死ぬまでの時間潰しに、聞いていってくれるよね?
僕にはとっても綺麗で可愛くて、格好良くて美人なお姉ちゃんが居たんだ。
一卵性双生児の僕達姉妹は顔も声も背格好もそっくりだって愚図な輩は言うけれど、そんな事は決してない。
お姉ちゃんは明るくて、元気で…正しい人だった。
僕…?僕は……悪くて間違った人間だよ。
だから思う事があるんだ…もし僕がお姉ちゃんみたいに正しい人間だったなら、今でもお姉ちゃんは僕の隣に居てくれたのかって
お姉ちゃんは僕の全部だった
勿論、頭が少ない奴らみたいなのの口から出任せじゃない
お姉ちゃんは僕の世界で、僕の居場所で、僕の理由だった。
…何の理由かって?
ふむ…そんな事考えた事も無かったな…
ちょっと待ってくれる?僕が話をさせてくれって言ったのに、君の質問にも答えられないようなら、僕だけが語るようなら嘘だ。
うーん…全部、かな…
僕が生きる理由、僕が生まれてきた理由、僕が死なない理由、僕が絶望しない理由、僕が……僕である理由
だから…僕はもう死んでしまおうと思ってね
僕は、最愛のお姉ちゃんを殺した。
僕の世界は無くなったから…理由もないのに生きられない
お姉ちゃんは…僕の全部だったから
僕は小さい頃から頭が良かった。
いや、頭が良かったって言うか……何でも出来たって言うべきかな?
少し考えれば何でもわかった
少し練習すれば何でも出来た
少し…そう、たった数分で僕は何だって出来るようになるスーパーマンだった。
いや、スーパーウーマンかな?まぁどっちでもいいけど
君達みたいな
初めて紙とペンを握った数分後にはダ・ヴィンチにだって筆を折らせたさ。
ほら、君も見たこと無い?『愛しき聖少女』…アレの作者が僕だよ。
まぁ……そんなスーパーウーマンである僕だったけど、そんな僕にも一つだけ
たったの一つだけ出来ない事があったんだ。
「お姉ちゃん!僕と粘膜擦り合わせてドエロい事しよ!」
「ん〜?ん〜…駄目じゃねぇかな、俺ら姉妹だし」
お姉ちゃんはいつだって僕の誘いに乗ってくれなかった。
ん…?誘い方もうちょっとどうにかならなかったのかって?
そりゃ、僕だって最初からそういう感じじゃなかったよ
でも……
「お姉ちゃん…男なんて汚いよ、あんなのは所詮ヤレるかヤレないかでしか人を見ないんだから…
だから…お姉ちゃん、僕とイイコトしようよ
忘れられない想い出にしてみせるから…さ」
「おお!サンキュー!!
いやぁ~、買ったは良いけど相手が居なくてさぁ~
琴音ちゃんが誘ってくれて助かったぜぇ!
……やっぱ!スマブラは対人やってなんぼだもんなぁ!!」
「………うん、これもまぁお姉ちゃんが喜んでくれるならイイコトではあるかな……」
お姉ちゃんは無敵だからね
そりゃ僕程度の思惑なんて踏み潰すよ。
そう、お姉ちゃんが居てくれたから…僕…幸せだったなぁ
僕は飽きっぽい性分でね
これは決して自己弁護じゃないんだが僕ってほら…天才だからさ、やることなす事全部すぐに終わっちゃうんだよ
スポーツでも、勉強でも、ゲームでも…最後まで終わっちゃうともうしないでしょ?…つまりそういう事。
すぐに一番になるから誰かとやっても楽しくない
すぐにクリアしちゃうから一人遊びもつまらない
だから…僕といつも一緒に居てくれるお姉ちゃんが、お姉ちゃんだけが僕の全てだったんだ。
つまらない人生、モノクロにしか見えない景色、個体を識別も出来ない有象無象の中で…お姉ちゃんだけが
僕の伽藍堂の心を、お姉ちゃんだけが温かく満たしてくれた
僕がお姉ちゃんに告白して、ソレをお姉ちゃんがスッパリ断る。
ルーチンワークにすらなってたソレが崩れたのが、僕らが中学に上がってすぐの事だった。
……ん?僕が中学に行ってたかって?
そりゃあ行ってたさ
なんてったってお姉ちゃんが行ってたからね。
その頃には僕に勉強を教えられる人間を探せって言えば一休さんでも匙を投げる具合だったけど…お姉ちゃんが行くなら僕が行かない訳がない。
小中高と全部一緒に行ったもんだよ
高校は…卒業前に辞めちゃったけどね。
…話が逸れちゃった
君、案外良い聞き手だね…そういう仕事向いてんじゃない?
ともかく、僕らが中学に上がってすぐの事さ
僕が生徒会だなんだってので珍しく…正しく天文学的確率でお姉ちゃんと一緒に帰れなかった日があったんだ。
その頃、お姉ちゃんは観たいアニメが有るって言って学校が終わったらすぐに家に帰ってたからね。
僕だってお姉ちゃんの楽しみを邪魔するぐらいならそりゃ先に帰っててって言うさ。
まぁ……今にして思えば、再放送もあるんだし待っててって言えば良かったよ。
僕が家に帰った時…お姉ちゃんの部屋から音が聴こえなかった。
僕は顔だけじゃなく耳もよくてね
防音扉越しだろうと蟻の足音を聴き取るぐらいは訳ない。
そんな僕の耳でもお姉ちゃんの部屋から音が聴こえなかった。
おかしい、そう思ったよ
だってお姉ちゃんはアニメを観に帰ったんだ
僕の耳が階を隔ててるとは言え、防音ですらない扉越しのテレビの音なんてものを聴き逃す筈がないんだよ
でもね…二階のお姉ちゃんの部屋からは何の音も聴こえなかったけど、一階の両親の部屋から声が聞こえたんだ。
いや…声、というよりは鳴き声と表現すべきかな?
獣の鳴き声……薄汚い豚の鳴き声
僕の何よりも大切なお姉ちゃんはね
13歳の時に、実の父親にレイプされたんだ